君の全てに愛の色を

刹那玻璃

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ビリアルドの独り言その2

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 ビリアルドとアルフォンシアは従兄妹同士だったが……仲はとてつもなく悪かった。

 アルフォンシアは中央の有力貴族の令嬢としてずっと生きており、そのプライドがあった。
 そして、ビリアルドは田舎生まれだが、母にそれなりにマナーや嗜みを教わってきた。
 それに、街の人々は家族も同然で、わずかな田畑を耕したり、崩れた城壁を直すことも、交代で漁に出たり狩りをすることも当たり前だと思っていた。
 小さい頃、王命で王都に行ってしまった父の代わりに街を守るのも当然だと……。

 だから、初めて父と一緒に王都に向かった時に従妹と会い、

「あ、こいつとは合わない」

と思った。
 顔立ちは母方の祖母に……母に似ていたが、とても態度が横柄で、その上ビリアルドに、

「田舎育ちのくせに」

と度々口にした。
 その上、

「泥くさい」
「汗くさい」
肥溜こえだめの匂いがしますわ」

と言い、叱ろうとした伯父伯母や祖父母に泣き喚き、最後には伯父の家に用意されたビリアルドの部屋の服や本を破り捨て、ティーカップを割り、ベッドを裂いてボロボロにした。

 大事な本や、用意してもらった家具もダメになった。
 悲しくなって、もうこんなところにはいられないと、泣きながら、伯母の実家の片隅でもいいので滞在させて欲しいと頼み込んだのだが、翌日、アルフォンシアが馬車に押し込められ、どこかに送られていった。
 泣き喚くアルフォンシアの声が門を出ても響いていたので、一応心配になり尋ねると、

「ありがとう。ビリアルドくん。大丈夫よ。貴方は悪くないの。元々貴方は私の実家に行けませんからね」

 ウフフ……

伯母は微笑む。

「えっ? あ、僕が悪い子……ディーロウの田舎出身だからですか?」
「まぁ! あの子、そんなことを言ったの? ……帰ったら、5年は淑女教育のやり直しだわ!」

 伯母は手にしていた扇を、ギリギリと握りしめる。

「コラコラ……ビリアルドが驚いているからやめなさい」
「あ、ごめんなさいね」
「それにね。ビリアルドが妻の実家に行けなかったのはね……彼女の実家はもうすでになくてね? 彼女は教会の横の女子修道院で育ったからだよ。ビリアルドを修道院に行かせられないだろう?」
「えっ? そうだったのですか?」
「えぇ。 元々聖女候補だったのよ。気にしないで頂戴ね?」
「そうそう」

 二人に代わる代わる頭を撫でられる。

「ビリアルドは私たちにとって息子も同然だからね。オズワルドも今日戻ってくるから、待っていてね」
「はい」



 それから王宮で挨拶をし、一回休暇を取った父と地元まで戻り、12歳で再度王都に向かった。
 その時はまだ戻っておらず、3年後騎士学校の宿舎に入るのと入れ違いに戻ってきた……らしい。
 それからはなるべく会わずに過ごしていたのに……どういうことだ。

「伯父上や伯母上に心配かけるなんて……同性なら殴り飛ばすのに」

と呟いたのだった。
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