わたくしは親も兄弟もおりません!自由にさせていただきます!……はぁぁ?今更何をおっしゃいますの?

刹那玻璃

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わたくしは、誰なのでしょう?

なんなんだ? どうして熱が下がらない?……ちぃちゃん目線

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 あぁどうしてなんだ!

 ルナの熱が下がらない。
 それに、首の後ろがひどく腫れ上がり、それが次第に頭部や頬にまで腫れが広がっている。
 発疹は少し減ったが、ベッドに寝かせても痛いのかぐずる……。
 いや、それが嫌なのではなく、全く熱が下がらないのと、ベッドで声をかけても反応が鈍いのが怖くてたまらない。
 心配で、抱き上げて優しくあやすように揺すって、背中を撫でると目を開けるけれど、目はこちらをちゃんと見ることがなく、視線は彷徨うばかりで合うことがない。
 開いた目も充血している。

 おかしい、これは風疹なのか?
 いや、最初は風疹であっていたと思う。
 千夏も同じような症状に……軽かったけれどなっていた。
 でも、ルナの症状は、どう見てもかなり重い。
 高い熱も続くし、息も苦しそうだ。
 もっと重大な病じゃないのか?
 でも、俺は医師じゃないから、勝手な判断はできない。



 二日前から別の地域で仕事があって、来られなかったヴィク伯父上に頼み、急いで来てもらい診てもらう。
 すると、険しい顔をして俺を振り返る。

「……今度は麻疹になってるみたい。しかも重症化してる」
「えっ……」

 麻疹?
 しかも重症?
 青ざめる。

「ここまで重症化するのは、成人した大人が感染する場合の時が多いんだ。けれど、ルナは先に風疹にかかっていて、身体が弱っていたから……」
「伯父上! どうすれば……どうすればいいんですか? お願いします! どうか! ルナを助けてください!」

 俺は頼み込む。
 命だけでもいい、助けてほしい。
 俺たちの娘になったばかりなんだ。
 絶対に……俺たちが守るんだと、日向夏とも話しあったばかりなのに!

 祖母の従兄弟であるヴィク伯父上は、術師であるだけでなく優秀な医者でもある。
 きっと、きっと……。

 目の前で考え込んだ伯父上は、顔をあげる。

「私はできる限り手を尽くすよ。でも、助かる方法として、もう一つ。国王陛下に使いを送って、そして王の主治医にきて欲しいと頼もう。ちぃは行けないよ。誰かに風疹や麻疹をうつしたらダメだからね」
「はい!」
「うーん、一番早いのは、エーナだね」

 伯父上は、自分の兄の騎獣の名前を出す。

「手間はかかるけれど、しばらく待って。ずっと抱いているのも辛いと思うから、私がかわるよ。それに、ちゃんと寝ていないんだろう? 食事をとって少し休みなさい」
「ですが……」
「ちぃ。ルナが心配なのはわかる。でも、思い詰めて、無理をして、ちぃが倒れたらどうするの? 悲しむのはルナと家族だよ。私だって辛い……本当はこんなに重症化するなんて思いもしなかった。仕事なんて放置して、ついていればよかったと思ってるよ」

 辛そうな顔をする伯父上。

「ただ祈るのは……命が助かることと後遺症がないこと……」

 そうして俺は、一旦伯父にルナを預け、食事をとり、シャワーを浴びて数時間仮眠を取ることにした。



 ……でも、目を覚まし、来ていた王の主治医から、告げられた言葉に絶望することになるとは思いもしなかった。
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