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無い物ねだりをしてしまいますね。

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「邪魔! 暑苦しい! デカイ! なんなんだよ! 昔は俺より小さかったのに!」
「ひどいよ! アイド! こんなに僕はアイドのこと愛してるのに!」
「鬱陶しい愛なんていらない! 離れろ!」

 ぷんぷん怒るアイド。
 そういえばアイドは、初めて会った時にはすでに私の身長を抜いていましたね。
 びっくりしました。
 アーディはその時には170を超えたばかりでした。

 実は、私はこれでも179cmあるんです。
 と言うか、もう少し低くてもよかったのですが……どうしてここまで伸びちゃったのでしょうか……。
 まぁ、元騎士団長を務められたお父様と上のお兄様は、190cmを超える身長と屈強な肉体を兼ね備えられた方でした。
 ちなみに二人とも健在ですよ?
 本職が忙しくなられたので、騎士団長の位を辞したのです。
 でも、騎士として有事の際は出られるように日々鍛錬を欠かしません。
 そんな姿に憧れ、私は女ですが騎士になりたいと思ったのでした。

 あっ、下のお兄様も私にはおりますが、華奢で身長も170ありません!
 ばらしてごめんなさい! お兄様!
 見下ろされるのはきっとお嫌だと思いますが、どうやっても背は縮みません。
 お兄様は本当に可愛らしいので、どうか女装していただきたいです!
 それに私は両親の普通なところが似たのか、普通だったりします。
 でも、多分それがいい……と思います。
 余計に欲もかかないのと無い物ねだりしない、生きてさえいればいいことありますよね。

「俺だって同じ量筋トレ励んでたのに!」

 そう言いながらアイドは袖をまくり上げ、肘を曲げて二の腕の筋肉を確認しています。

 うわぁ……肌白いですね……それに、下のお兄様ももう少し筋肉ついてますよ。
 私の元上司だったフィア兄様も、小柄ですが多分アイドより筋肉量あると思います。

「こら、アイド、リジーの前で何してるのさ」
「筋肉を確認!」
「すくなっ! ヒョロい!」

 うわっ!
 アーディ。本当のことですが、胸にくる台詞ですよ。
 私が『大女!』とか『ブサイク!』とか、言われるのと同じです。

「……うっ! ひどいじゃないか! もっと筋肉があれば、俺だって見栄えするだろうに……」
「その顔なんだから、あってもなくても一緒。逆にない方がいいと思うよ」
「顔、顔言うな!」

 最初、私より背が低いのを気にしていたアーディは、ここ一年で私を追い抜き、そしてアイドが欲しがっていた筋肉もしっかりついています。
 でも、怪力なのにアイドは筋肉がつきにくい体質みたいで、ほっそりしています。

 アイドはですね、身長は私より高いのですが、お顔の偏差値が大変高くて、騎士の格好をしていようが、男性の格好をしていようが、女性に間違われます。
 ルゥ姉様と並んでいても女の子と言われます。
 長いまつ毛に日に焼けない白い肌に、もうすぐ19歳になるのに骨太くもならず、唇もピンク色で、その光に当たると青く見える黒髪に深い海の色のような瞳が神秘的で、まるでお人形さんのようです。
 羨ましい限りです。

「それに、アイドはアレルギー体質で、僕と同じ食事って無理でしょ? 食べられるの生活維持にギリギリ必要な低カロリー。タンパク質もそんなにとれないし、ハーブ全般ダメ、刺激物ダメ、野菜ダメ、肉ダメ、お酒ダメ、甘いものダメ、卵製品ダメ……何食べてるの?」
「……ぐっ……」
「動物性脂ダメ、魚も生や光り物ダメ、そばダメ。ナッツ系ダメ。あっ。よかったね。大豆がギリギリ大丈夫で」
「……味噌、醤油、煎り大豆大丈夫でよかった。麦と米も大丈夫だった。ダメなら生きていけない……」

 そんなにダメだったんですか!
 じゃぁ、お酒の入った料理なんかはどうしているのでしょう?

「アイド。リジーがお酒の入ったみりんとか酒かすとか、ワインを火でアルコール飛ばしたのはだって?」
「……口にできない……発疹が出るんだ。それでしばらく寝込んじゃうから……醤油とかにも入ってたらダメだから、じい様が作る俺用の特別なのしか口にしない。あ、六槻もお酒ダメだから、そう言った料理には控えてるんだ」

 そうだったのですね。
 勉強になりました。
 仕事や何かあった時に料理をお出しする際は、アイドの分だけ特別食を用意しますね。
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