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第10章

隠し扉侵入作戦!

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 赤い扉……この扉の奥に住まうのは、処刑執行人の一族。
 しかし、今は代替わりというより、最後の孤高の一族は絶えた。
 孤高と言うより、孤独であり、街より外れた場所に居を構えている。
 街の者はほとんど知られなかった、処刑執行以外の仕事をしていることも、家族構成すら。

 最近、騎士達が白木の上品な棺を二つ、騎士団旗をかけ、馬車に乗せて運んで行き、代わりに手足に枷と鎖に繋がれた家族が連れてこられた。
 その彼らは事件を起こし、現在また別の場所、街の牢に引きずられていった。
 代わりに騎士と治療師が守っている。

 ユールが声をかける。

「こんにちは!」
「ユール坊っちゃま。それに、グイン、バロン、メイ。どうしたんですか?」
「久しぶりです」

 グイン達は頭を下げる。

「あ、悪いんだけど、父さんから話聞いたかな?」
「確か、この奥の調査ですか? あ、あの時大怪我をされた……」
「あぁ、兄さんは無事。アルフィナが治したんだ」
「アルフィナ様と言うと……えと、あのお小さい、アルフレッド様のお嬢様ですか?」
「そうそう。もちろん一人じゃなく、アソシアシオンからお越しの第二枢機卿様が一緒に。素晴らしいと思った。で……」

 ユールはキョロキョロとするが、マゼンタが、

「こっちでしょう。だって、こちらはどう見ても倉庫とか、ハーブの乾燥室よ」
「そっか、じゃぁ行くか」
「ちょっと待ちなさい。勝手に行かないの! さっき決めたでしょ!」

咎めると、アソシアシオンのお辞儀をする。

「初めまして。私は、元アソシアシオンにてアーティス様の元で聖女の修行をしておりました、マゼンタと申します。本日、アーティス様方の命により、この奥の確認をさせて頂きます。注意して向かいますが、もし怪しいものが溢れ出たりとか、感じたことのない揺れなど気になることがありましたら、滞在している方々、特に術師関係の方々から優先に、それに近くの人々に避難を呼びかけて頂きますようお願い致します。私共は子供ですが、ある程度覚悟を持ち侵入します。ですが、危険と思えばすぐ逃げます。ですので、こちらの方は結構です。地域の皆さんを、優秀な方々にお任せいたします。どうぞ宜しくお願いします」
「マゼンタ様、私共もついていきましょうか? 数人は……」
「大丈夫です。私共は、少数精鋭ですぐに確認後、帰還いたしますので、どうぞ人民の命を最優先に」

 そう言い切ると、もう一度頭を下げて、歩き出す。
 お転婆そうに見えるが、歩き方はすっと宮殿を歩くように優雅な動き。

「じゃぁ、行ってくるわ」

 ユールと3人は、軽い足取りで追いかける。
 途中でバロンが振り返り、口パクで、

「(隠し扉、塞がれないように、しておいてね)」

と告げた。
 彼は後を追い、住居跡の一角で、隠しスイッチを押して開いた穴に入っていく5人を見送った。
 しかし、

「何か嫌な予感するわ、俺……。この穴から出る空気、薄ら寒いし……」

と言いつつ、周囲を見廻し、穴を一時的に隠すものを探し、重厚なテーブルを移動させる。

 これは、もし何かが倒れてきても、一時的に穴が塞がれないようにする為である。
 重厚なテーブルなら、部屋の周囲の棚が倒れても、支えられて入った5人が逃げる方法があるはず。

 そしてそのまま、元の門の前に立ったのだった。
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