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ヴァルキュリアになる前……記憶に残る過去
牛車……都と違う景色……
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為時は惟規に後を託し、出立する。
牛車牛車には、為時と桃子は共に乗った。
牛車の数を減らすことで、費用も減らすことが出来る。
そして桃子を守ることが出来る。
目を離さない……そして、その間に桃子の好きな漢詩を教えていくのである。
外も余り見せないようにしていた。
晴明は言っていた。
かなりの能力者だと……自分には力はないと思うが、父として、妻の忘れ形見である娘を失いたくはなかった。
「……それにしても、越後は上国。それなのに税が少ないというのが解せない……」
ふと呟く。
出立前に、あれこれと情報を得ておいた彼は、旅の間にどのような政務を行うかを考えようとしていたのだ。
上国、中国、下国と言うのは、当時のその国の裕福さのランクである。
ちなみに伊予も上国であり、伊予はイワシを始めとする魚介類を都に納めた。
越後も上国なのだが、食物……海の幸山の幸などや、田畑を耕して収穫して税として差し出す状況が、かなり……自分の前任者の時代に悪化していたのだ。
「もしかしたら、前任者の方は、高い税をかけて取り上げたものの、そのほとんどを懐にいれたのですわ。確か、道長さまの甥に当たる伊周さまは、どこから得たのか日々ランチキ騒ぎを起こしていると噂です。私はそういう方は好きではありません」
きっぱりと言い切る少女の幼さの中の強い意思……潔癖さに、微笑む。
「私は伊周どのにどうこうは言えないけれど、国の様子を見て、土地を肥やす、民に余裕を持てる方法を、その方策を考えようと思う。桃子も手伝ってくれるかな?」
「はい! お父様。私は頑張りますわ!」
瞳をキラキラさせる娘に、女性らしいことを一つ、教えることも出来なかった為時は残念に思う。
好奇心は旺盛な為、管絃はそれなりにこなしたが、身なりに気を使うことなど全く興味を示さない子に育った……。
「そなたは、お母さんに似ているというのに、すまぬな……飾りの一つも与えてやれなかった……」
「いいえ、私は、お父様に勉強を教えて頂けるだけで十分でございます」
「そなた、倫子さまの元で学ぶ間、色々言われたのではないか?」
「いいえ。何も」
ハッキリと言い切り、桃子は首を振る。
「財宝よりも、私はお父様に勉強を教えて頂けるだけで幸せです。それに、お兄様とお話をするのも……本当に私が男であったら、お父様とお兄様の手助けが出来るかもしれませんでしたわ。その事が残念でございます」
「桃子が息子なら、私はお母さんの思い出の縁を思い出せなくなってしまうではないか……娘で良かった……」
為時は子煩悩である。
何かと口うるさくなってしまう息子のことも本当は、自慢に思っていて、宮中では、親馬鹿で知られている。
娘を抱き締め頭を撫でると、
「少し疲れただろう? 旅は長い。風を浴びすぎては体に悪い。無理はしてはならないよ、良いね?」
「はい、お父様。到着してから、あちらを見るのが楽しみですわ」
「越後は寒いそうだ。雪も多く、海は波が荒いとか……」
「海? 湖……琵琶の湖のことですか?」
桃子の言葉に微笑む。
「琵琶の湖は、普通の水だけれど、越後の海は塩水だよ」
「塩水……」
ポカーンとする娘に微笑み、
「楽しみにしていなさい。でも、大人しくね」
と釘を指したのだった。
牛車牛車には、為時と桃子は共に乗った。
牛車の数を減らすことで、費用も減らすことが出来る。
そして桃子を守ることが出来る。
目を離さない……そして、その間に桃子の好きな漢詩を教えていくのである。
外も余り見せないようにしていた。
晴明は言っていた。
かなりの能力者だと……自分には力はないと思うが、父として、妻の忘れ形見である娘を失いたくはなかった。
「……それにしても、越後は上国。それなのに税が少ないというのが解せない……」
ふと呟く。
出立前に、あれこれと情報を得ておいた彼は、旅の間にどのような政務を行うかを考えようとしていたのだ。
上国、中国、下国と言うのは、当時のその国の裕福さのランクである。
ちなみに伊予も上国であり、伊予はイワシを始めとする魚介類を都に納めた。
越後も上国なのだが、食物……海の幸山の幸などや、田畑を耕して収穫して税として差し出す状況が、かなり……自分の前任者の時代に悪化していたのだ。
「もしかしたら、前任者の方は、高い税をかけて取り上げたものの、そのほとんどを懐にいれたのですわ。確か、道長さまの甥に当たる伊周さまは、どこから得たのか日々ランチキ騒ぎを起こしていると噂です。私はそういう方は好きではありません」
きっぱりと言い切る少女の幼さの中の強い意思……潔癖さに、微笑む。
「私は伊周どのにどうこうは言えないけれど、国の様子を見て、土地を肥やす、民に余裕を持てる方法を、その方策を考えようと思う。桃子も手伝ってくれるかな?」
「はい! お父様。私は頑張りますわ!」
瞳をキラキラさせる娘に、女性らしいことを一つ、教えることも出来なかった為時は残念に思う。
好奇心は旺盛な為、管絃はそれなりにこなしたが、身なりに気を使うことなど全く興味を示さない子に育った……。
「そなたは、お母さんに似ているというのに、すまぬな……飾りの一つも与えてやれなかった……」
「いいえ、私は、お父様に勉強を教えて頂けるだけで十分でございます」
「そなた、倫子さまの元で学ぶ間、色々言われたのではないか?」
「いいえ。何も」
ハッキリと言い切り、桃子は首を振る。
「財宝よりも、私はお父様に勉強を教えて頂けるだけで幸せです。それに、お兄様とお話をするのも……本当に私が男であったら、お父様とお兄様の手助けが出来るかもしれませんでしたわ。その事が残念でございます」
「桃子が息子なら、私はお母さんの思い出の縁を思い出せなくなってしまうではないか……娘で良かった……」
為時は子煩悩である。
何かと口うるさくなってしまう息子のことも本当は、自慢に思っていて、宮中では、親馬鹿で知られている。
娘を抱き締め頭を撫でると、
「少し疲れただろう? 旅は長い。風を浴びすぎては体に悪い。無理はしてはならないよ、良いね?」
「はい、お父様。到着してから、あちらを見るのが楽しみですわ」
「越後は寒いそうだ。雪も多く、海は波が荒いとか……」
「海? 湖……琵琶の湖のことですか?」
桃子の言葉に微笑む。
「琵琶の湖は、普通の水だけれど、越後の海は塩水だよ」
「塩水……」
ポカーンとする娘に微笑み、
「楽しみにしていなさい。でも、大人しくね」
と釘を指したのだった。
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