姉妹の愚痴〜心身障害者への理解を〜

刹那玻璃

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第2章〜承

ここ最近の体調

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 最近寒暖の差が激しく良く寝込む。
 体が冷えて手足が冷たい。
 でもぼーっとしていて頰がいつも赤く、このあいだの傷は治っているので余計に赤く見える。
 毎朝頭痛がひどく、そういう時は酷いめまいと吐き気を伴い、起きるたびにパニック発作が起こる。
 今日も、

「待って……待って!何?やめて!吠えないで!」

 ユエさん……家族はユウにしろというのだが、その漢字が微妙すぎて困る……ではない。
 一種の幻聴と言うか耳鳴りに近い。
 ユエさんはキョトンとするが、吠えていないのがわかっていながら、四つん這いで近づき器に餌を入れて、水を変える。

 そしてハムスターの餌と水を取り替え、昨日買ったシュークリームとサラダと美生柑(みしょうかん)を食べ、糸が切れたように倒れこむ。



 朝の一連の発作が起きるようになったのは、実はユエさんが来る前からである。
 月曜日に病院に行ったが、落ち着きなさいと言われ食後の薬と、疲れがたまっているのだと言われたが、疲れを回復するすべが見つからない。
 いや、ただ休めばいいと言われるが、病院では昼間寝ると夜が眠れなくなるからなるべく眠らないようにと言われる。
 それがきつい。

 朝また発作が起きたらどうしよう……

と思うだけで眠れなくなる。



 ちなみに美生柑と言うのは、河内晩柑(かわちばんかん)のことで、地域では美生柑、もしくは愛南ゴールド、宇和ゴールドなどと呼ばれている。
 甘酸っぱいが、外皮をむいて、白い部分を残したまま、食べると甘味と酸味と白い部分の苦味が絶妙にマッチして美味である。

 柑橘系は季節ごとにほとんど制覇するのが例年の冬の自分である。

 本当は家の掃除と洗濯がしたかったのだが、怖くてベランダに出られなかった。
 それが自分のストレスが溜まっている証拠なのだが、最近は電話もかけるのも取るのも億劫だったりする。



 それに、数日前から溜まっていた疲労の上に、妹からの電話で爆発した。

 父は、母や妹に余計なことを吹き込むなと私を悪者のように言う。
 それに妹も、私はこうなったのは姉ちゃんのせいだと言った。

 しかし、一昨日、

「ねーえちゃーん。どうしよう~!」
「何よ?」
「あのね~!一年前に本を『Amazon』で購入したでしょ~?そうしたら今日、『アマゾン窓口』って所から~過去有料サイトを利用したから~お金を払ってだって~」
「……今なんてった?」
「お金払えって~」

妹は焦っていても語尾は伸び、こちらがイラつく。

「違うがね!『アマゾン窓口』って言ったなぁ?『アマゾン』はアルファベットかね?カタカナ?」
「カタカナ~」
「アホ!それは、詐欺の電話じゃ!」
「えー?一年前の件のことじゃないの~?電話かけちゃった~」
「ドアホ!」

怒鳴りつけた。

「あんたはあの時にちゃんと購入して、支払いも済ませたやろがね!前に私にも同じ電話がかかって、あんたにも注意しぃよって電話かけてうんって言ったのはどこのどいつやねん!」
「えーそうだっけ~?」
「タブレットで調べてみて、かけなさいや!警察署の相談係に一応相談、着信拒否にする!今からやれ!」
「やり方知ら~ん!」

にカッとなった。

「勉強せんか!何で年子の私に頼って、姉ちゃん姉ちゃん言うて、自分が大変な時だけそう言うて、都合が悪なったら関わるなかね!いい加減にしてくれ!」
「でも~姉ちゃ~ん。番号……着信拒否のやり方……」
「携帯会社にかけろ!県警は110番は迷惑や、県警の相談窓口の番号を教える。紙に書け!ついでに着拒の方法も教えとく!しばらくかけてくんな!」

と教えて切ると、丁度仕事が休みで、私の調子が悪く病院に送ってくれていた父が、

「あいつに余計なこと教えんでええ」

と言い出したのである。

 余計なこと?
 はぁぁ?

 今度は、いつもはしない父への説教を始めた。

「父さん?余計なことって何やねん?」
「お前とひなは違う。余計な知恵つけたらまた何かに巻き込まれる。お前が巻き込みよんや」
「何いよん!一年前に『Amazon』で本を買いたいって言ったのはあの子で、私は一応やめておけと言った!決めたのはあの子や!何で私が悪いんや!それに、『アマゾン窓口』の詐欺は新手の詐欺で電話をかけ直すことで、お金を巻き上げられる。昔のキーが被害を受けた詐欺と一緒や!また繰り返すんか?それに、私は何回もあの子に言うた!父さんが私に言うたよな。あのクズテレビ、お前がネットフリマの世界にあいつを引き込んだんやろが!って、ネットフリマはこんなのあるよとは言うた!でもゲームやテレビはやめておけと言うたわ。やのに繰り返して購入して問題が起こって泣きつくんはあの子や!」

 きつく言い返し、そして運転する父に言い放った。

「父さん。父さんにとって私は何なん?娘じゃないん?ひなと年子の。やのに、私には兄弟と仲良くせぇ、面倒を見ろ、余計なことを教えるな……にいちゃんたちのことだって、向こうが怒らせたんや!やのに向こうに謝れ、着拒を解けって、何か?うちが全部悪いんか!」
「やけんな……」
「いつも話を遮るけど聞いてもらうで、父さん。うちは父さんの娘や!父さんの嫁は母さんやろが!何で二番目の私が兄妹のわがまま全部聞かなあかんのや!うちは、キーやひなや兄貴の母親やないんやで!もういい加減にしてくれ!自立できん子供を育てたんは、父さんと母さんやないか!ついでにうちに甘えて、自立できん親が母さんやろが!」
「……!」
「もういい加減にしてくれ!解放してくれ!」

 懇願する……と、

「……こないだ亡くなったおいちゃんが、年金では生活できんって生活保護やった。そうしたら葬式の費用も最低のもんで、費用が出せんかったおばちゃんに、親族が見えんように金を渡して、何とか形ばかりの葬式ができたんや」

とボソッと告げた。

「ふーん。それが?うちは葬式いらんわ。それに、生活保護受けぇって言うたんは父さんらやん。今更。何いよんで」
「一緒に住めば元気になれるかもしれん」
「嫌やって。ひなと同じ部屋がまず嫌や!また余計なものを吹き込んだ言うんやろ?それに、元気になって仕事に行けやろ?もうしんどいって言いよるやんか!」

 冷静に……冷静を取り繕うが、だんだん激しくなる。

「この歳で、病気でどんな仕事ができるんで?病気のせいか人の名前は覚えれん、顔も覚えてない。得意な文系の能力はある程度あっても理数系ダメ、人が多いのもダメ、資格もワード、エクセルの簡単な資格や!それでどうやったら就職できるん!もういい加減にして!生活保護を受けろって言った父さん達が、今更戻ってこいって言うな!」

 信号が丁度赤になったので、そこで降りた。

「おい、病院はまだ向こうやろが!」
「もうかまん。全部私が悪いんやろ。じゃぁ、見捨ててくれ!」

 扉を閉め歩き出した。

 横を父が通り抜けるが無視をする。
 周囲は花盛り……でも私の花はもう枯れた。
 悲しくて、今更ながら悔しくて涙が止まらなかった。



 家に帰ると、怖くてずっと引きこもっていたので、注文していない新聞が入っていてパニックになる。
 前に辞めた時にはちゃんと、

「再開の時には連絡しますね」

と言っていたのに……。
 もう嫌だ、もう嫌だ……。



 春の香をかげず涙する私
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