上 下
36 / 68
わたくしは、誰なのでしょう?

これでもわたくしは、普通のお嬢様を目指しておりますのよ? えぇ? パパが可哀想? どうしてですか?

しおりを挟む
 初めまして。わたくしは彩映いろはと申します。
 パパは千夜ちやママは日向夏ひゅうかといいます。
 兄弟は一つ上の千夏ちなちゃんと、三つ下の風深ふうかちゃんです。

 わたくしは、両親の良いところしか受け継いでいないそうですわ……例えば、パパの真面目なところ、努力家なところ……あ、顔立ちはパパののお姉さまであるふぅちゃんママに似ています。
 優しいところと素直なところはママ譲りとか、両親のいちゃいちゃのネタに毎回言われておりますわ……いつも仲良しなのです。

 ママ方のおじいさまは、とっても照れ屋さんで穏やかな教職者です。
 おばあさまは教師の免許もありますが、癒しの力を持っているので騎士の館の救護室の先生です。
 そして、パパ方のじーじとばぁばは、童顔で実際年齢不詳、永遠の恋人同士と言われているとても仲良しさんです。

 おじいさまとおばあさま、じーじとばぁばもわたくしは大好きなのです。



 ……はっ! いけませんわ!
 今日はひさしぶりに、おじいさまとおばあさまに会えるのです。
 そして、曽祖父母にあたるじーじのお父さんとお母さんに会えます。
 どんな方でしょうか。

 パパが言うには、見た目は厳しそうだけど口下手で繊細なおおおじいさまと、破天荒で豪快なおおおばあさまだそうです。
 おおおばあさまのお父さん……高祖父にあたるヴィクターおじいさまは、時々勉強を教えてくれます。
 ヴィクターおじいさまはとっても物知りで、優しいです。
 曽祖父母、高祖父という言葉も、ヴィクターおじいさまに教えてもらったので、ちゃんと意味がわかります。
 わたくしには、優しくて、強くて、勉強が好きな、いっぱいの家族がいるってことなのです。



 そういえば最近、わたくしはまだ6歳なのに、パパが、

「彩映は、嫁に出さない! 絶対出すもんか~! 一生パパのそばにいればいい!」

って言ってるそうです。

 でも、パパ?
 わたくしは、今はパパとママと一緒にいるのが幸せですが、大きくなったら変わってくると思いますわ。
 だって、わたくしはパパとママの子供ですもの。
 パパみたいに強くて優しくてかっこいい人、いたらいいなぁって思います。
 だけど、それはもっと後でいいと思うのです。



 まずは最近、那智ちゃんの旦那様に頂いた、眼鏡に慣れないといけません。
 やっぱり遠くを見たいのです。
 本も読みたいし、パパやママの顔を見たいです。
 それに、文字を見るのにも、毎回紙に書いてもらって、目の前に出してもらわないといけませんもの。
 わたくしはいいですが、書く人……特にいつも遊んでいるので、筆記通訳の千夏ちゃんが大変です。
 それに大きく書いてもらわなくてはいけないので、紙の枚数が必要です。
 一度実験で、四角い色付きのボードに白い文字は、見えにくかったです。
 白いボードに黒い文字はいいのですが、細い文字だと見えにくいです。
 苦心していると、千夏ちゃんは、

『オレ、文字を練習しなきゃいけない』
『スペル間違ってないかも勉強になる』
『綺麗な文字を書くのも必要だ』
『彩映、気にするな』

って言って書いてくれます。
 優しいのです。



 次は、耳が聞こえるようになる器械の作成です。
 これは、彗おじいさまとヴィクトローレ先生と一緒に作ります。



 その次は、眼鏡で少しでも見えるようになったら、手話や点字を覚えます。
 そして、口の動きで何を喋っているのかわかるように練習します。
 読唇術というのだそうです。

 いろいろすることがいっぱいです。



 でも、一番は……。
 わたくしは、大きく紙に書かれた手紙をじっと読みました。
 一応、普通なら便箋に2枚程度でしょうが、大きめの紙10枚に書いてくださってます。

『スライムヒエヒエを使った、加工品のことでどうか知恵を貸してほしい。
 この地域では乾燥レンガを使って家を建てる。
 そしてレンガを積んで、その間に、砂や土を練ったものを挟むことで壁にするんだが、強い風や急な雨、そして凄まじい温度でヒビが入ったりして定期的に修繕が必要なんだ。家の壁の補修材が高価で、手に入りにくい。
 その時、スライムヒエヒエを作っていた部下が、壁の補修材としてこれは使えないかって思い付いた。
 実験はファルト領で行うから、その結果を見てすきま風の入らない病院やお家を作る手伝いをしてほしい。
 どうかよろしくお願いする。
 ファルト領騎士団団長リーダイル……代筆星蘭せいらん

 騎士団長から直々の書状です。
 あ、代筆はママの妹の星蘭ちゃんです。

 まだ、一度も会ったことはないのですが、何通もお手紙をもらいました。
 星蘭ちゃんは文字が綺麗ですが、とてもメルヘンのある文章です。
 メルヘンというのは少し違いますか……うーん、とっても可愛らしいです。
 旦那さまのこととか、日々のことを楽しそうに、幸せそうに書かれています。
 今回は多分、旦那様であるリーダイル団長の言葉をそのまま書いたのだと思います。

「うーん……ネバネバ……ヒエヒエとちょっと違うのですね。でも、くっついたままっていうと、ヒエヒエだけじゃダメなような気がします。向こうでは何が元々使われているか、向こうに何があるかも調べてもらいましょう。でも、ヒエヒエを使えないかと考えつくその騎士さんも頭が良い方ですね」

 ノートに書き込みます。
 でも、目が悪いので、もうちょっと大きく書かなければ……。
 大きいノート……ううん、思い切って、騎士団の団長さんの持つ手帳型媒体を少し大きくして、わたくしと千夏ちゃんと風深ちゃんとお友達のメオくんとカズールの凛音ちゃんと使えるようにしたいです。
 それよりも、書かれた文字を拡大縮小できる機能がいいでしょうか……。

 イメージ図を考えていたら、

 ポンポン……

と背中を叩かれました。
 パパ……じゃなくて、アルベルトお兄さまです。

『僕にも作って』

と書いてあります。

「分かりましたわ。でも、お兄さまの持ってる石板と、やりとりができるようにしますね。いくつもあっては邪魔だと思います」

 そういうと、うんうんと大きく頷いてくれました。

 今日は、千夏ちゃんはパパのお仕事見学です。
 ママと風深ちゃんは、ばぁばのところです。
 なのでアルベルトお兄さまと、マレーネママとノエルママとアスールと一緒です。

 これからわたくしは、ワクワクするような日々が待っているのだと思います。
 無理はするなと言われていますので、ほどほどに手抜きはせず、たくさんの夢を叶えられるように頑張りたいと思うのです。





~*~~*~~*~~*~~*~~*~~*~~*~

 ひとまず、こちらで終わらせていただきます。
 ちぃちゃん(パパ)の独り言というか、愚痴というか……書いているとものすごく動いてくれて楽しかったです。
 元々若い頃に作ったキャラたちですが、今回の話を書く時にザマァキャラに書き換えられた、ルナの両親とか、ちぃちゃんの姉の一人とか、ルナの妹とか……あれ? 同じ人が2回出てるぞ?(笑)……のですが、元々キャラの中ではわがままプーとタカビー姐さんだったので、反省して欲しいものです。
 番外編は、別話にも出ているメオくんのお話です。

 ちなみに日向夏ママ姉妹には一番下に弟……両親の養子がいます。
 萬葉まんようくんです。
 今は、事情があって、ここにいないことになっています。

 では
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

お飾り公爵夫人の憂鬱

初瀬 叶
恋愛
空は澄み渡った雲1つない快晴。まるで今の私の心のようだわ。空を見上げた私はそう思った。 私の名前はステラ。ステラ・オーネット。夫の名前はディーン・オーネット……いえ、夫だった?と言った方が良いのかしら?だって、その夫だった人はたった今、私の足元に埋葬されようとしているのだから。 やっと!やっと私は自由よ!叫び出したい気分をグッと堪え、私は沈痛な面持ちで、黒い棺を見つめた。 そう自由……自由になるはずだったのに…… ※ 中世ヨーロッパ風ですが、私の頭の中の架空の異世界のお話です ※相変わらずのゆるふわ設定です。細かい事は気にしないよ!という読者の方向けかもしれません ※直接的な描写はありませんが、性的な表現が出てくる可能性があります

幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。

秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚 13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。 歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。 そしてエリーゼは大人へと成長していく。 ※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。 小説家になろう様にも掲載しています。

新婚なのに旦那様と会えません〜公爵夫人は宮廷魔術師〜

秋月乃衣
恋愛
ルクセイア公爵家の美形当主アレクセルの元に、嫁ぐこととなった宮廷魔術師シルヴィア。 宮廷魔術師を辞めたくないシルヴィアにとって、仕事は続けたままで良いとの好条件。 だけど新婚なのに旦那様に中々会えず、すれ違い結婚生活。旦那様には愛人がいるという噂も!? ※魔法のある特殊な世界なので公爵夫人がお仕事しています。

【12/29にて公開終了】愛するつもりなぞないんでしょうから

真朱
恋愛
この国の姫は公爵令息と婚約していたが、隣国との和睦のため、一転して隣国の王子の許へ嫁ぐことになった。余計ないざこざを防ぐべく、姫の元婚約者の公爵令息は王命でさくっと婚姻させられることになり、その相手として白羽の矢が立ったのは辺境伯家の二女・ディアナだった。「可憐な姫の後が、脳筋な辺境伯んとこの娘って、公爵令息かわいそうに…。これはあれでしょ?『お前を愛するつもりはない!』ってやつでしょ?」  期待も遠慮も捨ててる新妻ディアナと、好青年の仮面をひっ剥がされていく旦那様ラキルスの、『明日はどっちだ』な夫婦のお話。    ※なんちゃって異世界です。なんでもあり、ご都合主義をご容赦ください。  ※新婚夫婦のお話ですが色っぽさゼロです。Rは物騒な方です。  ※ざまあのお話ではありません。軽い読み物とご理解いただけると幸いです。 ※コミカライズにより12/29にて公開を終了させていただきます。

【コミカライズ決定】地味令嬢は冤罪で処刑されて逆行転生したので、華麗な悪女を目指します!~目隠れ美形の天才王子に溺愛されまして~

胡蝶乃夢
恋愛
婚約者である王太子の望む通り『理想の淑女』として尽くしてきたにも関わらず、婚約破棄された挙句に冤罪で処刑されてしまった公爵令嬢ガーネット。 時間が遡り目覚めたガーネットは、二度と自分を犠牲にして尽くしたりしないと怒り、今度は自分勝手に生きる『華麗な悪女』になると決意する。 王太子の弟であるルベリウス王子にガーネットは留学をやめて傍にいて欲しいと願う。 処刑された時、留学中でいなかった彼がガーネットの傍にいることで運命は大きく変わっていく。 これは、不憫な地味令嬢が華麗な悪女へと変貌して周囲を魅了し、幼馴染の天才王子にも溺愛され、ざまぁして幸せになる物語です。

えっ「可愛いだけの無能な妹」って私のことですか?~自業自得で追放されたお姉様が戻ってきました。この人ぜんぜん反省してないんですけど~

村咲
恋愛
ずっと、国のために尽くしてきた。聖女として、王太子の婚約者として、ただ一人でこの国にはびこる瘴気を浄化してきた。 だけど国の人々も婚約者も、私ではなく妹を選んだ。瘴気を浄化する力もない、可愛いだけの無能な妹を。 私がいなくなればこの国は瘴気に覆いつくされ、荒れ果てた不毛の地となるとも知らず。 ……と思い込む、国外追放されたお姉様が戻ってきた。 しかも、なにを血迷ったか隣国の皇子なんてものまで引き連れて。 えっ、私が王太子殿下や国の人たちを誘惑した? 嘘でお姉様の悪評を立てた? いやいや、悪評が立ったのも追放されたのも、全部あなたの自業自得ですからね?

彼を追いかける事に疲れたので、諦める事にしました

Karamimi
恋愛
貴族学院2年、伯爵令嬢のアンリには、大好きな人がいる。それは1学年上の侯爵令息、エディソン様だ。そんな彼に振り向いて欲しくて、必死に努力してきたけれど、一向に振り向いてくれない。 どれどころか、最近では迷惑そうにあしらわれる始末。さらに同じ侯爵令嬢、ネリア様との婚約も、近々結ぶとの噂も… これはもうダメね、ここらが潮時なのかもしれない… そんな思いから彼を諦める事を決意したのだが… 5万文字ちょっとの短めのお話で、テンポも早めです。 よろしくお願いしますm(__)m

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

処理中です...