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15、ミルク煮の師匠
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喫茶店の店主らしき男性は、穏やかな笑顔を浮かべてゆっくりとお辞儀をします。
「いらっしゃいませ。森の喫茶店へようこそ」
「森の喫茶店…確かに森の雰囲気ですね」
「マスター、彼女はミラさん。僕のお世話係なんです」
「お世話係…マールの弟子なら優秀なのかな?」
「そ、そんな事…え?弟子?」
なんか前にもそんな事を言われたような…???
「薬師の世話係は、弟子と混同されるんですよ。気にしないでください」
綺麗に整った顔に艶やかな笑みを浮かべる薬師様。なぜ今そんな笑顔ですか。色気がダダ漏れですか。
「マスター僕はコーヒーを。ミラさんは…ミルクティーで良いですか?」
「はい」
「かしこまりました。少々お待ちを」
店主…マスターは再びお辞儀をし、カウンターの中へ移動します。
この豆をひき、サイフォンに火を入れて準備をしています。
コーヒーは苦手ですが香りは好きです。ランプのオレンジ色とコーヒーの香り、サイフォンの水のコポコポ鳴る音が、何だか幻想的な風景に見えてきます。
「僕はマスターの弟子なんですよ。実はあのミルク煮も、マスター直伝なんです」
「え、あのすごく美味しいミルク煮が?」
「おや、マールは今もちゃんと作っているのだね」
コーヒーとミルクティーを出しながら、マスターは嬉しそうに話します。
「ミルク煮はメニューに無いのだけれど、マールが元気の無い時に一度だけ出したら『弟子になるから教えてくれ』って、その理由が」
「マスター!」
薬師様が赤くなってマスターの話を遮ります。
マスターはクスクス笑いながら謝ると、ミルクティーをポットから洗練された動作でカップに注ぎました。
温かいミルクに茶葉を煮出して作ってくれてて、砂糖ではなく蜂蜜を添えてあります。
蜂蜜の柔らかい甘みが、温かいミルクティーにちょうど良く、一口飲むとホッとしました。
「やぁ、短い間とはいえ弟子だったマールが、初めて女の子を連れて来るなんて、何だか感慨深いよ」
「マスター…だからそういうのは…」
顔を赤くする薬師様、もしやマスター最強説があるかもですね。
初めて連れてきた女の子が私…?
すごく嬉しいと思いながらも、薬師様なら昔からモテモテだったのではないのでしょうか。
騎士様だった頃の薬師様…きっときりりとした、女の子の憧れの象徴みたいな…もちろん今も素敵ですけど!
や、好きとか、そうじゃなくて一般論ですよ一般論!
なぜか脳内で言い訳を考えてます。何でしょう、今日はなんだか変な思考に行きがちです…。
「ともかく、ここに連れて来れたので良かったです。少し休んだら出ますよ」
「おや、相変わらず慌ただしいね。次はいつになることやら…」
「マスターがミラさんに変な事を言うからです!」
「ははっ、いやすまない。ミラさん、よろしければまた来てください」
「はい!」
今度来た時は、騎士様だった頃の薬師様の事を聞きたいです。
許してくれれば…ですけど。薬師様が。
…無理ですかねー。
この後は雑貨屋さんとか布屋さんとか数軒見て、欲しかった布を手に入れた私はホクホクでした。
王都のファッションに触発された私は、帰ってから流行りのデザインの服を作ろうと思ったのです。
村にいる友達のアンにも作ってあげたいです。気に入ってくれると嬉しいのですが…。
王都の出口からしばらく歩いていると、大きいシロさんがきてくれました。
馬車で一週間以上かかる道のりは、シロさんの力で半日くらいです。
精霊って、本当にすごいです。
「ミラさん」
「何ですか薬師様?」
「僕の…世話係って色々大変だろうと思いますが、これからも…」
言葉に詰まる薬師様。
たぶん、あの王女様の件が尾をひいてますね。
「私には力も知識もないですが…薬師様のお世話係として、これからも頑張りたいです!」
私の気持ちを一生懸命、笑顔で伝えます。
「ミラさん…!!」
薬師様の太陽のような笑顔と、その後にギュッと抱きしめられて、私はハルノ村まで記憶がほとんど無いまま帰宅をすることになるのでした。
ひどいです薬師様…。
「いらっしゃいませ。森の喫茶店へようこそ」
「森の喫茶店…確かに森の雰囲気ですね」
「マスター、彼女はミラさん。僕のお世話係なんです」
「お世話係…マールの弟子なら優秀なのかな?」
「そ、そんな事…え?弟子?」
なんか前にもそんな事を言われたような…???
「薬師の世話係は、弟子と混同されるんですよ。気にしないでください」
綺麗に整った顔に艶やかな笑みを浮かべる薬師様。なぜ今そんな笑顔ですか。色気がダダ漏れですか。
「マスター僕はコーヒーを。ミラさんは…ミルクティーで良いですか?」
「はい」
「かしこまりました。少々お待ちを」
店主…マスターは再びお辞儀をし、カウンターの中へ移動します。
この豆をひき、サイフォンに火を入れて準備をしています。
コーヒーは苦手ですが香りは好きです。ランプのオレンジ色とコーヒーの香り、サイフォンの水のコポコポ鳴る音が、何だか幻想的な風景に見えてきます。
「僕はマスターの弟子なんですよ。実はあのミルク煮も、マスター直伝なんです」
「え、あのすごく美味しいミルク煮が?」
「おや、マールは今もちゃんと作っているのだね」
コーヒーとミルクティーを出しながら、マスターは嬉しそうに話します。
「ミルク煮はメニューに無いのだけれど、マールが元気の無い時に一度だけ出したら『弟子になるから教えてくれ』って、その理由が」
「マスター!」
薬師様が赤くなってマスターの話を遮ります。
マスターはクスクス笑いながら謝ると、ミルクティーをポットから洗練された動作でカップに注ぎました。
温かいミルクに茶葉を煮出して作ってくれてて、砂糖ではなく蜂蜜を添えてあります。
蜂蜜の柔らかい甘みが、温かいミルクティーにちょうど良く、一口飲むとホッとしました。
「やぁ、短い間とはいえ弟子だったマールが、初めて女の子を連れて来るなんて、何だか感慨深いよ」
「マスター…だからそういうのは…」
顔を赤くする薬師様、もしやマスター最強説があるかもですね。
初めて連れてきた女の子が私…?
すごく嬉しいと思いながらも、薬師様なら昔からモテモテだったのではないのでしょうか。
騎士様だった頃の薬師様…きっときりりとした、女の子の憧れの象徴みたいな…もちろん今も素敵ですけど!
や、好きとか、そうじゃなくて一般論ですよ一般論!
なぜか脳内で言い訳を考えてます。何でしょう、今日はなんだか変な思考に行きがちです…。
「ともかく、ここに連れて来れたので良かったです。少し休んだら出ますよ」
「おや、相変わらず慌ただしいね。次はいつになることやら…」
「マスターがミラさんに変な事を言うからです!」
「ははっ、いやすまない。ミラさん、よろしければまた来てください」
「はい!」
今度来た時は、騎士様だった頃の薬師様の事を聞きたいです。
許してくれれば…ですけど。薬師様が。
…無理ですかねー。
この後は雑貨屋さんとか布屋さんとか数軒見て、欲しかった布を手に入れた私はホクホクでした。
王都のファッションに触発された私は、帰ってから流行りのデザインの服を作ろうと思ったのです。
村にいる友達のアンにも作ってあげたいです。気に入ってくれると嬉しいのですが…。
王都の出口からしばらく歩いていると、大きいシロさんがきてくれました。
馬車で一週間以上かかる道のりは、シロさんの力で半日くらいです。
精霊って、本当にすごいです。
「ミラさん」
「何ですか薬師様?」
「僕の…世話係って色々大変だろうと思いますが、これからも…」
言葉に詰まる薬師様。
たぶん、あの王女様の件が尾をひいてますね。
「私には力も知識もないですが…薬師様のお世話係として、これからも頑張りたいです!」
私の気持ちを一生懸命、笑顔で伝えます。
「ミラさん…!!」
薬師様の太陽のような笑顔と、その後にギュッと抱きしめられて、私はハルノ村まで記憶がほとんど無いまま帰宅をすることになるのでした。
ひどいです薬師様…。
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