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まゆらの恋……
彼女は猛烈に憧れていた人に会い……。
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「髭!」
「五月蠅い! ジジイ!」
「死んだ年は上だがのう……それ程、変わらんかったと思うんだがのう?」
くくくっと楽しげな声に、
「五月蠅いわ! ジジイ!」
「同じことしか言えんようになったら、老化の始まりぞ? 大丈夫か、髭?」
「趙雲! 黙れ!」
五月蝿いなぁ……。
と思っていた真侑良改め桃子となった怪我人が、その名前にくわっと目を見開く。
『趙雲』と言えばあの、趙雲!
桃子の、愛しの究極の恋愛対象ではないか……ゲームの。
それが目の前のいるのか?
声優でも、キャラでも……いや、本物が見られるだけでいい!
人見知り、人間恐怖症が、『趙雲‼』に勝った!
「趙雲さまぁぁぁ!」
ガバッ!
と身を起こした桃子に7人がぎょっとするが、すぐに、目の前に見えた髭親父に号泣する。
「うわぁぁん……髭親父? 何でぇぇ? 嫌だぁぁ……わぁぁん、ずっと夢にまで見た、趙雲さまにお会いしたかったのにぃぃ。赤顔、髭親父! ……趙雲さまがこんなのだったら嫌だよぉぉ……!」
泣き出した桃子に、慌てて、
「桃子どの! これはうちの父です! 趙雲将軍ではありませんよ? 大丈夫です! 趙雲将軍は美形です!」
「何を抜かすか~! この愚息が! わしの血を引いとると言うのに、失礼な!」
「五月蠅いのぉ……桃子どのだったかの? お体は如何かの?」
関聖帝君の巨体が蹴り飛ばされ、姿を見せたのは、25歳余りか、桃子が今まで見た美形を優に越えた美貌の主。
艶やかな黒髪、整った顔立ちに、少したれ目の黒目の大きな青年を、ぼぉぉっと見つめ、次の瞬間、
「もう、これで消滅してもいい! う……うぇぇぇ……趙雲さまに会えたぁぁ……!」
ビエビエと泣きじゃくり始める。
「いや、桃子どの? 消滅してはなりませんぞ? 私は、貴女と友達になりたいのだが……駄目だろうか?」
「と、友達に……!」
「貴方はとても賢く、学問もお詳しいと伺っておりますのでな? 孔明どのも……」
「趙雲さまがいいです!」
「ガーン! 嫌われている、初対面で……」
孔明の声に、涙声で、
「一応、末端でもお伺いしております。……孔明どのは奥方とご令嬢である果仙女がおいでと伺っております。ので、変な噂がたって、お二方を悲しませたくはないのです! ……それに、趙雲さまにお会いしたかったのですぅ! ……また地獄に落とされてもいいですぅ……!」
泣きじゃくる桃子の一言に、冗談の影もないと悟った周囲は蒼白になる。
諸葛孔明は、
「子龍どの! しばらく、この方についてあげて下さい! 桃子どのでしたね? 子龍どのと、元気になるまでお話など如何です?」
「いえ、もう、お会いできただけで……」
「それは残念です。桃子どのと私は友人で、これで会えぬなど……」
美貌の主が眉をひそめ、悲しげな顔をする。
「桃子どの……友として、元気になるまで会いに来てもよろしいかな?」
「で、でも、趙雲さまにご迷惑になってしまっては……恋人の方がおられたら悲しまれますよ? まぁ、私は心配される程、可愛くも綺麗でもないので、思われないでしょうが……外見の年もおばさんですし」
えへへ……
と笑う桃子に、子龍は、
「は? ご自分の外見の年はお分かりになられぬのか? 貴方は今、大体15歳位ですが?」
「えっ? 嘘?」
「本当ですよ」
水盤を示し自分の顔を見た桃子は、
「えぇぇ? 趙雲さまを見たら……自分が平凡で……良かったです!」
「平凡……」
泣き顔ではあるが、大きなたれ目の少女である。
美貌とは違う、幼い印象の顔立ちに髪は長い。
身長位は伸ばしているだろうか?
しかし、真っ黒ではなく、濃い茶色である。
可愛らしい……と言うだろう。
「えっと、これだけ伸ばしたのは、昔ですね。やっぱり重いです。切っちゃいましょう。すみません。スッパーンと、肩まで誰か切っちゃって下さい!」
その言葉にぎょっとする。
「と、桃子どの! 肩までスッパーンと? それ程美しい髪は早々知らぬ。勿体ないのではないかな?」
「趙雲さまに誉めて頂けた! 髪! どうしよう! 気を失いそうな位嬉しい……」
「いや、気絶されておるではないか!」
きゅぅぅ……
ぽてっと、寝台に横たわる……舞い上がり気絶する桃子に、さすがの子龍も絶句する。
「ジジイ。頼んだ。この奇っ怪な生き物を調教せい!」
「五月蠅いのぉ。髭親父。お前自身が調教されろ! まずは……関平(かんぺい)どの」
ニッコリと笑い、呼び寄せる。
先からおろおろとしていた少年である。
「桃子どのとわしは友人同士。でも、二人でおれば桃子どのが先程のように不安がると思うのだが、時々私や、黄夫人方とお話の際には共にいて貰えぬか?」
「は、はい!」
「では、桃子どの……」
呼び掛けられ目を開けた桃子は、子龍を見て、
「うわーん……夢じゃなかったぁぁ……趙雲さま! 赤いおじさんより、趙雲さまのお顔を見ていたいですぅぅ!」
と泣きじゃくるのを見て、関平は、
「趙雲どのオタクってこんなに変な人が多いんだ……恐ろしい。地獄に落ちてもいいって言ってた……」
と改めて思ったのだった。
「五月蠅い! ジジイ!」
「死んだ年は上だがのう……それ程、変わらんかったと思うんだがのう?」
くくくっと楽しげな声に、
「五月蠅いわ! ジジイ!」
「同じことしか言えんようになったら、老化の始まりぞ? 大丈夫か、髭?」
「趙雲! 黙れ!」
五月蝿いなぁ……。
と思っていた真侑良改め桃子となった怪我人が、その名前にくわっと目を見開く。
『趙雲』と言えばあの、趙雲!
桃子の、愛しの究極の恋愛対象ではないか……ゲームの。
それが目の前のいるのか?
声優でも、キャラでも……いや、本物が見られるだけでいい!
人見知り、人間恐怖症が、『趙雲‼』に勝った!
「趙雲さまぁぁぁ!」
ガバッ!
と身を起こした桃子に7人がぎょっとするが、すぐに、目の前に見えた髭親父に号泣する。
「うわぁぁん……髭親父? 何でぇぇ? 嫌だぁぁ……わぁぁん、ずっと夢にまで見た、趙雲さまにお会いしたかったのにぃぃ。赤顔、髭親父! ……趙雲さまがこんなのだったら嫌だよぉぉ……!」
泣き出した桃子に、慌てて、
「桃子どの! これはうちの父です! 趙雲将軍ではありませんよ? 大丈夫です! 趙雲将軍は美形です!」
「何を抜かすか~! この愚息が! わしの血を引いとると言うのに、失礼な!」
「五月蠅いのぉ……桃子どのだったかの? お体は如何かの?」
関聖帝君の巨体が蹴り飛ばされ、姿を見せたのは、25歳余りか、桃子が今まで見た美形を優に越えた美貌の主。
艶やかな黒髪、整った顔立ちに、少したれ目の黒目の大きな青年を、ぼぉぉっと見つめ、次の瞬間、
「もう、これで消滅してもいい! う……うぇぇぇ……趙雲さまに会えたぁぁ……!」
ビエビエと泣きじゃくり始める。
「いや、桃子どの? 消滅してはなりませんぞ? 私は、貴女と友達になりたいのだが……駄目だろうか?」
「と、友達に……!」
「貴方はとても賢く、学問もお詳しいと伺っておりますのでな? 孔明どのも……」
「趙雲さまがいいです!」
「ガーン! 嫌われている、初対面で……」
孔明の声に、涙声で、
「一応、末端でもお伺いしております。……孔明どのは奥方とご令嬢である果仙女がおいでと伺っております。ので、変な噂がたって、お二方を悲しませたくはないのです! ……それに、趙雲さまにお会いしたかったのですぅ! ……また地獄に落とされてもいいですぅ……!」
泣きじゃくる桃子の一言に、冗談の影もないと悟った周囲は蒼白になる。
諸葛孔明は、
「子龍どの! しばらく、この方についてあげて下さい! 桃子どのでしたね? 子龍どのと、元気になるまでお話など如何です?」
「いえ、もう、お会いできただけで……」
「それは残念です。桃子どのと私は友人で、これで会えぬなど……」
美貌の主が眉をひそめ、悲しげな顔をする。
「桃子どの……友として、元気になるまで会いに来てもよろしいかな?」
「で、でも、趙雲さまにご迷惑になってしまっては……恋人の方がおられたら悲しまれますよ? まぁ、私は心配される程、可愛くも綺麗でもないので、思われないでしょうが……外見の年もおばさんですし」
えへへ……
と笑う桃子に、子龍は、
「は? ご自分の外見の年はお分かりになられぬのか? 貴方は今、大体15歳位ですが?」
「えっ? 嘘?」
「本当ですよ」
水盤を示し自分の顔を見た桃子は、
「えぇぇ? 趙雲さまを見たら……自分が平凡で……良かったです!」
「平凡……」
泣き顔ではあるが、大きなたれ目の少女である。
美貌とは違う、幼い印象の顔立ちに髪は長い。
身長位は伸ばしているだろうか?
しかし、真っ黒ではなく、濃い茶色である。
可愛らしい……と言うだろう。
「えっと、これだけ伸ばしたのは、昔ですね。やっぱり重いです。切っちゃいましょう。すみません。スッパーンと、肩まで誰か切っちゃって下さい!」
その言葉にぎょっとする。
「と、桃子どの! 肩までスッパーンと? それ程美しい髪は早々知らぬ。勿体ないのではないかな?」
「趙雲さまに誉めて頂けた! 髪! どうしよう! 気を失いそうな位嬉しい……」
「いや、気絶されておるではないか!」
きゅぅぅ……
ぽてっと、寝台に横たわる……舞い上がり気絶する桃子に、さすがの子龍も絶句する。
「ジジイ。頼んだ。この奇っ怪な生き物を調教せい!」
「五月蠅いのぉ。髭親父。お前自身が調教されろ! まずは……関平(かんぺい)どの」
ニッコリと笑い、呼び寄せる。
先からおろおろとしていた少年である。
「桃子どのとわしは友人同士。でも、二人でおれば桃子どのが先程のように不安がると思うのだが、時々私や、黄夫人方とお話の際には共にいて貰えぬか?」
「は、はい!」
「では、桃子どの……」
呼び掛けられ目を開けた桃子は、子龍を見て、
「うわーん……夢じゃなかったぁぁ……趙雲さま! 赤いおじさんより、趙雲さまのお顔を見ていたいですぅぅ!」
と泣きじゃくるのを見て、関平は、
「趙雲どのオタクってこんなに変な人が多いんだ……恐ろしい。地獄に落ちてもいいって言ってた……」
と改めて思ったのだった。
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