姉妹の愚痴〜心身障害者への理解を〜

刹那玻璃

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第3章〜転

パニック障害に、涙にスマホ

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 最近睡眠が良くない。
 ストレスが増しているのか眠いからと睡眠導入剤を飲んで、意識が半分飛んでも、満腹なのにごそごそ冷蔵庫を漁る。
 朝起きると食べた残骸に涙する。
 ちゃんと寝たつもりなのに……。

 今日も涙を拭き、いつものようにスマホを確認し硬直した。

『LINEに〇〇さんがお友達に登録されました』

 えっ……。

画面に書かれていた文字に手が震える。

 ちょっと待って……。
 前にタブレットでLINEしていたけれど、そっちは削除してる。
 スマホのは一応、なろうが縁で知り合った方とLINEのやり取りをしたけれど、あとは近所のスーパーの特売の情報とかくらいで……使っていないも同然で……友達登録になるという意味も、わからない程なのに……。
 それに……、

「なんでぇ……」

泣きじゃくる。

「もう、もう、忘れて欲しかったのに……忘れたかったのに……」

 その名前は、私のパニック障害が悪化し、不眠症も酷くなった……主治医に距離を置きなさいと言われた相手……。
 ぐるぐると……薬を飲んでいないので目が回る。

 どうしよう……。
 どうしよう。
 連絡が来たら……。
 ううん、その前にスマホの番号を変えようか……。
 LINEを削除したほうがいいのかも。
 でも、知人の連絡先を消すのはできない。

「どうしよう……どうしよう……」

 呟きながら病院に行こうと準備をする。
 薬を飲んで、動けるようになってから病院に向かう。
 でも、一人で行けない。
 テディベアを抱きしめて、玄関に向かう。

 扉が、ぬりかべのように立ち塞がるような感じがした。
 元々敏感で、外の音や隣、上の音に怯える私は、普段外に出るという行動すら、かなりのパワーを消耗する。
 特に今日のように衝撃を受けると、出て行けなくなる。
 もう、三度も引きこもった。
 今日引きこもってしまえば、薬が無くなり、また病気が悪化するかもしれない。

 震える手で鍵を開け、チェーンを外し、扉を開けた。
 そして、病院に向かった。

 バスの停留所まで、向かう時に思い出す。

「さ、サングラスに帽子……マスク忘れた……ど、どうしよう、どうしよう……」

 うろたえるものの、今更戻るのも人が多い。
 バス停にたどり着き、そして涙目でベンチに座る。
 バスの時刻はあと8分。
 脂汗と涙をぬぐい、緑茶ではなく麦茶を飲む。
 カフェインは興奮剤のため、なるべく控えているが、パニックの時に服用するとますます悪化しそうだったから。

 テディベアの頭を撫で、目を少し閉じ、乱れた息を整える。

 大丈夫、大丈夫……。

 バスが来たので乗り、病院に行くと相談。
 すると、

「ブロックしなさい」
「で、でも、向こうが怒ったら……」
「距離を置きなさいと私も含め、先生方に言われたんでしょう?その連絡で、貴方の病気が良くなることはないよ。ますます悪化する。その人との距離を置きなさい。今ですら青い顔で、泣きながら来たのにどうするの」
「……は、はい……でも、ブロック方法が……」
「うちの看護師に聞きなさい。……君は頑張っているよ。余計なものを背負うことはないよ」

 先生の言葉に涙がまた溢れる。
 泣きながら、仲のいい看護師さんにブロックの方法などを聞いた。
 怖くて看護師さんに頼んで操作をして貰った。
 これで、もう一度、自分の心が平穏になるのか……。
 ブロックした相手の名前を忘れたいと電源を切った。

 さようなら……。
 もう、道は一つにならない。
 ごめんなさい……さようなら。
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