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第2章〜承
目を開けて寝たふりをする愛犬はお腹が空いている
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愛犬ユエに噛まれた。
飼い始めの初日に怯えたユエさんに噛まれ、一週間後に毛を刈ろうとして、歯が当たり出血。
その時は全くおかしくなく、軽く消毒して済ませたのだが、日曜日の朝は興奮したユエに、右手の親指の腹の部分と、反対側の爪の付け根を犬歯でガブッと噛まれた。
「いったぁぁ!ユエさん!穴が、深い穴が空いたじゃないかぁぁ!どうして噛むの!」
普段は甘いが、今回は厳しく叱った。
ユエさんは実家の犬に比べると賢いが、時々イライラが募ったり、ブラッシングなども嫌がり、唸ったり噛もうとする時があり、散歩で発散させるようにしている。
もしくはご飯。
ちなみにユエさんは、おもちゃを与えても遊ぶと言うことが理解できない。
水とご飯と散歩と、時々病院にドライブに行くのが楽しみらしい。
しかし、丁度主に右利きの私の親指はよく使う。じくじくする指を消毒し、カットバンを貼っていたのだが、昼になると、左右の手の大きさが変わっていた。
しかも、噛まれた部分でなく親指の付け根が痛み始め、手の甲や指が腫れ始めたのである。
「あちゃぁぁ……ばい菌が入ったな。狂犬病じゃないのは確か。でも、右手が痛い……」
手首から先が痛いのを誤魔化しつつ、その日は過ごしていたが、夕方になるととんでもないことが起こった。
実は数日前から寒気がするのと、38度から熱が下がらず寝込んでいた父の様子がおかしいという事で、仕事帰りの弟の車にユエさんを連れて飛び乗ると、実家では顔全体が真っ赤に腫れ上がり、両方の瞼が目を隠し、見る影もない父の姿があった。
「明日にでも病院行くわ」
と言うものの、熱でぼーっとしている父を心配し救急病院に連絡、診てもらえる病院に弟の運転で、父と母が出ていったのである。
残された私と妹……。
ユエさんを連れてきてしまい、暗い山道を走れもしない為泊まる羽目になったのだが、右手が腫れているのを見た妹が、
「姉ちゃんもいってくればよかったのに!」
「面倒、明日病院行くから」
夜遅く帰ってきた父は、何かにかぶれたのだろう、もしくはノミ、ダニのアレルギーかもとのことだった。
翌日、痛みに目が覚め、ズキズキと全体が熱を帯びている腫れ上がった手を家族に見せると、
「病院じゃぁぁ!」
と、外科に行った。
すると先生に、
「ばい菌が入っているから切開」
と一言言われた。
「え、えぇぇぇ!うみ絞り出しましたよ?」
「右手全体が腫れてるから、それに、うみの量が多いのに出口が小さいので、出てこないから切開するよ」
「えぇぇ切開!」
穴が空いてるだけで切開……。
しかも看護師さんに力一杯押さえ込まれて……もう一人の看護師さんは先生の助手を務めている。
チクチク痛いし、なんか処置見えないようにされているけれど、昔した記憶があるんだよね……。
「あ、そっか……前に星丸に左手の甲を噛まれた時と一緒だわ……ってことは……」
と、次の瞬間、麻酔に傷口をメスで大きく広げた上に、先生の怪力でうみを絞り出し始めた。
チクチクする!
それより、めちゃくちゃ痛い痛い!
今回は麻酔が効き始めていて、力一杯絞られる感覚が痛かった為、忘れていた。
先生が傷口に処置したもののことを……。
包帯を巻かれ、腫れ上がった手に、傷口の化膿止め用の薬と、低体温の漢方を処方され、
「明日も来なさい」
と言われ帰ったが、右手を濡らしてはいけない、麻酔が切れると痛むから痛み止め、箸も満足に持てず、タブレット端末の操作も右手全体が熱を持っていて痛む。
「あぁぁ……痛いけど、散歩……」
と連れて行き、嘆く。
「もっと、注意しておけば……明日は楽になるかなぁ……」
と言いながら眠りについた。
翌日火曜日……。
まだ右手は腫れている。
病院に行くと、早速呼ばれたのだが、びっくりしたのは包帯ごとガーゼをハサミで切り裂き、再び看護師さん二人がそれぞれ位置についたのだが、
「いっ、だぁぁ~!」
痛みには結構慣れている……足の単純骨折ならレベル5以下と豪語していた自分がうめいた。
思い出した!
「れ、レベル8……の痛みだった……」
涙声である。
ちなみに、先生が見ないようにと言ったものの、どういう処置がされているのか覚えていた。
ガーゼをはがした傷口の中には薬を塗ったガーゼが詰められていて、それをピンセットで摘むと、傷口の中のうみをそのガーゼで掻き出す。
そして再び、残ったうみを絞り出し、新しいガーゼを詰めるのである。
うみを掻き出すピンセットの動きが、リアルで痛い!
しかも、昨日は麻酔で分からなかったガーゼが出て行き、新しいガーゼに取り替えられる……詰められるのも痛い!
でも、逃げても痛みは長引くと大人しくしていた為、看護師さんが逆に、
「いっだぁぁ~だけで平気だった?」
と心配されてしまった。
「えっと、坐骨神経痛がレベル10、うどんのローラーに右手挟まれて、30分間そのままだったのがレベル9だったので、それよりもまだ大丈夫です」
「う、うどんのローラー……」
「肘まで入ったので……」
「想像したくないわ~」
言いながら看護師さんはガーゼに油紙、包帯を巻く。
「はい、明日は午前中。化膿止めの注射もしておきなさい。多分、今週一杯は毎日ガーゼ取り替えるから来るようにね」
先生の指示に、内心涙する。
犬に噛まれただけで、こんなに大変だなんて、忘れていた……。
それよりも、もしユエさんが他の人を噛んで、その人がこんな治療をすることになっていたら、本当に申し訳ない。
飼い主としての責任をもっと持たなくてはと思った。
そしてそれ以上に、ユエさんを人を噛む犬にさせてはいけない。
可愛がるだけではいけない、無駄に吠えたり、今回のように噛んだりしないようしつけだけはもう一度しっかりしようと心に誓った。
しかし……。
「うぅぅ……傷口にガーゼ詰められてる……めちゃくちゃ痛いのに明日もだなんて……噛まれたってだけでこんな治療されること、皆知らないんだろうなぁ……」
帰りながら呟いたのだった。
犬に噛まれるだけでなく、猫や他のペット、さらには人間に噛み付かれても、同様の治療があります。
生き物の口の中にはばい菌があり、特に犬歯などの尖った歯で噛まれると傷口は深いものの、見た目は浅く、余り気にしないで今回の私のように腫れ上がるまで放置することもあります。
まずは噛まれたら程度は気にせず、病院に行くことをお勧めします。
消毒、そして化膿止めの処置をしてもらえます。
放置して悪化させると今回のように腫れ上がり、切開、うみの絞り出し、ガーゼを詰める処置があります。
軽い傷と放置すると悪化します。
飼い始めの初日に怯えたユエさんに噛まれ、一週間後に毛を刈ろうとして、歯が当たり出血。
その時は全くおかしくなく、軽く消毒して済ませたのだが、日曜日の朝は興奮したユエに、右手の親指の腹の部分と、反対側の爪の付け根を犬歯でガブッと噛まれた。
「いったぁぁ!ユエさん!穴が、深い穴が空いたじゃないかぁぁ!どうして噛むの!」
普段は甘いが、今回は厳しく叱った。
ユエさんは実家の犬に比べると賢いが、時々イライラが募ったり、ブラッシングなども嫌がり、唸ったり噛もうとする時があり、散歩で発散させるようにしている。
もしくはご飯。
ちなみにユエさんは、おもちゃを与えても遊ぶと言うことが理解できない。
水とご飯と散歩と、時々病院にドライブに行くのが楽しみらしい。
しかし、丁度主に右利きの私の親指はよく使う。じくじくする指を消毒し、カットバンを貼っていたのだが、昼になると、左右の手の大きさが変わっていた。
しかも、噛まれた部分でなく親指の付け根が痛み始め、手の甲や指が腫れ始めたのである。
「あちゃぁぁ……ばい菌が入ったな。狂犬病じゃないのは確か。でも、右手が痛い……」
手首から先が痛いのを誤魔化しつつ、その日は過ごしていたが、夕方になるととんでもないことが起こった。
実は数日前から寒気がするのと、38度から熱が下がらず寝込んでいた父の様子がおかしいという事で、仕事帰りの弟の車にユエさんを連れて飛び乗ると、実家では顔全体が真っ赤に腫れ上がり、両方の瞼が目を隠し、見る影もない父の姿があった。
「明日にでも病院行くわ」
と言うものの、熱でぼーっとしている父を心配し救急病院に連絡、診てもらえる病院に弟の運転で、父と母が出ていったのである。
残された私と妹……。
ユエさんを連れてきてしまい、暗い山道を走れもしない為泊まる羽目になったのだが、右手が腫れているのを見た妹が、
「姉ちゃんもいってくればよかったのに!」
「面倒、明日病院行くから」
夜遅く帰ってきた父は、何かにかぶれたのだろう、もしくはノミ、ダニのアレルギーかもとのことだった。
翌日、痛みに目が覚め、ズキズキと全体が熱を帯びている腫れ上がった手を家族に見せると、
「病院じゃぁぁ!」
と、外科に行った。
すると先生に、
「ばい菌が入っているから切開」
と一言言われた。
「え、えぇぇぇ!うみ絞り出しましたよ?」
「右手全体が腫れてるから、それに、うみの量が多いのに出口が小さいので、出てこないから切開するよ」
「えぇぇ切開!」
穴が空いてるだけで切開……。
しかも看護師さんに力一杯押さえ込まれて……もう一人の看護師さんは先生の助手を務めている。
チクチク痛いし、なんか処置見えないようにされているけれど、昔した記憶があるんだよね……。
「あ、そっか……前に星丸に左手の甲を噛まれた時と一緒だわ……ってことは……」
と、次の瞬間、麻酔に傷口をメスで大きく広げた上に、先生の怪力でうみを絞り出し始めた。
チクチクする!
それより、めちゃくちゃ痛い痛い!
今回は麻酔が効き始めていて、力一杯絞られる感覚が痛かった為、忘れていた。
先生が傷口に処置したもののことを……。
包帯を巻かれ、腫れ上がった手に、傷口の化膿止め用の薬と、低体温の漢方を処方され、
「明日も来なさい」
と言われ帰ったが、右手を濡らしてはいけない、麻酔が切れると痛むから痛み止め、箸も満足に持てず、タブレット端末の操作も右手全体が熱を持っていて痛む。
「あぁぁ……痛いけど、散歩……」
と連れて行き、嘆く。
「もっと、注意しておけば……明日は楽になるかなぁ……」
と言いながら眠りについた。
翌日火曜日……。
まだ右手は腫れている。
病院に行くと、早速呼ばれたのだが、びっくりしたのは包帯ごとガーゼをハサミで切り裂き、再び看護師さん二人がそれぞれ位置についたのだが、
「いっ、だぁぁ~!」
痛みには結構慣れている……足の単純骨折ならレベル5以下と豪語していた自分がうめいた。
思い出した!
「れ、レベル8……の痛みだった……」
涙声である。
ちなみに、先生が見ないようにと言ったものの、どういう処置がされているのか覚えていた。
ガーゼをはがした傷口の中には薬を塗ったガーゼが詰められていて、それをピンセットで摘むと、傷口の中のうみをそのガーゼで掻き出す。
そして再び、残ったうみを絞り出し、新しいガーゼを詰めるのである。
うみを掻き出すピンセットの動きが、リアルで痛い!
しかも、昨日は麻酔で分からなかったガーゼが出て行き、新しいガーゼに取り替えられる……詰められるのも痛い!
でも、逃げても痛みは長引くと大人しくしていた為、看護師さんが逆に、
「いっだぁぁ~だけで平気だった?」
と心配されてしまった。
「えっと、坐骨神経痛がレベル10、うどんのローラーに右手挟まれて、30分間そのままだったのがレベル9だったので、それよりもまだ大丈夫です」
「う、うどんのローラー……」
「肘まで入ったので……」
「想像したくないわ~」
言いながら看護師さんはガーゼに油紙、包帯を巻く。
「はい、明日は午前中。化膿止めの注射もしておきなさい。多分、今週一杯は毎日ガーゼ取り替えるから来るようにね」
先生の指示に、内心涙する。
犬に噛まれただけで、こんなに大変だなんて、忘れていた……。
それよりも、もしユエさんが他の人を噛んで、その人がこんな治療をすることになっていたら、本当に申し訳ない。
飼い主としての責任をもっと持たなくてはと思った。
そしてそれ以上に、ユエさんを人を噛む犬にさせてはいけない。
可愛がるだけではいけない、無駄に吠えたり、今回のように噛んだりしないようしつけだけはもう一度しっかりしようと心に誓った。
しかし……。
「うぅぅ……傷口にガーゼ詰められてる……めちゃくちゃ痛いのに明日もだなんて……噛まれたってだけでこんな治療されること、皆知らないんだろうなぁ……」
帰りながら呟いたのだった。
犬に噛まれるだけでなく、猫や他のペット、さらには人間に噛み付かれても、同様の治療があります。
生き物の口の中にはばい菌があり、特に犬歯などの尖った歯で噛まれると傷口は深いものの、見た目は浅く、余り気にしないで今回の私のように腫れ上がるまで放置することもあります。
まずは噛まれたら程度は気にせず、病院に行くことをお勧めします。
消毒、そして化膿止めの処置をしてもらえます。
放置して悪化させると今回のように腫れ上がり、切開、うみの絞り出し、ガーゼを詰める処置があります。
軽い傷と放置すると悪化します。
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