わたくしは親も兄弟もおりません!自由にさせていただきます!……はぁぁ?今更何をおっしゃいますの?

刹那玻璃

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始まりは多分お別れという意味なのですわ。

ルナが悪い? 馬鹿言うな! 悪いのはお前たちなんだよ!……ちぃちゃん目線

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 今回、病名がでますが、これは現代一般に感染する病気……風疹ふうしん麻疹はしか水疱瘡みずぼうそう……という名前にしています。
 ですが、少し症状を重く書いております。
 その症状は私が感染した帯状疱疹たいじょうほうしん髄膜炎ずいまくえんの症状を参考にしております。
 一応、髄膜炎の中には成人した大人が、水疱瘡などのウイルスが首のリンパから体内……に侵入し、炎症を起こします。体験済み……。
 なのでルナは、相当苦しい病気になったと思っていただければと思いますm(_ _)m

~*~~*~~*~~*~~*~~*~~*~~*~~*~~*~

 ルナが熱を出した。

「ねぇ、父さん。ルナの頬にブツブツがあるよ?」

 先ほどまで一緒に昼寝をしていた千夏ちなは先に起きたらしい。
 横に寝ていたルナを見て、声を上げた。
 同じ部屋にいたが、少し離れたソファに座り、ルナの新しいワンピースのデザインを考えていた俺は、顔を上げた。

「頬? どこにある?」
「ここと、ここ……あ、額にもある!」
「えぇ?」

 慌てて駆け寄り、確認する。

 ルナは顔を真っ赤にして、苦しげに目をあけた。

「ちぃちゃん……」
「頭が痛いのか? 大丈夫か?」
「頭……痛いで、すわ……」

 額に手を当てると、熱い。
 顔を確認すると、額にも、頬にもポツポツと発疹が出てきている。
 俺は、あまり医術関係に詳しくないが……。

「もしかして、風疹じゃないだろうな? アイツらは予防接種はしてないのか! 日向夏ひゅうか! 念のために風深ふうかと、ヴィクおじさんを呼びに行ってくれないか。千夏。お前はうつったら大変だから、別の部屋に行きなさい」
「やだ! 俺はルナといる!」
「駄目だ。うつったら大変な病気なんだ。大丈夫だとヴィクおじさんに言われるまで、ここにきては駄目だ。レクおじさんとふぅちゃんのところに行きなさい」
「……はい」

 頭の上に耳があったらペタンと倒しているかのように、しょげていた千夏ははっと顔をあげ、

「じゃぁ、元気になったら遊んでも良いよね? それに、ルナに俺はルナが大好きだって、見捨てないからって言ってね? 絶対だよ? 俺、幸矢こうやおじさんとシエラ師匠に頼んで、ルナの騎士になるからね! 稽古いっぱいするから!」
「あぁ、稽古に行くからってちゃんというからね。行ってきなさい」
「はい!」

元気に返事をして、先に出た二人の後を追うように部屋を出て行った。



 はぁぁ……

 出したくもないため息が漏れる。



 ルナや千夏にではない。
 千夏は少しやんちゃだが、本当に親バカじゃないが良い子に育った。
 今だって、寂しがったり、もしかしたら見捨てられたんだと泣くかもしれない、ルナのそばにいたいんだとはっきり言った。
 そこまで7歳の子供だって言えるのだ。
 気にかけて、心配して、そばについていてあげたいんだと訴えられるのだ。

 なのに、ナナもアンディールも、ルナにそんなことはしなかった。
 血が繋がった兄弟の俺ですら嫌悪したくなる、愚かでバカな姉とその夫。
 もう、縁を切ったっていい、それより永遠に会いたくないとすら思う。
 本当は、9年前に見捨てたって良かった。
 でも、戻ってきたふぅちゃんや母さんが泣くから、我慢した。
 だが、もう我慢するものか。
 まだ幼いルナを、ここまで辛い目に遭わせたバカどもを徹底的に、将来すら潰してやる!
 俺を甘い……未だに自分が命令、わがままを言えば、いうことを聞くと思い込んでいるナナと、ちょっと謝ったら許してくれるだろうと思い込んでいるアンディールを地獄の底に落としてやる!
 死んだ方がマシという目に遭わせて見せる!



 ただ良かったのは、親である二人がバカな分、ルナについていたメイドたちは乳母だった女性……ルナのばあやである……と団結して、守り愛情をかけてくれた。
 今も二人が、駆けつけてくれてこちらに控えている。

「千夜さま……あの、私が代わりましょう」
「そして、私どもは、アンディールさまよりお嬢様につけられた者ではありません。国王陛下、そして現大公閣下より指示をいただき、手配されております。今、私どものリーダーは王宮に、今一人はお嬢様の部屋の片付けをしております」
「あぁ、父に聞いている。ありがとう。本当に助かっているよ。ルナの荷物は、この部屋の前にある今は空き部屋だが子供部屋に運んで欲しい。定期的に掃除はされている。家具は……」
「家具は……お伝えするのも躊躇うのですが、大変古いもので色も、形も整っておりません……お嬢様は平均よりお小さいのですが、大人の……男性が使うものとかがございます……ソファの数も合っておりませんし」

 一人のメイドにルナの看病を頼み、振り返る。

「大人の家具? 数が合わないというと、もしかして、アンディールたちの夫婦喧嘩で破壊された家具の余りを、置き場に困り置いていったとかじゃないだろうね?」
「……実はその通りでございます。ソファは濃い色調のもの、机と椅子の高さも合わず、ベッドは私どものものとさほど変わりません」
「……世話をかけるけれど、残ったメイドたちに、荷物以外のものはそのままにして、現状維持のために、その部屋に全て鍵をかけ、アンディールや七聆が入れないようにしてくれないだろうか?」
「その点は大丈夫でございます。最近、ルナリアお嬢様が鍵を付け替えて欲しいとおっしゃられ、その合鍵は私どもに一つ、侯爵閣下に一つ、大公閣下に一つそれぞれ渡していただいております。ですので、移動する時に必ず施錠するよう伝えております」

 丁寧に頭を下げるメイドに、俺は頭を下げる。

「本当に……申し訳ない。俺……私がもっとしっかりしていたら……」
「いいえ。ルナリアさまは、よくおっしゃっておられました。『あのね? 私にはね? 本当のお父さまより、優しくて強くてかっこいいパパがいるのよ!』と。千夜さまのことですわ。お出かけの後にいつも、嬉しそうに、今日はこれを買っていただいたのだと、何回も何回も……いえ、嫌なのではなく、あんなに笑うお嬢様を見るのは幸せで……」
「……これからも、ルナのことをよろしく頼むよ。陛下にも父にも、君達のことはお願いするから」
「ありがとうございます。私どもは、ルナリアさまに嫌だと言われるまでお仕え致します。そしてこれからは、何かございましたらすぐ、千夜ちやさまと奥様に、ご相談させていただけますでしょうか? 今までは緊急時には、こちらの独断で動くこともあり……お嬢様がお辛い思いをされたこともございまして……」
「あぁ、そうして欲しい。だが、君たちは優秀で、ルナも信頼している。判断できる時は、今まで通りルナを最優先で頼みたい」

 頷いた彼女を見てホッとする。
 本当なら俺も、彼女たちに恨まれて当然だと言うのに、信頼してもらえるだけでもありがたいと思う。

 コンコンコン……

扉が叩かれる。
 目の前にいたメイドが、スッと扉に向かう。
 開けるためだろうが、こちらからの返答も聞かず扉は勝手に開いた。

「ちぃちゃん!」

 止めようとしたメイドの手を振り切り入ってきたのは、七聆ななき……。
 豪華なドレスで、二人の子供がついてくる。

「ねぇ! あの子が倒れたってほんと? ありがと! 体調管理できない子でごめんね~! 連れて帰るわ!」

 ズカズカと入り、そのまま横を通り過ぎようとする姉妹の前に手を広げる。

「やめろ! 近づくな!」
「何よ~? どうせただの風邪でしょ? 本当に手がかかるんだから! ベッドに寝かせておけば治るわ。あら、この子のメイドじゃない! 邪魔だから早く連れて行って? あ、そうそう。あたし、ちぃちゃんにミリアのワンピースをお願いしようと思ってたのよ。この子に作るばっかりでしょ? 可愛い姪っ子に作ってよ」

 人の話も聞かず、無神経な七聆の言葉に、メイドたちも一瞬眉を寄せる。

 本当は、プロなら表情に出さないが、悪いことじゃない。
 許されないのはこいつだ!
 そうだ……こいつは昔からこうだった!
 チラッと甥姪を見ると、母親の手を振り払ったサディは千夏のおもちゃを手に取り、壁に投げ、ミリアはテーブルのクッキーを食べ散らかし始めた。

「てめえらが帰れ!」
「な、何よ! なんで怒るの? あ、あの子が何かしたんだね! ごめんね? 叩いておくから許してよ」

 謝ってるのか? それが!
 ヘラヘラと笑いながら言うだけじゃないか!
 しかも、何も悪くないルナが悪いといい、自分のふざけた行いを見て見ぬふりをする。

「はぁぁ? なんで、ナナがルナを叩くんだ? 俺たちが、ルナが叩いていいのは、ナナだろう? 子供の粗相そそうは、親が謝罪するのが普通だろう! ついでに、いまのそれは謝罪じゃない! ごめんなさいって言うなら、ちゃんと頭下げろよ!」
「なんで? いいじゃない。あたしとちぃちゃんの仲でしょ? 許してくれるよね?」
「冗談言うな! 9年前に言ったよな? 約束したよな? もう迷惑はかけません! 俺を束縛したり、命令はしませんって!」
「したよ? でも、今のは命令じゃなくてお願いじゃない? なんで怒るの? それにあの子ばっかりかまって、うちの子を構ってくれないそっちこそ、ひいき、差別じゃない!」
「ひいきと差別をしてるのは、ナナとアンディールだろう! 何勘違いしてやがる! ルナと朝食も一緒にしない、買い物にもいかない、誕生日プレゼントも買わない、服も揃えない、ほったらかし! ほら、育児放棄してるのはナナの方だ!」

 俺は、ナナを突き放しベッドに行くと、毛布ごとルナを抱き上げる。
 ひゅうひゅうとルナの喉が鳴る。
 熱が上がったのか、朦朧と開いた目が不安そうに揺れ動くのに、もう少し早く異変に気がついていたらと言う思いと、込み上げる怒り。
 苦しくない程度に抱きしめ、安心させるようにトントンと背中を叩く。

「もう俺は、ルナを可愛がらない、他の二人と差別する、育児放棄してヘラヘラ笑う、ルナを体罰して言うことを聞かせると言うお前を、姉妹と思わない! ルナは俺の子供だ! 返すもんか!」
「なっ! ち、ちぃちゃん? なんで? 急にそんなこと言うの? あたし、ちゃんと子育てしてるよ? サディもミリアも……」
「どこがだよ! 見てみろ!」

 俺の視線をたどった七聆は、顔色を変える。

 七聆のいうよくできた長男のサディは、いつのまにか壁にペンで落書きをしていた。
 あまりにもひどい様に、そっとたしなめるメイドに向かって積み木を投げつける。
 ミリアはミリアで、両手にクッキーを掴んだまま、靴も脱がず、テーブルの上に足を投げ出して座りバタバタさせ、水のピッチャーを倒した。

「な、何をしてるの? 二人とも!」
「つまんない~。ママ」
「いつも通りいい子に……」

 息子に声をかける。
 そうすると、ミリアがベッドに置いていた人形を示し、声を上げる。

「あ、ママ! あのお人形ちょうだい!」
「あれは、駄目」
「ヤダァ! ちょうだい、ちょうだい! この間は、お姉ちゃんのお部屋から持って行っていいって言ったじゃない! ここのだっていいでしょ? だって、お姉ちゃんばっかり、おじいさまやおじさんたちは可愛がって、ミリアはかわいそうなんでしょ?」

 癇癪を起こすミリアに、俺は多分、嫌悪感を丸出しの目で七聆を見ていると思う。
 焦る七聆は、駆け寄りテーブルから降ろそうとするが、いやいやと首を振ったミリアは泣き出す。

「ママ、大嫌い! ミリアのこと可愛くないんだ! かわいそうなのに! ミリアかわいそうな子なのに!」
「可愛いわよ! 可愛いわ! ミリアはママの一番可愛い子だもの。でもね?」
「ママ、嘘つき! お姉ちゃんとおんなじお洋服くれない! お店にあるっていったけどないじゃない!」
「それは、ちぃちゃんが……」

 困ったように俺を見る。

「ちぃちゃん……」
「うるさい! 出て行け! もうお前なんか兄弟じゃない! ルナにも二度と会うな! それに、この部屋の弁償と、ルナのもの全部返せ! 謝罪は聞かない! 同じものを返せ!」
「なんで……」
「うるさい! 窃盗犯だと突き出してやろうか!」
「ひ、ひどい! なんで?」

 ……我慢できない!
 許せない!
 もう、父さんや兄貴との約束を破ってしまいたい!

 拳を握りしめ、唇を噛み締める。

 バターン!

 今度はかなり力任せに扉が開き、続いて現れたのは、珍しく無表情の父さんと、ニコニコと笑っている従兄弟兼国王陛下。
 尊敬する二人だけど、扉は無事か?
と話を逸らせてしまいたいほど、今来るとは……俺は怖い。

 父さんは、少々怒ろうが基本のオプションは笑顔の、見た目ひ孫がいるとは思えないほど年齢不詳の童顔好青年。
 国王陛下である従兄は、執務中ですら微かに笑う程度に留めている。
 従兄は、世界的に美貌の持ち主が多いこの国でも飛び抜けて美しい……絵画にも彫刻でも、ついでに映写機ですら、そのままを残せないと言われる神の域の美貌王……微笑むだけで、男女問わず魅了し、外交で訪れた要人も職と身分、言葉を忘れ、鼻血を出して倒れるのは数知れない。
 従兄弟とまともに顔を合わせて平然とやり取りできるのは、三ヶ国の要人くらいである……ちなみにラディリア公国国主と、スティアナ公国国主は除く。
 従兄弟が笑うのは、本当に嬉しい時もあるが、今回の背後のザワザワ感は、激怒している時のもの……。
 俺のことを怒っているのではないと思いたいが……大の男だが、泣きたくなる。
 怯む俺を、父さんが見た。
 
「千夜? ルナはどうだ?」
「あ、あの……顔や手に発疹があって、ヴィクおじさんに急いで来ていただけないかと、日向夏に……熱もありますし、もしかしたら麻疹とか、風疹ではないかと……」
「……七聆。ルナに予防接種は?」
「えっ? し、してるはずですわ。その辺は専門家のお義父さまに、全部お任せしてます」
「はぁぁ?」

 父さんの眉が吊り上がった。
 ヤバイ!
 本気モード発動だ!
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