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第5章
アルフィナとセシル
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父に抱っことおんぶをされたまま寝入っていたアルフィナは、目をこすりながら身体を起こす。
ベッドの側の椅子には、本を読みながらこちらを心配しているセシルがいる。
「おはよう。アルフィナ」
「セシルおにいしゃま、おはようごじゃいましゅ……おとうしゃまは……」
「あぁ、兄上は先までいたんだけど、着替えに行ってくるって。すぐ戻るよ?」
アルフィナを抱き上げると、自分の膝に座らせる。
「あ、目をこすっちゃ駄目だよ。目が真っ赤になるからね」
「あ、あい」
手を素直に下ろすと、セシルが読んでいた本を見る。
「こりぇはなんでしゅか?」
「あぁ、これは古い本でね。難しい文字なんだ。まだじっくりと勉強しなきゃいけないと思ってるんだ」
「……? むじゅかしい? んっと、わかゆでしゅ」
「えっ? 分かるの?」
「あい」
アルフィナは頷き、開けていたページの一部分を指し示し読み始めた。
「えっと……い、『インマヌエル1世陛下は、息子のバルナバーシュ猊下を逃がそうとしたが、娘婿クヌートの計略により息子を捕らえられ、それを脅され命を絶った。バルナバーシュ猊下の妻は子供を差し出し命乞いをし、その子供たちは代々罪人の処刑人として生かされることになった。クヌートは大罪人である。最初の奥方であるインマヌエル1世陛下の娘と離縁幽閉し、すぐにバルナバーシュ猊下の妻を妻にして、生まれた次男を次の王としようとした。しかし、その行いは神は許さなかった。次男は親の罪を被り生き絶えた。次に生まれた息子達も幼くして逝った。最初の奥方であるインマヌエル1世の娘は夫によって偽りの聖女として振舞う事を強要されていたが、後に、毎日父と弟の行方不明とその家族の事を祈り続け、自分の命と引き換えにクヌート夫婦に永遠の時を繰り返す罪を与えて貰った。跡はインマヌエル1世の嫡孫である長男が継いだ。その後、ごく稀に愚かな行為を行う王族を神が罰する事を、《クヌートの罪》と言う』……でしゅ」
「えっ……」
流暢な言語に、息を呑む。
確か、バルナバーシュはアルフィナを4歳と言っていた。
しかしこの本は、ルシアンに借りた古代の古語で、ルシアンとケルトが読める程度のはず。
アルフィナ達の一族は、この古語で生きてきたのだろうか。
「えっと、クヌートって人はどこにいるの? 書いてあるかな?」
「えっと……『バルナバーシュ猊下と反対の塔の地下深く』でしゅ。『猊下は神聖な神に準ずる存在、その方を穢してはならない』……でしゅ!」
「そ、そうなんだ……アルフィナはとても賢いね。お兄ちゃんビックリしちゃったよ」
頭を撫でつつ、本を閉じる。
「しょういえば、おにいしゃま。『しんきんこん』ってなんでしゅか?」
「し? しん……きん、近親婚? えと……うーん、もし、フェリシアがお兄さんと結婚するってなったら……」
「んっと、死んだ父が『先祖は、バルナバーシュ様の息子とクヌート夫妻の娘との間の末裔。近親婚だ。罪人と聖人の血を持つとは……非情な運命だな』って、行ってましゅた」
「はぁぁ!」
子供に何を教えたと言うよりも、子供ほど柔軟に何かを覚えようとするし、それだけ記憶しているのは、何度も父親が話して聞かせたのだろう。
だが、
「近親婚……さっき言っていたクヌートは再婚して、バルナバーシュ様の奥方との間に子供が生まれていると言っていたな……でも、次男以下息子は全員死に……娘は生きていた? その娘が……」
慌てて首を振る。
これ以上幼児に教えてはならない。
聞いたと知れたら、父親に殺されるだろう。
「えっと、アルフィナ、この事は……」
「聞こえてたけど……? 一体、娘に何を教えようとするのかなぁ。アルフィナおいで?」
アルフレッドは娘を抱き上げ、高い高いする。
「私の可愛い姫はご機嫌みたいだね。アルフィナ」
「おとうしゃま。えと、しゃっきはごめんなしゃい……」
「何が? お父様は怒ってないし、何のことかな? アルフィナがお父様に抱っこって言っただけだよね? お父様は嬉しかったよ」
ぽふんと抱きしめ頭と背中を撫でる。
「お父様はアルフィナが大好きだよ。それ位で嫌いになったりしないよ。大好きだし愛してるよ」
「おとうしゃま……アルフィナもだいしゅき!」
「アルフィナとお父様は仲良しだからね」
言いながら、セシルに口パクで、
『あとで、アルフィナの言った事を教えること。バルナバーシュ様に聞くから』
『はい、兄上』
セシルの思いは当然幼いアルフィナには届いておらず、悔しがるのだった。
ベッドの側の椅子には、本を読みながらこちらを心配しているセシルがいる。
「おはよう。アルフィナ」
「セシルおにいしゃま、おはようごじゃいましゅ……おとうしゃまは……」
「あぁ、兄上は先までいたんだけど、着替えに行ってくるって。すぐ戻るよ?」
アルフィナを抱き上げると、自分の膝に座らせる。
「あ、目をこすっちゃ駄目だよ。目が真っ赤になるからね」
「あ、あい」
手を素直に下ろすと、セシルが読んでいた本を見る。
「こりぇはなんでしゅか?」
「あぁ、これは古い本でね。難しい文字なんだ。まだじっくりと勉強しなきゃいけないと思ってるんだ」
「……? むじゅかしい? んっと、わかゆでしゅ」
「えっ? 分かるの?」
「あい」
アルフィナは頷き、開けていたページの一部分を指し示し読み始めた。
「えっと……い、『インマヌエル1世陛下は、息子のバルナバーシュ猊下を逃がそうとしたが、娘婿クヌートの計略により息子を捕らえられ、それを脅され命を絶った。バルナバーシュ猊下の妻は子供を差し出し命乞いをし、その子供たちは代々罪人の処刑人として生かされることになった。クヌートは大罪人である。最初の奥方であるインマヌエル1世陛下の娘と離縁幽閉し、すぐにバルナバーシュ猊下の妻を妻にして、生まれた次男を次の王としようとした。しかし、その行いは神は許さなかった。次男は親の罪を被り生き絶えた。次に生まれた息子達も幼くして逝った。最初の奥方であるインマヌエル1世の娘は夫によって偽りの聖女として振舞う事を強要されていたが、後に、毎日父と弟の行方不明とその家族の事を祈り続け、自分の命と引き換えにクヌート夫婦に永遠の時を繰り返す罪を与えて貰った。跡はインマヌエル1世の嫡孫である長男が継いだ。その後、ごく稀に愚かな行為を行う王族を神が罰する事を、《クヌートの罪》と言う』……でしゅ」
「えっ……」
流暢な言語に、息を呑む。
確か、バルナバーシュはアルフィナを4歳と言っていた。
しかしこの本は、ルシアンに借りた古代の古語で、ルシアンとケルトが読める程度のはず。
アルフィナ達の一族は、この古語で生きてきたのだろうか。
「えっと、クヌートって人はどこにいるの? 書いてあるかな?」
「えっと……『バルナバーシュ猊下と反対の塔の地下深く』でしゅ。『猊下は神聖な神に準ずる存在、その方を穢してはならない』……でしゅ!」
「そ、そうなんだ……アルフィナはとても賢いね。お兄ちゃんビックリしちゃったよ」
頭を撫でつつ、本を閉じる。
「しょういえば、おにいしゃま。『しんきんこん』ってなんでしゅか?」
「し? しん……きん、近親婚? えと……うーん、もし、フェリシアがお兄さんと結婚するってなったら……」
「んっと、死んだ父が『先祖は、バルナバーシュ様の息子とクヌート夫妻の娘との間の末裔。近親婚だ。罪人と聖人の血を持つとは……非情な運命だな』って、行ってましゅた」
「はぁぁ!」
子供に何を教えたと言うよりも、子供ほど柔軟に何かを覚えようとするし、それだけ記憶しているのは、何度も父親が話して聞かせたのだろう。
だが、
「近親婚……さっき言っていたクヌートは再婚して、バルナバーシュ様の奥方との間に子供が生まれていると言っていたな……でも、次男以下息子は全員死に……娘は生きていた? その娘が……」
慌てて首を振る。
これ以上幼児に教えてはならない。
聞いたと知れたら、父親に殺されるだろう。
「えっと、アルフィナ、この事は……」
「聞こえてたけど……? 一体、娘に何を教えようとするのかなぁ。アルフィナおいで?」
アルフレッドは娘を抱き上げ、高い高いする。
「私の可愛い姫はご機嫌みたいだね。アルフィナ」
「おとうしゃま。えと、しゃっきはごめんなしゃい……」
「何が? お父様は怒ってないし、何のことかな? アルフィナがお父様に抱っこって言っただけだよね? お父様は嬉しかったよ」
ぽふんと抱きしめ頭と背中を撫でる。
「お父様はアルフィナが大好きだよ。それ位で嫌いになったりしないよ。大好きだし愛してるよ」
「おとうしゃま……アルフィナもだいしゅき!」
「アルフィナとお父様は仲良しだからね」
言いながら、セシルに口パクで、
『あとで、アルフィナの言った事を教えること。バルナバーシュ様に聞くから』
『はい、兄上』
セシルの思いは当然幼いアルフィナには届いておらず、悔しがるのだった。
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