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第1章
旅立つ……飛鳥の地より難波津から
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斉明天皇7年1月6日。
数えで68歳となっていた斉明天皇は、前年に滅ぼされた百済を援けるということになり、筑紫の朝倉橘広庭宮に向かう為に船に乗った。
前年に難波宮に移っていた斉明天皇は、年もあってか余り体調は芳しくない。
しかし、それを口にすると、二人の息子の争いになるのではと黙っていた。
36歳になる中大兄皇子と呼ばれている葛城皇子は、気性が激しく自分の思い通りにならないと気が済まない。
再婚相手である舒明天皇との間に生まれた息子である。
後二人子供がおり、先の天皇である孝徳天皇の妃の間人皇女と、末っ子が大海人皇子。
大海人皇子は落ち着きがあり、そして気の強い兄に従いつつ、兄の失策を本人が気づかぬように裏で裁いている。
しかし……近くに来させると中大兄皇子が苛立つ為、距離を置き控える大海人皇子を翳の陰で見つめ小さく吐息を漏らした。
斉明天皇と呼ばれる前、皇極天皇とも呼ばれる前、宝皇女であった頃、用明天皇の孫である高向王と結ばれ漢皇子を授かった。
しかし、別れさせられ、舒明天皇の元に嫁いだ。
33歳の時、推古天皇34年(626年)に生まれたのが中大兄皇子である。
37歳の時に、舒明天皇の皇后となった。
しかし、当時でも高齢出産で、何とか3人の子供を出産でき、育ててきたが、どうしてこの歳になっても解放してくれないのか……もうどちらでもいい、良い歳になった息子に後を譲りたいのが本音である。
だが、強引で少々どころか自分から政治の実権を奪った中大兄皇子は、表向きは母を敬う形を取り、政治を動かす。
それは、あの時……自分の目の前で殺した蘇我入鹿と、余り変わりはない。
それが臣下か息子かの違いである……ただ、苛立ちと言うよりも諦めが先に立つ。
それよりも思い出すのは、昔のこと……。
もういない、もう二度と取り戻せない……権力とはほど遠かったが、幼い漢皇子を抱いて微笑みあった夫との日々。
「どうかなさいましたか?姫天皇さま」
気遣わしげに声をかけるのは、大田皇女。
中大兄皇子の娘で、大海人皇子に嫁いだ孫である。
当時はよくある婚姻である。
しかし、
「大田、こちらにお座り。その体で無理をするでない。なぜ来たのだ」
「夫を見送るのは辛かったのです」
言いつつ、裙で覆ったお腹はかなり大きくなっている。
今日明日生まれてもおかしくない。
「大田。何かあれば、すぐに言いなさい。鸕野讚良……キョロキョロとするでない。大人しく姉の傍に着いておれ」
「はい、姫天皇さま」
大田皇女と鸕野讚良皇女は同じ母親の姉妹で、大海人皇子に嫁いだ。
おっとりとした大田皇女と、お転婆で父親譲りの気性の激しい鸕野讚良皇女……。
中大兄皇子は何を考えているのか……額田王は大海人皇子の恋人であったと言うのに……。
「あ! 姫天皇さま。船が動きました!」
先程あれだけ言い聞かせたのに、鸕野讚良皇女は飛び出していく。
「……全く、困った娘よの……」
「鸕野讚良は優しい子ですよ」
大田皇女は微笑む。
「姫天皇さまもご無理はなさいませんように……お寒くはありませんか?」
この日は、現在の暦に直すと、西暦661年2月10日である。
幾ら、難波の海を出港したと言っても、一番寒い真冬である。
風も冷たく、特に老齢の斉明天皇には辛いに違いない。
「それに、伺いました。父上が、夫が姫天皇さまを気遣うのを無視して、今回お連れするのだと……神功皇后のように、姫天皇さまが勝利を呼び寄せるのだと……」
「そのような力などあるはずはないのだがの……この腰の曲がった婆に」
自嘲する。
そのような力があれば、とうの昔に使っている。
「大田。婆よりも体を考えることぞ。まずは、大山積神にお願いに伺わねばならぬ。おやすみ」
「はい」
傍の者に告げ、大田皇女を下がらせる。
そして、翳の陰で溜め息を吐いた。
「いかがなされましたか? 姫天皇さま」
自分にもこんな頃があったのだろうか……。
立ち居振る舞いや仕草は優雅で、周囲の男たちの目を引く程に艶やかな微笑み、目尻の下にはほくろがあり、本当に羨ましい程の色気と色香をまとった額田王は、膝をつく。
「ご挨拶が遅くなりまして、申し訳ございません。姫天皇さま」
「構わぬ。そなたは御子。吾が言葉を、伝える役割を与えておるのだ」
「ありがたき幸せにございます」
バタバタと周囲の制止を振り切り、姿を見せたのは鸕野讚良皇女。
まだ子供子供した少女は、嫌悪感丸出しで額田王を睨み付ける。
「貴方は! 何故この様なところにいるの! ここは、この船は御座所! 貴方のような者が来るところではないわ! 出ていきなさい!」
もう一つ、父親から譲られたつり上がった瞳を持つ少女は、指を突きつける。
「出ていきなさい! 船から! 今すぐに!」
「申し訳ありません。もう船は出港致しました。降りることは無理ですわ……皇女さま」
立ちあがり振り返った額田王は翳で顔を半分覆い、柔らかな謳いにも似た透き通る声で返す。
「ならば、海に飛び込みなさい!」
「やめぬか! 鸕野讚良。額田は、吾が御子。言葉を伝うる術の限られる姫天皇の言葉を聞き取るもの。額田がおらねば、伝えられぬ」
「姫天皇さま!」
自分の意見が通らないことに、目を見開き、
「何故ですか? 何故? 私は間違っていません! この女は……母を悲しませ、死に至らしめた!」
と叫ぶ。
斉明天皇は冷たく、
「そなたの母を死に追いやったは、そなたの父。解っておるであろう。それを直視もせず、大田のように前を見ることもない。まだまだいとけない子供だの、そなたは。そなたの母は、そなたの後ろに立っている者が殺した蘇我入鹿の姉妹である遠野娘。翌日自害して果てた父の蝦夷の死に絶望し、体を弱らせた! 額田は関わりはない! これ以上額田を責めるなら、そなたが海に消えるが良い」
ぎりっと翳を握りしめ、このキャンキャン叫ぶ娘の父親……つまり、息子の中大兄皇子を睨み付けた斉明天皇は、繰り返す。
「吾が望むのは、平穏な生活。それを阻み、その上この地位に就かせ、吾が望んでもおらぬ民衆に重き税を強いて、苦しめる! この年で、何故吾がこの様なところにおらねばならぬのだ! 天皇になりたいのなら、なれば良い! 吾が気づいていないとでも思うたか? そなたが犯した失策を!」
「母上……いえ、姫天皇さま」
微笑む笑顔は嘘臭く、その上好きになれなかったあの男に良く似ている。
「私は、ただ、若輩者ですので」
「36にもなって、若輩……孫もおるのによう口が動くものよの。吾が何度も譲位をと伝えたと言うのに、腰をあげぬ。それならと大海人にと譲ろうとすれば、それを阻む! もうよい! そなたの口は嘘を吐き、心は黒く醜く歪んでおる! そなた、その小娘と共に別の船に移るが良い! 顔もみとうはない!」
「母上!」
「……誰が母。吾がこの国の天皇……姫天皇としたのはそなた。吾が母でおりたいと望んだと言うのに、祭り上げてくれたのはそなたではないか?」
立ちあがり、翳を突きつける。
「船を降りよ! 別の船に移るがいい。代わりに大海人をこの船に。その顔を見せるでない!」
「姫天皇さま!」
「今更に敬うか? 愚か者が! 早くこの者達を吾が前から追い払うのだ! さぁ!」
斉明天皇の怒りに、周囲は従う。
表向きは執政を行うのは中大兄皇子でも、姫天皇として神事を執り行うのは斉明天皇であり、もっとも敬われる存在である。
中大兄皇子と讃良皇女は小さい船で別の船に移され、代わりにせかせかと姿を見せるのは、大きな瞳の知的な青年である。
母の斉明天皇に似た童顔の大海人皇子は、それでも身長と体格は兄に勝り、たくましい。
「どうなさったのですか? 姫天皇さま。使いの者が大慌てでしたが……もしかして、大田の身に?」
「申し訳ありません。私のせいですわ。鸕野讚良皇女がお怒りになられて……」
「額田のせいではない! 本当に、何故……吾が望んだことではない。大海人……そなたには解るであろう? 吾がなりたかったのは……」
手招きされ、近づいてきた息子に訴える。
「大海人……頼む。もう辛くてならぬ。船は出てしまった。次は大山積神のおられる島。その地は留まれぬ。だから、その後、飛鳥宮に戻れまいか? 吾が身体はこの寒さに凍えてしまう……行きとうはない。離れとうはない」
「母上……」
「お願い……もう嫌なのだ……」
膝をついた、大きくなった息子に抱きつき訴える。
「もう……」
「……解りました。母上。今日は兄上も荒れておりましょう。明日、話を致します。今しばらく……」
「本当か? あぁ……」
ほっとしたように、すすり泣く母の弱々しさに、
「皆の者、姫天皇さまの気を落ち着かせるものを用意し、下がれ。そして額田王どの、傍に付いていてくれまいか?」
「かしこまりました。大海人皇子さま」
「では、姫天皇さま、こちらはお寒いでしょう。奥に参りましょう。失礼いたします」
大海人皇子は小さな身体の母を抱き上げ、御座所に休ませると、体をいたわるように周囲を暖める為、布をたらし海風が入らぬようにしていくのだった。
1月6日……天気は良好だが、斉明天皇と皇太子である中大兄皇子の対立により、ぎすぎすとした空気は残るのだった。
数えで68歳となっていた斉明天皇は、前年に滅ぼされた百済を援けるということになり、筑紫の朝倉橘広庭宮に向かう為に船に乗った。
前年に難波宮に移っていた斉明天皇は、年もあってか余り体調は芳しくない。
しかし、それを口にすると、二人の息子の争いになるのではと黙っていた。
36歳になる中大兄皇子と呼ばれている葛城皇子は、気性が激しく自分の思い通りにならないと気が済まない。
再婚相手である舒明天皇との間に生まれた息子である。
後二人子供がおり、先の天皇である孝徳天皇の妃の間人皇女と、末っ子が大海人皇子。
大海人皇子は落ち着きがあり、そして気の強い兄に従いつつ、兄の失策を本人が気づかぬように裏で裁いている。
しかし……近くに来させると中大兄皇子が苛立つ為、距離を置き控える大海人皇子を翳の陰で見つめ小さく吐息を漏らした。
斉明天皇と呼ばれる前、皇極天皇とも呼ばれる前、宝皇女であった頃、用明天皇の孫である高向王と結ばれ漢皇子を授かった。
しかし、別れさせられ、舒明天皇の元に嫁いだ。
33歳の時、推古天皇34年(626年)に生まれたのが中大兄皇子である。
37歳の時に、舒明天皇の皇后となった。
しかし、当時でも高齢出産で、何とか3人の子供を出産でき、育ててきたが、どうしてこの歳になっても解放してくれないのか……もうどちらでもいい、良い歳になった息子に後を譲りたいのが本音である。
だが、強引で少々どころか自分から政治の実権を奪った中大兄皇子は、表向きは母を敬う形を取り、政治を動かす。
それは、あの時……自分の目の前で殺した蘇我入鹿と、余り変わりはない。
それが臣下か息子かの違いである……ただ、苛立ちと言うよりも諦めが先に立つ。
それよりも思い出すのは、昔のこと……。
もういない、もう二度と取り戻せない……権力とはほど遠かったが、幼い漢皇子を抱いて微笑みあった夫との日々。
「どうかなさいましたか?姫天皇さま」
気遣わしげに声をかけるのは、大田皇女。
中大兄皇子の娘で、大海人皇子に嫁いだ孫である。
当時はよくある婚姻である。
しかし、
「大田、こちらにお座り。その体で無理をするでない。なぜ来たのだ」
「夫を見送るのは辛かったのです」
言いつつ、裙で覆ったお腹はかなり大きくなっている。
今日明日生まれてもおかしくない。
「大田。何かあれば、すぐに言いなさい。鸕野讚良……キョロキョロとするでない。大人しく姉の傍に着いておれ」
「はい、姫天皇さま」
大田皇女と鸕野讚良皇女は同じ母親の姉妹で、大海人皇子に嫁いだ。
おっとりとした大田皇女と、お転婆で父親譲りの気性の激しい鸕野讚良皇女……。
中大兄皇子は何を考えているのか……額田王は大海人皇子の恋人であったと言うのに……。
「あ! 姫天皇さま。船が動きました!」
先程あれだけ言い聞かせたのに、鸕野讚良皇女は飛び出していく。
「……全く、困った娘よの……」
「鸕野讚良は優しい子ですよ」
大田皇女は微笑む。
「姫天皇さまもご無理はなさいませんように……お寒くはありませんか?」
この日は、現在の暦に直すと、西暦661年2月10日である。
幾ら、難波の海を出港したと言っても、一番寒い真冬である。
風も冷たく、特に老齢の斉明天皇には辛いに違いない。
「それに、伺いました。父上が、夫が姫天皇さまを気遣うのを無視して、今回お連れするのだと……神功皇后のように、姫天皇さまが勝利を呼び寄せるのだと……」
「そのような力などあるはずはないのだがの……この腰の曲がった婆に」
自嘲する。
そのような力があれば、とうの昔に使っている。
「大田。婆よりも体を考えることぞ。まずは、大山積神にお願いに伺わねばならぬ。おやすみ」
「はい」
傍の者に告げ、大田皇女を下がらせる。
そして、翳の陰で溜め息を吐いた。
「いかがなされましたか? 姫天皇さま」
自分にもこんな頃があったのだろうか……。
立ち居振る舞いや仕草は優雅で、周囲の男たちの目を引く程に艶やかな微笑み、目尻の下にはほくろがあり、本当に羨ましい程の色気と色香をまとった額田王は、膝をつく。
「ご挨拶が遅くなりまして、申し訳ございません。姫天皇さま」
「構わぬ。そなたは御子。吾が言葉を、伝える役割を与えておるのだ」
「ありがたき幸せにございます」
バタバタと周囲の制止を振り切り、姿を見せたのは鸕野讚良皇女。
まだ子供子供した少女は、嫌悪感丸出しで額田王を睨み付ける。
「貴方は! 何故この様なところにいるの! ここは、この船は御座所! 貴方のような者が来るところではないわ! 出ていきなさい!」
もう一つ、父親から譲られたつり上がった瞳を持つ少女は、指を突きつける。
「出ていきなさい! 船から! 今すぐに!」
「申し訳ありません。もう船は出港致しました。降りることは無理ですわ……皇女さま」
立ちあがり振り返った額田王は翳で顔を半分覆い、柔らかな謳いにも似た透き通る声で返す。
「ならば、海に飛び込みなさい!」
「やめぬか! 鸕野讚良。額田は、吾が御子。言葉を伝うる術の限られる姫天皇の言葉を聞き取るもの。額田がおらねば、伝えられぬ」
「姫天皇さま!」
自分の意見が通らないことに、目を見開き、
「何故ですか? 何故? 私は間違っていません! この女は……母を悲しませ、死に至らしめた!」
と叫ぶ。
斉明天皇は冷たく、
「そなたの母を死に追いやったは、そなたの父。解っておるであろう。それを直視もせず、大田のように前を見ることもない。まだまだいとけない子供だの、そなたは。そなたの母は、そなたの後ろに立っている者が殺した蘇我入鹿の姉妹である遠野娘。翌日自害して果てた父の蝦夷の死に絶望し、体を弱らせた! 額田は関わりはない! これ以上額田を責めるなら、そなたが海に消えるが良い」
ぎりっと翳を握りしめ、このキャンキャン叫ぶ娘の父親……つまり、息子の中大兄皇子を睨み付けた斉明天皇は、繰り返す。
「吾が望むのは、平穏な生活。それを阻み、その上この地位に就かせ、吾が望んでもおらぬ民衆に重き税を強いて、苦しめる! この年で、何故吾がこの様なところにおらねばならぬのだ! 天皇になりたいのなら、なれば良い! 吾が気づいていないとでも思うたか? そなたが犯した失策を!」
「母上……いえ、姫天皇さま」
微笑む笑顔は嘘臭く、その上好きになれなかったあの男に良く似ている。
「私は、ただ、若輩者ですので」
「36にもなって、若輩……孫もおるのによう口が動くものよの。吾が何度も譲位をと伝えたと言うのに、腰をあげぬ。それならと大海人にと譲ろうとすれば、それを阻む! もうよい! そなたの口は嘘を吐き、心は黒く醜く歪んでおる! そなた、その小娘と共に別の船に移るが良い! 顔もみとうはない!」
「母上!」
「……誰が母。吾がこの国の天皇……姫天皇としたのはそなた。吾が母でおりたいと望んだと言うのに、祭り上げてくれたのはそなたではないか?」
立ちあがり、翳を突きつける。
「船を降りよ! 別の船に移るがいい。代わりに大海人をこの船に。その顔を見せるでない!」
「姫天皇さま!」
「今更に敬うか? 愚か者が! 早くこの者達を吾が前から追い払うのだ! さぁ!」
斉明天皇の怒りに、周囲は従う。
表向きは執政を行うのは中大兄皇子でも、姫天皇として神事を執り行うのは斉明天皇であり、もっとも敬われる存在である。
中大兄皇子と讃良皇女は小さい船で別の船に移され、代わりにせかせかと姿を見せるのは、大きな瞳の知的な青年である。
母の斉明天皇に似た童顔の大海人皇子は、それでも身長と体格は兄に勝り、たくましい。
「どうなさったのですか? 姫天皇さま。使いの者が大慌てでしたが……もしかして、大田の身に?」
「申し訳ありません。私のせいですわ。鸕野讚良皇女がお怒りになられて……」
「額田のせいではない! 本当に、何故……吾が望んだことではない。大海人……そなたには解るであろう? 吾がなりたかったのは……」
手招きされ、近づいてきた息子に訴える。
「大海人……頼む。もう辛くてならぬ。船は出てしまった。次は大山積神のおられる島。その地は留まれぬ。だから、その後、飛鳥宮に戻れまいか? 吾が身体はこの寒さに凍えてしまう……行きとうはない。離れとうはない」
「母上……」
「お願い……もう嫌なのだ……」
膝をついた、大きくなった息子に抱きつき訴える。
「もう……」
「……解りました。母上。今日は兄上も荒れておりましょう。明日、話を致します。今しばらく……」
「本当か? あぁ……」
ほっとしたように、すすり泣く母の弱々しさに、
「皆の者、姫天皇さまの気を落ち着かせるものを用意し、下がれ。そして額田王どの、傍に付いていてくれまいか?」
「かしこまりました。大海人皇子さま」
「では、姫天皇さま、こちらはお寒いでしょう。奥に参りましょう。失礼いたします」
大海人皇子は小さな身体の母を抱き上げ、御座所に休ませると、体をいたわるように周囲を暖める為、布をたらし海風が入らぬようにしていくのだった。
1月6日……天気は良好だが、斉明天皇と皇太子である中大兄皇子の対立により、ぎすぎすとした空気は残るのだった。
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