姉妹の愚痴〜心身障害者への理解を〜

刹那玻璃

文字の大きさ
上 下
76 / 130
第2章〜承

ユエさんと私と父

しおりを挟む
 先日散歩のついでに実家に忘れ物を取りに行った時のこと。

 ユエさんは本当に散歩の時、最初が嫌がる。
 家から連れ出されるのが嫌なのか、過去のことを思い出すのか必死に腰を落として抵抗する。
 でも、散歩はユエさんのためにもなるし、私自身引きこもりで運動不足なので楽しく一緒に散歩がしたいと思っていたので、しつけを教わることも兼ねて、散歩の仕方を父に一から教わることにした。

 丁度GW。
 父に迎えに来てもらい、一回実家にある荷物を片付け、その後実家の犬を父が、ユエさんを自分がハーネスを手に出発した。
 すると、すぐにトイレを済ませ、くるっと実家の方向に戻ろうとするユエさんに、

「ユエさん、まだ出発して5分も経ってないよ!行くよ?」

と言うが、踏ん張る。
 すると父が、

「お前が近づいて横について、軽く行くぞと、二回引っ張ってみぃや」

と言う。

「犬は人間について歩くことを覚えさせないかんぞ。お前のペースにまだ慣れんのやが。まずはお前が横について、一緒に行くぞと教えないかんが~」

 それもそうかとユエさんに近づき、横に並ぶと、

「ユエさん。行くよ」

と軽く引くと、のそのそと歩き出す。

 えっ?
 あんなにおいで、行くぞ~、ほら、となだめたり引っ張ったりしていたのに、横に並びツンツンと軽く引っ張っただけで歩く。
 前はモップのような毛だったが、刈ると自分でも予期していなかったテディベアカットのプードルになったユエさんは、前は目を隠すような長い頭の毛を思いっきり刈ったので体が軽くなったのかトコトコと歩く。
 目の調子もいいらしく、耳がダンボのように進むたびにぴょこぴょこパタパタ揺れている。
 しかも、今までの散歩とは違い、尻尾を振っていた。

「なんでぇぇ……行こうや~、ユエさん~って毎回言ってたのに、横に並んで行くよって引くだけで、こんなにご機嫌に歩くの~?」
「お前が甘やかしすぎなんぞ。ユエは頭が良い。お前を自分を甘やかしてくれる、何しても許してくれるとおもとるわ。下には見てないが、お前はユエの主人ならちゃんと厳しい時は厳しく躾けないかんぞ。散歩だけでもお前がユエを甘やかしとんがよう分かるわ」
「うぅぅ……」

 一応言っておくと、トイレのしつけと餌、無駄吠えはやめさせることは教えたが、餌は今、飼い始めた頃の1日6回から何とか3回に減らしたいのだが、多く与えると、お腹を壊すのと途中で酷くむせて吐く。
 しかし三回にすると、夜寝る前に足りないと、お手お手と右前足でペシペシと腕を叩く。

「……1日4回か……」
「甘やかすなよ」
「違うよ~。父さん。ユエさんはお腹を壊すのと、むせるのとで一回の量を控えてるんだよ……朝昼晩。そうしたら、22時に頂戴頂戴って」
「散歩はサボるなよ」
「はーい!」



 今日もユエさんと散歩をする。
 同じコースだけでなく、時々、入ったことのない小道を行ったりして新しいものを見つける。
 そしてもっと自分が元気になれるように……ユエさんが幸せになれるように、私と一緒に歩く日々を幸せだと思ってもらえるようになりたいと思った。

 今日は散歩した。
 昨日よりも遠くまで歩いた。
 明日も歩く。
 梅雨になる前に雨ガッパを買おう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

処理中です...