悪夢を食べるのは獏、命を狩るのがヴァルキュリア(改訂予定)

刹那玻璃

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まゆらの恋……

趙雲さん……あんたもか……?

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 一応階層は違うが、世界中の神や中国で言う神に近い超人のいる空間……。

 生きていた世界とほぼ同じような地図の形を持っているのだが、如何せん、中国には神ではないが仙人と言う存在があり、父のような存在があり、方や真侑良まゆらの生まれた日本は、八百万やおよろずの神と呼ばれる程、神が多い。

「おや? こんにちは。紫蘭しらんどの」

 顔を覗かせたのは、同じ時を生き、もう少し長生きをした人物……諸葛孔明しょかつこうめいである。
 彼は、伝説では仙人となり、この空間で生きている。
 脇侍わきじと言うのは知られていないが、彼の片腕として知られていた趙子龍ちょうしりゅうと、奥方の黄月英こうげつえい夫人。
 そして、奥方に瓜二つのこちらも仙女となった諸葛果しょかつかと言う娘がいる。

「あ、孔明さま、子龍将軍、夫人……それに、果もお久しぶりです」
「お久しぶりです。所で、何かをされていらしたのですか?」
「あ、えと……」
「あぁ~! 紫蘭兄さまが、女人の手を握ってる~!」

 果の一言に、関平は、

「果! この方は眠ったばかりだ! 起こすな!」
「そうだよ? 果。騒々しいことはせずに率直に、『紫蘭どの。六礼りくれいはいつですか?』にしなさい」

 孔明の一言で、関平はぐったりし、虚ろな目で、

「さすがは親子……」

と呟く。
 すると、低く暖かい声が響き、

「孔明どの……お嬢様も悪ふざけは止めなさい。関平どの……この女人は、特例でヴァルキュリアになった、辛い輪廻を繰り返すと言う方ですかな?」
「……そうです。子龍将軍。北欧の階層の小野篁おののたかむら殿の元よりお預かりした方です。西王母さいおうぼさまに願い出て仙桃せんとうを戴きました」
「と言う事は、この女人は西王母さまが預かられていると言う訳ですな。この方の名前は……たま……」
「いえ、桃子とうこどのと言われます。桃の子供です」
「ほぉ……それは美しい名であられるな」

 言葉遣いはじじ臭く堅苦しいが、目の前の彼は、自分の外見よりも10才程年上の青年の姿で、顔立ちは絶世の美貌である。


 ちなみに、三国時代の人間で抜きん出て美しいと正史などにも記載されていたり伝説などでも伝わっているのは、荀彧じゅんいく、呉の周瑜しゅうゆしょく趙雲ちょううんと呼ばれていた。

 目鼻立ちは整い、髪の色は濡れたような艶のある漆黒、瞳も潤んだような黒目が大きいが、少したれ目。
 しかしその瞳の動きと微笑みで、人の心を鷲掴みにする。
 その上声も深みがあり、色気が入った声で、

「申し訳ござらぬが……」

と問いかけただけで、女官が腰を砕けさせたと言う実話がある。

「で、関平どのは、この方を?」
「この屋敷で……」
「それはなりませんの。私は反対致す」
「桃子殿は!」

 趙雲は首を振る。

「この桃子殿は何も悪くはござらん。悪いのは、この屋敷には女官以外は主以下皆男であろう? 女人の彼女が元気になり、そのままここでと言うのはまたおかしな噂が流れますぞ? 宜しいのですかな?」
「それは困ります! ではどうすれば……」
「孔明どのの屋敷でお預かりすれば大丈夫かと。奥方に姫様もおいでですし」
「じゃ、じゃぁ、お伺いしても……」

 言いかけたが、趙雲は、

「それは様子を見てからと、髭が来なければ結構ですぞ? 髭が来たらうるそうて、鬱陶しい。恋路は邪魔をすれば馬に蹴られるが、紫蘭どのの父親が来るならワシの愛馬の白竜駒はくりゅうくで蹴り飛ばしますので。ご安堵下され」
「……あの、わ、私は……?」
「構いませぬが、髭以上でも以下でも、女人に不埒な真似をするようであれば……」

 にっこり……

と微笑む、昔はぼうだったが、最近は奉納されたそう槍と言う武器を愛用している武人に、

「そんなことは致しません!」



 老獪な武人に必死に宣言をする関平だった。
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