バタフライ・エフェクト〜butterfly effect〜

刹那玻璃

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転生者の少女の章

全くねぇ……ムカつくよね!……シエラ目線

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 目の前にいる、丸い、まんまるの目をした女の子。
 ナオミっていう名前だそうだ。
 珍しい真紅の髪は炎のようで、初めて見た時に、あぁ、アルファリドルの子供ってこれか~!
って思った。
 父親にあんまり似てないの良かったよね~とも。
 本人は母親似だって思ってるみたいだけど、結構伯父に当たるパシヴァルに似てるって思ったよ。
 それに突進する性格っぽいけど、賢い。
 一つ聞いて10までは言えないけど、三つ四つ先を答えられるなんて、賢いよね。
 ちょっと正直すぎて迂闊に喋っちゃうところは可愛い。
 まぁ、今のところ、ここにいたら危険ってことで、パシヴァルの実家に送っておくべきだよね。
 うちはまだここに戻って来たばかりだから……。

「あのぉ……」

 首を傾げる、ナオミ。
 あぁ、すごいな。
 人の名前なんて覚えるの苦手な私が、すぐ覚えられるなんて。
 お気に入りってこれなのかぁ。

「持ってったらダメだぞ! うちの家の子だ!」
「うーん、パシヴァルに嫌われたくないから、可愛いけどいいよ。それに、フィアと子供たちと清泉さんがいるし~」
「子供って、お前、何人いるんだ?」
「六槻でしょ? 幸矢に蒼記に彗に清夜。甥はセイ。姪は二人。はぁぁ……でもショックなのは、しばらくしたら幸矢たちは王都に行っちゃうんだよ……」

 がっかりする。
 本当にショックだ。
 六槻は私たち夫婦の一粒種だけど、4人だって実の子同然に可愛がって来た。
 まぁ、私は結構不器用で、剣の稽古とか勉強くらいだけだったけど……まぁ、本当に頑張ったつもり。
 シュウの方が教えるのも上手いし、サポートもだったけど、私も努力したつもり。
 でも、

「うっ……あのアレクの隠し子は、あちこち十数人いると思ってたのに! いないなんて! どういうこと?」
「おいおい……エリーゼの前で言うな!」
「いいんだよ! 他にボカスカ子供作ってくれてたら! そうすれば! 4人をうちの子にするつもりだったのに~!」
「というか、無理だろ! さっき見たけど、そこの双子の王太子も絶対無理だ!」
「パシヴァル……そっち指してる方、第二王子とエドワードだから、双子じゃないよ?」

 誰に似たのか悪だくみを楽しそうに考えてる金銀たちは、どことなく似てるけど、双子じゃないよ。

「第一王子は、あの可愛いお姫様たちにもみくちゃにされてる、アヴィ兄さまそっくりな子だよ。膝の上に座ってるのが私の娘で、黒髪が姪の綾。銀の髪が清夜。清夜は双子の2歳下の第一王女」
「……アレクにも似てない、良かったな……」
「でしょ? うちの子供達可愛いんだ。そういえば、レイノルドとジェロームのところは結婚したの?」
「ジェロのところは、うちのセラより一つ上の女の子の下に、二人息子と女の子がいるな。上の女の子はマデリーンって言うんだ。 アイツに似てなくて可愛いぞ。ちなみにセラの婚約者」

 ニマニマしている。

「マデリーンはしっかりしていて、すごく優しい子なんだ。私たちはこんな職務だろ? 弟妹も小さいしで、ジェロが家に奥さんや子供達を預けて任地に行ってたときもあって、うちの子供達と遊んでくれたり、色々手伝ってくれてな……うちの嫁、目が不自由だから……サポートしてくれることもあったんだ」
「へぇ……それで、婚約申し出たの?」
「うーん、うちのセラは、結構おっとりのんびりした子なんだけど、ある時『僕、マデリーンが大好きなんだけど……年下は嫌かな……』っていうんだよ!」
「かっわいい!」
「だろ? で、ジェロに言ってみたら、『……セラスならいい』だと!」

 パシヴァルはものすごく愛情深い。
 私に比べて総合的にスキルが高いし、結構気風のいいリーダーシップの取れるタイプ。
 自分の気に入った人は絶対に見捨てないし、良いところを見つける、褒める。
 ついでに、責任感があって、上司にも信頼されるほどできる男で、騎士団長に一番就けたい騎士。
 ……本当……友人として付き合いたいけれど、自分の立場があるって難しいよね。

「……パシヴァル……ここで言うのも変だけど、今、職務ついてないのって、公爵家の仕事大変なの?」
「いーや。そっちはアルファリドルの下のデイビッドとサミュエルのうち、サムは楽器を作る工房に入って修行をするんだって隣国に行ってるんだが、デイビッドは数年前までフラフラしてたものの、戻って来た。手伝いをしてくれてるよ。楽になってると言えばなってる。でも、私も音楽活動もあるし……それ以前に、紅騎士団と青騎士団で色々あってな……移動する先々で、腐ったバカが……」
「あぁ、聞いてる聞いてる。フィアが暴れ回った当時のことでしょ? 丁度マディ……マーマデューク兄さんがアホアレクの監視についてた時期だってね?」
「もう、思い出したくない……騎士としての信念だけじゃどうにもならない……騎士団の人間を、信じられず、苦しかった……フィアはまだ15、6だ。10年ほど前にある貴族の馬車が襲われ、公爵が殺され、妊娠中の夫人とまだ6歳くらいだった公女が行方不明になった。半年後に、公爵夫人の遺体が発見された。出産した形跡があったそうだ。公爵とまだ幼い令嬢は青い目だった。青色は他国には生まれにくいらしい……人身売買組織では青は高値で取引をされるそうだ」

 パシヴァルは両膝に肘をつき、両手で顔を覆った。
 苦しげに呟く。

「……無力感に苛まれる。俺は……部下を後輩たちを敵地に送り込み、俺が安全な場所でいていいのかと思い続け、辛くて逃げたんだ」
「……まぁ、向こうにいた私がいうことじゃないけど、早めに戻ってくるように。逃げたって後悔してるなら、こき使ってあげるよ」

 優しく言ってもきっとパシヴァルはもっと追い詰めるし、言えるのはこれだけ。
 それがわかってるみたいで、しばらく考え込んだ後、返事が返って来た。

「……今年は演奏ツアーが詰まってるから無理」
「あははは! あ、騎士団は関係ないけど、第一王子が独学だけど声楽すごいよ。第二王子は弦楽器が得意」
「聞いてみたい……」
「あ、エドワードはそんなに武器は得意じゃないけど、双子は自力で暗殺者返り討ちできる程度には育ててます」
「おいおいおい……逃げる術教えろよ」
「自分の身を守りつつ、可愛い妹たちを守れるように鍛えたとも! 褒めて」

 うん……帰ってきてよかったと思うのは、こんな会話ができる友人と再会できたことだね。
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