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第一章
【番外編】青銀大公ドミツィアーノの姉は女王陛下です。
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元々青銀大公ドミツィアーノは一人だけ……アンナマリアを妻を迎える予定だった。
しかし、王族に近い貴族として、戦争で夫を亡くした寡婦や、婚約者を亡くした令嬢、家族を失った女性を側室や屋敷に迎えること、その人数は最大5人までと姉である女王に命じられた為、納得はいかなかったが迎えることになった。
そして、身分の差で第三側室となったのだ。
ちなみに、女王である姉のアダルジーザの夫である黒紫大公ベンヴェヌートは、正妻になる女王以外7人も側室を迎えていた。
黒紫大公は元々浮気性で、それに頭を悩ませていたアダルジーザは夫に、
「側室を認めてやる。だが、その者等以外と浮気をしたら、そなたと即離婚じゃ! 跡取りはお主の子供? お主と我の間には子供がおらぬ! 誰が浮気者のそなたの息子を王位を譲るか! それなら我は、ドミツィアーノの息子のアルカンジェロに譲るわ!」
「な、何だと! 俺は……」
「ふんっ! 父上の命令で結婚しただけではないか。アルカンジェロはまだ子供……だがの?そなたのように下半身がだらしない男ではないわ! さすがは我が甥」
フラフラと仕事もせず、側室に名前の変わる愛人宅を転々として遊んでいた黒紫大公に、弟によく似た吊り目のアダルジーザは、ニヤッと唇を歪める。
「良いか? この瞬間以降、我が弟ドミツィアーノ夫婦とその子供達に手を出してみよ……そなたの息子だけではなく、黒紫大公家の者共を殺し尽くしてくれるわ!」
「なっ!」
「ベニーニョと言ったのぉぉ? そなたの息子は。毎日ドミツィアーノの屋敷に行き、アルカンジェロの邪魔をし、物を盗み、壊し、我の名前を勝手に用い、好き勝手しているそうではないか。それに昨日、アルカンジェロが席を離したすきに、アルカンジェロが見つけて可愛がっている翼猫の子の翼を掴み壁に叩きつけ、骨折させたそうだのぅ?」
「た、ただの翼猫ではないか!」
シュッ……バシーン!
その言葉に、アダルジーザは持っていた鞭で床を叩きつけた。
その音と、アダルジーザの顔の恐ろしさにベンヴェヌートは青ざめる。
「ひぃぃ!」
「馬鹿者! 当たってもおらぬ鞭など痛くもないわ! それより、まだ目が開いていない子猫に虐待させておいて怯えるな! 虐待も許せぬが、聞くが良い! アルカンジェロはその翼猫を、治癒師のエマヌエーレさまに診て戴いたのだ。エマヌエーレさまは我ら一族の中でも知恵者で長老であり、位は息子に譲りはしたが先代朱金大公。そなたより位は上じゃ。あの方が、アルカンジェロの子猫は虹の女神の愛猫アルコバレーノ様の生まれ変わりのようじゃと言うておったわ」
「アルコバレーノ様……!」
「そうじゃ。我らの救いの女神、虹の女神の愛猫、アルコバレーノ様じゃ。良かったのぅ? そなたの息子はアルコバレーノ様の生まれ変わりを殺そうとした。そなたの愛人のダリラもアルコバレーノ様に手を出し、まだ乳しか飲めぬ赤子に、肉の塊を押し込もうとしたらしいのぅ? アルカンジェロの侍女頭と言いつつ、主人を蔑ろにし、部屋を荒らし、宝石をくすねておるそうではないか。……ん? そのネクタイピンはおかしいのぅ? 我が可愛い甥に贈ったものとそっくりなのじゃが……」
「ひぃぃ! アダルジーザ!」
慌てて隠そうとするベンヴェヌートを鞭で捕らえ、ピンを奪い取るとぐるぐる巻きにして吊るす。
「何度も言うたよのう? 浮気や盗みは許さぬ……と。あのダリラは、窃盗の容疑とアルカンジェロに手を上げた罪で牢獄行きじゃ。そなたの軽い頭のせいで、そなたの子供ベニーニョは、黒紫大公家の嫡子にすらなれぬようになったな。良いことじゃ」
「な、何が良いのだ! 俺はお前の……」
「はっ! 我の夫と言いたいのか? そなたはお飾りじゃ。ドミツィアーノとエマヌエーレさまの息子で現在の朱金大公がこの国の中心で働いておる。そなたが働く方が邪魔じゃ。それ以上に盗みや弱い者に虐待、我の弟妹に手を出すのもじゃ。今回は1週間塔に閉じ込める。反省するが良い。誰か、この馬鹿を塔の最上階に閉じ込めよ! そして、ドミツィアーノの屋敷に謝罪の使いを送るように。アルカンジェロやアルコバレーノさまに何か……そうよのう……アルカンジェロには欲しがっておった魔法書と、アルコバレーノさまには可愛らしいリボンなどはどうであろ? それに二人にお付きの者を。アルカンジェロに仕えたがっておったウリッセならば、気もつくし良いであろう」
グラマラスなドレス姿の女王は、衛兵に連れられて行こうとする夫に言い放った。
「良いか! もう一度言うぞ! そなたの愛人は7人までじゃ。王家では金は出さぬ! 黒紫大公家で金を出せ。良いな? この城に置くでないわ。追い出す故、1週間そなたが塔で反省したら、女と共に城を出よ。後日請求書を送るゆえ、全額一括で払って貰うぞ。一応行事の時は我の夫としてエスコートさせるが、三年経てば離婚して、アルカンジェロを次期王として我をエスコートさせる。ではな」
「むーむむー」
「ふんっ、慰謝料を準備しておくがいい」
言い放った女王は優雅に歩きながら、横につく数人の従者にそれぞれ仕事を与えながら歩き去っていったのだった……夫には一瞥もせず。
しかし、王族に近い貴族として、戦争で夫を亡くした寡婦や、婚約者を亡くした令嬢、家族を失った女性を側室や屋敷に迎えること、その人数は最大5人までと姉である女王に命じられた為、納得はいかなかったが迎えることになった。
そして、身分の差で第三側室となったのだ。
ちなみに、女王である姉のアダルジーザの夫である黒紫大公ベンヴェヌートは、正妻になる女王以外7人も側室を迎えていた。
黒紫大公は元々浮気性で、それに頭を悩ませていたアダルジーザは夫に、
「側室を認めてやる。だが、その者等以外と浮気をしたら、そなたと即離婚じゃ! 跡取りはお主の子供? お主と我の間には子供がおらぬ! 誰が浮気者のそなたの息子を王位を譲るか! それなら我は、ドミツィアーノの息子のアルカンジェロに譲るわ!」
「な、何だと! 俺は……」
「ふんっ! 父上の命令で結婚しただけではないか。アルカンジェロはまだ子供……だがの?そなたのように下半身がだらしない男ではないわ! さすがは我が甥」
フラフラと仕事もせず、側室に名前の変わる愛人宅を転々として遊んでいた黒紫大公に、弟によく似た吊り目のアダルジーザは、ニヤッと唇を歪める。
「良いか? この瞬間以降、我が弟ドミツィアーノ夫婦とその子供達に手を出してみよ……そなたの息子だけではなく、黒紫大公家の者共を殺し尽くしてくれるわ!」
「なっ!」
「ベニーニョと言ったのぉぉ? そなたの息子は。毎日ドミツィアーノの屋敷に行き、アルカンジェロの邪魔をし、物を盗み、壊し、我の名前を勝手に用い、好き勝手しているそうではないか。それに昨日、アルカンジェロが席を離したすきに、アルカンジェロが見つけて可愛がっている翼猫の子の翼を掴み壁に叩きつけ、骨折させたそうだのぅ?」
「た、ただの翼猫ではないか!」
シュッ……バシーン!
その言葉に、アダルジーザは持っていた鞭で床を叩きつけた。
その音と、アダルジーザの顔の恐ろしさにベンヴェヌートは青ざめる。
「ひぃぃ!」
「馬鹿者! 当たってもおらぬ鞭など痛くもないわ! それより、まだ目が開いていない子猫に虐待させておいて怯えるな! 虐待も許せぬが、聞くが良い! アルカンジェロはその翼猫を、治癒師のエマヌエーレさまに診て戴いたのだ。エマヌエーレさまは我ら一族の中でも知恵者で長老であり、位は息子に譲りはしたが先代朱金大公。そなたより位は上じゃ。あの方が、アルカンジェロの子猫は虹の女神の愛猫アルコバレーノ様の生まれ変わりのようじゃと言うておったわ」
「アルコバレーノ様……!」
「そうじゃ。我らの救いの女神、虹の女神の愛猫、アルコバレーノ様じゃ。良かったのぅ? そなたの息子はアルコバレーノ様の生まれ変わりを殺そうとした。そなたの愛人のダリラもアルコバレーノ様に手を出し、まだ乳しか飲めぬ赤子に、肉の塊を押し込もうとしたらしいのぅ? アルカンジェロの侍女頭と言いつつ、主人を蔑ろにし、部屋を荒らし、宝石をくすねておるそうではないか。……ん? そのネクタイピンはおかしいのぅ? 我が可愛い甥に贈ったものとそっくりなのじゃが……」
「ひぃぃ! アダルジーザ!」
慌てて隠そうとするベンヴェヌートを鞭で捕らえ、ピンを奪い取るとぐるぐる巻きにして吊るす。
「何度も言うたよのう? 浮気や盗みは許さぬ……と。あのダリラは、窃盗の容疑とアルカンジェロに手を上げた罪で牢獄行きじゃ。そなたの軽い頭のせいで、そなたの子供ベニーニョは、黒紫大公家の嫡子にすらなれぬようになったな。良いことじゃ」
「な、何が良いのだ! 俺はお前の……」
「はっ! 我の夫と言いたいのか? そなたはお飾りじゃ。ドミツィアーノとエマヌエーレさまの息子で現在の朱金大公がこの国の中心で働いておる。そなたが働く方が邪魔じゃ。それ以上に盗みや弱い者に虐待、我の弟妹に手を出すのもじゃ。今回は1週間塔に閉じ込める。反省するが良い。誰か、この馬鹿を塔の最上階に閉じ込めよ! そして、ドミツィアーノの屋敷に謝罪の使いを送るように。アルカンジェロやアルコバレーノさまに何か……そうよのう……アルカンジェロには欲しがっておった魔法書と、アルコバレーノさまには可愛らしいリボンなどはどうであろ? それに二人にお付きの者を。アルカンジェロに仕えたがっておったウリッセならば、気もつくし良いであろう」
グラマラスなドレス姿の女王は、衛兵に連れられて行こうとする夫に言い放った。
「良いか! もう一度言うぞ! そなたの愛人は7人までじゃ。王家では金は出さぬ! 黒紫大公家で金を出せ。良いな? この城に置くでないわ。追い出す故、1週間そなたが塔で反省したら、女と共に城を出よ。後日請求書を送るゆえ、全額一括で払って貰うぞ。一応行事の時は我の夫としてエスコートさせるが、三年経てば離婚して、アルカンジェロを次期王として我をエスコートさせる。ではな」
「むーむむー」
「ふんっ、慰謝料を準備しておくがいい」
言い放った女王は優雅に歩きながら、横につく数人の従者にそれぞれ仕事を与えながら歩き去っていったのだった……夫には一瞥もせず。
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