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第3章

【番外編】ラインハルトの妻と両親

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 ラインハルトとその妻アルベルティーヌとの大恋愛は、有名である。

 ちなみに、ラインハルトは小さい頃からガキ大将な上に親族からも怖がられる容姿だった為、そういうのを全く気にしない姉の婚約者のカーティスの家で育てられた。
 カーティスの両親は外交官で忙しかった上に、偏見が全くなかったからと言うこともある。
 それに姉のサリサは弟が欲しかったのと、弟以上のお転婆だったから、弟に剣術を教えるのは自分だと猛特訓をしていた。

 アルベルティーヌとの出会いは3人が街にお忍びで行った時に、怪しい男達に追われていたのを見つけ、男達をとっ捕まえて、騎士団に突き出したのが最初である。
 隣の村の村長が祖父だと言う彼女は、ある重い病気の初期症状が現れていて、慌ててルシアンの家に連れて行き、治療をルシアンの父に頼んで、父の部下と共に隣村に向かった。
 すると、村はもう死者しかいない場所になっており、その上血の匂いに獣が魔獣化していた為、それらを殺し、火を放つしかなかった……。
 結局、少女以外生き残った者がなく、病気が治ってから故郷のことを伝えるとショックで泣き暮らすアルベルティーヌを、ラインハルトはつきっきりで面倒を見た。

 その後、ラインハルトや姉の侍女として、一緒に勉強や礼儀作法を学び、母后の元に侍女見習いとして出向く予定だった。
 そして、ラインハルトの両親はラインハルトに見合いを勧めたが、ラインハルトは高慢な令嬢よりいつも側に居るアルベルティーヌを妻に求め、結婚した。



「でも、不思議ですわね」

 夫が戦場におり、領地を義理の両親と共に治めているアルベルティーヌは、休憩中におっとりと義母に話しかける。

「どうしてでしょう? ラインハルト様はあんなに凛々しくて優しい方ですのに……戦場の魔物だなんて、本当に本当に腹立たしいですわ」
「……仕方がないのよ。あの子の髪が白銀……瞳が私と同じ紫……魔物の瞳とも言うわ」
「そんな! こんなに美しい瞳、私は平凡ですから素敵ですわ」

 アルベルティーヌは可愛らしい。
 金髪にグリーンの瞳の清楚な美人である。
 その美しさは長男が受け継いでおり、次男はラインハルトに似ている。
 しかし、息子達の瞳は父と同じ紫で、髪は金髪。
 アルベルティーヌは二人を可愛がっていて、父と共に戦場に向かい、現在王都にいる夫と息子達を心配している。

「私も、武器を持てるようになればよかったです」
「それはやめてくれぬか。サリサのようになる」

 困ったような顔になる、老齢だがかくしゃくとした男。
 艶のある髪は白銀である。

「本当にあの娘は……誰に似たのだ」
「貴方ですわ」
「お義父様ですわね」
「……あそこまでお転婆に育つと、どうなることかと思ったが……フェリシアがどうなったのか心配でならん」

 サリサは嫁ぎ先で二男三女を儲けたのだが、今現在、末のフェリシアが、何の落ち度もないと言うのに捕らえられ、牢獄に繋がれている。
 息子や孫には、即刻隣国とのことを放置して、サリサやフェリシア達を救い出せと使いを送ったのだが、連絡がない。
 10年前に位を息子に譲ってからは、娘の家に行ったり、娘婿のカーティスや外孫達に会いに行っていたのだが……。

「やはりわしがいくべきだったか……あの小童こわっぱめ! 我らを愚弄するとは! 後悔させてくれる!」

 呟くと、扉がノックされ、

「奥様! 大旦那様! 大奥様! 母后アマーリエ様から使いが参りました!」
「アマーリエ様か!」

国王の義母であり、宰相のアルフレッドの母……ラインハルト達を自分の子供のように可愛がる方である。
 慌てて立ち上がる。

「失礼致します。先代騎士団長閣下。そして奥方様がた」

 丁寧にお辞儀をする。

「先代閣下……申し訳ございません。挨拶を後回しと致します。主、母后様より言伝をお伝え致します。『幸福の翼を折りし愚か者、神の怒りを買い永遠の時を生き続ける。幸福の翼は、神の使いにより翼を広げ我が巣に戻る』とのことです」
「ちょ……ちょっと待ってくれ……意味が……」
「お義父様……『とらわれの身となっていたフェリシア様は救われた。フェリシア様にあり得ぬ罪を着せた者達が、神様から裁きを受けた。フェリシア様方は皆、母后様の元にいる』と言うことですわ。何か色々とあったようですが、母后様や宰相様はきっと守って下さいますわ」
「何故そこまで分かる?」
「セシルに聞きましたの。フェリシア様のお名前は『幸福』という意味があるのですわ。お義兄様がどうしてもつけたかったそうですの」
「まぁなぁ……」

 夫婦は遠い目をする。

 娘夫婦の子供達は上の4人は、男は父親似の策略家、娘は母親に似て武器を持つどちらも気性の激しいところがある。
 しかし、末のフェリシアは父方の祖母に似て、愛らしく可憐で姉達のように武器を持たない子供に育った。
 それに、カーティスももう過激な娘は欲しくないと、可愛らしいものを集め、読書や裁縫、マナーなどを教え込んだ。
 だが、5歳の時に聖女としての能力に目覚め、人生が変わったのである。

「……なぁ、アルベルティーヌ。わしらも王都に行くか?」

 問いかける義父に首を振る。

「いいえ、お義父様。お義母様。お二人は行かれて下さい。私はこの領地を当主の妻として守らねばなりません。国境がもし攻められた時、騎士が逃げ込むのはここです。ラインハルト様の妻として領地を守るのが私の役目です」

 言葉はしっかりしているが、視線は迷っている。

「ラインハルト様やセシルやユールが心配ではありますが、私はこの役目を果たさなければ、この家に嫁いだ者として、何をしていると思われますわ」
「……それでこそ、我が娘! そうだな。わしらもここに留まろう。わし程度でもおらんよりマシだろう」
「そうですわね。フェリシアや、サリサ達が無事であることを感謝しましょう」

 ラインハルトの家族は、王都の家族の無事を感謝するのだった。
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