65 / 68
その後……辺境の医術師の話と《蘇芳プロジェクト》
番外編……乳母のノエルの夫
しおりを挟む
ルナリアの乳母で現在は彩映の侍女のノエル。
そして、他に数人の侍女、メイドはそのまま仕えているのだが、最近、ミルと遊ぶようになった。
ミルとはノエルの子供で、そしてルナリアの乳姉妹。
でも、かなりサバサバしたキップのいい姉御肌で、その上、かなり快活……ついでに脳筋に近い少年らしい少年……のような少女だった。
この二人の紹介をしたが、今日はその二人の夫から始まるお話。
ノエルの夫のケイティは見た目強面なのだが結構少女趣味で、ミルをなんとか可愛らしく育てようとあの手この手を尽くしたのだが……。
「なんで、うちの子はこんなに乱暴者に……小さい頃からリボンも人形も嫌だ嫌だっていうんですよ! スカートは絶対に履きたくないっていうし! それに比べて彩映姫の可愛いこと……最近のツインテールにしているけれど、本当によくお似合いです! 歩くたびにクルンクルンはねて、嬉しそうだ」
「だろう? うちの子可愛い! でも、ケイティの娘のミルも可愛いだろ? 昔は髪を伸ばしたくないって言ってたのに、最近は伸ばしてポニーテールにしてる」
千夜はルナリアが誕生前から側近となり、その後、少々こだわりの強いオタク気質の自分のデザインを認めてくれ、それとなく修正までするケイティにお茶のカップを差し出した。
「あ、あれは、髪の毛をそのままにするとミルが気になってうるさいから切りたくなるみたいで、姫がそれなら高いところに結んでしまえばいいって。『ミルちゃんの髪綺麗ね! 真っ直ぐで綺麗でいいなぁ。彩映は、ぷわんぷわんしてるのよ。あ、ミルちゃんの髪、彩映が結んであげる!』って、リボンも色違いとか選んでくださったみたいです。今日のリボンもお揃いですよ」
「うちの子、結構ふわふわの髪気になってるみたいだ。それに目の色も淡い色だからなぁ……」
「でも、髪や瞳の色はシュウさまに似たんでしょう。隔世遺伝って普通ですもんね。それにお顔はどこから見てもリヴィさまだし」
ちなみにリヴィというのは千夜の母の瑞波のこと。
瑞波という発音がシェールドの人間には発音が難しいらしく、リヴィエールと言う名を公的に用いており、それを縮めてリヴィと呼ばれているのだ。
「うん、母に似てる……日向夏はものすごく嬉しそうで……『うちの娘、ものすっごく可愛いの! でも、ちょっとちぃの考える服が凝りすぎるから、今度ラファくんに相談しようと思うわ! 元々可愛い子なのよ! なのに、デレデレドロドロ可愛い服より、ちょっと清楚系にして靴下に可愛いものをつけるとか小物に凝るのもいいじゃない? 今度月歩と考えちゃうの!』だって。日向夏、彩映の小さい頃から可愛い可愛いって言ってて……まぁ、アレのせいで会えなかったというか、アレに会いたくなかったからだけど」
「まぁなぁ……姫って生まれ間違ってるよなって思ってた。あ、ちぃの双子の姉上の二葉さま……だよな? あの方にお会いしたときはギョッとしたけど……姫成長したらこんなふうになるんだとか思った」
「あぁ、ふぅちゃんにそっくりだろ? 最近レクと一緒に遊びに来たときは、彩映と3人親子みたいで嫉妬した~」
「レクも姫大好きだもんな……」
ケイティはため息をつく。ちぃもそうだが、ケイティの周りは愛情過多が多い。
まぁ、最初緊急に異動を命ぜられ、そのため忙しく、一人っ子で兄弟もおらず、子育てに慣れていなかったケイティだが、つくことになった千夜がかなりの子煩悩で、息子の千夏を時間を見つけては遊ばせ、そして忙しいはずなのにケイティに、
「ケイティ、君の嫁さんのところにこれ持って行って。で、返事もらえるまで帰ってこなくていいよ」
と手紙を押しつけ……お菓子や何か食べ物も持っていくようにいうこともあった。
後で聞くと、乳の出が良くなる食べ物だったり、疲労回復の飲み物やお菓子。
そして【お疲れ様、いつもありがとう】という小さなメモや、ケイティが忙しいのを謝罪する文言が書いてあったりしていたという。
どんだけ気遣いしているんだと呆れるほどだったりする。
呆れつつも、荷物を持って行くと元気いっぱいのミルもいたし、その横でくぅくぅ眠る小さなお姫様もいた。
乳母でもある妻やその同僚たちと話しつつ、赤ん坊を抱かせてもらったり、時々は女性には無理な荷物を代わりに運んだりと手伝っていると赤ん坊にも慣れ、疲れて眠る妻の代わりにミルを抱っこして散歩に行ったり、夜のミルクは担当できるようになった。
今更思えば千夜のおかげかもしれない。
「本当、一つだけ言っとくが、姫が可愛いからってあんまりあれダメ、これダメって言うなよ? まぁ、危険なことには晒さないように俺たちを含め周囲が見てるんだから、ある程度離れて見守ってやれ、幾ら身体が弱いって言っても、心根は真っ直ぐだし、賢くて優しく慈悲深い……まぁ、お前はちょっと離れるべきだ。特に千夏坊ちゃんはもうそろそろ自立心が強くなる。嫌いだって言われる前に一歩でいいから引くのを覚えろよ」
「それができるならやってる……」
自分が過干渉すぎる父親だと十分理解している千夜は項垂れる。
もっと大らかに見守る父になりたいもんだと思っているが、この性格は治らない……。
父親の苦悩が去るのはきっと子供の独立を見守って……いや死ぬまで無理かもと思う千夜だった。
悩む千夜を尻目に、ケイティは自分の娘と彩映に両腕を温める円筒形のマフを買いに行こうと思うのだった。
そして、他に数人の侍女、メイドはそのまま仕えているのだが、最近、ミルと遊ぶようになった。
ミルとはノエルの子供で、そしてルナリアの乳姉妹。
でも、かなりサバサバしたキップのいい姉御肌で、その上、かなり快活……ついでに脳筋に近い少年らしい少年……のような少女だった。
この二人の紹介をしたが、今日はその二人の夫から始まるお話。
ノエルの夫のケイティは見た目強面なのだが結構少女趣味で、ミルをなんとか可愛らしく育てようとあの手この手を尽くしたのだが……。
「なんで、うちの子はこんなに乱暴者に……小さい頃からリボンも人形も嫌だ嫌だっていうんですよ! スカートは絶対に履きたくないっていうし! それに比べて彩映姫の可愛いこと……最近のツインテールにしているけれど、本当によくお似合いです! 歩くたびにクルンクルンはねて、嬉しそうだ」
「だろう? うちの子可愛い! でも、ケイティの娘のミルも可愛いだろ? 昔は髪を伸ばしたくないって言ってたのに、最近は伸ばしてポニーテールにしてる」
千夜はルナリアが誕生前から側近となり、その後、少々こだわりの強いオタク気質の自分のデザインを認めてくれ、それとなく修正までするケイティにお茶のカップを差し出した。
「あ、あれは、髪の毛をそのままにするとミルが気になってうるさいから切りたくなるみたいで、姫がそれなら高いところに結んでしまえばいいって。『ミルちゃんの髪綺麗ね! 真っ直ぐで綺麗でいいなぁ。彩映は、ぷわんぷわんしてるのよ。あ、ミルちゃんの髪、彩映が結んであげる!』って、リボンも色違いとか選んでくださったみたいです。今日のリボンもお揃いですよ」
「うちの子、結構ふわふわの髪気になってるみたいだ。それに目の色も淡い色だからなぁ……」
「でも、髪や瞳の色はシュウさまに似たんでしょう。隔世遺伝って普通ですもんね。それにお顔はどこから見てもリヴィさまだし」
ちなみにリヴィというのは千夜の母の瑞波のこと。
瑞波という発音がシェールドの人間には発音が難しいらしく、リヴィエールと言う名を公的に用いており、それを縮めてリヴィと呼ばれているのだ。
「うん、母に似てる……日向夏はものすごく嬉しそうで……『うちの娘、ものすっごく可愛いの! でも、ちょっとちぃの考える服が凝りすぎるから、今度ラファくんに相談しようと思うわ! 元々可愛い子なのよ! なのに、デレデレドロドロ可愛い服より、ちょっと清楚系にして靴下に可愛いものをつけるとか小物に凝るのもいいじゃない? 今度月歩と考えちゃうの!』だって。日向夏、彩映の小さい頃から可愛い可愛いって言ってて……まぁ、アレのせいで会えなかったというか、アレに会いたくなかったからだけど」
「まぁなぁ……姫って生まれ間違ってるよなって思ってた。あ、ちぃの双子の姉上の二葉さま……だよな? あの方にお会いしたときはギョッとしたけど……姫成長したらこんなふうになるんだとか思った」
「あぁ、ふぅちゃんにそっくりだろ? 最近レクと一緒に遊びに来たときは、彩映と3人親子みたいで嫉妬した~」
「レクも姫大好きだもんな……」
ケイティはため息をつく。ちぃもそうだが、ケイティの周りは愛情過多が多い。
まぁ、最初緊急に異動を命ぜられ、そのため忙しく、一人っ子で兄弟もおらず、子育てに慣れていなかったケイティだが、つくことになった千夜がかなりの子煩悩で、息子の千夏を時間を見つけては遊ばせ、そして忙しいはずなのにケイティに、
「ケイティ、君の嫁さんのところにこれ持って行って。で、返事もらえるまで帰ってこなくていいよ」
と手紙を押しつけ……お菓子や何か食べ物も持っていくようにいうこともあった。
後で聞くと、乳の出が良くなる食べ物だったり、疲労回復の飲み物やお菓子。
そして【お疲れ様、いつもありがとう】という小さなメモや、ケイティが忙しいのを謝罪する文言が書いてあったりしていたという。
どんだけ気遣いしているんだと呆れるほどだったりする。
呆れつつも、荷物を持って行くと元気いっぱいのミルもいたし、その横でくぅくぅ眠る小さなお姫様もいた。
乳母でもある妻やその同僚たちと話しつつ、赤ん坊を抱かせてもらったり、時々は女性には無理な荷物を代わりに運んだりと手伝っていると赤ん坊にも慣れ、疲れて眠る妻の代わりにミルを抱っこして散歩に行ったり、夜のミルクは担当できるようになった。
今更思えば千夜のおかげかもしれない。
「本当、一つだけ言っとくが、姫が可愛いからってあんまりあれダメ、これダメって言うなよ? まぁ、危険なことには晒さないように俺たちを含め周囲が見てるんだから、ある程度離れて見守ってやれ、幾ら身体が弱いって言っても、心根は真っ直ぐだし、賢くて優しく慈悲深い……まぁ、お前はちょっと離れるべきだ。特に千夏坊ちゃんはもうそろそろ自立心が強くなる。嫌いだって言われる前に一歩でいいから引くのを覚えろよ」
「それができるならやってる……」
自分が過干渉すぎる父親だと十分理解している千夜は項垂れる。
もっと大らかに見守る父になりたいもんだと思っているが、この性格は治らない……。
父親の苦悩が去るのはきっと子供の独立を見守って……いや死ぬまで無理かもと思う千夜だった。
悩む千夜を尻目に、ケイティは自分の娘と彩映に両腕を温める円筒形のマフを買いに行こうと思うのだった。
0
お気に入りに追加
179
あなたにおすすめの小説

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
冷徹宰相様の嫁探し
菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。
その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。
マレーヌは思う。
いやいやいやっ。
私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!?
実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。
(「小説家になろう」でも公開しています)
若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!
古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。
そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は?
*カクヨム様で先行掲載しております

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~
みつまめ つぼみ
ファンタジー
17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。
記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。
そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。
「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」
恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!
伯爵令嬢の秘密の知識
シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。

1人生活なので自由な生き方を謳歌する
さっちさん
ファンタジー
大商会の娘。
出来損ないと家族から追い出された。
唯一の救いは祖父母が家族に内緒で譲ってくれた小さな町のお店だけ。
これからはひとりで生きていかなくては。
そんな少女も実は、、、
1人の方が気楽に出来るしラッキー
これ幸いと実家と絶縁。1人生活を満喫する。

【完結済】隣国でひっそりと子育てしている私のことを、執着心むき出しの初恋が追いかけてきます
鳴宮野々花@書籍2作品発売中
恋愛
一夜の過ちだなんて思いたくない。私にとって彼とのあの夜は、人生で唯一の、最良の思い出なのだから。彼のおかげで、この子に会えた────
私、この子と生きていきますっ!!
シアーズ男爵家の末娘ティナレインは、男爵が隣国出身のメイドに手をつけてできた娘だった。ティナレインは隣国の一部の者が持つ魔力(治癒術)を微力ながら持っており、そのため男爵夫人に一層疎まれ、男爵家後継ぎの兄と、世渡り上手で気の強い姉の下で、影薄く過ごしていた。
幼いティナレインは、優しい侯爵家の子息セシルと親しくなっていくが、息子がティナレインに入れ込みすぎていることを嫌う侯爵夫人は、シアーズ男爵夫人に苦言を呈す。侯爵夫人の機嫌を損ねることが怖い義母から強く叱られ、ティナレインはセシルとの接触を禁止されてしまう。
時を経て、貴族学園で再会する二人。忘れられなかったティナへの想いが燃え上がるセシルは猛アタックするが、ティナは自分の想いを封じ込めるように、セシルを避ける。
やがてティナレインは、とある商会の成金経営者と婚約させられることとなり、学園を中退。想い合いながらも会うことすら叶わなくなった二人だが、ある夜偶然の再会を果たす。
それから数ヶ月。結婚を目前に控えたティナレインは、隣国へと逃げる決意をした。自分のお腹に宿っていることに気付いた、大切な我が子を守るために。
けれど、名を偽り可愛い我が子の子育てをしながら懸命に生きていたティナレインと、彼女を諦めきれないセシルは、ある日運命的な再会を果たし────
生まれ育った屋敷で冷遇され続けた挙げ句、最低な成金ジジイと結婚させられそうになったヒロインが、我が子を守るために全てを捨てて新しい人生を切り拓いていこうと奮闘する物語です。
※いつもの完全オリジナルファンタジー世界の物語です。全てがファンタジーです。
※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる