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37、解ける呪いと明かされた真実
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「ミラ、お願いできますか?」
「はい。マール様」
満月の夜、私とマール様は精霊の森の中にいました。
風の精霊のフリューリンクと、ユニコーンのヴァイスについてきてもらい、シロさんはマール様と共に居らず、精霊王様の眠る場所に今はいます。
「ユニコーンの鬣」と「精霊王の欠片」を煎じたものに、フリューリンクが風で集めてくれた「月夜の雫」を数滴器に入れてくれました。
それをそっと口に含むと、マール様の前に立ちます。
膝をついているマール様の顔を両手でそっと包むと、目を閉じたその綺麗な顔に近づきます。
どうか呪いが解けますように……
祈りながらそっと口付けます。
少し冷たいマール様の唇に、少しずつ薬を流し込むと「ん…」とかすかな声が聞こえました。
これ……すっごい苦いです!!
マール様に薬が全部移せたかどうかが苦味で全然分からないので、水を含んで何度もマール様に口移しをします。
「うん。呪い消えたみたいだよー?」
ヴァイスの声に、夢中でマール様に口付けていた私は、ハッと我にかえりました。
「す、すみません!私ったら夢中で……」
「ありがとうミラ、とても情熱的でした……まさか何度も……」
「ふ、ふぇああああああ!!言わないでください!!内緒にしてください!!」
「言いませんよ。僕の初めてを……」
…………え?
「マール様って、これが初めて……ですか?」
「え?いや、それは、まぁ、いや、か、帰りましょう!オル達が来てるかもしれません!」
「マール様?」
「ほらほら早く帰りますよ!」
暗い森の中なのに、なぜかマール様が耳まで赤いのが分かります。
良かった。
呪いが解けて。
マール様が初めてで。
私と同じで、良かった。
「おお!やったね!おめでとうマール!祝ファーストキス!」
「良かったね、マルス君!」
「よし、マール殺す」
「……うるさいですよ」
予想通り、森の家に戻ると、オルさんとクラウス様が王都から戻ってました。そして……
「エンリさん!」
「ミラちゃん!」
相変わらずの愛らしさを振り撒くエンリさんを見て、思わず抱きついてしまいました。温かくて、柔らかくて、いい匂いです!
「頑張ったねミラちゃん。怖かったでしょう?もう大丈夫だからね」
「エンリさん……うぅ、ふぇ、うぇぇ……」
思わず涙が出ます。
不安で、怖くて、マール様が死んじゃうって思って……そんな気を張っていた私に気づいて、エンリさんが優しく抱きしめてくれました。
ひとしきり泣いたら、少し落ち着きました。子供みたいで恥ずかしいです。
慌てて謝ると、エンリさんは「良いんだよ」って笑ってくれました。
「エンリさんってお姉さんみたいです。温かくて優しくて……」
「そんなのオルと結婚したらミラちゃんとも家族なんだから、もう姉で良いんじゃないの?」
クラウス様は明るく言いました。確かに。それは願ったり叶ったりですね!
「クラウスてめぇ!それよりも呪いを解く方法、他にもあったじゃねぇかよ!」
「え?そうなんですか?」
もしかしてマール様、あんなに苦い薬を飲まなくて良かったのでは?
クラウス様は明後日の方を見て、器用に口笛を吹いてます。マール様は顔を真っ赤にして横を向いています。え?なぜ?
「……マールも知ってたな?」
「いえ、確かにケヴィ頼めば呪いは解けたんですけど……彼は十年ぶりに起きたばかりだし、あまり負荷をかけるのも……と……」
「本音は?」
「すみません。ミラとキスしたかったんです」
「ふ、ふええぇぇぇええええ!?」
頭が沸騰しそうです!マ、マール様ったら、なんて事を!なんて事を!!
「クラウス君は、アレ抜きだね」
「え、なんで!?マールだって同罪でしょ!?」
「マルス君は正直に言った。クラウス君は面白がってた。故にアレは抜き」
クラウス様が絶望の表情で座り込んでます。
少し赤みの引いた頬に手を当てて冷やしながら、エンリさんに聞きます。
「アレってなんですか?」
「えへへ。ミラちゃんの遅れた誕生日会をやろうって、私の国の料理を作ってきたの。誕生日プレゼントも持ってきたんだよ」
「ええ!?そんな……すみません!!」
「なんか色々あったからな、王都で用意してきたんだ。夕食には少し遅くなったが、今から良いか?」
良いも何も……
ぽろぽろ流れる涙をそのままに、オルさんに飛びつきます。
「ありがとう!嬉しいです!」
「はい。マール様」
満月の夜、私とマール様は精霊の森の中にいました。
風の精霊のフリューリンクと、ユニコーンのヴァイスについてきてもらい、シロさんはマール様と共に居らず、精霊王様の眠る場所に今はいます。
「ユニコーンの鬣」と「精霊王の欠片」を煎じたものに、フリューリンクが風で集めてくれた「月夜の雫」を数滴器に入れてくれました。
それをそっと口に含むと、マール様の前に立ちます。
膝をついているマール様の顔を両手でそっと包むと、目を閉じたその綺麗な顔に近づきます。
どうか呪いが解けますように……
祈りながらそっと口付けます。
少し冷たいマール様の唇に、少しずつ薬を流し込むと「ん…」とかすかな声が聞こえました。
これ……すっごい苦いです!!
マール様に薬が全部移せたかどうかが苦味で全然分からないので、水を含んで何度もマール様に口移しをします。
「うん。呪い消えたみたいだよー?」
ヴァイスの声に、夢中でマール様に口付けていた私は、ハッと我にかえりました。
「す、すみません!私ったら夢中で……」
「ありがとうミラ、とても情熱的でした……まさか何度も……」
「ふ、ふぇああああああ!!言わないでください!!内緒にしてください!!」
「言いませんよ。僕の初めてを……」
…………え?
「マール様って、これが初めて……ですか?」
「え?いや、それは、まぁ、いや、か、帰りましょう!オル達が来てるかもしれません!」
「マール様?」
「ほらほら早く帰りますよ!」
暗い森の中なのに、なぜかマール様が耳まで赤いのが分かります。
良かった。
呪いが解けて。
マール様が初めてで。
私と同じで、良かった。
「おお!やったね!おめでとうマール!祝ファーストキス!」
「良かったね、マルス君!」
「よし、マール殺す」
「……うるさいですよ」
予想通り、森の家に戻ると、オルさんとクラウス様が王都から戻ってました。そして……
「エンリさん!」
「ミラちゃん!」
相変わらずの愛らしさを振り撒くエンリさんを見て、思わず抱きついてしまいました。温かくて、柔らかくて、いい匂いです!
「頑張ったねミラちゃん。怖かったでしょう?もう大丈夫だからね」
「エンリさん……うぅ、ふぇ、うぇぇ……」
思わず涙が出ます。
不安で、怖くて、マール様が死んじゃうって思って……そんな気を張っていた私に気づいて、エンリさんが優しく抱きしめてくれました。
ひとしきり泣いたら、少し落ち着きました。子供みたいで恥ずかしいです。
慌てて謝ると、エンリさんは「良いんだよ」って笑ってくれました。
「エンリさんってお姉さんみたいです。温かくて優しくて……」
「そんなのオルと結婚したらミラちゃんとも家族なんだから、もう姉で良いんじゃないの?」
クラウス様は明るく言いました。確かに。それは願ったり叶ったりですね!
「クラウスてめぇ!それよりも呪いを解く方法、他にもあったじゃねぇかよ!」
「え?そうなんですか?」
もしかしてマール様、あんなに苦い薬を飲まなくて良かったのでは?
クラウス様は明後日の方を見て、器用に口笛を吹いてます。マール様は顔を真っ赤にして横を向いています。え?なぜ?
「……マールも知ってたな?」
「いえ、確かにケヴィ頼めば呪いは解けたんですけど……彼は十年ぶりに起きたばかりだし、あまり負荷をかけるのも……と……」
「本音は?」
「すみません。ミラとキスしたかったんです」
「ふ、ふええぇぇぇええええ!?」
頭が沸騰しそうです!マ、マール様ったら、なんて事を!なんて事を!!
「クラウス君は、アレ抜きだね」
「え、なんで!?マールだって同罪でしょ!?」
「マルス君は正直に言った。クラウス君は面白がってた。故にアレは抜き」
クラウス様が絶望の表情で座り込んでます。
少し赤みの引いた頬に手を当てて冷やしながら、エンリさんに聞きます。
「アレってなんですか?」
「えへへ。ミラちゃんの遅れた誕生日会をやろうって、私の国の料理を作ってきたの。誕生日プレゼントも持ってきたんだよ」
「ええ!?そんな……すみません!!」
「なんか色々あったからな、王都で用意してきたんだ。夕食には少し遅くなったが、今から良いか?」
良いも何も……
ぽろぽろ流れる涙をそのままに、オルさんに飛びつきます。
「ありがとう!嬉しいです!」
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