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王国レーンに歴史に残るお客様と贈り物が届けられます。
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不眠不休で執務に励んでいたカイルだったが、ようやく最後の一枚を処断し、ホッとする。
眠くはないが、朝の冷たいが新しい空気を吸おうとベッドルームに向かい、窓を開けた。
寒い国なだけに、夏の暑さもシェールド程ではなく、光を入れるために大きな窓だが、王族の部屋だったと言うのに掃除に修復が必要なほど錆や隙間がひどい。
「仮とは言え俺の部屋だから良いものの、他の部屋……客人の部屋がこれだったら、俺は散財しまくっていたあいつらの首を切るぞ」
睨み付けつつ窓を開けベランダに出ると、そこもゴミが落ち、塗られているペンキも剥げ、無惨である。
「よし抹殺!」
「えー? カイル? 会うなりそれ? 酷くない?」
耳元に聞こえてきたのは3年前まで会っていた……。
「えっ? ちょ、ちょぉぉぉ!」
「ちょぉぉぉ? ってここの挨拶?」
目の前でフヨフヨと浮いている……いや、飛んでいる生き物の背に乗った淡い色のフードを深く被った人物から声が聞こえる。
「違っ、な、ななな、何で貴方が!」
「僕もいるよ~! 久しぶり~カイル!」
「ギャァァァ! 最悪だぁぁ!」
カイルの声に内側から人々が出てくる。
「な、何だ? カイル!」
「何があった?」
スートとタイム、そしてその間をすり抜けるようにエレメンティアが現れる。
「? カイル。朝から騒ぐな……って、これはビックリだ!」
4頭の馬よりも大きな獣が、翼を広げフワフワ浮いている。
その姿に、
「わぁぁ……美しい。初めまして。私はエレメンティア。ようこそお越しくださいました。古い城ですが、ここから入られますか?」
「エレメンティア……王女?」
「あ、昨日、元夫のサラが、このカイルの元妻と大々的に浮気をしていたので、国王陛下にお願いして、サラとの離婚と私が王太子となりました」
「あ、申し訳ありません」
深く被っていたフードをとると、サラサラと艶のあるブルーブラックの長い髪が流れ落ちた。
漆黒の瞳と目鼻立ちは整い、唇は紅をはいたように鮮やかな圧倒的な美貌が現れる。
「この姿で失礼いたします。私は、シェールドの後宮騎士団団長ヴァーソロミュー卿の部下、アイド・マルセル・フェルプスと申します。王太子殿下にお会いできて光栄にございます」
深々と頭を下げる。
その横で同じくフードをとった青みがかった銀色の髪と、青い瞳のこちらも美形が、
「この姿で失礼いたします。同じくヴァーソロミュー卿の部下、セディ・ストラ・フェルプスと申します。王太子殿下にお会いできて光栄にございます」
頭を下げる。
「ぐはぁぁ! なーにが騎士団団長の部下ですかぁぁ! ミューゼリックさま! ヴァーロさま! あんたがたですかぁぁ!」
カイルは叫ぶ。
「おーい、叫ぶ前に、この子達をよろしく。初めての寒さで凍えてるから」
アイドはひょいっと小さい獣を2頭差し出す。
エレメンティアはとっさに一頭を受けとると、目を丸くする。
深紅の毛並みに緑の瞳、プルプル震える背中にはちんまりとした翼というよりも羽がある。
「こ、これは……ナムグ?」
「そう。まだ小さいから、よろしくお願いします。6頭います。暖かいところに。カイルが面倒のみかたを知っていますので……」
「それに、急いで。ここの王弟が何度もうちにくれくれって不躾な書簡を送ってて、王太子殿下やカズール伯爵がキレてるから。よろしくお願いします」
セディがスートやタイムに4頭を押し付けると、にっこり笑う。
「じゃぁ、カイル~! また後でね? 楽しみにしてて」
「あんたがたは、又俺に一体どんなことをさせようとしてるんですかぁぁ!」
その言葉に二人は顔を見合わせると、振り返り、後ろに集まった騎士団や女官たちが気絶や腰が砕けるほどの微笑みを浮かべ、
「え? ヴァーソロミュー卿の部下だよ?」
「あ、それに、カズール伯爵が徹底的に始末してくるようにって指示を受けたかなぁ……?」
「あ、国王陛下は全く他人事だけど、マルムスティーン侯爵も検討してるらしいよ? 王太子殿下が来られないから俺が来たんだ~?」
「うん、僕も!」
「あんたがたが来るのが、そもそも驚異でしょうが! えぇ?」
カイルは真っ青になる。
「俺が昨日から必死で執務したのに……意味がねぇ! 何がアイド……何がセディ! あんたがたが、シェールドの双子の王太子殿下だろうがぁぁ!」
「あぁぁ、駄目だよ。せっかく変装してるのに!」
「そうそう。似合ってるでしょ?」
「アーサー殿下は一応変装ですが、王太子殿下! あんたは変装の意味がねぇ!」
あぁぁ……
頭をかきむしるカイルに、だっこしている生き物を撫でつつ、絶世の美貌のアイドを見つめる。
「……シェールドの王太子殿下?」
「あ、内緒」
ニコッ
と微笑むとウインクをする。
「今回は団長の部下なので、よろしくお願いいたします。団長は後でお会いできます。では、表に回りますね。エレメンティア殿下。失礼いたします」
頭を下げると3頭のナムグは去っていった。
その背を見送り、エレメンティアは呟く。
「はぁぁ……噂には聞いていたが、絶世の美貌ってキラキラしてて、変装も無駄だな。ほとんど外に出歩くことも難しいだろうな……確か、先代陛下は大層な美貌の持ち主で、王太子殿下はお祖父様にうり二つなんだと噂で聞いている。あれだけの美貌では普通に道も歩けないだろう。お可哀想に……」
その言葉に、額を押さえていたカイルはハッとする。
アイドと名乗っていた彼はコロコロと表情を変え楽しげで、昔騎士団で会ったときは無表情で、何を考えているのかも感じられなかった。
「もしかして……」
「何だ?」
何とかアイドの魅惑から立ち直ったスートが問いかける。
「いや。憶測で言うことは出来ない。元他国に仕えた身。母国に戻っても、シェールドの内部について漏らすことは出来ない。済まない」
「まぁ、そりゃそうだ。でも、双子の弟も俺らにとっては十分美形だな。あれだけの美貌、誰に似たんだ。どんだけ美形一族だ? 両親か?」
その声に微妙になる。
「いや、現在の国王陛下は絶世の美貌だったご両親に全く似てなくて、その血がそのまま王太子殿下に受け継がれてる。王弟殿下は母方のお祖父様……グランディアの王族の顔立ちに近い。2つ下の妹殿下は王太子殿下を柔和にした美少女で、今、2才かな? 双子の男女の殿下がいて、第2王女は王太子殿下にうり二つ。末っ子王子は可哀想に……国王陛下そっくりだ」
「可哀想?」
「あぁ、ここで言う前王太子をもっと盛大に女好き。だが、周囲を欺いて王太子時代から自ら人身売買組織に乗り込んで次々潰し、貧富の差が激しかった地域を資財を投資して職を作り、職業訓練の施設やストリートチルドレンを助けていた。側近の皆さんにははた迷惑な国王だが、国や人々には本当に慕われる庶民的な方だ。街の喧嘩を止めるどころか両成敗で、何度か騎士団に捕まってるし、酒場やなんかでは喧嘩の仲裁をしたあと『おっさん悪かったな。壊れたものはあまりなかったけど、迷惑かけちまって……あぁ、そうだ! これ、俺の給料なんだが、これで皆で飲もうぜ!』って、大金出して、驚く店主に『さぁ、皆、俺のおごり、無礼講だ! 飲もうぜ! 乾杯!』ってやっていて、途中で幼馴染でマガタ公爵が飛び込んできて、説教。『あぁ、シュティーン! 飲むぜ!』ってどんちゃん騒ぎ。マガタ公爵は翌日二日酔いで寝込んで、国王陛下はけろっとしてたそうだ」
「でも、それで、可哀想ってのは?」
「末っ子王子は性格はそこまで豪放磊落じゃない。3才位だからもう、甘えた盛りのまぁちょっといたずらはするが、可愛いものらしい。でも、兄弟は皆美形のなかで一人平凡……」
「それも可哀想かもしれないな」
呟いたタイムは、スリスリと頬を擦り付けるナムグに微笑むと、
「さぁ、暖かい部屋に入ろうか。ミルクでも飲むかな? それに、カイルは顔を洗って着替えしろ」
「あぁ、そうだな」
皆は室内に入っていくのだった。
眠くはないが、朝の冷たいが新しい空気を吸おうとベッドルームに向かい、窓を開けた。
寒い国なだけに、夏の暑さもシェールド程ではなく、光を入れるために大きな窓だが、王族の部屋だったと言うのに掃除に修復が必要なほど錆や隙間がひどい。
「仮とは言え俺の部屋だから良いものの、他の部屋……客人の部屋がこれだったら、俺は散財しまくっていたあいつらの首を切るぞ」
睨み付けつつ窓を開けベランダに出ると、そこもゴミが落ち、塗られているペンキも剥げ、無惨である。
「よし抹殺!」
「えー? カイル? 会うなりそれ? 酷くない?」
耳元に聞こえてきたのは3年前まで会っていた……。
「えっ? ちょ、ちょぉぉぉ!」
「ちょぉぉぉ? ってここの挨拶?」
目の前でフヨフヨと浮いている……いや、飛んでいる生き物の背に乗った淡い色のフードを深く被った人物から声が聞こえる。
「違っ、な、ななな、何で貴方が!」
「僕もいるよ~! 久しぶり~カイル!」
「ギャァァァ! 最悪だぁぁ!」
カイルの声に内側から人々が出てくる。
「な、何だ? カイル!」
「何があった?」
スートとタイム、そしてその間をすり抜けるようにエレメンティアが現れる。
「? カイル。朝から騒ぐな……って、これはビックリだ!」
4頭の馬よりも大きな獣が、翼を広げフワフワ浮いている。
その姿に、
「わぁぁ……美しい。初めまして。私はエレメンティア。ようこそお越しくださいました。古い城ですが、ここから入られますか?」
「エレメンティア……王女?」
「あ、昨日、元夫のサラが、このカイルの元妻と大々的に浮気をしていたので、国王陛下にお願いして、サラとの離婚と私が王太子となりました」
「あ、申し訳ありません」
深く被っていたフードをとると、サラサラと艶のあるブルーブラックの長い髪が流れ落ちた。
漆黒の瞳と目鼻立ちは整い、唇は紅をはいたように鮮やかな圧倒的な美貌が現れる。
「この姿で失礼いたします。私は、シェールドの後宮騎士団団長ヴァーソロミュー卿の部下、アイド・マルセル・フェルプスと申します。王太子殿下にお会いできて光栄にございます」
深々と頭を下げる。
その横で同じくフードをとった青みがかった銀色の髪と、青い瞳のこちらも美形が、
「この姿で失礼いたします。同じくヴァーソロミュー卿の部下、セディ・ストラ・フェルプスと申します。王太子殿下にお会いできて光栄にございます」
頭を下げる。
「ぐはぁぁ! なーにが騎士団団長の部下ですかぁぁ! ミューゼリックさま! ヴァーロさま! あんたがたですかぁぁ!」
カイルは叫ぶ。
「おーい、叫ぶ前に、この子達をよろしく。初めての寒さで凍えてるから」
アイドはひょいっと小さい獣を2頭差し出す。
エレメンティアはとっさに一頭を受けとると、目を丸くする。
深紅の毛並みに緑の瞳、プルプル震える背中にはちんまりとした翼というよりも羽がある。
「こ、これは……ナムグ?」
「そう。まだ小さいから、よろしくお願いします。6頭います。暖かいところに。カイルが面倒のみかたを知っていますので……」
「それに、急いで。ここの王弟が何度もうちにくれくれって不躾な書簡を送ってて、王太子殿下やカズール伯爵がキレてるから。よろしくお願いします」
セディがスートやタイムに4頭を押し付けると、にっこり笑う。
「じゃぁ、カイル~! また後でね? 楽しみにしてて」
「あんたがたは、又俺に一体どんなことをさせようとしてるんですかぁぁ!」
その言葉に二人は顔を見合わせると、振り返り、後ろに集まった騎士団や女官たちが気絶や腰が砕けるほどの微笑みを浮かべ、
「え? ヴァーソロミュー卿の部下だよ?」
「あ、それに、カズール伯爵が徹底的に始末してくるようにって指示を受けたかなぁ……?」
「あ、国王陛下は全く他人事だけど、マルムスティーン侯爵も検討してるらしいよ? 王太子殿下が来られないから俺が来たんだ~?」
「うん、僕も!」
「あんたがたが来るのが、そもそも驚異でしょうが! えぇ?」
カイルは真っ青になる。
「俺が昨日から必死で執務したのに……意味がねぇ! 何がアイド……何がセディ! あんたがたが、シェールドの双子の王太子殿下だろうがぁぁ!」
「あぁぁ、駄目だよ。せっかく変装してるのに!」
「そうそう。似合ってるでしょ?」
「アーサー殿下は一応変装ですが、王太子殿下! あんたは変装の意味がねぇ!」
あぁぁ……
頭をかきむしるカイルに、だっこしている生き物を撫でつつ、絶世の美貌のアイドを見つめる。
「……シェールドの王太子殿下?」
「あ、内緒」
ニコッ
と微笑むとウインクをする。
「今回は団長の部下なので、よろしくお願いいたします。団長は後でお会いできます。では、表に回りますね。エレメンティア殿下。失礼いたします」
頭を下げると3頭のナムグは去っていった。
その背を見送り、エレメンティアは呟く。
「はぁぁ……噂には聞いていたが、絶世の美貌ってキラキラしてて、変装も無駄だな。ほとんど外に出歩くことも難しいだろうな……確か、先代陛下は大層な美貌の持ち主で、王太子殿下はお祖父様にうり二つなんだと噂で聞いている。あれだけの美貌では普通に道も歩けないだろう。お可哀想に……」
その言葉に、額を押さえていたカイルはハッとする。
アイドと名乗っていた彼はコロコロと表情を変え楽しげで、昔騎士団で会ったときは無表情で、何を考えているのかも感じられなかった。
「もしかして……」
「何だ?」
何とかアイドの魅惑から立ち直ったスートが問いかける。
「いや。憶測で言うことは出来ない。元他国に仕えた身。母国に戻っても、シェールドの内部について漏らすことは出来ない。済まない」
「まぁ、そりゃそうだ。でも、双子の弟も俺らにとっては十分美形だな。あれだけの美貌、誰に似たんだ。どんだけ美形一族だ? 両親か?」
その声に微妙になる。
「いや、現在の国王陛下は絶世の美貌だったご両親に全く似てなくて、その血がそのまま王太子殿下に受け継がれてる。王弟殿下は母方のお祖父様……グランディアの王族の顔立ちに近い。2つ下の妹殿下は王太子殿下を柔和にした美少女で、今、2才かな? 双子の男女の殿下がいて、第2王女は王太子殿下にうり二つ。末っ子王子は可哀想に……国王陛下そっくりだ」
「可哀想?」
「あぁ、ここで言う前王太子をもっと盛大に女好き。だが、周囲を欺いて王太子時代から自ら人身売買組織に乗り込んで次々潰し、貧富の差が激しかった地域を資財を投資して職を作り、職業訓練の施設やストリートチルドレンを助けていた。側近の皆さんにははた迷惑な国王だが、国や人々には本当に慕われる庶民的な方だ。街の喧嘩を止めるどころか両成敗で、何度か騎士団に捕まってるし、酒場やなんかでは喧嘩の仲裁をしたあと『おっさん悪かったな。壊れたものはあまりなかったけど、迷惑かけちまって……あぁ、そうだ! これ、俺の給料なんだが、これで皆で飲もうぜ!』って、大金出して、驚く店主に『さぁ、皆、俺のおごり、無礼講だ! 飲もうぜ! 乾杯!』ってやっていて、途中で幼馴染でマガタ公爵が飛び込んできて、説教。『あぁ、シュティーン! 飲むぜ!』ってどんちゃん騒ぎ。マガタ公爵は翌日二日酔いで寝込んで、国王陛下はけろっとしてたそうだ」
「でも、それで、可哀想ってのは?」
「末っ子王子は性格はそこまで豪放磊落じゃない。3才位だからもう、甘えた盛りのまぁちょっといたずらはするが、可愛いものらしい。でも、兄弟は皆美形のなかで一人平凡……」
「それも可哀想かもしれないな」
呟いたタイムは、スリスリと頬を擦り付けるナムグに微笑むと、
「さぁ、暖かい部屋に入ろうか。ミルクでも飲むかな? それに、カイルは顔を洗って着替えしろ」
「あぁ、そうだな」
皆は室内に入っていくのだった。
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