1 / 39
まぁ、普通の人間でした。
しおりを挟む
転生というか、魂の移し替えというか、融合というか。
俺、宮田一之介は地球ではない『異世界』で生きることになった。
とにかくクラウス・ドライ・エルトーデという名の少年は、生命力…生きる気力のようなものが少ない人間だったらしい。
それに比べて俺は「生きる!生きるよ!熱くなれよ!」なんて言えるほど暑苦しく生きてきた訳でもないし、ごく普通のサラリーマンの父とパートで働く母と小生意気な妹と住む、ごく普通の高校生だった。
「だった」と言うのは、まぁ過去の話だからで。
高校三年の大学受験追い込みの夏休み中に、暴漢からクラスメイトの女子を助けようとして無茶をした。
犯人は逃げたから、女子は多分無事だった…と思う。
後悔せずに反省はするタイプの俺だけど、死んだら元も子もない訳で…親には申し訳ない事をしたと思っている。本当に。
んで、話を元に戻すと、本来ならもっと優しい世界に置く魂を、うっかり厳しい世界に置いてしまったと『渡りの神』を名乗る少年が言った。
生命の神の仕訳ミスがあって、世界を『渡る』少年…神が尻拭いをしているそうだ。
「君の魂は強いんだよ」
「はぁ」
黒髪に真っ赤な瞳、Tシャツジーパンという、なんか適当な格好をした『神』を名乗る少年は言い切った。
強い魂ってなんだ?
「うん。そもそも君の魂はそっちじゃなく、こっちの世界のものだったわけ」
「そっちとかこっちとかは分かりませんが、とにかく俺はどうなるんすか?」
「まぁ、焦らないでよ。加護とかスキルとか付けたいでしょ?そっちで言う『チート』ってヤツだよ」
「え、いらないっすよ。そんなん付けられたら面倒くさそう…」
「問答無用で付けるけどね?」
「エー…」
マジか…やだなそういうの。魔王と戦えとか言われそうじゃん。
「そんな事言わないよ。戦う勇者の補佐をして欲しいだけで」
「それが戦えってコトじゃねーか!ざっけんな!あと心読むな!」
「神だからしょうがないよ。お茶の子さいさいだよ」
古っ。いや、それはともかくとして。
なんでそんな事になるんだ?勇者の補佐?もしやファンタジーな世界なのか?
「僕の世界はそっちで言う剣と魔法のファンタジーな世界ってやつで、精霊に祝福された勇者が魔王を倒すっていう伝説…戯曲の神がそういうの好きでさ…その勇者が生まれたんだよ。で、補佐役の子がこんなんなっちゃってさ。つーか、そもそも君がやる予定だったんだよ?クラウスくんだった子も頑張ろうとしてたみたいだけど、六才で力尽きちゃって…」
そう言われると、何だか悪いことをしている気分になるな…クソ。
「…わかったよ。んでもさ、魂を間違えたのはそっちなんだから、融通は色々聞いてくれよ」
「もちろん。まずは君の日本の家族には悲しみの感情を薄めておく。君を思い出すと安らぐ気持ちになるように感情の変換をする」
こいつ…俺のやって欲しいことを先回りで…でも有難いな。
「君の死は純粋な事故で僕らは関与してなかったけど、それくらいのケアは出来る。あとは加護ね。まずは生命の神、僕が関与したから渡りの神、あと君の勇気に感銘した勇気の神と力の神、地球の人間を守った感謝でガイアの神、ガイアは地球の神だけど二世界をまたぐ人生だからね」
「え、俺って死んだんじゃ?」
「正確には魂は死んでないよ。君のは強いからね。今までの記憶は持ったままクラウス君として生きてもらう」
「クラウスはどうなるんだ?」
「クラウス君はやり遂げたから普通に輪廻に乗って生まれ変わるよ。でも経験と知識は君に渡すって。君が違和感なく世界に溶け込めるように。よろしくって言ってた。彼は彼なりに幸せだったって」
「…そっか。なんか…なんて言えば良いのか分からないけど、次の人生は楽で幸せなのにしてやってよ」
「もちろん。あ、クラウス君の加護も君に付くよ。知恵の神と豊穣の神。ラッキーだね魔法使うの楽だよ」
「はぁ…」
加護の大売り出しだな。
「さて!もういいかな!特典として自分のステータスをいつでも見れるようにしておくよ!役立ててね!」
少年は明るく言い放つと、クルッと一回転して宙に浮いた。
いや、そもそもずっと浮いた状態だったのかもしれない。
「では、良い異世界人生を送ってね!」
視界がグラリと揺れて、そのまま俺は落ちていった。
異世界へ。
俺、宮田一之介は地球ではない『異世界』で生きることになった。
とにかくクラウス・ドライ・エルトーデという名の少年は、生命力…生きる気力のようなものが少ない人間だったらしい。
それに比べて俺は「生きる!生きるよ!熱くなれよ!」なんて言えるほど暑苦しく生きてきた訳でもないし、ごく普通のサラリーマンの父とパートで働く母と小生意気な妹と住む、ごく普通の高校生だった。
「だった」と言うのは、まぁ過去の話だからで。
高校三年の大学受験追い込みの夏休み中に、暴漢からクラスメイトの女子を助けようとして無茶をした。
犯人は逃げたから、女子は多分無事だった…と思う。
後悔せずに反省はするタイプの俺だけど、死んだら元も子もない訳で…親には申し訳ない事をしたと思っている。本当に。
んで、話を元に戻すと、本来ならもっと優しい世界に置く魂を、うっかり厳しい世界に置いてしまったと『渡りの神』を名乗る少年が言った。
生命の神の仕訳ミスがあって、世界を『渡る』少年…神が尻拭いをしているそうだ。
「君の魂は強いんだよ」
「はぁ」
黒髪に真っ赤な瞳、Tシャツジーパンという、なんか適当な格好をした『神』を名乗る少年は言い切った。
強い魂ってなんだ?
「うん。そもそも君の魂はそっちじゃなく、こっちの世界のものだったわけ」
「そっちとかこっちとかは分かりませんが、とにかく俺はどうなるんすか?」
「まぁ、焦らないでよ。加護とかスキルとか付けたいでしょ?そっちで言う『チート』ってヤツだよ」
「え、いらないっすよ。そんなん付けられたら面倒くさそう…」
「問答無用で付けるけどね?」
「エー…」
マジか…やだなそういうの。魔王と戦えとか言われそうじゃん。
「そんな事言わないよ。戦う勇者の補佐をして欲しいだけで」
「それが戦えってコトじゃねーか!ざっけんな!あと心読むな!」
「神だからしょうがないよ。お茶の子さいさいだよ」
古っ。いや、それはともかくとして。
なんでそんな事になるんだ?勇者の補佐?もしやファンタジーな世界なのか?
「僕の世界はそっちで言う剣と魔法のファンタジーな世界ってやつで、精霊に祝福された勇者が魔王を倒すっていう伝説…戯曲の神がそういうの好きでさ…その勇者が生まれたんだよ。で、補佐役の子がこんなんなっちゃってさ。つーか、そもそも君がやる予定だったんだよ?クラウスくんだった子も頑張ろうとしてたみたいだけど、六才で力尽きちゃって…」
そう言われると、何だか悪いことをしている気分になるな…クソ。
「…わかったよ。んでもさ、魂を間違えたのはそっちなんだから、融通は色々聞いてくれよ」
「もちろん。まずは君の日本の家族には悲しみの感情を薄めておく。君を思い出すと安らぐ気持ちになるように感情の変換をする」
こいつ…俺のやって欲しいことを先回りで…でも有難いな。
「君の死は純粋な事故で僕らは関与してなかったけど、それくらいのケアは出来る。あとは加護ね。まずは生命の神、僕が関与したから渡りの神、あと君の勇気に感銘した勇気の神と力の神、地球の人間を守った感謝でガイアの神、ガイアは地球の神だけど二世界をまたぐ人生だからね」
「え、俺って死んだんじゃ?」
「正確には魂は死んでないよ。君のは強いからね。今までの記憶は持ったままクラウス君として生きてもらう」
「クラウスはどうなるんだ?」
「クラウス君はやり遂げたから普通に輪廻に乗って生まれ変わるよ。でも経験と知識は君に渡すって。君が違和感なく世界に溶け込めるように。よろしくって言ってた。彼は彼なりに幸せだったって」
「…そっか。なんか…なんて言えば良いのか分からないけど、次の人生は楽で幸せなのにしてやってよ」
「もちろん。あ、クラウス君の加護も君に付くよ。知恵の神と豊穣の神。ラッキーだね魔法使うの楽だよ」
「はぁ…」
加護の大売り出しだな。
「さて!もういいかな!特典として自分のステータスをいつでも見れるようにしておくよ!役立ててね!」
少年は明るく言い放つと、クルッと一回転して宙に浮いた。
いや、そもそもずっと浮いた状態だったのかもしれない。
「では、良い異世界人生を送ってね!」
視界がグラリと揺れて、そのまま俺は落ちていった。
異世界へ。
0
お気に入りに追加
537
あなたにおすすめの小説
あの、神様、普通の家庭に転生させてって言いましたよね?なんか、森にいるんですけど.......。
▽空
ファンタジー
テンプレのトラックバーンで転生したよ......
どうしようΣ( ̄□ ̄;)
とりあえず、今世を楽しんでやる~!!!!!!!!!
R指定は念のためです。
マイペースに更新していきます。
異世界転生したのだけれど。〜チート隠して、目指せ! のんびり冒険者 (仮)
ひなた
ファンタジー
…どうやら私、神様のミスで死んだようです。
流行りの異世界転生?と内心(神様にモロバレしてたけど)わくわくしてたら案の定!
剣と魔法のファンタジー世界に転生することに。
せっかくだからと魔力多めにもらったら、多すぎた!?
オマケに最後の最後にまたもや神様がミス!
世界で自分しかいない特殊個体の猫獣人に
なっちゃって!?
規格外すぎて親に捨てられ早2年経ちました。
……路上生活、そろそろやめたいと思います。
異世界転生わくわくしてたけど
ちょっとだけ神様恨みそう。
脱路上生活!がしたかっただけなのに
なんで無双してるんだ私???
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
神に同情された転生者物語
チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。
すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情された異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。
悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。
神のしごきに耐え抜いて武神へと到りました
江守 桜
ファンタジー
主人公:剣崎 白 (けんざき はく)は気付いたら白い空間にいた。
そこには[神導神リーデスト]と名乗る神様がいた。「お主はもとの世界で、死んでしまった。しかし、お主は異世界で第2の人生を送るか記憶を引き継がぬまま転生することができる。異世界に行くのならお主に力を授けよう」「じゃあ、異世界にいくから俺に稽古をつけてくれ」「!!?」
出来る限り投稿していきたいです!
誤字脱字があれば教えてほしいです!
更新できるときは18時30分に更新します。
R15は念のため
召喚されたけど不要だと殺され、神様が転生さしてくれたのに女神様に呪われました
桜月雪兎
ファンタジー
召喚に巻き込まれてしまった沢口香織は不要な存在として殺されてしまった。
召喚された先で殺された為、元の世界にも戻れなく、さ迷う魂になってしまったのを不憫に思った神様によって召喚された世界に転生することになった。
転生するために必要な手続きをしていたら、偶然やって来て神様と楽しそうに話している香織を見て嫉妬した女神様に呪いをかけられてしまった。
それでも前向きに頑張り、楽しむ香織のお話。
転生したらチートでした
ユナネコ
ファンタジー
通り魔に刺されそうになっていた親友を助けたら死んじゃってまさかの転生!?物語だけの話だと思ってたけど、まさかほんとにあるなんて!よし、第二の人生楽しむぞー!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる