君の全てに愛の色を

刹那玻璃

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マイペースなお嬢さま

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 部屋に戻されたアルフォンシアは、ファラにお説教される。


「いけませんよ? 胸に手を突っ込むなんてはしたないことですわ。もうしてはなりません」
「はしたない……?」
「男性……ビリアルドぼっちゃまの前では絶対にしてはなりません! 今は怪我の手当などを優先させていただきますが、お元気になられましたらマナーを学んでいただきます」
「まなぁ……?」


 どの言葉もピンと来ないのか、首を傾げるだけのアルフォンシアに、


「お嬢さまはこの家のお客人……奥さまの姪にあたられます。わたくし、もしくはメイソンが侍女をお連れしますので、どうか……大人しく! くれぐれも大人しく! こちらにいらっしゃいませ!」
「えっ? 外に出たらダメですか?」
「そのお姿で? 絶対に! 絶対になりません! 大人しく! ベッドに入ってくださいませ!」


 さぁさぁ!

とファラは送り込むと、もう一度、部屋から出ないよう念を押すと、部屋を出ていった。
 そして近くにいたメイドに、一人の侍女見習いの名前を出し、呼んでくるように頼むと出来うる限りギリギリの早足で駆け戻る。


「お嬢さま。戻りました」
「あ……」


 ベッドの上に座り、ぶらんぶらん足を動かしていたアルフォンシアはパァッと目を輝かせる。


「お帰りなさい」
「まぁ! まだ横になっていらっしゃらなかったの……そのお姿ではいけませんね。パジャマをお出ししましょうか?」
「いえ、あの、このフカフカ……私が使ってもいいんですか? 床で寝ますけど」



ベッドを示す。



「何をおっしゃるのです?」
「いえ……エーペの家では火の番をしろと言われていて、暖炉の前で寝ていたので……あ、あの服でないと、火の粉がかかると、こんな上等な服が穴だらけになりますね?」


 ビリアルドの服……ちなみにだいぶんくたびれ気味のそれを一時的に着せたのは、メイドたちの服を着せるわけにもいかず、サイズの合う服がなかったからである。
 それに傷の手当もあったため、前開きの服をとすぐに持ってきたのがそれだったのだが……。


「それは、ぼっちゃまの古着でございますわ」
「古着……こんな上等なのが? 穴も空いてないのに?」
「穴が空いたものは、ぼっちゃまは訓練着になさいますね。ここはあまり豊かではないので、大事に使われます。もし着られなくなった場合は、わたくしどもの作業に使わせていただいて、最後に処分するのです」
「ほわぁ……じゃぁ、着ます」
「お嬢さま……そうですわね。今日のところはそのままお休みくださいませ。明日はきちんとしたパジャマをご用意いたしますので」


 最初は侍女たちからパジャマをと思っていたが、考えを変える。
 明日までに準備をすればいいだろう。


「ですが、お嬢さま。そのお姿では、絶対にこの部屋を出てはなりませんよ? 隣にわたくしか、このミリーがおりますので、必ず一緒に出ましょうね? 隣とはこちらですよ?」


 飛び抜けてぼんやりか、もしくはマイペースか、人の話を聞いていないかの少女に言い含めると、ベッドの横にあるベルを鳴らすように告げる。


「……これですか?」
「はい、これを絶対に鳴らしてくださいませ」


 何度も繰り返すと、二人は下がっていったのだった。
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