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First therapy……片腕と耳の取れたテディベア……その2
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テディベアを納品して、結婚式の予定日も過ぎてすぐ、友人でありウェディングプランナーの多岐静留が困りきったように大きな箱を抱えてやってきた。
「海……」
「どうしたの? 仕事?」
テーブルに箱を置いた静留は、
「貴方が悪い訳じゃないのは分かってるの。それにね? 貴方からのメモも渡したし、契約の時にも納得して貰ったのよ? 新郎新婦さんには」
「えぇ。私は、何かあったら行けないから、必ずお願いしてるわね」
「そうなの。でも、新郎のご両親が、怒鳴り込んできたのよ……この子を投げつけて」
蓋を開け、中を覗き込んだ私は絶句する。
二人が選んだ当日の衣装の写真を借り、そっくりの布で作った服を着せてあげた新郎ベアが、みるも無残な姿になっている。
顔は踏みつけられたのか変形し、服も足跡が何度もついていて、右手は外れ、左耳は引きちぎられている。
「な、何てこと……」
「『これを作ったのは誰だ。こんなすぐ壊れるものに幾らかけたと思っとるんや。金返せ!』って乗り込んで来たの」
「丈夫に作ったわよ。それに、いつも通り、一体一体の箱の中に『無理やり引っ張らないで下さい』『重みがあるから耳をつかまないで、赤ちゃんを抱くように体を持ち上げて下さい』『式の後、ウェディングプランナーさんに連絡して下さいましたら、重しのペレットは取り出し、ワタと詰め替えます』って……『その時のお金は頂きません』って静留を通じてお伝えしたし、書面にも……」
「そうなのよ。で、一応、新郎新婦さんに連絡をしようとすると、するなって怒鳴り散らすし、店の前で泥棒とか、大騒ぎが酷くて、警察呼んだわ」
本当、タチの悪いクレーマーね。
首を竦める。
「それでね、新郎新婦さんは旅行中で電話するのも何だからと思っていたら、今日、ここにくる前に新婦のお母様が、新婦ベアも体重の調整をと持ってきて下さったの」
「……そう……」
新郎ベアはボロボロになって治療、そして新婦ベアはペレットを抜き、代わりにワタを足してふっくらさせることにしたのだった。
「海……」
「どうしたの? 仕事?」
テーブルに箱を置いた静留は、
「貴方が悪い訳じゃないのは分かってるの。それにね? 貴方からのメモも渡したし、契約の時にも納得して貰ったのよ? 新郎新婦さんには」
「えぇ。私は、何かあったら行けないから、必ずお願いしてるわね」
「そうなの。でも、新郎のご両親が、怒鳴り込んできたのよ……この子を投げつけて」
蓋を開け、中を覗き込んだ私は絶句する。
二人が選んだ当日の衣装の写真を借り、そっくりの布で作った服を着せてあげた新郎ベアが、みるも無残な姿になっている。
顔は踏みつけられたのか変形し、服も足跡が何度もついていて、右手は外れ、左耳は引きちぎられている。
「な、何てこと……」
「『これを作ったのは誰だ。こんなすぐ壊れるものに幾らかけたと思っとるんや。金返せ!』って乗り込んで来たの」
「丈夫に作ったわよ。それに、いつも通り、一体一体の箱の中に『無理やり引っ張らないで下さい』『重みがあるから耳をつかまないで、赤ちゃんを抱くように体を持ち上げて下さい』『式の後、ウェディングプランナーさんに連絡して下さいましたら、重しのペレットは取り出し、ワタと詰め替えます』って……『その時のお金は頂きません』って静留を通じてお伝えしたし、書面にも……」
「そうなのよ。で、一応、新郎新婦さんに連絡をしようとすると、するなって怒鳴り散らすし、店の前で泥棒とか、大騒ぎが酷くて、警察呼んだわ」
本当、タチの悪いクレーマーね。
首を竦める。
「それでね、新郎新婦さんは旅行中で電話するのも何だからと思っていたら、今日、ここにくる前に新婦のお母様が、新婦ベアも体重の調整をと持ってきて下さったの」
「……そう……」
新郎ベアはボロボロになって治療、そして新婦ベアはペレットを抜き、代わりにワタを足してふっくらさせることにしたのだった。
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