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スキル《田んぼ》の兄とあたし
スキル《田んぼ》
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「スキルって、技術とか能力でしょう?
なんで、ぼくの能力が《田んぼ》なんですか?」
お金を払って、神殿にスキルをいただきにいったあと、先に戻ってきていた兄がorzの姿勢で嘆いていた。
兄は本当に性格は弱々……こほんっ、穏やかで、ウジウジメソメソ……ううーんと可愛らしい。
垂れ目でふわふわの長い髪。
つり目で硬い髪のあたしとは真逆だ。
今回は、本人曰くショボい、わからないスキルに落ち込んでるようだ。
けれど、あたしは正直羨ましいと思った。
ちなみに双子の妹であるあたしは、一緒に行った神殿で開示されたスキルは、
《支配者》
だった。
しかも、
《黒の支配者》
……。
何?
黒って何?
アレって何?
その文字をぐるぐる見ていたら、神官様たちが真っ青になってひざまづいていらっしゃった。
「どうか! どうか! 黒は! お許しくださいませ!」
「黒だけは! どうか……」
「どう言うことでしょう……」
普通の黒じゃないんかい?
ただただ土下座されるだけで、首を傾げるしかないあたしに、一番偉そうな……無駄にキラキラした重そうな装飾品に包まれたツルピカじいさんが、
「どうか!」
「どうかって……どうって意味わかんないんですけど?」
「し、支配者さま!」
「どうか、どうかっ! お許しくださいませ! ほら、皆も」
説明もせず、ただ周りで頭を下げるだけ……に段々イラついてきたあたし。
だって、バイトがあるんだよ?
時間が迫ってるんだよ?
うん、あたし悪くない。
だから、
「うっせぇわ! 黙れって言うより、ちゃんと説明しやがれ! こちとら早よ帰りたいんじゃ! ボケェ!」
「ひっ!」
「あんたらは、ふんぞりかえってりゃ、銭もらえるんだろうけどな! こちらは働かないと一枚も銭は入ってこねぇし、そうすりゃパンも服も手に入らねぇんだよ! 贅沢したけりゃあたしを帰すか、説明しやがれ! ついでにバイトの遅刻分払ってもらうからな!」
「も、申し訳ございません~!」
あたしの罵声にダラダラと汗をかいてた……じいさんたちの一人が、恐る恐る顔を上げ口を開いた。
数日後、何故かシンプルイスベストに衣装をジョブチェンジしたらしいじいさんたちが、どこぞのイケメンと可愛い女の子を連れてうちに来た。
迎えに来たのは、あたしじゃない。
うちの兄だ。
「どうか、どうか……貴方様のスキルで、お助けください!」
「……はっ? ぼ、ぼくのスキルですか?」
キョロキョロと首をあちこち向けていた兄は、
「ね、ねぇ……あーちゃん」
「何? にーちゃん」
「どうしたらいいの?」
「いってらっしゃい~あたしは、《黒》が来るからこのじ……神官様たちに嫌われてるの」
「《アレ》ってなぁに?」
くっそう~!
あーちゃん、めっちゃ可愛いな!
コテンって首傾げてるよ!
「アレってアレだよ」
窓から外に指を指す。
「ぎゃぁぁ! 《黒の支配者》さまぁぁ!」
「お願いです!」
ペコペコ頭を下げるじいさんたちを無視で!
「にーちゃん、あたし、黒って不吉だからって出てけって言われてるんだ~?」
「えっ? ぼくも出てく! あーちゃんいないとぼく生きてけない」
「大丈夫じゃない? にーちゃんは神官様たちに好かれてるでしょ?」
「やだ! あーちゃんの方が好きだもん! ぼくも出てく!」
「きゅ、救世主さまぁぁ!」
……じいさんたちのなき顔って、可愛くない……。
目と目で会話したらしいじいさんたちの一人が、あたしに手を合わせる。
手と手の皺を合わせて、《幸せ》ポーズ……。
「救世主様の妹様! どうか! 我々をお守りください!」
「我々ってのが、じいさんたちのふところ守れって気がするからやだね!」
「救世主様の妹様!」
「それに、出てけって言ったの、じいさんたちじゃん? こないだだって、バイトがあるって言うのに引き止められて、間に合わなかったし~? 辞めさせられたし~? その分のお金もくれないしぃ? ついでにそのさりげーにつけてる服も高級なシルクじゃん? 反省してないよね?」
「ひぃぃ!」
怯えるじいさんをいじめるの面倒になったあたし。
「というわけで、あたしは殊勝に神殿の、神官様方の、追放命令を受け入れますよ? 無一文で追い出されますよ? 生活費だったお金もスキル鑑定費としてぶんどられましたし? えぇ、いいのです。神官様たちも贅沢したいですもんね? あたしのような貧乏人に出すお金もないでしょうし~?」
「どう言うことだ!」
じいさんの後ろに立っていたイケメンが声を上げます。
「《黒の支配者》さまは、そんなショボいスキルじゃない! それに追放とは何だ? それに、スキル鑑定には国から金が払われていた筈! 説明しろ!」
「《黒の支配者》さま! どうかお待ちになって!」
おぉう! かっこえぇ!
可愛い女の子が、じいさんたちを蹴り上げ踏みつけ近づいてきた。
「お願いです! わたくしは《白の支配者》と言うスキル持ちですの!」
「……えっ」
「どうか、わたくしと共に……お願いいたします」
「オレからもどうか頼む! オレたちを見捨てないでくれ!」
一応、このラストは、キラキラ二人に連れられて王都に向かったあたしと兄。
あたしは《白の支配者》のお姫様と一緒に神殿を脅し……うん、黒いゴとか、黒い鳥とか、コウモリとかを出して、神殿を包囲し、白い狼とか、トラとかも日夜関係なく吠えてもらったからね。
すぐにじいさんたちは謝罪しに来たらしい。
それより、怒ったのがお姫様の兄だと言うイケメン。
次期国王だと言う彼は、スキルが《破壊》だったらしい。
《破壊》の反対は再生、もしくは何かを生み出すスキル持ちだったらしく、兄の《田んぼ》スキルは、食のスキルで探していたらしい彼には喉から手が出るほど探していたらしい。
キレ散らかす王子が壊しまくるたびに、兄は全部田んぼにして……それはそれはのどかな場所になっていった。
これはこれでめでたしめでたし……?
~*~~*~~*~~*~~*~~*~~*~
「何? これ」
「あたしが見た夢」
「オチがない……」
「だって《田んぼ》と《黒の支配者》と《破壊》だもん……」
ちなみにあたしはあーちゃんというのが愛称
兄はにーちゃんが愛称
王子はモモ、王女はルルが愛称
なんで、ぼくの能力が《田んぼ》なんですか?」
お金を払って、神殿にスキルをいただきにいったあと、先に戻ってきていた兄がorzの姿勢で嘆いていた。
兄は本当に性格は弱々……こほんっ、穏やかで、ウジウジメソメソ……ううーんと可愛らしい。
垂れ目でふわふわの長い髪。
つり目で硬い髪のあたしとは真逆だ。
今回は、本人曰くショボい、わからないスキルに落ち込んでるようだ。
けれど、あたしは正直羨ましいと思った。
ちなみに双子の妹であるあたしは、一緒に行った神殿で開示されたスキルは、
《支配者》
だった。
しかも、
《黒の支配者》
……。
何?
黒って何?
アレって何?
その文字をぐるぐる見ていたら、神官様たちが真っ青になってひざまづいていらっしゃった。
「どうか! どうか! 黒は! お許しくださいませ!」
「黒だけは! どうか……」
「どう言うことでしょう……」
普通の黒じゃないんかい?
ただただ土下座されるだけで、首を傾げるしかないあたしに、一番偉そうな……無駄にキラキラした重そうな装飾品に包まれたツルピカじいさんが、
「どうか!」
「どうかって……どうって意味わかんないんですけど?」
「し、支配者さま!」
「どうか、どうかっ! お許しくださいませ! ほら、皆も」
説明もせず、ただ周りで頭を下げるだけ……に段々イラついてきたあたし。
だって、バイトがあるんだよ?
時間が迫ってるんだよ?
うん、あたし悪くない。
だから、
「うっせぇわ! 黙れって言うより、ちゃんと説明しやがれ! こちとら早よ帰りたいんじゃ! ボケェ!」
「ひっ!」
「あんたらは、ふんぞりかえってりゃ、銭もらえるんだろうけどな! こちらは働かないと一枚も銭は入ってこねぇし、そうすりゃパンも服も手に入らねぇんだよ! 贅沢したけりゃあたしを帰すか、説明しやがれ! ついでにバイトの遅刻分払ってもらうからな!」
「も、申し訳ございません~!」
あたしの罵声にダラダラと汗をかいてた……じいさんたちの一人が、恐る恐る顔を上げ口を開いた。
数日後、何故かシンプルイスベストに衣装をジョブチェンジしたらしいじいさんたちが、どこぞのイケメンと可愛い女の子を連れてうちに来た。
迎えに来たのは、あたしじゃない。
うちの兄だ。
「どうか、どうか……貴方様のスキルで、お助けください!」
「……はっ? ぼ、ぼくのスキルですか?」
キョロキョロと首をあちこち向けていた兄は、
「ね、ねぇ……あーちゃん」
「何? にーちゃん」
「どうしたらいいの?」
「いってらっしゃい~あたしは、《黒》が来るからこのじ……神官様たちに嫌われてるの」
「《アレ》ってなぁに?」
くっそう~!
あーちゃん、めっちゃ可愛いな!
コテンって首傾げてるよ!
「アレってアレだよ」
窓から外に指を指す。
「ぎゃぁぁ! 《黒の支配者》さまぁぁ!」
「お願いです!」
ペコペコ頭を下げるじいさんたちを無視で!
「にーちゃん、あたし、黒って不吉だからって出てけって言われてるんだ~?」
「えっ? ぼくも出てく! あーちゃんいないとぼく生きてけない」
「大丈夫じゃない? にーちゃんは神官様たちに好かれてるでしょ?」
「やだ! あーちゃんの方が好きだもん! ぼくも出てく!」
「きゅ、救世主さまぁぁ!」
……じいさんたちのなき顔って、可愛くない……。
目と目で会話したらしいじいさんたちの一人が、あたしに手を合わせる。
手と手の皺を合わせて、《幸せ》ポーズ……。
「救世主様の妹様! どうか! 我々をお守りください!」
「我々ってのが、じいさんたちのふところ守れって気がするからやだね!」
「救世主様の妹様!」
「それに、出てけって言ったの、じいさんたちじゃん? こないだだって、バイトがあるって言うのに引き止められて、間に合わなかったし~? 辞めさせられたし~? その分のお金もくれないしぃ? ついでにそのさりげーにつけてる服も高級なシルクじゃん? 反省してないよね?」
「ひぃぃ!」
怯えるじいさんをいじめるの面倒になったあたし。
「というわけで、あたしは殊勝に神殿の、神官様方の、追放命令を受け入れますよ? 無一文で追い出されますよ? 生活費だったお金もスキル鑑定費としてぶんどられましたし? えぇ、いいのです。神官様たちも贅沢したいですもんね? あたしのような貧乏人に出すお金もないでしょうし~?」
「どう言うことだ!」
じいさんの後ろに立っていたイケメンが声を上げます。
「《黒の支配者》さまは、そんなショボいスキルじゃない! それに追放とは何だ? それに、スキル鑑定には国から金が払われていた筈! 説明しろ!」
「《黒の支配者》さま! どうかお待ちになって!」
おぉう! かっこえぇ!
可愛い女の子が、じいさんたちを蹴り上げ踏みつけ近づいてきた。
「お願いです! わたくしは《白の支配者》と言うスキル持ちですの!」
「……えっ」
「どうか、わたくしと共に……お願いいたします」
「オレからもどうか頼む! オレたちを見捨てないでくれ!」
一応、このラストは、キラキラ二人に連れられて王都に向かったあたしと兄。
あたしは《白の支配者》のお姫様と一緒に神殿を脅し……うん、黒いゴとか、黒い鳥とか、コウモリとかを出して、神殿を包囲し、白い狼とか、トラとかも日夜関係なく吠えてもらったからね。
すぐにじいさんたちは謝罪しに来たらしい。
それより、怒ったのがお姫様の兄だと言うイケメン。
次期国王だと言う彼は、スキルが《破壊》だったらしい。
《破壊》の反対は再生、もしくは何かを生み出すスキル持ちだったらしく、兄の《田んぼ》スキルは、食のスキルで探していたらしい彼には喉から手が出るほど探していたらしい。
キレ散らかす王子が壊しまくるたびに、兄は全部田んぼにして……それはそれはのどかな場所になっていった。
これはこれでめでたしめでたし……?
~*~~*~~*~~*~~*~~*~~*~
「何? これ」
「あたしが見た夢」
「オチがない……」
「だって《田んぼ》と《黒の支配者》と《破壊》だもん……」
ちなみにあたしはあーちゃんというのが愛称
兄はにーちゃんが愛称
王子はモモ、王女はルルが愛称
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