59 / 68
その後……辺境の医術師の話と《蘇芳プロジェクト》
その後……ちぃちゃんの独り言2
しおりを挟む
《ちぃちゃん目線》
赤ん坊の話
~*~~*~~*~
「結と紬。縁を結び、未来を紡ぐなんてどうだろう。この子たちにふさわしいと思う」
えっへん!
と胸を張ってるが、じい様……何で、猫の着ぐるみなんだ?
俺は一応、成人用はジャケットしか用意してないぞ。
とつい聞いてしまった。
すると、
「おそろいも似合いますよと、もらったのだ。普段はパジャマにしているが、今日は慌てて着替えていない」
「姉さんだな……」
兄の嫁作なのか……めちゃくちゃ才能あるのに、微妙に自分の欲望に忠実な人だ。
しかも、ひ孫や玄孫までいるのに、着ぐるみ姿でカズール領から王都まで来る勇気がすごい。
途中で着替えられるはずだが……どこかで面白がる輩がいたと見た。
「しかし……かわいいなぁ……男の子の方が淡い色の髪で、もう一人は濃い色か……」
「男の子はシュウに似てるのかな? 女の子は隼人かなぁ?」
涙ぐむ父さんの横で、ワクワクしてるシエラ叔父。
まだ俺も抱いてないし!
それに迂闊すぎるシエラ叔父に、まだ小さい二人を抱かせるのは絶対ダメだ。
「パパ! 赤ちゃんここにいるの?」
声が聞こえる。
振り返ると、パジャマのまま、現れた俺の子供たち。
彩映の両手を、千夏と風深がそれぞれ握っている。
出産の予定より少し早かったから、三人はぐっすり寝ていたのだ。
「あ、千夏、彩映、風深。ママと会った?」
ゆっくりと話しかける。
今はボードを持ち歩いていない。
でも、読唇術の練習中の彩映にも、きっとわかってもらえるはずだ。
「うん。ちょっと眠たそうだったから、すぐに出てきたよ」
千夏が答える。
風深は微妙な顔だ。
まぁ、最近ちょっと赤ちゃん返りしていたからな……長い間末っ子だったし、しばらく見守ってみよう。
「えっと、パパ。赤ちゃん、男の子と女の子ってほんと?」
おいでおいでと手招きする父さんが、彩映を抱き上げたので、俺は風深を抱いて、ベビーベッドの上からよく見えるように覗き込む。
「こっちの淡い髪の色の大きい子が男の子。風深の弟。こっちのちょっと小さい子が妹。ちっちゃいだろ?」
「ねえ、パパ。なんで透明な箱の中にいるの?」
「妹がちょっと小さいんだ。もしかしたら肺……息をするのが苦しいかもしれないから、この透明な膜はそのサポートをするものだって。二、三日様子を見て、大丈夫だったらママの部屋に移るよ」
「……心配だね」
「うん、風深。パパは、風深にすぐにお兄ちゃんになってって言わないよ。代わりに、パパがお仕事の時、ママが困ってたら手助けしてほしいんだ。ほら、千夏はトレーニングや今度カズールにお勉強に行くからね?」
栗色の風深の髪を撫でる。
「パパは、千夏と風深と彩映が大好きだから」
「……うん!」
「でも、知ってるかな? 風深は兄弟の中で一番大きかったんだよ?」
ゆっくり話す。
「千夏が2番目。一番小さかったのが……」
「この子?」
風深は妹をさす。
「ううん、一番小さかったのは、彩映。もうちょっと小さかったよ」
「そうなんだ……初めて聞いた」
「そうだね~? 今度ママと一緒に話してみよう」
それから、二人はそれぞれ、結と紬になった。
それに、身体も何も問題ないと太鼓判をもらっている。
風深はというと、赤ちゃん返りもほとんどなく、何かしら荷物を運んだり双子の着替えを持ってきたりしてくれるようになった。
代わりに、赤ちゃん返りというか、甘えん坊になり、俺や日向夏について歩くようになったのは彩映だった。
記憶は戻っていないようだと診察してくれた先生は言っていたけれど、何か不安になっているのかもしれないと、時々、俺が散歩に連れて行ったり、日向夏が子供達を預けて一緒にお昼寝をしたりすることにした。
その心配は家族で前もって話し合っていたので、時々、月姉やレクたちも手伝ってくれた。
「ほんとに助かるわぁ……千夏はしっかりしてるし、風深も時々、『白湯かママに大丈夫なハーブティーを淹れてもらうね?』 って言うのよ。彩映も二人を見守ってくれるし、泣いてるって教えてくれるの」
「えっ? 俺は? 俺もパパしてるでしょ?」
「お風呂は二人一緒って難しいから、ちぃがいれてくれるのありがたいわ。あ、そういえば、今日ね? 結が彩映が声かけたら瞬きしたりして反応したの。彩映が喜んでたわ」
「へぇ……俺も、声かけてたら瞬きとかしてくれるかな」
双子を少しの間預けて、二人でこういう風に話すのも楽しいし、これから楽しみだ。
赤ん坊の話
~*~~*~~*~
「結と紬。縁を結び、未来を紡ぐなんてどうだろう。この子たちにふさわしいと思う」
えっへん!
と胸を張ってるが、じい様……何で、猫の着ぐるみなんだ?
俺は一応、成人用はジャケットしか用意してないぞ。
とつい聞いてしまった。
すると、
「おそろいも似合いますよと、もらったのだ。普段はパジャマにしているが、今日は慌てて着替えていない」
「姉さんだな……」
兄の嫁作なのか……めちゃくちゃ才能あるのに、微妙に自分の欲望に忠実な人だ。
しかも、ひ孫や玄孫までいるのに、着ぐるみ姿でカズール領から王都まで来る勇気がすごい。
途中で着替えられるはずだが……どこかで面白がる輩がいたと見た。
「しかし……かわいいなぁ……男の子の方が淡い色の髪で、もう一人は濃い色か……」
「男の子はシュウに似てるのかな? 女の子は隼人かなぁ?」
涙ぐむ父さんの横で、ワクワクしてるシエラ叔父。
まだ俺も抱いてないし!
それに迂闊すぎるシエラ叔父に、まだ小さい二人を抱かせるのは絶対ダメだ。
「パパ! 赤ちゃんここにいるの?」
声が聞こえる。
振り返ると、パジャマのまま、現れた俺の子供たち。
彩映の両手を、千夏と風深がそれぞれ握っている。
出産の予定より少し早かったから、三人はぐっすり寝ていたのだ。
「あ、千夏、彩映、風深。ママと会った?」
ゆっくりと話しかける。
今はボードを持ち歩いていない。
でも、読唇術の練習中の彩映にも、きっとわかってもらえるはずだ。
「うん。ちょっと眠たそうだったから、すぐに出てきたよ」
千夏が答える。
風深は微妙な顔だ。
まぁ、最近ちょっと赤ちゃん返りしていたからな……長い間末っ子だったし、しばらく見守ってみよう。
「えっと、パパ。赤ちゃん、男の子と女の子ってほんと?」
おいでおいでと手招きする父さんが、彩映を抱き上げたので、俺は風深を抱いて、ベビーベッドの上からよく見えるように覗き込む。
「こっちの淡い髪の色の大きい子が男の子。風深の弟。こっちのちょっと小さい子が妹。ちっちゃいだろ?」
「ねえ、パパ。なんで透明な箱の中にいるの?」
「妹がちょっと小さいんだ。もしかしたら肺……息をするのが苦しいかもしれないから、この透明な膜はそのサポートをするものだって。二、三日様子を見て、大丈夫だったらママの部屋に移るよ」
「……心配だね」
「うん、風深。パパは、風深にすぐにお兄ちゃんになってって言わないよ。代わりに、パパがお仕事の時、ママが困ってたら手助けしてほしいんだ。ほら、千夏はトレーニングや今度カズールにお勉強に行くからね?」
栗色の風深の髪を撫でる。
「パパは、千夏と風深と彩映が大好きだから」
「……うん!」
「でも、知ってるかな? 風深は兄弟の中で一番大きかったんだよ?」
ゆっくり話す。
「千夏が2番目。一番小さかったのが……」
「この子?」
風深は妹をさす。
「ううん、一番小さかったのは、彩映。もうちょっと小さかったよ」
「そうなんだ……初めて聞いた」
「そうだね~? 今度ママと一緒に話してみよう」
それから、二人はそれぞれ、結と紬になった。
それに、身体も何も問題ないと太鼓判をもらっている。
風深はというと、赤ちゃん返りもほとんどなく、何かしら荷物を運んだり双子の着替えを持ってきたりしてくれるようになった。
代わりに、赤ちゃん返りというか、甘えん坊になり、俺や日向夏について歩くようになったのは彩映だった。
記憶は戻っていないようだと診察してくれた先生は言っていたけれど、何か不安になっているのかもしれないと、時々、俺が散歩に連れて行ったり、日向夏が子供達を預けて一緒にお昼寝をしたりすることにした。
その心配は家族で前もって話し合っていたので、時々、月姉やレクたちも手伝ってくれた。
「ほんとに助かるわぁ……千夏はしっかりしてるし、風深も時々、『白湯かママに大丈夫なハーブティーを淹れてもらうね?』 って言うのよ。彩映も二人を見守ってくれるし、泣いてるって教えてくれるの」
「えっ? 俺は? 俺もパパしてるでしょ?」
「お風呂は二人一緒って難しいから、ちぃがいれてくれるのありがたいわ。あ、そういえば、今日ね? 結が彩映が声かけたら瞬きしたりして反応したの。彩映が喜んでたわ」
「へぇ……俺も、声かけてたら瞬きとかしてくれるかな」
双子を少しの間預けて、二人でこういう風に話すのも楽しいし、これから楽しみだ。
0
お気に入りに追加
178
あなたにおすすめの小説

私は、忠告を致しましたよ?
柚木ゆず
ファンタジー
ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私マリエスは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢ロマーヌ様に呼び出されました。
「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」
ロマーヌ様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は常に最愛の方に護っていただいているので、貴方様には悪意があると気付けるのですよ。
ロマーヌ様。まだ間に合います。
今なら、引き返せますよ?

追放された悪役令嬢はシングルマザー
ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。
断罪回避に奮闘するも失敗。
国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。
この子は私の子よ!守ってみせるわ。
1人、子を育てる決心をする。
そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。
さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥
ーーーー
完結確約 9話完結です。
短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

異世界転移聖女の侍女にされ殺された公爵令嬢ですが、時を逆行したのでお告げと称して聖女の功績を先取り実行してみた結果
富士とまと
恋愛
公爵令嬢が、異世界から召喚された聖女に婚約者である皇太子を横取りし婚約破棄される。
そのうえ、聖女の世話役として、侍女のように働かされることになる。理不尽な要求にも色々耐えていたのに、ある日「もう飽きたつまんない」と聖女が言いだし、冤罪をかけられ牢屋に入れられ毒殺される。
死んだと思ったら、時をさかのぼっていた。皇太子との関係を改めてやり直す中、聖女と過ごした日々に見聞きした知識を生かすことができることに気が付き……。殿下の呪いを解いたり、水害を防いだりとしながら過ごすあいだに、運命の時を迎え……え?ええ?

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。

【完結】不誠実な旦那様、目が覚めたのでさよならです。
完菜
恋愛
王都の端にある森の中に、ひっそりと誰かから隠れるようにしてログハウスが建っていた。
そこには素朴な雰囲気を持つ女性リリーと、金髪で天使のように愛らしい子供、そして中年の女性の三人が暮らしている。この三人どうやら訳ありだ。
ある日リリーは、ケガをした男性を森で見つける。本当は困るのだが、見捨てることもできずに手当をするために自分の家に連れて行くことに……。
その日を境に、何も変わらない日常に少しの変化が生まれる。その森で暮らしていたリリーには、大好きな人から言われる「愛している」という言葉が全てだった。
しかし、あることがきっかけで一瞬にしてその言葉が恐ろしいものに変わってしまう。人を愛するって何なのか? 愛されるって何なのか? リリーが紆余曲折を経て辿り着く愛の形。(全50話)
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

愛など初めからありませんが。
ましろ
恋愛
お金で売られるように嫁がされた。
お相手はバツイチ子持ちの伯爵32歳。
「君は子供の面倒だけ見てくれればいい」
「要するに貴方様は幸せ家族の演技をしろと仰るのですよね?ですが、子供達にその様な演技力はありますでしょうか?」
「……何を言っている?」
仕事一筋の鈍感不器用夫に嫁いだミッシェルの未来はいかに?
✻基本ゆるふわ設定。箸休め程度に楽しんでいただけると幸いです。
侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!
珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。
3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。
高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。
これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!!
転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる