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過去回想のモブ編

間幕1 レインボーワールド『レイン』過去回想

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レインボーワールド(通称:ニジゲン)はベンチャーのゲームソフト会社が社運を賭けて発売したゲーム。
メディアミックスなどもされ話題となったこのゲームはいくつかスピンオフのゲームが発売された。

その1つがヒロインである氷のレインの物語。
本編ではあまり触れられていなかったイベントがレイン視点で語られている。

side:レイン

私の名前はレイン。
カナン帝国の辺境にあるイーレ村の孤児院に住んでいた。

元々私は別の街で平民として暮らしてたのだけれど、両親が魔獣に襲われて死亡したことですべてが変わってしまった。
1人生き残ってしまった私は天涯孤独の身になったわ。
両親を失った当時の私は幼いながらに人生に絶望した。

そんな私を救い出してくれたのが、シスターマリアだった。
シスターマリアは教会の仕事で街に訪れており、偶然見かけた私が気になって声を掛けたらしい。

私がどうして声を掛けたのか聞くと、シスターマリアは苦笑しながらも答えてくれた。
どうやら私の絶望した目を見て、かつての自分と重なったらしい。

こうして偶然の出会いから私はシスターマリアに引き取られ、彼女が運営しているイーレ村の孤児院に住むことになったわ。

当時5歳だった私は、村の子ども達に舐められないようにツンツンしていた。
だから皆は私から距離を取っていたの。

だけど、そんな中で親しく接してくれたのがエドワードという私と同い年の男の子だった。
彼は私のキツい言葉を言っても普通に接してくれた。

そうすると私の態度も柔らかくなったのか、どう接していいか分からずに戸惑っていた他の子ども達とも話すようになった。
気づけば、孤児院の皆は私にとって兄弟のような近しい存在になっていった。

私達は成長して10歳になり、鑑定の儀を迎えた。
驚いたことに、私は村の子ども達の中で一番の魔力量だった。

鑑定の儀を終えた私達はシスターマリアの指導のもと、魔法を学んでいった。

私は水属性と光属性に強い適性があったようで、光属性の治癒魔法と攻撃から身を護る水属性の防御系魔法を中心に覚えていった。

「<小回復>」
3か月後には、手のひらを患部に当てて魔法を唱えることで切り傷程度なら治療することが出来るまでになった。

だけど、そんな日常はある日突然音を立てて崩れ落ちた。

カンカンカンカン
村の見張り台に設置されている警鐘がけたたましく鳴った。

「敵襲、敵襲だ。魔人が出たぞー。」
警備をしていた男達はそう言って村中にアナウンスして回っていく。


「聞け、人間よ。我ら魔族はこれからお前たちの村を襲う。
 だが我も悪魔ではない。1時間だけ時間をやろう。
 臆病者は逃げよ。追わずに見逃してやろう。
 逆に愚か者は我らに挑んでくるがいい。絶望をくれてやる。」

魔人からの宣戦布告を聞くに、どうやら魔人は逃げだす人間に興味はないみたい。

その言葉を受けて、村人を村の中心に集めて村長が演説を行ったの。
どうやら、避難チームと迎撃チームの2班に分けるみたい。
魔人達を迎撃チームが東門のところに釘付けにしている間に、西門から避難チームが脱出していくという計画よ。

私達孤児院のメンバーはみな避難チームにいて、計画通り西門から脱出できたわ。
だけど、異変が起こったのは西門を出て30分ほど移動した時だったの。

突然前方に幾何学模様の魔法陣が現れて発光しだしたと思ったら1人の男性が出現したの。
今ならわかるわ。彼が召喚されて出てきたんだってね。

「なるほど、私は呼び出されたようですな。契約内容は…、一人を除いてこの場にいる人間の殲滅ですか。全く、人間というのは愚かしいことですな。」
良く分からない独り言を呟き、赤い瞳で周囲を見渡していたわ。

「見つけましたよ。」
いつの間にか私のすぐそばにやって来て男は嗤った。

「ひっ」
私は驚きのあまり小さな悲鳴が漏れでたけど、私が反応できたのはそこまでだったわ。
身体に衝撃が走り、私は成すすべなく意識を失ったわ。

 ***

「…おい、大丈夫か?」
司祭服を着た中年男性―後に私の師匠となるダラス司祭―に声を掛けられて私は目を覚ましました。
ダラス司祭は巡礼の旅に出ており、各地を転々としているのだとか。
その道中に、草原で倒れている私を発見して介抱してくれたらしい。

「私以外の人はいませんでしたか?」
私は恐る恐る尋ねました。

「いや、残念ながら君以外は誰も居なかった。
 君は近くにあるイーレ村の住人かい?
 あの村にも寄ったが誰も居なかったよ。
 東門のあたりに大量の血痕と魔獣と見られる足跡がいくつか残っていたから、多分そう言うことなんだと思う。」

その言葉を聞いた私は泣きました。
声にならない声をあげ、泣き叫びました。

ダラス司祭はそれを黙って見守ってくれました。
私は泣き疲れたのかそのまま眠りに落ちました。

「何があったんだい?」
翌朝、ダラス司祭に聞かれ、私は自分の知っていることを説明した。

「そうか。魔人の襲撃があったとはね。
 君は運が良かった。イーレ村唯一の生存者だ。
 それで君はこれからどうする?」

「どうもしない。もう何も残ってないもの。」

「これは僕のエゴなんだけどね。
 できれば君には生きてほしいかな。亡くなったイーレ村の人たちのためにも。
 どうしても無理だと言うなら1つ生きる理由をあげよう。」

「生きる理由?」

「そうさ。人は皆何かに縋って生きている。
 それは家族かもしれないし恋人かもしれない。
 仕事やプライドなんて人もいるけど、皆が何か理由を持ってる。
 君の場合は復讐かな。
 イーレ村の人が亡くなったのは魔人の襲撃によるものだ。
 なら、魔人を殺すことがイーレ村の人たちの敵討ちになるだろう?」

「復讐」
私はその言葉で先ほどまでぼんやりしていた頭がクリアになっていきました。

「いい眼だ。君は復讐したいかい?」
翌日、ダラス司祭からそう聞かれ、私は頷きました。

「なら私の弟子になりなさい。
 あなたの村を襲った魔人を倒す術を教えましょう。」

「わかりました。でも1つ聞いていいですか?」

「いいですよ。私で答えられる範囲ならね。」
ダラス司祭は肩を竦めた。

「どうして私の復讐に手を貸してくれるんですか?」

「それはね。私もまた復讐者だからだよ。」
こうして私はダラス司祭の弟子となり、教会に引き取られることとなりました。

 ***

「レイン、君に指令だ。帝都にあるレード魔法学院に潜入しろ。
 細かな指示は学院に潜入次第、都度連絡する。」

「了解。レード魔法学院に潜入します。」
教会に引き取られてダラス司祭のもとシスター見習いの傍ら暗部としての仕事をしてきたレインは新たな任務に就いた。

そして、レインの物語はそこから幕を開けることとなる。

レインの行き着く先は幸福か復讐か、今は未だ誰も知らない。
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