悪夢を食べるのは獏、命を狩るのがヴァルキュリア(改訂予定)

刹那玻璃

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お節介なおばちゃんヴァルキュリア……?

まゆらは落ちこぼれで、始末書が積み上がっています。

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 うちは、ヴァルキュリア。

 ヴァルキリー、ヴァルキューレとも言うけど、結局のところは、簡単に言うと死神、もしくは死神の代理やな。
 仕事は世界中に起こる戦いに赴いて、敵に背を向けず戦い抜いたって言う強い魂をよう狩りに行く。
 言うても、うちは下っ端も下っ端。
 全然狩ることせぇへんし、逆に他のわっかいピッチピチの御姉様方に横取りされたり……なぬ? ピッチピチは古い? おばはんや?
 そらおばはんや。

 何の因果か、死んだ場所と言うか、連れてこられたんがここなんや、仕方なかろがね。

 一応、仏教徒やったんやけど、死んだら、又輪廻の輪に送り込まれて生まれ変わる……それがいややって言うたんや。
 閻魔大王さんに。
 ほんなら、目付きの悪い陰険インテリエロ眼鏡こと小野篁おののたかむらが、最近、死後の世界も色々あって部署が増えたからと、その新しい部署にうちをいれてくれやがった!

 それが、北欧神話のヴァルキュリア。
 ヴァルキュリアも一応部署が二つあって、主神オーディンの部下か、美貌の女神フレイアの部下かになるんやけど、フレイアさんが嬉しそうに、

「あっらぁ。この子ならそんなに美人じゃないから、私のところにお願いねーん?」

と言ってくれたので、一応その部署にいる。



 でもなぁ? 戦争なんか、あんたら見てたいと思うか?

 昔はなぁ? フレイアさんが喜ぶような、一対一の戦いや。
 でも、今なんか、無差別ロケット砲やで?
 散弾銃に拳銃や。
 それを敵味方も関係なくぶっぱなすんが、それが戦争や。

 そんな中からラグナロクって言う『最終戦争』の時に戦って貰う為の戦士の魂を集めろって言うんが、そもそもおかしかないか?

 一人殺したら殺人者。
 でも、数百人殺したら英雄……ってあるかや。
 一人も大勢も変わらせん。
 どっちもおんなじ人殺しや!

 それに、自爆テロも自分も死ぬって、おかしいやないか?
 命って一つやろ?
 宗教に、自殺しろって命ずる上司がおるんか?
 おかしかないか?
 それを素直に聞いて、何が英雄やねん。
 ただの人殺しや!

 そんな人間の魂をとってきて、ここの大きい屋敷に置いて、日々魂だけの為ボロボロになるまで戦わされ、晩になって食事をとって、酒を飲んでらんちき騒ぎ。
 寝たら元に戻って戦うって……そんなアホらしい!
 同僚は、嫉妬心の強いフレイアさんに隠れて、そん人らと付き合いよるんもおるらしいけど、うちは絶対にいやや。

 何が英雄や、なんがラグナロクや。
 人殺しに死んでも人殺せ言いよるもんや!
 おかしかないか?
 しかも、毎日毎日食事与えて、寝床も何もかんも不自由なく……。



 死ぬ前の世界じゃ、その人らが殺した人々の家族の嘆きが響く……。

『まだ、幼かった我が子が……』
『もうすぐ、孫が生まれるところでした……初孫だったのに』
『お母さん!』



 それを見て見ぬふりをして、自分等の終焉の時を怖がり、人殺しを集めるんがこの世界なんか?
 皮肉やなぁ……。

 うちは雷の神トールさんや力の神チュールさんは友達として好きやけど、オーディンさん。あんたは嫌いや。
 ロキに怯えるくらいなら、味方につけてしまえば良かったんや。
 それもできんと、手綱をすり抜けたロキが危険だと取っ捕まえて毒へびの毒を口に垂らす……そんなえげつないいやがらせや、子供たちをひどいことせんかったら良かったんや。

 ……めんどくさい。

 それならうちが、仲ようなったフェンリル狼と、その兄弟たちをけしかけたるわ。



「あらぁ……今日も一つも魂をとってこれなかったのかしらぁ?」

 その声に振り返る。

「あぁ、そうなんですよ……最近は英雄っていませんね。見つかりませんでした」
「あらあら、いつもそうよね……うふふ。私は今日は7つよ」

 見事なレースクイーンのコスプレの似合う同僚が、長い金髪をかきあげる。

「コツを教えてあげましょうか?」
「いえいえ、そんなことしたら、先輩の成績に影響があったら困りますよ。う、私はこんなにどんくさいので……迷惑だけはかけたくないです」
「それもそうね……じゃぁ、頑張って頂戴ね」
「はい。ありがとうございます」

 ため息をつきつつ、よっしゃぁと内心拳を掲げる。

「書類整理。これがましや! 今日はやったるわ~!」

 まゆらは叫んだのだった。
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