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29、勇者と聖女の条件
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万能の使い手と呼ばれる大魔法使い…クラウス様は、当たり前のように私を聖女だと言いました。
「おい、ふざけるなよクラウス。なんでミラが聖女だってなるんだよ」
オルさんが怒りを抑えた声で詰め寄ります。私も訳が分かりません。
だって、勇者様に、あ、あ、愛を捧げるとか伝説にありましたし、捧げるとか…マール様に…あうう。
「うん。なんか赤くなっちゃってるところ悪いんだけど、とりあえずこの世界の『勇者』の定義について説明するね。
まず『勇者』っていう存在は、『人間』であること、『銀髪』であること、『聖剣』を持っていること、この三つが揃えば『勇者』になる。
銀髪の人間は精霊王から加護を受けている証で、魔力を持ってないのが特徴だ。エルフとかドワーフとか魔力を持たない種族になる。
『聖剣』は、精霊の愛し子である白金の髪を持つ女性と、精霊王がそろうと発現するものなんだ」
「それは……話を聞いて気づいたのですが、あの時に全魔力を代償にして私を助けたマール様は、意図せず精霊王様の加護を受け取れる存在となり、その場にいた私と精霊王様が揃ったことで『聖剣』が発言した……と?」
顔から血の気が引いていくのが分かります。
マール様は望まずに『勇者』になってしまった?私を助けなければマール様が苦しむ事もなかった?
「今度は青くなっちゃってるところ悪いんだけど、君のせいじゃない。神のせいだから。こういうシステム…仕組みを作ったのは神だからさ、自分を責めちゃダメだよ?
ちなみに君を助けられなかった場合『精霊達の嘆き』で、世界が半壊する可能性があったから。
老衰ならいいけど、理不尽に死んだらダメだよ。これからもね」
「ええええ!?そんな事言われても!!」
「それにしても、ミラちゃん頭いいよね。オルの親戚とは思えないよ」
「うるせぇよ!」
クラウス様は明るい口調でオルさんをからかうと、ふと表情を引き締めてマール様に手をかざします。
再び部屋の空気に圧力がかかり、マール様を包むような光が現れました。
「とりあえず結界を張って中の時間を遅くしたよ。命あるものの時間を完全に止めてしまうのは危険だからね。そしてこの呪いを鑑定したら、闇…というよりも魔王の闇魔法を感じるよ」
「魔王!?あいつまだ生きてんのか!?」
「正確には力の残滓って所かな。何かのアイテムに込めた力を、どっかのアホに使われたんじゃない?本当に肝心な所が抜けてるんだから…」
誰かを非難するように呟いて、クラウス様はどこからか紙とペンを取り出し、サラサラと書いて私に差し出します。
「これ、呪いを解くのに必要な素材。先に愚姉の洗脳解かないとだからついていけないけど、オル達は素材を揃えといてね。ハルノ村の精霊の森で全部揃うはずだよ。あとマールも連れて行くといい。王都は精霊が少ないから今のマールには辛いと思うよ」
「わかった」
「あと僕の転移魔法で送れないよ。マールの体に負担がかかりすぎるからね。オルなら何とか出来るでしょ?」
「……わかった」
オルさんに伝えるだけ伝えると、クラウス様は王女様を抱えて転移魔法を使い、城に戻りました。
残ったのは私と寝ているマール様と、決まり悪そうなオルさんです。
「オルさん?」
「……な、なんだ?」
「マール様をとにかく早く精霊の森に連れて行かないと…なのですが?」
「お、おう」
いつものオルさんじゃありません。変です。
「オルさん、何か私に隠してます?」
「いや、違う、その…タイミングがなかっただけで、今日言うつもりだったんだが色々あって…」
「それは分かりますから、とにかく急ぎましょう。どうやってハルノ村まで帰るんですか?」
「……あー……紹介したい奴がいるんだけどよ」
「まぁ!その方にお願いするんですね!どちらにいらっしゃるんですか?」
「……………今連れてくる。隣の宿にいる」
何だか不思議な態度のオルさんですが、今はその方にお願いするしかありません。
しばらく待つと、オルさんが戻ってきました。
オルさんの顔が真っ赤です!こんなオルさん初めて見ました!
「あれ?紹介したいという方は?」
大きい体のオルさんの後ろから、ひょこっと顔を覗かせた女の子。
黒髪に茶色の瞳。大きな目で私をまじまじと見つめてきます。
か……か……可愛いです!!!!
「おい、ふざけるなよクラウス。なんでミラが聖女だってなるんだよ」
オルさんが怒りを抑えた声で詰め寄ります。私も訳が分かりません。
だって、勇者様に、あ、あ、愛を捧げるとか伝説にありましたし、捧げるとか…マール様に…あうう。
「うん。なんか赤くなっちゃってるところ悪いんだけど、とりあえずこの世界の『勇者』の定義について説明するね。
まず『勇者』っていう存在は、『人間』であること、『銀髪』であること、『聖剣』を持っていること、この三つが揃えば『勇者』になる。
銀髪の人間は精霊王から加護を受けている証で、魔力を持ってないのが特徴だ。エルフとかドワーフとか魔力を持たない種族になる。
『聖剣』は、精霊の愛し子である白金の髪を持つ女性と、精霊王がそろうと発現するものなんだ」
「それは……話を聞いて気づいたのですが、あの時に全魔力を代償にして私を助けたマール様は、意図せず精霊王様の加護を受け取れる存在となり、その場にいた私と精霊王様が揃ったことで『聖剣』が発言した……と?」
顔から血の気が引いていくのが分かります。
マール様は望まずに『勇者』になってしまった?私を助けなければマール様が苦しむ事もなかった?
「今度は青くなっちゃってるところ悪いんだけど、君のせいじゃない。神のせいだから。こういうシステム…仕組みを作ったのは神だからさ、自分を責めちゃダメだよ?
ちなみに君を助けられなかった場合『精霊達の嘆き』で、世界が半壊する可能性があったから。
老衰ならいいけど、理不尽に死んだらダメだよ。これからもね」
「ええええ!?そんな事言われても!!」
「それにしても、ミラちゃん頭いいよね。オルの親戚とは思えないよ」
「うるせぇよ!」
クラウス様は明るい口調でオルさんをからかうと、ふと表情を引き締めてマール様に手をかざします。
再び部屋の空気に圧力がかかり、マール様を包むような光が現れました。
「とりあえず結界を張って中の時間を遅くしたよ。命あるものの時間を完全に止めてしまうのは危険だからね。そしてこの呪いを鑑定したら、闇…というよりも魔王の闇魔法を感じるよ」
「魔王!?あいつまだ生きてんのか!?」
「正確には力の残滓って所かな。何かのアイテムに込めた力を、どっかのアホに使われたんじゃない?本当に肝心な所が抜けてるんだから…」
誰かを非難するように呟いて、クラウス様はどこからか紙とペンを取り出し、サラサラと書いて私に差し出します。
「これ、呪いを解くのに必要な素材。先に愚姉の洗脳解かないとだからついていけないけど、オル達は素材を揃えといてね。ハルノ村の精霊の森で全部揃うはずだよ。あとマールも連れて行くといい。王都は精霊が少ないから今のマールには辛いと思うよ」
「わかった」
「あと僕の転移魔法で送れないよ。マールの体に負担がかかりすぎるからね。オルなら何とか出来るでしょ?」
「……わかった」
オルさんに伝えるだけ伝えると、クラウス様は王女様を抱えて転移魔法を使い、城に戻りました。
残ったのは私と寝ているマール様と、決まり悪そうなオルさんです。
「オルさん?」
「……な、なんだ?」
「マール様をとにかく早く精霊の森に連れて行かないと…なのですが?」
「お、おう」
いつものオルさんじゃありません。変です。
「オルさん、何か私に隠してます?」
「いや、違う、その…タイミングがなかっただけで、今日言うつもりだったんだが色々あって…」
「それは分かりますから、とにかく急ぎましょう。どうやってハルノ村まで帰るんですか?」
「……あー……紹介したい奴がいるんだけどよ」
「まぁ!その方にお願いするんですね!どちらにいらっしゃるんですか?」
「……………今連れてくる。隣の宿にいる」
何だか不思議な態度のオルさんですが、今はその方にお願いするしかありません。
しばらく待つと、オルさんが戻ってきました。
オルさんの顔が真っ赤です!こんなオルさん初めて見ました!
「あれ?紹介したいという方は?」
大きい体のオルさんの後ろから、ひょこっと顔を覗かせた女の子。
黒髪に茶色の瞳。大きな目で私をまじまじと見つめてきます。
か……か……可愛いです!!!!
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