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新しいマントとブーツ
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「……ユーザー」
あったかい……もふもふに包まれて眠りたい……。
いつもはボロボロの薄い毛布かマントだもん……気持ちいいもん。
「ユーザー……起きて。出発の準備するからね」
その声に慌てて目を開けた。
陽の光に反射した鳶色の髪のレイ先生だ。
「あ、ご、ごめんなさい」
「疲れてたんだね。ププ。ユーザーを出してあげなさい」
きゅぅぅ……
「後で遊んでもらいなさい……ユーザー。今日はお昼過ぎまで空を飛ぶから、冷えないようにこのポンチョとブーツなどを身につけて。いくら夏と言っても、空は風が強くて体が冷えてしまうからね?」
「えっ……」
差し出されたグレーの大きな布とバッグ。
「あ、これはあの騎士団に置いてあったものでね? 新しいものじゃないけど、毛布やマントより扱いやすい」
「ポンチョ……」
「そう。広げてご覧。確か少し大きいかもしれないけど、手を出すこともできるから。そのまま上に被ってもいい」
広げてみると、グレーの布で作られたものでフードもついている。
バッグから中を出すと、長めの革のブーツと靴下と手袋。
「借りて……いいですか?」
「大丈夫だよ。こういったものは各騎士団に置かれているからね? 先に名簿に名前を書いておいたから、えっと、ユーザーってこの綴りでよかったかな?」
胸ポケットから手帳とペンを出すと、
《User》
と綴る。
ユーザーは首を振る。
「ボクの名前は《Uther》です。こうなります」
地面に指をつけて、文字を綴る。
「えっ? ダメだ。直してもらわなくちゃ。それに、この綴りだとユーサーという読みになるはずなんだけどね」
「えっと、ボクもよくわかりません」
シアなら何か知っているかもしれないけれど、シアはボクの小さい頃のことはあまり話したがらない。
もしかしたら、昔はユーサーと呼ばれていたのかもしれないけれど……。
「名簿に記載する名前はこの正式名で、普段呼ぶ名前はユーザーでいいかな?」
「はい」
「それじゃ、後で直すから、まずはブーツを履いてみよう。サイズが合うといいんだけど」
慌てて地面に座って残っていた布を解き、汚れを払うと靴下とブーツを履いてみる。
大きいみたいで、歩こうとすると脱げる。
膝をついて様子を見ていたレイ先生は、
「大きいみたいだね。でも、靴下のままだったら冷えてしまうから、到着までベルトを巻いておこう。手袋は大丈夫かな?」
「えっと……できました!」
「手袋も大きかったね……でも、これでポンチョを被って。荷物もシアも一緒に被ってしまえば、大丈夫だからね」
「はい!」
ポンチョを頭からかぶり歩き出そうとすると、足の裏……靴裏の厚みに驚く。
前の薄い布草履では石畳の感覚とか、尖った石、砂の感触がじかに感じられていたのに、しっかりとした硬さ。
「大丈夫?」
「足の裏、石で痛くないですね」
「そうだね。じゃぁ、出発が近いからこっちに」
「はい」
先を歩き、ボクを振り返って手招きしてくれる先生が嬉しくて、ボクは急いで追いかけた。
あったかい……もふもふに包まれて眠りたい……。
いつもはボロボロの薄い毛布かマントだもん……気持ちいいもん。
「ユーザー……起きて。出発の準備するからね」
その声に慌てて目を開けた。
陽の光に反射した鳶色の髪のレイ先生だ。
「あ、ご、ごめんなさい」
「疲れてたんだね。ププ。ユーザーを出してあげなさい」
きゅぅぅ……
「後で遊んでもらいなさい……ユーザー。今日はお昼過ぎまで空を飛ぶから、冷えないようにこのポンチョとブーツなどを身につけて。いくら夏と言っても、空は風が強くて体が冷えてしまうからね?」
「えっ……」
差し出されたグレーの大きな布とバッグ。
「あ、これはあの騎士団に置いてあったものでね? 新しいものじゃないけど、毛布やマントより扱いやすい」
「ポンチョ……」
「そう。広げてご覧。確か少し大きいかもしれないけど、手を出すこともできるから。そのまま上に被ってもいい」
広げてみると、グレーの布で作られたものでフードもついている。
バッグから中を出すと、長めの革のブーツと靴下と手袋。
「借りて……いいですか?」
「大丈夫だよ。こういったものは各騎士団に置かれているからね? 先に名簿に名前を書いておいたから、えっと、ユーザーってこの綴りでよかったかな?」
胸ポケットから手帳とペンを出すと、
《User》
と綴る。
ユーザーは首を振る。
「ボクの名前は《Uther》です。こうなります」
地面に指をつけて、文字を綴る。
「えっ? ダメだ。直してもらわなくちゃ。それに、この綴りだとユーサーという読みになるはずなんだけどね」
「えっと、ボクもよくわかりません」
シアなら何か知っているかもしれないけれど、シアはボクの小さい頃のことはあまり話したがらない。
もしかしたら、昔はユーサーと呼ばれていたのかもしれないけれど……。
「名簿に記載する名前はこの正式名で、普段呼ぶ名前はユーザーでいいかな?」
「はい」
「それじゃ、後で直すから、まずはブーツを履いてみよう。サイズが合うといいんだけど」
慌てて地面に座って残っていた布を解き、汚れを払うと靴下とブーツを履いてみる。
大きいみたいで、歩こうとすると脱げる。
膝をついて様子を見ていたレイ先生は、
「大きいみたいだね。でも、靴下のままだったら冷えてしまうから、到着までベルトを巻いておこう。手袋は大丈夫かな?」
「えっと……できました!」
「手袋も大きかったね……でも、これでポンチョを被って。荷物もシアも一緒に被ってしまえば、大丈夫だからね」
「はい!」
ポンチョを頭からかぶり歩き出そうとすると、足の裏……靴裏の厚みに驚く。
前の薄い布草履では石畳の感覚とか、尖った石、砂の感触がじかに感じられていたのに、しっかりとした硬さ。
「大丈夫?」
「足の裏、石で痛くないですね」
「そうだね。じゃぁ、出発が近いからこっちに」
「はい」
先を歩き、ボクを振り返って手招きしてくれる先生が嬉しくて、ボクは急いで追いかけた。
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