姉妹の愚痴〜心身障害者への理解を〜

刹那玻璃

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第1章〜起

寒すぎるわ……

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 テレビで父の田舎のある市の中心部……父の実家の市は盆地で周りを山に囲まれている。
 その山の中の1つ、市を横断するように大きな川が流れているが、その支流の1つに沿って県道を登っていくと、父の実家の集落がある。
 山に貼りつくように家々があり、坂が山をめぐる。

 そして市内が大雪と聞いたので、父に聞くと、父の実家も例年雪が降るが、今年はかなり降ったらしい。
 しかも、まだこれからも降るのだという。
 いとこの子供は就職していて、隣町に行くのに、裏道を通って行っていたが、裏道というのが一種の峠越え……ほとんど一車線しか走らない道で、県道から行くことにしたらしいが、すぐに悲鳴をあげた。
 例年雪のために南国でもスタッドレスタイヤとチェーンをつけるが、今年は雪が多く、しかも、元々涼しい地域のため、溶けることなく積もったまま。雪かきをしながら行くこともできず、戻ってきたらしい。
 凍りつく寒さだというのに、叔母たちは、軒先で薪をたいて、雪を見ながら喋っているそうだ。

「今年は雪が多いよなぁ……」
「病院にいけるやろうか?」
「それよりも、これで去年生まれたウリ坊は死んでくれるとありがたいなぁ……」
「そうやなぁ……。猟をできるんは、ほとんどおらんなったけんなぁ……」

 過疎化というよりも、父の実家の周囲は、父の兄以外、近所の男性が高齢で亡くなった。
 伯父と共に猟師仲間でもあったおっちゃんたちである。
 伯父の周囲にいるのは、その嫁さんや姉妹、自分の娘と息子、孫息子3人である。
 ちなみにいとこの旦那さんは転勤が多く、単身赴任である。
 もう、80を超える伯父は、脳出血で右半身が動かなくなり、リハビリ生活である。

「兄貴の文字は本当に綺麗やった。気をつけぇよって言うたのに……」

と、父は辛そうに言った。
 父の父……つまり祖父も、脳出血で60前後で亡くなった。
 父の姉も42でくも膜下出血で帰らぬ人となった。
 父も心臓に爆弾を抱えている。

 少し離れた同じ県で、私は住んでいるが、チラチラと舞う雪しか見ていない。
 でも大雪の恐怖は十分知っている。

 それよりも、伯父が元気でいること……父と共に長生きして貰いたいと思った。



 雪は集落を孤立化させていないか……父のいとこたちもいるので、安心しているが、今更思うのは、限界集落に対策を……。
 そして、高齢者全員が金持ちではないことを、国は分からないのだなと思う。
 二束三文と化した山を綺麗にもできず、イノシシやシカが荒らし、ついでに、無断で入る人間が貴重な山野草をごっそり持ち去る。

 一回など、いとこに、

「あれ?あんたらこの前、たけのこ掘りに来たんやないんかい?それに、フキとか三つ葉とかも」

と言われて入って行くと、ごっそり掘られた後だった。
 山に出入りできないようにすればいいという人もいるだろうが、その山には共同の湧き水を貯めるタンクを置いており、定期的にそれぞれがタンクの様子やホースをチェックに来る。
 その上、私たちの土地の山は近所の家の獣道を通り、また他の人の土地をくぐり登っていかないと到着しない。
 電気を流すのも扉を設置するのも、その近所の人の許可が必要であり、設置費用もバカにならない。

 農山業をもっと力を入れて欲しいと思うのは間違っているだろうか?
 昔は雑木林だった山を売れるからと杉や檜に植え替え、30年育て、売ろうとしたら、価格が急落して、本当に二束三文以下……伐採してもらうだけで二百万かかった。
 イノシシなどを捕らえる巻き網猟を教えてもらったが、私は猟師の資格はない。
 一生取れない。
 精神的な病を患う者は、資格がないのである。



 雪は降る……。
 今年は豪雪の年だという。
 私の心には、白い新雪ではなく、黒く汚れた道の角の雪が残る。



 夢は鮮やかでキラキラとしたものじゃない。
 私の夢は、もう、溶け残った残雪である。
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