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転生者の少女の章
きもっじゃなくて、可愛いです。
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「気持ち悪いって……こんなに可愛いのに……」
じっくりとリアルに再現してみたオオサンショウウオを見ます。
この微妙に頭の大きなフォルム、カエルのような手足、ついでにこの色。
自画自賛したくなるほど素敵じゃありませんか!
「いや、イアルベはその色でまだマシだけど……」
「オオサンショウウオって、魚や小鳥とか食べるんだよ? ヌルヌル……色も微妙じゃない」
「うーん……可愛いと思うのですが……弱肉強食は人間界も同様で、多分このつぶらな目で、いただきますって言ってますよ?」
「いや、想像したくない……」
さっきのセイさまを始め、男性陣には評判悪いですね……。
「で、この布は……」
「色褪せていましたが、質のいい余り布をいただいたので、上に刺繍して、リアルにしてみました!」
「やっぱり遅かったか!」
おじさまが頭を抱えます。
「どこでこんなものを見てたんだ? しかも、オオサンショウウオっていうものは想像上のものじゃないか! 俺ですら伝説しか聞いたことがない!」
「えっ? グランディアにいたけど? でも、多分フィアも知らないよね? 向こうで対面させてないもの。でも結構リアルだね~?」
「えっ……ど、どこかで見た……ような気がします」
「えっ? どこで?」
シエラさまの探るような目に、耐えきれず、
「……ぜ、前世のテレビで見ました。色付きの図鑑もありましたし、動物園っていう種の保存の目的と絶滅危惧種の研究、人々に動物を見せる展示施設にもオオサンショウウオ、いました」
と白状する。
というか、私は隠し事はできません……ペロッと白状して楽になりたいです。
「……マジ?」
「マジです。でも、聞いたことのあるグランディアよりも、もっと世俗的です」
「幾つの時に転生したって分かったの?」
「うーん……分かりません。父がよそよそしくなったのは……母が河で溺れた8歳頃ですかね? 息をしていなかった母に、呼吸蘇生法を施しました。前世でそう言う講習があって、覚えていたんです」
「やっぱりやってた! 馬鹿弟!」
おじさま、おじさま……髪をくしゃくしゃにしていると髪が傷みますよ?
せっかくのブロンドの髪が。
羨ましいほどのキューティクルが!
それに、やったのは私です。
まぁ、8歳であれはなかった……でも咄嗟に動いたし、お母さんも助かったから後悔はない。
でも、寂しいとは思ったな……。
それから……お父さんに申し訳ないとも……。
「……あのさぁ?」
そばでずっといたセイさまが声をかける。
「君が悪いってこと、ないと思うんだけど? なんで、悪いって思うわけ? 君の母さんが助かったってことありがたいと思うんだけど? 一応、うちの父さんなら、泣いて喜ぶ」
「あ、そーだね~。シュウは、感謝しまくってハグとか、お金……も払うって言うけど、お礼に日参して何かさせてくれ~とか言うね~。パシヴァルも同様かな~?」
「あ、うちの嫁や子供たちが助かるなら、爵位譲る~。あ、そうだ。エリーゼ。うちの家にはちゃんとエリーゼの分の爵位と財産があるから! 今度ちゃんと手続きするから! そういえば、18になったら手続きするって言ったのに! あの馬鹿~!」
ふぇ?
爵位ってなんですか?
「あれ? リドルに聞いてないの? エッシェンドルフ家の嫡子は公爵位だけど、その弟妹には最低でも男爵位があるんだよ?」
「男爵?」
「うん。それに、パシヴァルはこれでもエッシェンドルフ家の当主以外に、おじいさまの妹の嫁ぎ先の継承権もあるよ?」
「は?」
どういうことですか?
「フェリスタ公爵家って知ってる? 騎士のカイ・レヴェリン卿って子がいるんだけど~? 本名はエマ・レーヴェ・エルドヴァーン。ちなみに私の兄の実子でね? 母方のフェリスタ家の継承権を優先させられてます。家にはエージャとリオンがいるからね? レーヴェはまだ結婚してないから、もし何かあったら親族がって探すとね~レーヴェのおじいちゃんもお母さんも亡くなってるし、ひいおじいちゃんの血縁って言っても、もう遠い血縁だし、ってことです」
「エマさまって……可愛くないですか? めちゃくちゃ可愛い名前です!」
「そっち? そっち?」
「はい。どうせ、私が公爵家ってないと思うので、私は自分の萌えを追求したいと思います!」
「お前はうちの子だ! なんなら今すぐうちの養女に! 大叔母の養女でもいい!」
パシヴァルさまが顔色変えてます。
ん? ……パシヴァルさまの大叔母……。
「君のお父さんの大叔母は、フェリスタのマルガレーテさまっていうんだよ?」
「……あの……マルガレーテさまって、ボビンを使ったレース織の第一人者でいらっしゃいますよね? 染織もされている……」
「あぁ、自分の畑で染織の植物を育ててる」
「爵位より、マルガレーテさまの弟子にしてください!」
あぁぁ!
前世で見たあのレースをどうにか再現したくて、四苦八苦していたけれど、前に実家の小さな壁飾りのレースを、父さんがマルガレーテさまが作ったものだと言ってた。
アレは買ったのではなく、親戚だから贈られたのか!
まぁ、父が買うようなものじゃない……あの無粋で、厳つく、レースのなんたるかを知らなかった人だから……。
一応……うん、遠い遠い親戚ということで、お願いして欲しい……。
真剣に!
爵位より、そっちが欲しいんです!
「……さすが、パシヴァルの姪」
「たしかにうちの血濃いな」
感心してるんでしょうか? 呆れているのでしょうか?
じっくりとリアルに再現してみたオオサンショウウオを見ます。
この微妙に頭の大きなフォルム、カエルのような手足、ついでにこの色。
自画自賛したくなるほど素敵じゃありませんか!
「いや、イアルベはその色でまだマシだけど……」
「オオサンショウウオって、魚や小鳥とか食べるんだよ? ヌルヌル……色も微妙じゃない」
「うーん……可愛いと思うのですが……弱肉強食は人間界も同様で、多分このつぶらな目で、いただきますって言ってますよ?」
「いや、想像したくない……」
さっきのセイさまを始め、男性陣には評判悪いですね……。
「で、この布は……」
「色褪せていましたが、質のいい余り布をいただいたので、上に刺繍して、リアルにしてみました!」
「やっぱり遅かったか!」
おじさまが頭を抱えます。
「どこでこんなものを見てたんだ? しかも、オオサンショウウオっていうものは想像上のものじゃないか! 俺ですら伝説しか聞いたことがない!」
「えっ? グランディアにいたけど? でも、多分フィアも知らないよね? 向こうで対面させてないもの。でも結構リアルだね~?」
「えっ……ど、どこかで見た……ような気がします」
「えっ? どこで?」
シエラさまの探るような目に、耐えきれず、
「……ぜ、前世のテレビで見ました。色付きの図鑑もありましたし、動物園っていう種の保存の目的と絶滅危惧種の研究、人々に動物を見せる展示施設にもオオサンショウウオ、いました」
と白状する。
というか、私は隠し事はできません……ペロッと白状して楽になりたいです。
「……マジ?」
「マジです。でも、聞いたことのあるグランディアよりも、もっと世俗的です」
「幾つの時に転生したって分かったの?」
「うーん……分かりません。父がよそよそしくなったのは……母が河で溺れた8歳頃ですかね? 息をしていなかった母に、呼吸蘇生法を施しました。前世でそう言う講習があって、覚えていたんです」
「やっぱりやってた! 馬鹿弟!」
おじさま、おじさま……髪をくしゃくしゃにしていると髪が傷みますよ?
せっかくのブロンドの髪が。
羨ましいほどのキューティクルが!
それに、やったのは私です。
まぁ、8歳であれはなかった……でも咄嗟に動いたし、お母さんも助かったから後悔はない。
でも、寂しいとは思ったな……。
それから……お父さんに申し訳ないとも……。
「……あのさぁ?」
そばでずっといたセイさまが声をかける。
「君が悪いってこと、ないと思うんだけど? なんで、悪いって思うわけ? 君の母さんが助かったってことありがたいと思うんだけど? 一応、うちの父さんなら、泣いて喜ぶ」
「あ、そーだね~。シュウは、感謝しまくってハグとか、お金……も払うって言うけど、お礼に日参して何かさせてくれ~とか言うね~。パシヴァルも同様かな~?」
「あ、うちの嫁や子供たちが助かるなら、爵位譲る~。あ、そうだ。エリーゼ。うちの家にはちゃんとエリーゼの分の爵位と財産があるから! 今度ちゃんと手続きするから! そういえば、18になったら手続きするって言ったのに! あの馬鹿~!」
ふぇ?
爵位ってなんですか?
「あれ? リドルに聞いてないの? エッシェンドルフ家の嫡子は公爵位だけど、その弟妹には最低でも男爵位があるんだよ?」
「男爵?」
「うん。それに、パシヴァルはこれでもエッシェンドルフ家の当主以外に、おじいさまの妹の嫁ぎ先の継承権もあるよ?」
「は?」
どういうことですか?
「フェリスタ公爵家って知ってる? 騎士のカイ・レヴェリン卿って子がいるんだけど~? 本名はエマ・レーヴェ・エルドヴァーン。ちなみに私の兄の実子でね? 母方のフェリスタ家の継承権を優先させられてます。家にはエージャとリオンがいるからね? レーヴェはまだ結婚してないから、もし何かあったら親族がって探すとね~レーヴェのおじいちゃんもお母さんも亡くなってるし、ひいおじいちゃんの血縁って言っても、もう遠い血縁だし、ってことです」
「エマさまって……可愛くないですか? めちゃくちゃ可愛い名前です!」
「そっち? そっち?」
「はい。どうせ、私が公爵家ってないと思うので、私は自分の萌えを追求したいと思います!」
「お前はうちの子だ! なんなら今すぐうちの養女に! 大叔母の養女でもいい!」
パシヴァルさまが顔色変えてます。
ん? ……パシヴァルさまの大叔母……。
「君のお父さんの大叔母は、フェリスタのマルガレーテさまっていうんだよ?」
「……あの……マルガレーテさまって、ボビンを使ったレース織の第一人者でいらっしゃいますよね? 染織もされている……」
「あぁ、自分の畑で染織の植物を育ててる」
「爵位より、マルガレーテさまの弟子にしてください!」
あぁぁ!
前世で見たあのレースをどうにか再現したくて、四苦八苦していたけれど、前に実家の小さな壁飾りのレースを、父さんがマルガレーテさまが作ったものだと言ってた。
アレは買ったのではなく、親戚だから贈られたのか!
まぁ、父が買うようなものじゃない……あの無粋で、厳つく、レースのなんたるかを知らなかった人だから……。
一応……うん、遠い遠い親戚ということで、お願いして欲しい……。
真剣に!
爵位より、そっちが欲しいんです!
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感心してるんでしょうか? 呆れているのでしょうか?
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