わたくしは親も兄弟もおりません!自由にさせていただきます!……はぁぁ?今更何をおっしゃいますの?

刹那玻璃

文字の大きさ
上 下
41 / 68
番外編を集めてる^_^ ねこネコ(=^ェ^=)

【番外編】新種の生き物です。

しおりを挟む
 今日は、千夏ちゃんと風深ちゃんと一緒に、手話を勉強しています。
 手話の先生は、ママの妹の月歩ちゃんです。
 《はじめまして》と、《わたくしは彩映です》と習いました。

『上手だよ』
『これで挨拶ができるね?』

と、褒められました。

 眼鏡もよく見えます。
 長い時間はかけられませんが、結構遠くまで見えます。

『彩映。パパが帰ってくるって』

「そうなのですか? 《おかえりなさい》って言うのです」

『パパにぎゅっの方が喜ぶよ?』

 月歩ちゃんはニコニコ笑います。



 少しして帰ってきたパパは、一人ではありませんでした。
 幸矢パパと彗おじさまと一緒です。
 それに……?

 でも、まずはパパにおかえりなさいなのです!

「パパ、おかえりなさい!」

 膝をついて手を広げるパパに駆け寄って、ギュッとします。
 そして、習ったばかりの手話をします。

《はじめまして。わたくしは彩映です》

 するとパパが、ギュッとわたくしを抱きしめます。
 そして、

『はじめまして、嫌だぁぁ!』
『パパのこと嫌い?』

と、何故か乱れた文字で書かれたボードを見せられました。
 あら? パパのお目目、潤んでます。

「パパ、大好きですよ。月歩ちゃんに手話を習ったので、頑張ったのです」

『いろは、1日で覚えるなんてお利口!』
『天才! 可愛い!』

「パパ……嬉しいのですが、後ろにいる人が引いてますよ?」

 幸矢パパと彗おじさまの後ろに、誰かいます。
 彩映は目が悪いので、ぼやーっとした視界に、一人しかいない蒼い髪の人……ヴァーソロミュー団長やマレーネママは、青い色が少し違います……と、時々会いに来てくれる彗おじさまは見分けがつくのです。
 でも、その後ろは……。
 パパに抱っこされたまま近づくと、幸矢パパより頭二つくらい低い、黒髪の可愛い人です。

「お姉さまですか?」

 ウゴウゴと動きますが、見えません。
 慌てて、空間収納から眼鏡を取り出します。
 ちなみに空間収納のバンクルは、この間、彗おじさまが下さったものです。
 まだあまりよく見えませんが、ブンブンと三つ編みにした髪が左右に動いてます。

「……パパが小さいですね?」

 パパと同じ髪の色の、可愛いお姉さんです。
 えっと、月歩ちゃんより少し背が高いでしょうか?

「あ、星蘭ちゃんですか?」

 ママの2番めの妹の星蘭ちゃんは、騎士なのです。
 遠くの騎士団に入っているので、まだ会ったことはないのです。

 こちらをじっと見上げるお姉さんに顔を近づけます。

 うーん……焦点が合いません。
 でも、黒髪に黒い目に、白い肌をしていて、ブルーのマントを肩にかけています。

「ブルーのマント……青騎士団の人ですか? 確か、マガタ領に……あ、マガタのじーじのお孫さんにしては小さいです」

 マガタのじーじというのは、マガタ公爵スティファン様で、レクパパのお兄さんだそうです。
 じーじの親友だというので、マガタのじーじと呼んでます。
 マガタのじーじにはお孫さんがいるそうで、青騎士団長だって言っていました。

 幸矢パパがボードに書いて見せてくれました。

『この子、王宮騎士団長だよ』
『パパたちの従兄弟で、月歩の旦那の弟』

「……弟? お姉さんじゃないですか?」

 目の前で、身振り手振りをするお姉さんじゃないお兄さん? に、

「ごめんなさい、わたくし、聞こえないのです。えっと……あまり見えないので大きく書いて欲しいのです」

と頭を下げる。
 すると、もう一度幸矢パパが、

『フェリスタ公爵五男セリディアス』
『グランディアの名前が芹逢せりあ
『セリの母親が彩映のじーじの妹』

と書いてくれました。

「セリちゃんですか……髪真っ直ぐで綺麗です。パパやママの髪みたいです。彩映は、ふにゃふにゃです……」

 濡れ羽色の髪というのだそうです。
 ブラックドラゴンさんも、こんな綺麗な色をしています。
 じっと見ていると、セリちゃんは何かを書いて見せてくれました。

『重いよ? 首振ると鞭になる』

「攻撃するのですか?」

『しないよ~目が回るもん』
『彩映の髪は光色だね』
『二つに結んで可愛いよ』

 丁寧に書いてくれます。
 綺麗な文字です。

『よろしくね。僕はセリ』
『王宮騎士団だから時々来るよ』

 一応、前に教えてもらったのですが、王宮騎士団と言っても、昔名付けられた通称です。
 昔、この王都シェールディアにはニーリィードと言う正式名称の王宮しかなく、元々、その周囲を守る騎士団として発足したのだそうです。
 しかし、その後、人々が集まり街を作るにつれ、その範囲を街……王都まで広げたのですが、通称はそのままで、王宮内……特に王族を守る後宮騎士団とは別となっています。
 王宮騎士団は、白騎士団の次に生まれた騎士団なので、その団長は白騎士団長の次に実力があるのだそうです。

「……ラファパパの次に強い……騎士団長……? 騎士団長さんって、可愛くて美人さんじゃないとなれないのですか?」

 セリちゃんが、ボードを落としてしまいました。
 それに、パパが揺れて……笑ってるのですね?
 パパが笑うようなこと、わたくし言ってしまったのでしょうか?
 うーん、うーん……

考え込み、ぽんっと手を叩き、セリちゃんを見ます。

「あ、頭のいい、女装していろんなことのできる人って言ってませんでした!」

 あれ?
 両手と膝をついて、orzという格好になってしまいました!

「えっ? どうしてですか? 何か間違いましたか? 前に、月歩ちゃんが言っていたのです。『うちのバカ亭主にはそっくりな弟が増殖してるんだが、唯一似てない、可愛くて強くて賢い弟がいるんだ。あ、旦那の弟の下2人は顔だけで、いい子だぞ? で、その似てないのは、騎士になってから、色々と頑張ってて、最近戻ってきたんだ。今度連れてくるな?』って。『女装しても似合うんだこれが! 俺より可愛い!』とも言ってました。『頭が良くて可愛いのは正義だぞ! 顔だけよくってバカは天誅!』って、言ってましたよ?」

 あ、あれれ?
 セリちゃんが頭を抱えてます。
 何故ですか?
 月歩ちゃんは、とっても自慢してたのに……。

『彩映。月が褒めてたんだよね?』
『月の褒め方は、セリの心をえぐるから』
『かっこいいって言ってあげて』

 幸矢パパがボードを見せてくれます。
 そして、彗おじさまが、セリちゃんの肩をぽんぽん叩いてます。

「えっと……あ、それに那智ちゃんが、ラファパパの次にかっこいいって言ってました。幸矢パパと同じくらいって! あれれ? じゃぁ、パパと同じくらいかっこいいって言ってたのかな?」

 パパを見ると、ピシッと表情が固くなってますね?
 こちらを見る目がうるうるです。

「で、でも、わたくしは、パパが一番かっこいいのです! セリちゃんは千夏ちゃんと同じくらいかっこいいのです!」

『ちぃ兄さんを持ち上げるの上手いね~』

「? セリちゃん。わたくしはまだかけっこもできないので、パパを抱っこするの無理なのです」

 首を傾げると、セリちゃんはこう書きました。

『そのまま素直に大きくなってね』

「はい! わたくしは、ママみたいな女の子になりたいです。そして、パパを持ち上げるのです」

『それはいろんな意味でしなくていいよ。うん』

 だめなのでしょうか?
 難しいのです。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

冷徹宰相様の嫁探し

菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。 その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。 マレーヌは思う。 いやいやいやっ。 私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!? 実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。 (「小説家になろう」でも公開しています)

若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!

古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。 そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は? *カクヨム様で先行掲載しております

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~

みつまめ つぼみ
ファンタジー
 17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。  記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。  そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。 「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」  恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!

伯爵令嬢の秘密の知識

シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。

1人生活なので自由な生き方を謳歌する

さっちさん
ファンタジー
大商会の娘。 出来損ないと家族から追い出された。 唯一の救いは祖父母が家族に内緒で譲ってくれた小さな町のお店だけ。 これからはひとりで生きていかなくては。 そんな少女も実は、、、 1人の方が気楽に出来るしラッキー これ幸いと実家と絶縁。1人生活を満喫する。

処理中です...