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「……やばくね?」
《残骸》から緊急に届いたメッセージに、呟く……カズール伯爵補佐シエラシール。
ちなみに、シエラの側近である甥のシュウは、可愛い愛妻の元に行くと離れており、入れ替わりに来てくれた幼なじみのフィアがお茶を淹れている。
フィア……マルムスティーン侯爵の次子で、最近まで白騎士団長としていろいろな情報に関わってきた彼は、カップをテーブルに置きながら問いかける。
「……何がやばいの? 兄さま」
「だって! これ見てよ! エイ兄さまがぁぁ!」
「ちょっと見せてね?」
シエラが差し出した紙を読み、
「……幾つくらいかわかりますか? それに、何処出身の子とか……」
「あ、こっちに、最初、レイノルドがヴェンナード領から連れてきた時の情報」
棚に置いていた名簿とメモを引っ張り出す。
周りに置いていた資料も全部雪崩落ちたが、後でフィアが直しておこうと思いつつ受け取る。
「……ヴェンナード領シェールダムに一年ほど前から住む……連れているのが小さな生き物……うーん、精霊? 守護? 名前がユーザーだけど、綴りは違う……年齢は10歳以下……グリーンのマント……」
「フィア、わかる? 一応、私がいない間のことだけど……」
「うーん……やばいってのはわかる。あ、この子が被害者。色々と狙われそうってことかな……」
「狙われる?」
シエラも自分の破壊的要素を気にして、片付けようとしているものの、フィアは止める。
シエラは動かないほうがいいのである。
動くだけで被害が拡大するのだ。
「青い目の子って、人身売買組織に狙われやすいんだ。だからルー兄さまは、そっち系の組織の潜入には関わらなかったんだよ。リズも狙われやすいでしょ? それにアーサー殿下もエドワードも、エージャもレーヴェ兄さまも青」
「……青って普通にあると思ってた」
「青はこの国以外の人には生まれにくいんだって。ちなみに、リズの妹は青みの強い紫だったから、愛玩用に売られたらしいよ」
「リズって誰?」
「ヴェンナード子爵。国王陛下の甥。ターリズ・リッセル・セインドル。その妹は、確か18歳になるんだったかな?」
その言葉を聞き、首を傾げ考え込む。
「そんな子いた? 確か、18年前にヴェンナードの前当主って、急死したんじゃなかった? 20年前には既に離婚。あのちびが生まれる前から揉めてたから、次生まれるって聞いてないよ?」
「異母兄妹。あ、本当に婚姻届は出されてたんだよ? でも、あのおばさんが、家のお金を使い込んでたりしてて……」
「あぁ、迷惑なおばさんだね……で、リズの妹を売ったっていうのは?」
「おばさんに決まってるでしょ。リズやボクの母様とか、アンおばさまが支援しないって言ったら、避難してたリズの義母と子供二人襲って、子供を売っぱらったんだもの」
「子供二人?」
自分が記憶している情報と人数が違うと混乱するシエラに、フィアはマジックバッグからとある厳重資料を差し出す。
ペラペラとめくり、頭を抱える。
「あのクソババァ! 50回くらい死にやがれ! 死にたいって思わせるくらいの激痛と、熱さと、痒み、眠れなくさせて……」
「はいはい。既にそれは続けてるそうだよ。騎士団から術師、医薬師団の方に貸し出されてます。ところで、リズの弟妹は、ジョナとジョーカって言う愛称なんだけど、リズと仲良しだよ。今、ヴェンナードの分家の家で育って、もう少ししたらこっちに住まいを移すみたい。あ、ジョーカは13歳だったかな? 本当は騎士の館にって言ってたけど、リズがもう泣きくれて……役に立たなくなったから、諦めてもらいました」
「……お疲れさま。で、このジョーカっていう子は、青系の目じゃないよね? この子の弟妹って説もない?」
「ないです。二人のお母さんは別の色だよ。青系はリズの父方もその色だし。他には……やっぱり隔世遺伝もあるのと……ここは、関係ないかな……他に気になる情報は……」
フィアは、胸ポケットから手帳を取り出すと、あるページを開きながら話し始めた。
「やっぱり! 兄さま……青色の目で、誘拐事件に巻き込まれた子供がいた!」
「よく知ってる子?」
「僕は会ったことあるけど、兄さまはないです」
「……誰?」
「ルー兄さまの奥さん。8年前に僕が保護しました。記憶がほとんどありません。でも最初、その一年ほど前、両親と彼女、侍女、御者と侍従の6人でヴェンナード領から馬車で移動中に襲われ、御者台にいた二人が振り落とされたらしくて街道で倒れていて保護。重症で治療中に亡くなってます。たぶん、馬が暴れて制御しようとしたのか、中から出た当主である父親が殺され、馬車にいたはずの3人が行方不明でした。約一年後、当主夫人らしい女性が遺体で発見。その後、ある組織を僕たちが追い詰め、少女を保護しました」
フィアは淡々と説明する。
確か、提出されていた報告書に目を通していたシエラは、思い出す。
侍女も安否は心配だが……、
「でも、侍女とこの子……関係ないよね? 年違うでしょ?」
「夫人が事件の頃、妊娠中だったの。出産前……安定期に入ったばかりで、家族と一緒に領地に向かうところだったんだって、親族が教えてくれたよ。それに、亡くなったその当主は、現在の国王陛下の父上……アヴェラート様の姉上の息子……つまり、陛下の従兄弟で、彼女は王太子殿下の再従兄妹です。亡くなった閣下も銀の髪と青い目だったと思います。もしかしたら、出産して生まれた子をそのまま……の可能性があります」
「胸糞悪い……この組織を、完膚なきまで叩き潰したい!」
「大丈夫! 末端までここは潰しまくってます!」
言い切るフィアは、可愛い顔をして、たった三年で7つの犯罪組織を潰し、幾つもの別の組織から賞金首として狙われている存在である。
「うーん……これもかなり気になるけど、この被害者であるユーザー卿だっけ? 私の記憶にない……強烈だったのが、兄さまか三馬鹿だったから……」
「ユーザー卿は余りシェールダムに来られてないですね。それにルー兄さまの奥さんは、怖い体験の影響で対人恐怖……なので、婿に来てもらえる人を探してて、でも何があるかわからないって遠巻きに見られて……その時にグランじいが、『これならタダで贈呈します。返品不可です』って、ルー兄さまを履歴経歴書つけて縛って連れて行っちゃった。彼女も人間不信に陥っていたけど、最初に助けて保護したのがルー兄さまだったから、心開いて、最近結婚」
何かを確認するように、その前後のページを確認しながら何度もめくっていたフィアだが、何かが思い出せないと言いたげに動かなくなる。
「どうしたの? 何か気になる?」
「……何か忘れてる……うーん……」
「何?」
「……あっ! 趣味がおかしいっていったんだ!」
手帳を急いで高速でめくり、
「あった! 兄さま! やっぱり! コイツ!」
あるページを指差し、シエラに向けた。
「趣味悪りぃなってルー兄さまが言ってました! コイツが当時紅騎士団副団長で、人身売買組織と繋がってた奴です!」
「……なんなの?」
文字を目で追いながら吐き捨てる。
「こんなのがいたの? しかも地方とはいえ、幹部クラスに」
「一応叩き潰したけれど、うぅーん……情報が足りない……兄さま! 僕も向こうに行ってもいいですか?」
「駄目! シュウの奥さんが妊婦さんで、私に時間を割かないでほしいから~! フィアがいないとこの部屋絶対荒れちゃう! マディ兄さまたちじゃ多分無理~!」
シエラは必死に頼み込む。
「今、結構私も余裕ないよ~! お願い!」
「えぇぇ~? 調査をさせて欲しいんだけどなぁ……《残骸》に明日と明後日!」
「無理! そうしたら、この書類片付けるの3日かかる~! じゃぁ、じゃぁ、フィアの代わりに、ウェイトとリオンならいいです!」
「了解。じゃぁ、二人にお願いするね! じゃぁ、兄さま。急いで頼んでくるから、兄さまは大人しく、くれぐれも、立ち上がったり、この雪崩れを治そうとか、余計なこと考えずに! じっとしててね!」
何度も念押しされたシエラは、落ち込みながらソファの上でじっと待つ。
いくら喉が渇いても……自分の破壊的要素を理解しているシエラだった。
フィアは、もうそろそろ帰宅をと準備していたウェイトと別の任務についていたリオンを捕まえ、追加した情報を共有することにし、二人は騎士団からのサポートとして《残骸》に向かうことになったのだった。
《残骸》から緊急に届いたメッセージに、呟く……カズール伯爵補佐シエラシール。
ちなみに、シエラの側近である甥のシュウは、可愛い愛妻の元に行くと離れており、入れ替わりに来てくれた幼なじみのフィアがお茶を淹れている。
フィア……マルムスティーン侯爵の次子で、最近まで白騎士団長としていろいろな情報に関わってきた彼は、カップをテーブルに置きながら問いかける。
「……何がやばいの? 兄さま」
「だって! これ見てよ! エイ兄さまがぁぁ!」
「ちょっと見せてね?」
シエラが差し出した紙を読み、
「……幾つくらいかわかりますか? それに、何処出身の子とか……」
「あ、こっちに、最初、レイノルドがヴェンナード領から連れてきた時の情報」
棚に置いていた名簿とメモを引っ張り出す。
周りに置いていた資料も全部雪崩落ちたが、後でフィアが直しておこうと思いつつ受け取る。
「……ヴェンナード領シェールダムに一年ほど前から住む……連れているのが小さな生き物……うーん、精霊? 守護? 名前がユーザーだけど、綴りは違う……年齢は10歳以下……グリーンのマント……」
「フィア、わかる? 一応、私がいない間のことだけど……」
「うーん……やばいってのはわかる。あ、この子が被害者。色々と狙われそうってことかな……」
「狙われる?」
シエラも自分の破壊的要素を気にして、片付けようとしているものの、フィアは止める。
シエラは動かないほうがいいのである。
動くだけで被害が拡大するのだ。
「青い目の子って、人身売買組織に狙われやすいんだ。だからルー兄さまは、そっち系の組織の潜入には関わらなかったんだよ。リズも狙われやすいでしょ? それにアーサー殿下もエドワードも、エージャもレーヴェ兄さまも青」
「……青って普通にあると思ってた」
「青はこの国以外の人には生まれにくいんだって。ちなみに、リズの妹は青みの強い紫だったから、愛玩用に売られたらしいよ」
「リズって誰?」
「ヴェンナード子爵。国王陛下の甥。ターリズ・リッセル・セインドル。その妹は、確か18歳になるんだったかな?」
その言葉を聞き、首を傾げ考え込む。
「そんな子いた? 確か、18年前にヴェンナードの前当主って、急死したんじゃなかった? 20年前には既に離婚。あのちびが生まれる前から揉めてたから、次生まれるって聞いてないよ?」
「異母兄妹。あ、本当に婚姻届は出されてたんだよ? でも、あのおばさんが、家のお金を使い込んでたりしてて……」
「あぁ、迷惑なおばさんだね……で、リズの妹を売ったっていうのは?」
「おばさんに決まってるでしょ。リズやボクの母様とか、アンおばさまが支援しないって言ったら、避難してたリズの義母と子供二人襲って、子供を売っぱらったんだもの」
「子供二人?」
自分が記憶している情報と人数が違うと混乱するシエラに、フィアはマジックバッグからとある厳重資料を差し出す。
ペラペラとめくり、頭を抱える。
「あのクソババァ! 50回くらい死にやがれ! 死にたいって思わせるくらいの激痛と、熱さと、痒み、眠れなくさせて……」
「はいはい。既にそれは続けてるそうだよ。騎士団から術師、医薬師団の方に貸し出されてます。ところで、リズの弟妹は、ジョナとジョーカって言う愛称なんだけど、リズと仲良しだよ。今、ヴェンナードの分家の家で育って、もう少ししたらこっちに住まいを移すみたい。あ、ジョーカは13歳だったかな? 本当は騎士の館にって言ってたけど、リズがもう泣きくれて……役に立たなくなったから、諦めてもらいました」
「……お疲れさま。で、このジョーカっていう子は、青系の目じゃないよね? この子の弟妹って説もない?」
「ないです。二人のお母さんは別の色だよ。青系はリズの父方もその色だし。他には……やっぱり隔世遺伝もあるのと……ここは、関係ないかな……他に気になる情報は……」
フィアは、胸ポケットから手帳を取り出すと、あるページを開きながら話し始めた。
「やっぱり! 兄さま……青色の目で、誘拐事件に巻き込まれた子供がいた!」
「よく知ってる子?」
「僕は会ったことあるけど、兄さまはないです」
「……誰?」
「ルー兄さまの奥さん。8年前に僕が保護しました。記憶がほとんどありません。でも最初、その一年ほど前、両親と彼女、侍女、御者と侍従の6人でヴェンナード領から馬車で移動中に襲われ、御者台にいた二人が振り落とされたらしくて街道で倒れていて保護。重症で治療中に亡くなってます。たぶん、馬が暴れて制御しようとしたのか、中から出た当主である父親が殺され、馬車にいたはずの3人が行方不明でした。約一年後、当主夫人らしい女性が遺体で発見。その後、ある組織を僕たちが追い詰め、少女を保護しました」
フィアは淡々と説明する。
確か、提出されていた報告書に目を通していたシエラは、思い出す。
侍女も安否は心配だが……、
「でも、侍女とこの子……関係ないよね? 年違うでしょ?」
「夫人が事件の頃、妊娠中だったの。出産前……安定期に入ったばかりで、家族と一緒に領地に向かうところだったんだって、親族が教えてくれたよ。それに、亡くなったその当主は、現在の国王陛下の父上……アヴェラート様の姉上の息子……つまり、陛下の従兄弟で、彼女は王太子殿下の再従兄妹です。亡くなった閣下も銀の髪と青い目だったと思います。もしかしたら、出産して生まれた子をそのまま……の可能性があります」
「胸糞悪い……この組織を、完膚なきまで叩き潰したい!」
「大丈夫! 末端までここは潰しまくってます!」
言い切るフィアは、可愛い顔をして、たった三年で7つの犯罪組織を潰し、幾つもの別の組織から賞金首として狙われている存在である。
「うーん……これもかなり気になるけど、この被害者であるユーザー卿だっけ? 私の記憶にない……強烈だったのが、兄さまか三馬鹿だったから……」
「ユーザー卿は余りシェールダムに来られてないですね。それにルー兄さまの奥さんは、怖い体験の影響で対人恐怖……なので、婿に来てもらえる人を探してて、でも何があるかわからないって遠巻きに見られて……その時にグランじいが、『これならタダで贈呈します。返品不可です』って、ルー兄さまを履歴経歴書つけて縛って連れて行っちゃった。彼女も人間不信に陥っていたけど、最初に助けて保護したのがルー兄さまだったから、心開いて、最近結婚」
何かを確認するように、その前後のページを確認しながら何度もめくっていたフィアだが、何かが思い出せないと言いたげに動かなくなる。
「どうしたの? 何か気になる?」
「……何か忘れてる……うーん……」
「何?」
「……あっ! 趣味がおかしいっていったんだ!」
手帳を急いで高速でめくり、
「あった! 兄さま! やっぱり! コイツ!」
あるページを指差し、シエラに向けた。
「趣味悪りぃなってルー兄さまが言ってました! コイツが当時紅騎士団副団長で、人身売買組織と繋がってた奴です!」
「……なんなの?」
文字を目で追いながら吐き捨てる。
「こんなのがいたの? しかも地方とはいえ、幹部クラスに」
「一応叩き潰したけれど、うぅーん……情報が足りない……兄さま! 僕も向こうに行ってもいいですか?」
「駄目! シュウの奥さんが妊婦さんで、私に時間を割かないでほしいから~! フィアがいないとこの部屋絶対荒れちゃう! マディ兄さまたちじゃ多分無理~!」
シエラは必死に頼み込む。
「今、結構私も余裕ないよ~! お願い!」
「えぇぇ~? 調査をさせて欲しいんだけどなぁ……《残骸》に明日と明後日!」
「無理! そうしたら、この書類片付けるの3日かかる~! じゃぁ、じゃぁ、フィアの代わりに、ウェイトとリオンならいいです!」
「了解。じゃぁ、二人にお願いするね! じゃぁ、兄さま。急いで頼んでくるから、兄さまは大人しく、くれぐれも、立ち上がったり、この雪崩れを治そうとか、余計なこと考えずに! じっとしててね!」
何度も念押しされたシエラは、落ち込みながらソファの上でじっと待つ。
いくら喉が渇いても……自分の破壊的要素を理解しているシエラだった。
フィアは、もうそろそろ帰宅をと準備していたウェイトと別の任務についていたリオンを捕まえ、追加した情報を共有することにし、二人は騎士団からのサポートとして《残骸》に向かうことになったのだった。
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