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20、カーチスさんの受難
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突然、周りの空気が一気に凍ったかのような冷気。
言葉を発したカーチスさんは先程赤くなっていた顔が、一気に青ざめ小刻みに震え始めました。
ドアの前で固まる私の前に、マール様は一瞬の内に立ち塞がります。
「カーチス村長代理殿」
「は…はい…」
マール様のこんなに冷たい声は聞いたことがありません。足元しか見えないのにカーチスさんの震えが大きくなったのが分かりました。
「オルが決して漏らさぬよう、ずっと秘匿されていた彼女の事。まさか貴方が何かするわけ…」
「ありません!」
「もし周りでこの事が話題になっていたら…」
「私の命をもって償う所存!」
「よろしい」
ここで空気が一気に穏やかになりました。
何やらマール様の騎士時代の片鱗が見えた?ような気がします…怖かった…
いや、それどころではないです。
カーチスさんが凄く重要な事を言ってましたよ?
「カーチスさん…聖女様って、まさかお伽話に出てくる『勇者と聖女』の事ですか?」
「はっ…あの…」
しくじりました。またカーチスさんが固まってしまいます。
マール様が苦笑してため息をつきました。
「…しょうがないですね。そうですよ。お伽話の『聖女様』です」
「なぜ私が…?あ、まさか『緑の瞳に白金の髪をもつ』というくだりですか?」
お伽話にはこうあります。
_精霊に愛されし、銀髪の勇者
_精霊王より聖剣を賜り、魔を制するため旅立つ
_魔法使いと騎士を友とし
_白金の髪と緑の瞳を持つ聖女は勇者に愛を捧げる
_かくて勇者は魔の王をも制し
_世界は幸福に満ちる
「お伽話には『銀髪の勇者』とあります。十年前の大戦で殊勲をあげたと言われるのも『銀髪の勇者』と呼ばれてます」
「そんな…私そういう本読んだことないです!」
十年前の大戦の話は、王国誌にも大まかな事しか書かれていません。
村の貸本屋にその類の本は置いてなかったはずです。
ここまで盛り上がった話題なら、本になっているはずなのに…
「それはそうでしょう。勇者と一緒にいた騎士は、オルなんですから」
…………ええ!?
え?本当に?
あのオルさんが?
あのオルさんですよ?
そんなにすごい人だったのですか???
あまりのことに、驚きのあまり固まる私。
いや、確かに剣の腕も漂うオーラも、普通の人じゃないとは思っていましたが…まさかのまさかですよ!
マール様はカーチスさんに目線を送ると「その通りであります!」とカーチスさん。
「えっと…それは本当にびっくりなんですけど、それと本を置かないのは…」
「恥ずかしいじゃないですか。自分の英雄譚なんて」
「そんな…私読みたいです!ずっと親子のように暮らしていたオルさんが英雄の一人なんですよ!
あれ?もしかして村の人達も知らないとか?」
「一部の人は知ってるみたいですよ。僕とかね」
「そんな!ずるいです!ひどいです!…家族の私が知らないなんて…」
オルさんめ。帰ったら色々お仕置きなのです!!
私が怒りにふるふる震えていると、マール様がニッコリ微笑みました。
「そうだカーチスさん、ちょうどいい機会です。ひとつお願いがあるのですが…」
「はっ!!何なりと!!」
「その髪、銀髪にしてもらえません?」
後々カーチスさん曰く。
その時のマール様の極上の笑顔は、それはそれは綺麗な笑顔だった…と。
言葉を発したカーチスさんは先程赤くなっていた顔が、一気に青ざめ小刻みに震え始めました。
ドアの前で固まる私の前に、マール様は一瞬の内に立ち塞がります。
「カーチス村長代理殿」
「は…はい…」
マール様のこんなに冷たい声は聞いたことがありません。足元しか見えないのにカーチスさんの震えが大きくなったのが分かりました。
「オルが決して漏らさぬよう、ずっと秘匿されていた彼女の事。まさか貴方が何かするわけ…」
「ありません!」
「もし周りでこの事が話題になっていたら…」
「私の命をもって償う所存!」
「よろしい」
ここで空気が一気に穏やかになりました。
何やらマール様の騎士時代の片鱗が見えた?ような気がします…怖かった…
いや、それどころではないです。
カーチスさんが凄く重要な事を言ってましたよ?
「カーチスさん…聖女様って、まさかお伽話に出てくる『勇者と聖女』の事ですか?」
「はっ…あの…」
しくじりました。またカーチスさんが固まってしまいます。
マール様が苦笑してため息をつきました。
「…しょうがないですね。そうですよ。お伽話の『聖女様』です」
「なぜ私が…?あ、まさか『緑の瞳に白金の髪をもつ』というくだりですか?」
お伽話にはこうあります。
_精霊に愛されし、銀髪の勇者
_精霊王より聖剣を賜り、魔を制するため旅立つ
_魔法使いと騎士を友とし
_白金の髪と緑の瞳を持つ聖女は勇者に愛を捧げる
_かくて勇者は魔の王をも制し
_世界は幸福に満ちる
「お伽話には『銀髪の勇者』とあります。十年前の大戦で殊勲をあげたと言われるのも『銀髪の勇者』と呼ばれてます」
「そんな…私そういう本読んだことないです!」
十年前の大戦の話は、王国誌にも大まかな事しか書かれていません。
村の貸本屋にその類の本は置いてなかったはずです。
ここまで盛り上がった話題なら、本になっているはずなのに…
「それはそうでしょう。勇者と一緒にいた騎士は、オルなんですから」
…………ええ!?
え?本当に?
あのオルさんが?
あのオルさんですよ?
そんなにすごい人だったのですか???
あまりのことに、驚きのあまり固まる私。
いや、確かに剣の腕も漂うオーラも、普通の人じゃないとは思っていましたが…まさかのまさかですよ!
マール様はカーチスさんに目線を送ると「その通りであります!」とカーチスさん。
「えっと…それは本当にびっくりなんですけど、それと本を置かないのは…」
「恥ずかしいじゃないですか。自分の英雄譚なんて」
「そんな…私読みたいです!ずっと親子のように暮らしていたオルさんが英雄の一人なんですよ!
あれ?もしかして村の人達も知らないとか?」
「一部の人は知ってるみたいですよ。僕とかね」
「そんな!ずるいです!ひどいです!…家族の私が知らないなんて…」
オルさんめ。帰ったら色々お仕置きなのです!!
私が怒りにふるふる震えていると、マール様がニッコリ微笑みました。
「そうだカーチスさん、ちょうどいい機会です。ひとつお願いがあるのですが…」
「はっ!!何なりと!!」
「その髪、銀髪にしてもらえません?」
後々カーチスさん曰く。
その時のマール様の極上の笑顔は、それはそれは綺麗な笑顔だった…と。
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