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本編
15……ミカと十六夜の子供たち
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翌日、ミューゼリックとデュアンとティフィが、大きな籠を抱えて姿を見せる事になっていた。
リティは当日、マナーレッスンと、母が上手だと言う刺繍を教わっていた。
元々手先が器用だったリティは、コツを教わるとハンカチに刺繍を始めた。
見本を置いておき、それを確認しつつ丁寧に針を動かす様子に、アリアは微笑む。
自分達の実の娘はこんなことはしたくないといい、その代わり商人を呼んでは装飾を買い、ドレスを作り遊びまわっていた。
デュアン以外の息子たちも勉強をしているふりをして、街に出ていた。
幾ら注意しても、駄目だった。
今でも時折手紙が来るらしいが、こちらには届かない。
全てを夫のミューゼリックや、義兄のリスティルが握りつぶすらしい。
それに、可愛いデュアンの為もあるが、アリア自身もう疲れていた。
会いたいとも思わなくなっていた。
でも、リティを養女に迎えた。
夫や息子は仕事で、結果的に一緒に過ごす時間を持つことも多い。
だが、過去の苦い思い出を塗りつぶす、キラキラとした瞳、素直で真面目で一所懸命な姿に、何て可愛い娘なのだろうと思った。
「ママ」
と呼ばれると本当に嬉しくてならない。
「ママ。これでいいですか?」
差し出されたハンカチに、目を見開く。
「まぁ! 素敵だわ。上手ね。これは……」
「シェールドの花の、旅人の花と呼ばれているエリオニーレです。マルムスティーン家の花だとは知っているのですが、伯父様に差し上げようと思って」
「喜ばれるわ」
「あ、お父様にはこれです」
差し出したのは、ラルディーン家の紋章と剣の刺繍が施されている。
「そして、お兄ちゃんにはミカの刺繍をしました。ティフィお兄様には、チェナベリーの葉っぱと実です」
「素敵。特にデュアンは喜ぶわね」
「本当ですか? でも、こことか縫い目が荒かったり、突っ張ってて……」
「こんな短時間にここまで出来るなんて、充分よ。パパたちが戻って来るのが楽しみね?」
「はい!」
するとノックされ、入ってきた執事が、
「奥様、お嬢様。ラミー伯爵の御令息で、アレッザール子爵とご家族がこちらにお越しです」
「ありがとう。じゃぁ、まずは旅の疲れを落として頂きましょう。お部屋にご案内して頂戴。そして、ラミー伯爵様と奥様にもお伝えして、後でこちらでお茶をとお伝えして頂戴」
「はい。かしこまりました」
と丁寧に頭を下げる。
「ママ。クレスールお兄様ですか?」
「そうね。リティも後で会えるでしょうね」
「お元気でしょうか? それに……会って下さるかな?」
「大丈夫よ。それに、もうそろそろお父様たちが帰られるわ。針を仕舞いましょうね」
「はい」
片付けをしていると、扉が開き、
「帰ったぞ~? アリア、リティ」
籠を抱え、現れたのはミューゼリックとデュアン、ティフィに、それぞれの乗獣を連れている。
ちなみにミューゼリックのナムグは、グランディアの名前で縁と言うらしい。
「パパ、お兄様、お帰りなさい!」
「リティ! ただいま。今日は楽しそうだな」
「ママに、マナーレッスンと刺繍を教えて貰いました」
「そうか」
近づいてきた娘を抱きしめようと籠を下ろし、頭を撫でる。
「あの、パパ。ほ、本当はきちんとラッピングをしてと思っていたのですが……」
折り畳んだハンカチを差し出す。
「ん? ハンカチ……刺繍をしてくれたのか? 凄いじゃないか! 私にか?」
「はい。えと、これはパパにです。それと、デュアンお兄様とティフィお兄様と、伯父様に……パパに一番に渡したかったので。ティフィお兄様と伯父様には、ちゃんとラッピングをしようと思っています」
「えっ? リティ、お兄ちゃんは?」
「あっ! お兄ちゃんには、これです!」
デュアンに駆け寄り、差し出す。
「ナムグの刺繍です」
「わぁ! 上手だね。それに嬉しい! ありがとう! お兄ちゃん嬉しいよ」
「私も喜んで下さって嬉しいです」
テレテレと頰を赤くする妹を抱き上げ、頰にキスをする。
「お兄ちゃんはこんなに嬉しいプレゼント、貰えるなんて幸せ!」
「私も、お兄ちゃんに喜んで貰えて嬉しいです!」
「デュアン先輩、あいも変わらず可愛いものには全力溺愛ですね~」
背後からの声にリティは振り返る。
「あっ! クレスお兄ちゃん!」
「姫さま? あぁ、本当に姫さまじゃないですか」
姿を見せたのはティフィの2歳上で、デュアンの5歳下のクレスール。
一応、服を普段着ではなくそれなりの格好をしていると言うことは、到着早々ミューゼリックたちに挨拶をと思ってきたらしい。
「あ、申し訳ありません。ご挨拶もせず。私はクレスール・エソン・アレッザールと申します。王太子殿下、ラルディーン公爵閣下、公爵夫人。父と母、そして姫さま……いえ、お嬢様をお守り下さり、ありがとうございます」
右手を左胸に当て、頭を下げる。
これは、この国の挨拶ではなく、ここにいる男性が全員騎士であることで、同じく留学していたクレスールが騎士の礼をしたらしい。
「あぁ、久しぶりだ。元気そうだが、疲れてはいないか?」
「いえ、使いの方以外に、馬車を準備して頂いて、本当にありがとうございます。妻と子供達は父と母のところにおりますが、本当に嬉しそうでホッとしております。両親に子供達を会わせたいと思っておりましたので、願いが叶いました」
「お、お兄ちゃん……」
「お嬢様。お元気そうでホッとしました」
「お兄ちゃん。名前呼んでくれない……」
頰を膨らませるリティに、クレスールはおや? と言いたげにみる。
「お嬢様のお名前が変わったとお聞きしましたが、父に聞いておりませんでした。どうお呼びすれば良いものかと……」
「嘘~! お兄ちゃんは何時も、お嬢様なんて呼ばないもん」
「本当ですよ~? 姫さまのしもべですから」
「しもべじゃないもん~! わーん! デュアンお兄ちゃん。クレスお兄ちゃんが……」
べそっ……
泣きそうな顔になるリティに、デュアンはヨシヨシと慰める。
「大丈夫。クレスール。私の妹のファティ・リティ・ウィステリアだよ。リティと呼んであげて?」
「リティさま?」
「リティで良いよ、ね? リティ」
頷くリティに、クレスールは苦笑する。
「えっと、からかって悪かったよ。リティ。ただいま」
「お兄ちゃん……お帰りなさい」
えへへと笑う少女に、
「リティも本当に可愛くなったなぁ。まだ兄ちゃんのところのノエルと身長は変わらないけど」
「そんなことないもん!ノエルはまだ9歳だもん!」
「あれ?先輩のとこの息子って、それ位になってるの?」
「あぁ、ティフィ。9歳と6歳と3歳だよ。ノエルとリラとベル。下の二人が娘。可愛いぞ~嫁に似て」
「あーそうですか」
無表情のティフィもうんざり気味である。
クレスールは妻になったエリザベス……愛称はリズ……と大恋愛をしており、後輩になるティフィもその様子をしっかりと知っていた。
「お前もそろそろ嫁貰え。ほら、目の前にお前好みの超美少女いるぞ」
「あのね~? 私が叔父上に殺されるよ!」
「お前、今のカズール伯爵のリュシオン卿の奥方のような美少女、好きだろうに」
「ヤーメーロー!」
「母上やルエンディード妃さまのように、しっかりとしたキリッとしたタイプよりも、華奢で大きな目に童顔の可愛い系が好みだろうに」
クレスールはからかう。
「うちの姫さまは可愛いだろう?」
「可愛いから、嫁にはまだださーん!」
ミューゼリックが告げる。
ちなみに、デュアンは途中で妹の耳を塞いでいる。
「クレスールもからかうな。それに、お前の息子は9歳なのか?」
「はい。ノエルと申します」
「ティフィ。ラディエルは8歳だったな?」
「えぇ」
「クレスールはお前の側近となるから、ノエルもマナーレッスンも兼ねて、ラディエルの遊び相手となるのも良いんじゃないか? 早速兄貴に伝えるか?」
考え始めたミューゼリックに、兄と父をキョロキョロ見ていたリティは、
「お兄ちゃん。パパ。ミカと十六夜の子供達はどこですか?会いたいです」
「あぁ、そうだった。ごめんごめん」
パッと手を離したデュアンは、部屋の隅におすわりしているミカたちの横に置かれている3つの籠を示す。
「この中だよ。伯父上とティフィが乗獣として育てたいっていう子以外を、連れてきたんだ。パパは一頭選んでるから、お兄ちゃんとリティの子だよ。見てみる?」
「うん!」
デュアンは籠に近づく。
そして、1つめの籠を開けると、漆黒の毛色と片目が金色、もう片方がブルーのオッドアイの子が出てくる。
翼は一対。
「この子はパパが育てる男の子だよ。おばあちゃんに似てるんだよ。で」
2つめを開けると、ベージュの毛色に瞳はブルー、そして翼がニ対。
よたよたと出てきたものの、べしょっとへたり込む。
「この子は翼が重くて、足腰が弱くて筋肉がついていかないんだ。走ったり遊んだりして元気にさせるんだよ。で、最後の子は……」
籠を開けるが、出て来ようとしない。
デュアンが手を入れ、片手でヒョイっと抱き上げる。
純白の毛色と真紅の瞳。
プルプルと震えている。
「この子は色素障害、アルビノの子だよ。でも、人見知りはするけど元気な子」
「……」
抱かせて貰いその温もりを確認しつつ、へたりこんでいるナムグに目が行ってしまう。
そして、兄を見て、
「お兄ちゃん。この子も可愛いけど、あの青い目の子とお友達になりたい。一緒に走ったり……あっ! あのね。そう言えば、馬が足を怪我したら、温泉や川につかって運動するの。それもしてあげたい」
「……解ったよ。じゃぁ、お兄ちゃんがこの子だね。でも、お兄ちゃんとパパも仕事があるから、その間は一緒に見ててくれるかな?」
「うん! お兄ちゃん、大好き!」
リティは、自分のナムグにブルーローズと名前をつけたのだった。
リティは当日、マナーレッスンと、母が上手だと言う刺繍を教わっていた。
元々手先が器用だったリティは、コツを教わるとハンカチに刺繍を始めた。
見本を置いておき、それを確認しつつ丁寧に針を動かす様子に、アリアは微笑む。
自分達の実の娘はこんなことはしたくないといい、その代わり商人を呼んでは装飾を買い、ドレスを作り遊びまわっていた。
デュアン以外の息子たちも勉強をしているふりをして、街に出ていた。
幾ら注意しても、駄目だった。
今でも時折手紙が来るらしいが、こちらには届かない。
全てを夫のミューゼリックや、義兄のリスティルが握りつぶすらしい。
それに、可愛いデュアンの為もあるが、アリア自身もう疲れていた。
会いたいとも思わなくなっていた。
でも、リティを養女に迎えた。
夫や息子は仕事で、結果的に一緒に過ごす時間を持つことも多い。
だが、過去の苦い思い出を塗りつぶす、キラキラとした瞳、素直で真面目で一所懸命な姿に、何て可愛い娘なのだろうと思った。
「ママ」
と呼ばれると本当に嬉しくてならない。
「ママ。これでいいですか?」
差し出されたハンカチに、目を見開く。
「まぁ! 素敵だわ。上手ね。これは……」
「シェールドの花の、旅人の花と呼ばれているエリオニーレです。マルムスティーン家の花だとは知っているのですが、伯父様に差し上げようと思って」
「喜ばれるわ」
「あ、お父様にはこれです」
差し出したのは、ラルディーン家の紋章と剣の刺繍が施されている。
「そして、お兄ちゃんにはミカの刺繍をしました。ティフィお兄様には、チェナベリーの葉っぱと実です」
「素敵。特にデュアンは喜ぶわね」
「本当ですか? でも、こことか縫い目が荒かったり、突っ張ってて……」
「こんな短時間にここまで出来るなんて、充分よ。パパたちが戻って来るのが楽しみね?」
「はい!」
するとノックされ、入ってきた執事が、
「奥様、お嬢様。ラミー伯爵の御令息で、アレッザール子爵とご家族がこちらにお越しです」
「ありがとう。じゃぁ、まずは旅の疲れを落として頂きましょう。お部屋にご案内して頂戴。そして、ラミー伯爵様と奥様にもお伝えして、後でこちらでお茶をとお伝えして頂戴」
「はい。かしこまりました」
と丁寧に頭を下げる。
「ママ。クレスールお兄様ですか?」
「そうね。リティも後で会えるでしょうね」
「お元気でしょうか? それに……会って下さるかな?」
「大丈夫よ。それに、もうそろそろお父様たちが帰られるわ。針を仕舞いましょうね」
「はい」
片付けをしていると、扉が開き、
「帰ったぞ~? アリア、リティ」
籠を抱え、現れたのはミューゼリックとデュアン、ティフィに、それぞれの乗獣を連れている。
ちなみにミューゼリックのナムグは、グランディアの名前で縁と言うらしい。
「パパ、お兄様、お帰りなさい!」
「リティ! ただいま。今日は楽しそうだな」
「ママに、マナーレッスンと刺繍を教えて貰いました」
「そうか」
近づいてきた娘を抱きしめようと籠を下ろし、頭を撫でる。
「あの、パパ。ほ、本当はきちんとラッピングをしてと思っていたのですが……」
折り畳んだハンカチを差し出す。
「ん? ハンカチ……刺繍をしてくれたのか? 凄いじゃないか! 私にか?」
「はい。えと、これはパパにです。それと、デュアンお兄様とティフィお兄様と、伯父様に……パパに一番に渡したかったので。ティフィお兄様と伯父様には、ちゃんとラッピングをしようと思っています」
「えっ? リティ、お兄ちゃんは?」
「あっ! お兄ちゃんには、これです!」
デュアンに駆け寄り、差し出す。
「ナムグの刺繍です」
「わぁ! 上手だね。それに嬉しい! ありがとう! お兄ちゃん嬉しいよ」
「私も喜んで下さって嬉しいです」
テレテレと頰を赤くする妹を抱き上げ、頰にキスをする。
「お兄ちゃんはこんなに嬉しいプレゼント、貰えるなんて幸せ!」
「私も、お兄ちゃんに喜んで貰えて嬉しいです!」
「デュアン先輩、あいも変わらず可愛いものには全力溺愛ですね~」
背後からの声にリティは振り返る。
「あっ! クレスお兄ちゃん!」
「姫さま? あぁ、本当に姫さまじゃないですか」
姿を見せたのはティフィの2歳上で、デュアンの5歳下のクレスール。
一応、服を普段着ではなくそれなりの格好をしていると言うことは、到着早々ミューゼリックたちに挨拶をと思ってきたらしい。
「あ、申し訳ありません。ご挨拶もせず。私はクレスール・エソン・アレッザールと申します。王太子殿下、ラルディーン公爵閣下、公爵夫人。父と母、そして姫さま……いえ、お嬢様をお守り下さり、ありがとうございます」
右手を左胸に当て、頭を下げる。
これは、この国の挨拶ではなく、ここにいる男性が全員騎士であることで、同じく留学していたクレスールが騎士の礼をしたらしい。
「あぁ、久しぶりだ。元気そうだが、疲れてはいないか?」
「いえ、使いの方以外に、馬車を準備して頂いて、本当にありがとうございます。妻と子供達は父と母のところにおりますが、本当に嬉しそうでホッとしております。両親に子供達を会わせたいと思っておりましたので、願いが叶いました」
「お、お兄ちゃん……」
「お嬢様。お元気そうでホッとしました」
「お兄ちゃん。名前呼んでくれない……」
頰を膨らませるリティに、クレスールはおや? と言いたげにみる。
「お嬢様のお名前が変わったとお聞きしましたが、父に聞いておりませんでした。どうお呼びすれば良いものかと……」
「嘘~! お兄ちゃんは何時も、お嬢様なんて呼ばないもん」
「本当ですよ~? 姫さまのしもべですから」
「しもべじゃないもん~! わーん! デュアンお兄ちゃん。クレスお兄ちゃんが……」
べそっ……
泣きそうな顔になるリティに、デュアンはヨシヨシと慰める。
「大丈夫。クレスール。私の妹のファティ・リティ・ウィステリアだよ。リティと呼んであげて?」
「リティさま?」
「リティで良いよ、ね? リティ」
頷くリティに、クレスールは苦笑する。
「えっと、からかって悪かったよ。リティ。ただいま」
「お兄ちゃん……お帰りなさい」
えへへと笑う少女に、
「リティも本当に可愛くなったなぁ。まだ兄ちゃんのところのノエルと身長は変わらないけど」
「そんなことないもん!ノエルはまだ9歳だもん!」
「あれ?先輩のとこの息子って、それ位になってるの?」
「あぁ、ティフィ。9歳と6歳と3歳だよ。ノエルとリラとベル。下の二人が娘。可愛いぞ~嫁に似て」
「あーそうですか」
無表情のティフィもうんざり気味である。
クレスールは妻になったエリザベス……愛称はリズ……と大恋愛をしており、後輩になるティフィもその様子をしっかりと知っていた。
「お前もそろそろ嫁貰え。ほら、目の前にお前好みの超美少女いるぞ」
「あのね~? 私が叔父上に殺されるよ!」
「お前、今のカズール伯爵のリュシオン卿の奥方のような美少女、好きだろうに」
「ヤーメーロー!」
「母上やルエンディード妃さまのように、しっかりとしたキリッとしたタイプよりも、華奢で大きな目に童顔の可愛い系が好みだろうに」
クレスールはからかう。
「うちの姫さまは可愛いだろう?」
「可愛いから、嫁にはまだださーん!」
ミューゼリックが告げる。
ちなみに、デュアンは途中で妹の耳を塞いでいる。
「クレスールもからかうな。それに、お前の息子は9歳なのか?」
「はい。ノエルと申します」
「ティフィ。ラディエルは8歳だったな?」
「えぇ」
「クレスールはお前の側近となるから、ノエルもマナーレッスンも兼ねて、ラディエルの遊び相手となるのも良いんじゃないか? 早速兄貴に伝えるか?」
考え始めたミューゼリックに、兄と父をキョロキョロ見ていたリティは、
「お兄ちゃん。パパ。ミカと十六夜の子供達はどこですか?会いたいです」
「あぁ、そうだった。ごめんごめん」
パッと手を離したデュアンは、部屋の隅におすわりしているミカたちの横に置かれている3つの籠を示す。
「この中だよ。伯父上とティフィが乗獣として育てたいっていう子以外を、連れてきたんだ。パパは一頭選んでるから、お兄ちゃんとリティの子だよ。見てみる?」
「うん!」
デュアンは籠に近づく。
そして、1つめの籠を開けると、漆黒の毛色と片目が金色、もう片方がブルーのオッドアイの子が出てくる。
翼は一対。
「この子はパパが育てる男の子だよ。おばあちゃんに似てるんだよ。で」
2つめを開けると、ベージュの毛色に瞳はブルー、そして翼がニ対。
よたよたと出てきたものの、べしょっとへたり込む。
「この子は翼が重くて、足腰が弱くて筋肉がついていかないんだ。走ったり遊んだりして元気にさせるんだよ。で、最後の子は……」
籠を開けるが、出て来ようとしない。
デュアンが手を入れ、片手でヒョイっと抱き上げる。
純白の毛色と真紅の瞳。
プルプルと震えている。
「この子は色素障害、アルビノの子だよ。でも、人見知りはするけど元気な子」
「……」
抱かせて貰いその温もりを確認しつつ、へたりこんでいるナムグに目が行ってしまう。
そして、兄を見て、
「お兄ちゃん。この子も可愛いけど、あの青い目の子とお友達になりたい。一緒に走ったり……あっ! あのね。そう言えば、馬が足を怪我したら、温泉や川につかって運動するの。それもしてあげたい」
「……解ったよ。じゃぁ、お兄ちゃんがこの子だね。でも、お兄ちゃんとパパも仕事があるから、その間は一緒に見ててくれるかな?」
「うん! お兄ちゃん、大好き!」
リティは、自分のナムグにブルーローズと名前をつけたのだった。
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