わたくしは親も兄弟もおりません!自由にさせていただきます!……はぁぁ?今更何をおっしゃいますの?

刹那玻璃

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番外編を集めてる^_^ ねこネコ(=^ェ^=)

番外編:ひな祭り

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 ※地域あるあるネタです^ - ^

【ちぃちゃん目線】


「あれ? なんで、ひなかざり片付けてるの?」

 ひなまつりの直後、必死に雛壇を片付けるレクに俺はのんびり訊ねる。
 レクの娘のために、レクの父さんであるルードおじさんが俺のじいちゃんたちに頼み込んだという、古いものの品のいい逸品である。

「うちの子が行き遅れにならないためにだよ! 父さんに聞いたから! 彩映のは? 確か飾ったんでしょ?」
「うん、日向夏の方の義父さん……つまり、日向夏の姉妹のひなかざり。ほら、日向夏たち四姉妹なのに、その子供たちって男の子ばかりだからって残念がってたんだけど、孫のために~って送ってくれたよ。元々、那智も彩映のために飾ってほしいって言ってたし、この間一緒に飾り付けした」
「仕舞わないの?」
「うん、確か、地域によっては旧暦まで飾るんだって言ってたよ。グランディアでは桃の節句って言ってたらしいけど、その地域では、桃の後の桜の時期まで飾って、もう一度お花見と一緒にお祝いした後に、片付けて、入れ替わりに端午かざりを飾るんだって」
「えっ?」

 困惑するレクに、俺は真顔で、

「それに、俺は、彩映が出来るだけそばに……手元に置いておくのが夢だ! 行き遅れ? 上等だ!」

と答えた。

 親バカと言われようが!
 これは100%……本心である!

 それに! ひなかざりの一番大事なものというと、あれだ!
 衣の模様とか、柄とかも俺の心をくすぐる!
 雛人形も大事だが、小さく細かいお道具が素晴らしいと思う!

 精巧に作られた小さな器類を、丁寧に片付けていたふぅちゃんが顔を上げた。

「ちぃちゃん! そこで親バカ発言しないのよ? 可愛いからって、あと数年したら、レクちゃんみたいに『お父さん! ちくちくするひげのままで近づかないで!』って言われるようになるよ?」
「えっ!」
「……段々大きくなると、反抗期にもなるし、そこまでベタベタすると、嫌がられるかも。それでなくても、ちぃちゃんって、ものすごく尽くすタイプだし……私とか、かぁ様とか、日向夏ちゃんはもう慣れたけど、子供って思春期ってあるよ?」
「……嫌だぁぁ!」

 ショックだ!
 ものすごくショックだ!
 俺は……。

「パパ~?」

 その声に振り返ると、彩映と風深が手を繋いでやってきた。

「パパ、レクパパ、ふぅちゃんママ。お片付けお手伝いに来たの」

 ふぅちゃんが紙に包んでいる小さい漆塗りの器を見る。

「綺麗! 彩映のお部屋のと、ちょっと違うの。あ! 一番上のお内裏様たちの並んでるの違うのね?」

 風深が持ってきていたスケッチブックを差し出す。
 一応、3歳児には大きく重いので、マジックバッグに入れている。

『こっちは新しい方の置き方よ』
『お顔もこっちの方が面長ね』

とふぅちゃんは説明している。

 一応聞いたのは、向かい合って男雛が右、女雛が左だった場合は昔からの習わし。
 彩映のお内裏様は、そちらにならっている。
 逆……この部屋のお内裏様の並びは近年からなのだそうだ。
 これは、過去、グランディアの人間がすんでいた都では、左が地位が高いものと言われていたからだそうだ。その左というのは、北に座し、南面する王から左側のこと。
 つまりそれは部下である人間から見ると、向かって右側が王となる……のだそうだ。
 これも、じい様たちに教わった。

「このお人形さんの衣、綺麗なの。三人官女さんも一人一人お顔違うのね。すごい!」

 ふぅちゃんの手にしている三人官女の顔を、じっと見ている。
 そうだったかな?

『真ん中の官女だけ歯が黒いのよ』

「へぇ~本当。それに、こんなふうにお片づけするのね。彩映もお手伝いする!」

 ふぅちゃんの隣に座り、身振り手振りで包み方を教えてもらいつつ、楽しげに紙に包み箱に収める。
 そっか、片付けも楽しいのか……。
 来年出す時は、手伝ってもらおう。
 そういえば、三人官女の並びなんて気にしてなかった……後でちゃんと確認しなくては。

「あれ? そういえば、お転婆はどこにいったんだ?」

 夫婦で片付けているけれど、二人の間の子供……長男は失踪中、末っ子次男は騎士見習いとして短期留学中で、真ん中の一人娘は……。

「……あの子、締切だって言って篭ってるんだよね……何してんだか……なんか薄っぺらい本を作って……」
「えっ? まだしてるの?」
「ブックマーケットに出品するの~! って、言ってるからさぁ……もう、言っても聞かないし、いいかなぁって……うん、もういいんだ、うん……パパの言うこと聞いてくれないから……ふふっ! ちぃもこうなっちゃえばいいんだ……」
「不吉なこと言うな~! うちの子はそんな子じゃない!」
「絶対なる! なっちゃえ!」

 レクめ~!
 絶対、絶対そんなふうにならない!
 俺はというより、彩映は可愛くていい子なんだぞ!

と思いつつ、そんなことが起こらないことを祈るのだった。

 ちなみに、三人官女は母さんと日向夏が父さんに頼み、ちゃんと並べておいてくれたので、抱っこした彩映に、

「三人官女さん、真ん中の人の歯が黒いし、眉の色も違うのね?」

と言われたのだった。
 そして、親族をよんでお花見と節句のお祝いをした後、千夏と風深の端午の節句飾りに入れ替え、来年のために丁寧に片付けたのだった。




~*~~*~~*~

 ちなみに一応、超豪華な七段飾りのイメージです。
 江戸時代のものを見たことがあります。
 最近になると丸くて童顔の雛人形が多いのですが、昔は面長ですね。
 そして、わたしの田舎では4月までかざります(o^^o)
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