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始まりは多分お別れという意味なのですわ。
可愛いんだから仕方ないと思う。……アルベルト目線
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僕が初めてルナを見たのは、ルナが生まれてすぐ。
詳しく言うと、雲ひとつない夜、大きなブルームーンの光が降り注ぐ時間にルナは生まれた。
僕はちょうど、前日まで異国に出張に行っていた。
帰国後、王宮で深夜まで引き継ぎをして、疲れて帰ってきた僕は、生まれたことを聞き様子を見に行った。
予定日よりも一、二カ月早く生まれたらしく、今までに会った親戚の赤ちゃんに比べて一回りも二回りも小さくて、手足も木の枝のように細く、ヒィヒィと声を上げる弱々しいふにゃふにゃとした存在。
だけど、にぎにぎと小さい手を握ったり開いたり、小さい足の指がちょっと動くのを見ただけでも、なんて可愛いんだろうと思った。
きっと、何時間見ていても見飽きないと思った。
あまり居過ぎてもよくないと、後ろ髪を引かれる思いで自室に戻ったが、その小さな胸が、大きく上下する……懸命に生きる姿が愛おしいと思った。
でも何故か、ナナ姉さんはルナと一緒にいなかった。
出産後ちょっと見ると興味を無くしたのか、すぐに乳母のノエルさんに預けて疲れたから連れて行ってくれと言って、一緒の部屋にいることを嫌がったのだと言う。
それに、母乳もあげなかったらしい。
その上、父親であるアンディールは、朝……僕が部屋で休んでいる間にフラフラと帰ってきて、ルナのいる子供部屋に顔を出した。
「ふーん、生まれたんだ。あぁ、女か~。サディはナナに似て可愛いのに、のっぺりしていて残念な顔だな」
酒臭い息でそう言い、ちょうどミルクを飲ませ、オムツを変え休ませたノエルさんはむかっときたらしい。
なんで、ついさっき眠ったばかり……いや、昨晩生まれたばかりの赤ん坊をつついたり揺すったり、顔を近づけ、息を吹きかけたりしてるんだと。
寝始めているのに、ひどいことをする。
それに、この方の目は節穴か?
こんなに可愛い赤ちゃん……この時はまだ名前はついていなかった……の何が残念?
のっぺりしているんじゃない、赤ちゃんの顔は全体に目と鼻と口が近くてまとまっている。
ちょっと小さいが、本当に可愛いだろう! と。
ちょうど、僕は仮眠をとり朝食を食べた後、再び子供部屋に顔を覗かせたところだった。
そうすると、ひんひんと引きつったような泣き声が聞こえた。
「うるさいなぁ……」
足取りもおぼつかない酔っ払いアンディールのわめく声に、一気に不快になる。
そんなことを言うこいつの方が顔も、性格も、中身も、残念どころかクズじゃないか!
腹がたった僕は、
「爆ぜろ!」
とつぶやいた。
ポーンと音がした。
ちなみに爆ぜたのは、アンディールの頭。
一応、肩を覆うほど伸ばしていた銀髪が爆発して、灰色の鳥の巣のようになった。
あまりによく似合うので、僕とノエルさんは大爆笑した。
ノエルさんは、本当にストレス解消になったらしい。
後で思い出しては笑っていたのだと言っていた。
それはそうだろう。
育児放棄しますよと言い出しかねない、すでに態度に出している母親と、子供が生まれたのに外に飲みに行って、帰ってすぐからんでいる馬鹿父。
数ヶ月前に息子を生んでいる彼女は、夫が育児に協力的だというのに、お嬢様はどうなってしまうのか、誰に相談すればいいのか悩んでいたと後で教えてくれた。
でも、それだけでは物足りなかった僕は、外から鳥を呼び寄せて住まわせて、ひなが孵り、巣立つまでそのままでいるようにおまじないをかけておいた。
一応、僕は水の術に長けている一族だけれど、祖母の血もあって、ちょっとしたおまじないができる。
まぁ、おまじないは御呪いと書くから、僕が楽しんでいても、かけられた側は呪いだと思うかもね。
でもいいんだ。反省しない馬鹿にはいい薬だよ。
で、ナナ姉さんにも、ルナを放置して外に買い物に出かけるたびに、アンディールの鳥の好物の虫がたかるようにしておいた。
ザマァ!
ちなみに、父たちにアンディールとナナ姉さんの悪行をチクっておいた……僕は感情が荒れると早口になるが、父たち、特にシエラ叔父は僕の怒りを理解し、納得、応援してくれたので、ギリギリまで二人への嫌がらせはしておいた。
もうしないでよ! ってキャンキャン、ガーガーと文句を言ってきたけどさぁ。
二人は赤ちゃんを見ないし抱き上げないだけでなく、会いにこないんだよ?
これは反省してないと思ったから、巣立った後は虫攻撃だけを1ヶ月延長してやった。
うん、僕は悪くない。
その間にも、ルナリアとエドワード兄さんが名前をつけた赤ん坊は、少しずつ成長していく。
そして、時々目を開け、ウゴウゴと動くようになった。
表情筋が動くだけだというが、クシャッと笑顔になるのを見るだけで、今日はいい日だと思った。
手を開いたり閉じたりしているのが見えて、つい人差し指を出した。
すると、ぎゅっと握ってくれる。
その小さい一本一本の指で、僕の指を掴む……その力に、何故か胸がいっぱいになった。
しばらくして、指を離そうとすると、クシャクシャと顔を歪め、真っ赤な顔で泣き始めた。
驚いた。
この前までは、ヒィヒィと喉を鳴らすように声をあげていた赤ん坊が、大声で泣き始めたのだから。
あぁ、これが生きるということなのか。
なんて素晴らしいんだろう……そう思った。
ルナが生まれて良かったと思った。
こんなに可愛いのに……二人はやっぱり顔もみにこないらしい。
忙しいんだそうだ。
アンディールは、顔も見にこないルナの面倒を見るからと育児休暇を取っていた。
その休暇で、サディを連れて3人で旅行に行っていた。
嘘つき野郎め! 仕事をしないなら戻ってくるな! と願ったのに、今回は御呪いが効かなかった……くぅぅ! 残念だ。
それより、こんなに可愛いルナの何が気に入らないんだろう。
まぁ、ルナはナナ姉さんには似てないと思った。
アンディールにも似てない。
生後1ヶ月くらいではっきりしてきたまんまるの瞳は青緑、髪の色はふわふわの金色。
鼻も口も小さい。
アンディールは切長の奥二重の目で、ナナ姉さんは一重の吊り目。
でも、ルナは二重。
あぁ、二重まぶたは、ちぃ兄と二葉姉さんに似たんだ。
絶対に将来は美人になる。
今ですらこんなに可愛いんだから。
僕はルナの成長が楽しみだった。
まぁ、もう二十代も後半の僕の甥姪という人は、僕より年上。
甥のエドワード兄さんは僕と似ているので、よく親子と間違えられる。
僕が息子に間違えられるんだよ?
アンディールは顔だけは、僕の亡くなった実兄……つまりアンディールの祖父に似たのだろう。
そこそこの見た目だったけれど、気性が激しく、好き嫌いもはっきりしていたらしい。
一時期王太甥として先代国王の摂政という立場で政務を兼務していたらしい。
でも、父は、アンディールほど怠け者じゃなかったとぼやいていた。
子供好きで、エドワード兄さんたちを溺愛して、仕事と子育てを両立させていたと。
なんで、怠け者に育ったかな?
エドワード兄さんたちはちゃんと子育てしてる。
先年嫁いで行ったゲートルードが、嫁ぎ先で可愛がられているくらいだもの。
それなのに、あのチャランポランのアンディールを思うと、本当に可哀想だと思う。
時々、ちぃ兄さんとルナのことを話すたびに、
「ベルが、父親みたいだな~」
と言われる。
楽しげとかからかうのではなく、ナナ姉さんとアンディールが余りにもルナをほったらかしにするので、困り果てているのだと愚痴る。
「何が嫌なんだか。ルナは可愛いし、まぁ、早産だったんだから生まれた時は小さかったさ。でも、ノエルさんがちゃんと育ててくれているだろう? なのにノエルさんに文句を言うらしい。アンディールが顔を近づけたら泣くって」
「嘘つき。アンディール、酔っ払い。ルナ可哀想」
「うわっ……酒飲み後、ルナにそんなことしてるのか……父さんたちに言っとく。って、ベル、よく知ってるな?」
「ルナ、可愛い。会う、楽しい」
「お前、単語会話器用だな……」
感心したように言う、ちぃ兄さんは、僕の兄のような人だ。
大きくなるルナは、本当に可愛かった。
仕事のため、国外に行くことが多い僕は、帰るたびにルナにちょっとしたお土産を渡していた。
珍しい樹木の樹液の化石、様々な色の木々を寄せて作った箱、チョーカー、ミサンガ、異国の本。
贈るたびに周囲には呆れられたが、普段から持っているところを見ていないので、心配していたところ、ちぃ兄さんに呼び出された。
壊れた小箱を持っていた。
どうして、壊れているんだろうと呆然としていると、
「ナナが取り上げようとして、抵抗したルナを叩いた。そして、窓から外に投げ捨てたのを、千夏が見ていたらしい」
その言葉に、とっさに口につく。
「殺す」
「死人は出すな。説教しておくから」
「反省しない」
「まずは、ベル、一旦、ルナにプレゼントはやめろ。全部取り上げられているみたいだ。ルナがかわいそうだ」
「潰せばいい」
そうだ。あんなの害にしかならない。
害虫は徹底的に潰さないと、増えたら困る。
それに、ルナのためにならない。
僕は、ルナを愚者から引き離す。
そして、あらゆる害悪を除去して、ルナには美しいものだけを見せてあげる。
僕ができること全て……捧げる。
愛だけじゃない、ルナが望むもの全て……命だって差し出して見せる。
詳しく言うと、雲ひとつない夜、大きなブルームーンの光が降り注ぐ時間にルナは生まれた。
僕はちょうど、前日まで異国に出張に行っていた。
帰国後、王宮で深夜まで引き継ぎをして、疲れて帰ってきた僕は、生まれたことを聞き様子を見に行った。
予定日よりも一、二カ月早く生まれたらしく、今までに会った親戚の赤ちゃんに比べて一回りも二回りも小さくて、手足も木の枝のように細く、ヒィヒィと声を上げる弱々しいふにゃふにゃとした存在。
だけど、にぎにぎと小さい手を握ったり開いたり、小さい足の指がちょっと動くのを見ただけでも、なんて可愛いんだろうと思った。
きっと、何時間見ていても見飽きないと思った。
あまり居過ぎてもよくないと、後ろ髪を引かれる思いで自室に戻ったが、その小さな胸が、大きく上下する……懸命に生きる姿が愛おしいと思った。
でも何故か、ナナ姉さんはルナと一緒にいなかった。
出産後ちょっと見ると興味を無くしたのか、すぐに乳母のノエルさんに預けて疲れたから連れて行ってくれと言って、一緒の部屋にいることを嫌がったのだと言う。
それに、母乳もあげなかったらしい。
その上、父親であるアンディールは、朝……僕が部屋で休んでいる間にフラフラと帰ってきて、ルナのいる子供部屋に顔を出した。
「ふーん、生まれたんだ。あぁ、女か~。サディはナナに似て可愛いのに、のっぺりしていて残念な顔だな」
酒臭い息でそう言い、ちょうどミルクを飲ませ、オムツを変え休ませたノエルさんはむかっときたらしい。
なんで、ついさっき眠ったばかり……いや、昨晩生まれたばかりの赤ん坊をつついたり揺すったり、顔を近づけ、息を吹きかけたりしてるんだと。
寝始めているのに、ひどいことをする。
それに、この方の目は節穴か?
こんなに可愛い赤ちゃん……この時はまだ名前はついていなかった……の何が残念?
のっぺりしているんじゃない、赤ちゃんの顔は全体に目と鼻と口が近くてまとまっている。
ちょっと小さいが、本当に可愛いだろう! と。
ちょうど、僕は仮眠をとり朝食を食べた後、再び子供部屋に顔を覗かせたところだった。
そうすると、ひんひんと引きつったような泣き声が聞こえた。
「うるさいなぁ……」
足取りもおぼつかない酔っ払いアンディールのわめく声に、一気に不快になる。
そんなことを言うこいつの方が顔も、性格も、中身も、残念どころかクズじゃないか!
腹がたった僕は、
「爆ぜろ!」
とつぶやいた。
ポーンと音がした。
ちなみに爆ぜたのは、アンディールの頭。
一応、肩を覆うほど伸ばしていた銀髪が爆発して、灰色の鳥の巣のようになった。
あまりによく似合うので、僕とノエルさんは大爆笑した。
ノエルさんは、本当にストレス解消になったらしい。
後で思い出しては笑っていたのだと言っていた。
それはそうだろう。
育児放棄しますよと言い出しかねない、すでに態度に出している母親と、子供が生まれたのに外に飲みに行って、帰ってすぐからんでいる馬鹿父。
数ヶ月前に息子を生んでいる彼女は、夫が育児に協力的だというのに、お嬢様はどうなってしまうのか、誰に相談すればいいのか悩んでいたと後で教えてくれた。
でも、それだけでは物足りなかった僕は、外から鳥を呼び寄せて住まわせて、ひなが孵り、巣立つまでそのままでいるようにおまじないをかけておいた。
一応、僕は水の術に長けている一族だけれど、祖母の血もあって、ちょっとしたおまじないができる。
まぁ、おまじないは御呪いと書くから、僕が楽しんでいても、かけられた側は呪いだと思うかもね。
でもいいんだ。反省しない馬鹿にはいい薬だよ。
で、ナナ姉さんにも、ルナを放置して外に買い物に出かけるたびに、アンディールの鳥の好物の虫がたかるようにしておいた。
ザマァ!
ちなみに、父たちにアンディールとナナ姉さんの悪行をチクっておいた……僕は感情が荒れると早口になるが、父たち、特にシエラ叔父は僕の怒りを理解し、納得、応援してくれたので、ギリギリまで二人への嫌がらせはしておいた。
もうしないでよ! ってキャンキャン、ガーガーと文句を言ってきたけどさぁ。
二人は赤ちゃんを見ないし抱き上げないだけでなく、会いにこないんだよ?
これは反省してないと思ったから、巣立った後は虫攻撃だけを1ヶ月延長してやった。
うん、僕は悪くない。
その間にも、ルナリアとエドワード兄さんが名前をつけた赤ん坊は、少しずつ成長していく。
そして、時々目を開け、ウゴウゴと動くようになった。
表情筋が動くだけだというが、クシャッと笑顔になるのを見るだけで、今日はいい日だと思った。
手を開いたり閉じたりしているのが見えて、つい人差し指を出した。
すると、ぎゅっと握ってくれる。
その小さい一本一本の指で、僕の指を掴む……その力に、何故か胸がいっぱいになった。
しばらくして、指を離そうとすると、クシャクシャと顔を歪め、真っ赤な顔で泣き始めた。
驚いた。
この前までは、ヒィヒィと喉を鳴らすように声をあげていた赤ん坊が、大声で泣き始めたのだから。
あぁ、これが生きるということなのか。
なんて素晴らしいんだろう……そう思った。
ルナが生まれて良かったと思った。
こんなに可愛いのに……二人はやっぱり顔もみにこないらしい。
忙しいんだそうだ。
アンディールは、顔も見にこないルナの面倒を見るからと育児休暇を取っていた。
その休暇で、サディを連れて3人で旅行に行っていた。
嘘つき野郎め! 仕事をしないなら戻ってくるな! と願ったのに、今回は御呪いが効かなかった……くぅぅ! 残念だ。
それより、こんなに可愛いルナの何が気に入らないんだろう。
まぁ、ルナはナナ姉さんには似てないと思った。
アンディールにも似てない。
生後1ヶ月くらいではっきりしてきたまんまるの瞳は青緑、髪の色はふわふわの金色。
鼻も口も小さい。
アンディールは切長の奥二重の目で、ナナ姉さんは一重の吊り目。
でも、ルナは二重。
あぁ、二重まぶたは、ちぃ兄と二葉姉さんに似たんだ。
絶対に将来は美人になる。
今ですらこんなに可愛いんだから。
僕はルナの成長が楽しみだった。
まぁ、もう二十代も後半の僕の甥姪という人は、僕より年上。
甥のエドワード兄さんは僕と似ているので、よく親子と間違えられる。
僕が息子に間違えられるんだよ?
アンディールは顔だけは、僕の亡くなった実兄……つまりアンディールの祖父に似たのだろう。
そこそこの見た目だったけれど、気性が激しく、好き嫌いもはっきりしていたらしい。
一時期王太甥として先代国王の摂政という立場で政務を兼務していたらしい。
でも、父は、アンディールほど怠け者じゃなかったとぼやいていた。
子供好きで、エドワード兄さんたちを溺愛して、仕事と子育てを両立させていたと。
なんで、怠け者に育ったかな?
エドワード兄さんたちはちゃんと子育てしてる。
先年嫁いで行ったゲートルードが、嫁ぎ先で可愛がられているくらいだもの。
それなのに、あのチャランポランのアンディールを思うと、本当に可哀想だと思う。
時々、ちぃ兄さんとルナのことを話すたびに、
「ベルが、父親みたいだな~」
と言われる。
楽しげとかからかうのではなく、ナナ姉さんとアンディールが余りにもルナをほったらかしにするので、困り果てているのだと愚痴る。
「何が嫌なんだか。ルナは可愛いし、まぁ、早産だったんだから生まれた時は小さかったさ。でも、ノエルさんがちゃんと育ててくれているだろう? なのにノエルさんに文句を言うらしい。アンディールが顔を近づけたら泣くって」
「嘘つき。アンディール、酔っ払い。ルナ可哀想」
「うわっ……酒飲み後、ルナにそんなことしてるのか……父さんたちに言っとく。って、ベル、よく知ってるな?」
「ルナ、可愛い。会う、楽しい」
「お前、単語会話器用だな……」
感心したように言う、ちぃ兄さんは、僕の兄のような人だ。
大きくなるルナは、本当に可愛かった。
仕事のため、国外に行くことが多い僕は、帰るたびにルナにちょっとしたお土産を渡していた。
珍しい樹木の樹液の化石、様々な色の木々を寄せて作った箱、チョーカー、ミサンガ、異国の本。
贈るたびに周囲には呆れられたが、普段から持っているところを見ていないので、心配していたところ、ちぃ兄さんに呼び出された。
壊れた小箱を持っていた。
どうして、壊れているんだろうと呆然としていると、
「ナナが取り上げようとして、抵抗したルナを叩いた。そして、窓から外に投げ捨てたのを、千夏が見ていたらしい」
その言葉に、とっさに口につく。
「殺す」
「死人は出すな。説教しておくから」
「反省しない」
「まずは、ベル、一旦、ルナにプレゼントはやめろ。全部取り上げられているみたいだ。ルナがかわいそうだ」
「潰せばいい」
そうだ。あんなの害にしかならない。
害虫は徹底的に潰さないと、増えたら困る。
それに、ルナのためにならない。
僕は、ルナを愚者から引き離す。
そして、あらゆる害悪を除去して、ルナには美しいものだけを見せてあげる。
僕ができること全て……捧げる。
愛だけじゃない、ルナが望むもの全て……命だって差し出して見せる。
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