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第10章
番外編:可愛い子の家出
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ところで、バロンは小さい時から色々と……無駄に溺愛するあの! 色々なものを貢いでくる父に何でもかんでも贈られていた。
母に贈ればいいのに……と毎回毎回呆れるほど、アクセサリーを、特に首が隠れるチョーカーやピアスを渡してこられ、いい加減ウザかったのを覚えている。
双子の妹のメイは少しつり目だがそれはそれで可愛いし、髪飾りやチョーカーが絶対に似合うのに、何故かバロンにと言う。
メイにと言うと、あからさまにがっかりするし、母に助けを求めても、
「妻にプレゼントを忘れる馬鹿だけど、浮気しないならいいわ」
とため息混じりで言われ、顔をしかめる。
一応バロンも男である。
父とはいえ同性からチョーカー……嬉しくはない。
側から見れば、所有物ではないか!
自分はものではない!
自我が芽生え、次第にムカついてきた時……母の誕生日プレゼントをすっかり忘れ、またバロンに渡してくれやがったため、夫婦喧嘩になった。
まぁ、一方的に元戦士の母が怒り狂い、父を殴り飛ばした翌日の早朝、家出を敢行したのである。
ついでに持ってきたのは、父が自分に贈ってきたプレゼントの数々。
しかも子供に贈っているのについている宝石が一級品揃い。
全部ルビーやスピネル、ガーネット、レッドコーラル、レッドベリル、トルマリン、アレキサンドライトにロードクロサイト。
透明度も高いものが多く、これを売り払えばひと財産ができるだろう。
どうして妻ではなく息子に渡すのか不思議で仕方がない。
それを手にラインハルトの元を訪れ、昨晩のことを説明し全部渡す。
「(ラインハルト様。父がウザいので家出します。セシル兄様のところに行っていいですか? 僕のせいで母様が家を壊すので……)」
「はぁ? お前に何か……」
「(母様は大丈夫です。母様は普通に可愛がってくれるので。父がウザいんです! 本当に僕をペット扱いするんです! 猫の鈴じゃあるまいし! 毎回毎回、こんなの僕に結んで喜んでる変態ですよ!」
唇を曲げ、持ってきたものを次々に見せる。
「(子供の僕にこれは異常です。変態です! 死んでくれやがれ! って思います!)」
最初は普通のものだろうと思っていたラインハルトだが、公外で側近がしていたことにドン引きする。
いや、宝石商を招いたり、他国や他領に出向いた際に購入していたことも知っているが、妻に贈るものだと思っていたのに、溺愛するとはいえ息子に贈るものとしては限度を超えている。
しかも全部赤系ばかり……一つ二つなら可愛いが、小さいものなら場所を取らないだろうが、粒が大きく武器を手にする人間には邪魔であることこの上ない。
「……アホだな。アイツ」
「(ラインハルト様。しばらく行っていいですか?)」
「おう、行け行け! 行き先は黙っておいてやる! その間しごいとくわ」
「(調教しておいてください)」
「……お、おう!」
据わった目で去っていくバロンを見送ったラインハルトは、
「どうすっかなぁ……これ。ウザいわ。俺なら2個目でアイツを殴るわ。優しい息子でよかったなぁ……」
と呟いたのだった。
母に贈ればいいのに……と毎回毎回呆れるほど、アクセサリーを、特に首が隠れるチョーカーやピアスを渡してこられ、いい加減ウザかったのを覚えている。
双子の妹のメイは少しつり目だがそれはそれで可愛いし、髪飾りやチョーカーが絶対に似合うのに、何故かバロンにと言う。
メイにと言うと、あからさまにがっかりするし、母に助けを求めても、
「妻にプレゼントを忘れる馬鹿だけど、浮気しないならいいわ」
とため息混じりで言われ、顔をしかめる。
一応バロンも男である。
父とはいえ同性からチョーカー……嬉しくはない。
側から見れば、所有物ではないか!
自分はものではない!
自我が芽生え、次第にムカついてきた時……母の誕生日プレゼントをすっかり忘れ、またバロンに渡してくれやがったため、夫婦喧嘩になった。
まぁ、一方的に元戦士の母が怒り狂い、父を殴り飛ばした翌日の早朝、家出を敢行したのである。
ついでに持ってきたのは、父が自分に贈ってきたプレゼントの数々。
しかも子供に贈っているのについている宝石が一級品揃い。
全部ルビーやスピネル、ガーネット、レッドコーラル、レッドベリル、トルマリン、アレキサンドライトにロードクロサイト。
透明度も高いものが多く、これを売り払えばひと財産ができるだろう。
どうして妻ではなく息子に渡すのか不思議で仕方がない。
それを手にラインハルトの元を訪れ、昨晩のことを説明し全部渡す。
「(ラインハルト様。父がウザいので家出します。セシル兄様のところに行っていいですか? 僕のせいで母様が家を壊すので……)」
「はぁ? お前に何か……」
「(母様は大丈夫です。母様は普通に可愛がってくれるので。父がウザいんです! 本当に僕をペット扱いするんです! 猫の鈴じゃあるまいし! 毎回毎回、こんなの僕に結んで喜んでる変態ですよ!」
唇を曲げ、持ってきたものを次々に見せる。
「(子供の僕にこれは異常です。変態です! 死んでくれやがれ! って思います!)」
最初は普通のものだろうと思っていたラインハルトだが、公外で側近がしていたことにドン引きする。
いや、宝石商を招いたり、他国や他領に出向いた際に購入していたことも知っているが、妻に贈るものだと思っていたのに、溺愛するとはいえ息子に贈るものとしては限度を超えている。
しかも全部赤系ばかり……一つ二つなら可愛いが、小さいものなら場所を取らないだろうが、粒が大きく武器を手にする人間には邪魔であることこの上ない。
「……アホだな。アイツ」
「(ラインハルト様。しばらく行っていいですか?)」
「おう、行け行け! 行き先は黙っておいてやる! その間しごいとくわ」
「(調教しておいてください)」
「……お、おう!」
据わった目で去っていくバロンを見送ったラインハルトは、
「どうすっかなぁ……これ。ウザいわ。俺なら2個目でアイツを殴るわ。優しい息子でよかったなぁ……」
と呟いたのだった。
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