悪夢を食べるのは獏、命を狩るのがヴァルキュリア(改訂予定)

刹那玻璃

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お節介なおばちゃんヴァルキュリア……?

関平くんと、何でかお友だちになったんやけど……?

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「で、関平かんぺいくんは何しよんの? 今は、あの髭親父とこの絢爛豪華な関帝廟かんていびょうの表に出て、金運、財運、勝負運やったかな? 仕事運もか……のお仕事もあろがね」
「あ、弟の安国あんこくに頼みました。安国の方がきりっとした顔なので、参拝者の方に喜ばれるんですよね。それに僕と違って、武器を扱うのが上手かったので」

 関平くんはあっさり告げる。

 安国……関興かんこうと言えば有名だろう。
 219年に死んでしまった長男……らしい関平くんは、三国演義では養子として引き取られたとなっており、義父と共に命を断ったとされている。
 正史でも、伝が別に作られなかったのは『白眉最良白眉もっともよし』で有名な馬良ばりょうあざな季常きじょうもそうであり、関平くんの立ち位置は、ある程度そつなく立ち振る舞った、あのわがまま傲慢の父のサポートをしてある程度参謀も兼ねていたものと思われる。

「んじゃ、何でうちのとこにおるんで?」
「いえ、貴方が何故か調子が悪そうでしたので、今日は私が休みを貰ったので、一緒に点心おやつは如何ですか? ……僕たちの時代はここまでの風習はないのですが、最近はすごいですよね」

と、合図を送ると、次々と運ばれてくる。

 ゴマ団子、杏仁豆腐あんにんどうふ、桃まん、マンゴープリン、ライチや地方の果物の数々に小籠包ショウロンポウ水餃子すいぎょうざ焼売シュウマイ、春巻まで来ると、昼食である。

「水餃子は、味ポン酢と中国の……」
「味ポン酢で。小籠包! それにお茶や~! 烏龍茶? プーアル茶?」
「えぇ。参拝された方が、とても珍しい烏龍茶をお供え下さったんですよ」
「ちょっとお待ちぃや。そ、そそそ、それって……」

 目を見開きブルブル震える。

「ギャァァ~! それ、烏龍茶の最も高い、武夷岩茶ぶいがんちゃ大紅袍だいこうほうやがね! しかも、そんなに大雑把に淹れんといて~! 」

 関平くんの横の女官さんから、茶器一式を奪い取る。
 お湯を淹れようとしたのをそのまま覆ったのでお湯を被る。

百目鬼どうめきさん!」
「な、何考えとんで! だ、大紅袍を! 50グラム幾らすると思とんのや! 中国でも、国賓にしか出されへんのやで! そがいなやり方で淹れるな! それぞれお茶の特性があるんや! 一番美味しいって言うんがあるんやで! それも解らんのか! 一から入れ方を勉強し直さんか! ど阿呆! あぁぁ、良かったァ……大紅袍ちゃん! 助かったなぁ」

 周囲はあっけにとられるが、それを無視しお茶を確認する。
と、

「アッツゥゥ~! アホかァァ! 烏龍茶は沸騰したお湯で一箭目は、茶葉の汚れを軽く落とすための物で、飲むもんじゃないわ! 二箭目以降や! それ位分かれや! ど阿呆! 専門書読んで勉強セェや」
「百目鬼さん! 服を、服を脱いで下さい! 火傷が悪化します! 誰か、水を!」
「脱げるか~! このお茶を守らないかん! うちは……アダダダ……アツーイ! でも、大紅袍~! ウワーン」
「百目鬼さん!」
「大紅袍~!」



と言う具合で大騒ぎになったのだった。



 そして、手当てをして貰っている間に、

「小籠包……水餃子……うわぁぁーん……美味しそうだよぉ……食べたかった~! 久しぶりのごちそうがァァ!」
「又作って貰いますから! それに、大紅袍もちゃんと淹れられるように女官に勉強して貰いますので! 本当にすみません!」

とペコペコ謝る関平に、『陰険インテリエロ眼鏡』こと、上司の小野篁おののたかむらが、珍しくこめかみをグリグリしながら、

百目鬼真侑良どうめきまゆら……お前……人が折角頭を下げて探し回った、落ち着き先で最初から何考えてんだ! 馬鹿が!」
「大紅袍やで! 大紅袍! 烏龍茶の世界の頂点とも言われる、烏龍茶の中の烏龍茶! それをぉぉ! うちは、凍頂烏龍茶と鉄観音烏龍茶、水仙烏龍茶しか飲んだことないのに! 鳳凰単叢ほうおうたんそうに、武夷岩茶の白鶏冠はっけいかん水金亀すいきんき、#鉄羅漢_てつらかん__#、大紅袍で四天王! 他にも幾つかあるけんど、大紅袍を……あんな風に扱うなんて……ひどい、酷すぎや」

 本気で号泣する姿に、周囲は引いた。
 オタクだ……マニアだ……。

「えっと、えっと……じゃぁ、百目鬼さん! 泣かないで下さい! 珍しいお茶とか入ったら、差し上げますから、ね? これも、差し上げます!」
「……でも、大紅袍……超高級品……」

 びえぇぇ……。

 泣きくれる……。
 うつ伏せで背中の手当て中だが、大騒ぎしている間に仮の体の火傷が悪化し、皮がむけた。

「痛いですか?」
「嬉しすぎて泣けてくる……大紅袍……匂いだけで至福……」

 関平は、彼女の上司を見る。

「申し訳ない。関平どの。これは、変人なので、気にしないで下さい。お茶オタクなんですよ」
「オタクで悪いか~! あぁ! でも、茶器がない……」

 悲愴感漂わせる真侑良に、慌てて関平は、

「プレゼントします! 一緒に差し上げます! だから……」
「エェェ! ほんとに? うちに? だんだん……アダァァァ~! しみる、しみるぅぅ!」
「皮がむけましたから。数日大人しくしてください」

 手当てをした死神専門の医師に、あっさりと言われ、化膿止めの薬と注射をされ、大人しくしているようにと念を押されたのだった。
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