姉妹の愚痴〜心身障害者への理解を〜

刹那玻璃

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第1章〜起

皆さんは大丈夫でしたか?

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 一昨日からの雪で、刹那の住む地域も滅多に雪が降らないのだが……降らなかった。
 しかし、住んでいる街はほとんど降らなかったのだが、街……市から、山側の隣の市に移動すると、雪が降り、道路が凍っていた。

「うわぁ……三坂峠(みさかとおげ)大丈夫やろか」

 と呟く。
 その峠は、街から一気に高いところに登る峠で、山をくぐると、一気に雪景色になる。

 と、今日、妹から電話がかかった。

「姉ちゃん。今日ね~寒いけん、ギリギリまで取りに行ってなかったコートをと思ったら、父ちゃんがおった」
「はぁ?ととさん(父さん)仕事は?雪のせいで休みかな?」
「ううん。雪で休みじゃなくて、雪でも現場に行こうとしたら、車がスリップして、父ちゃん、ゴーンやって」
「ゴ、ゴーン?どこ?大怪我?頭とか?」

 真っ青になる。

 ととさんは、妹が生まれた頃、長距離トラックの運転手をしていて、赤信号で止まっていた時に、後ろから追突され、むち打ちで長期入院したことがある。
 後遺症でめまい、頭痛、視力が一気に低下し、老眼鏡を使う程遠視になった。

 そして、2年ほど前に、私を助手席に乗せ、カーブのために速度を10キロまで落として、隅によって左に曲がろうとすると、40キロ弱で来た車に真正面から追突された。
 シートベルトをしていたのと、こちらの車がパジェロミニだったので少しの衝撃で済んだのだが、パジェロでも、エアコンの部分が破損するほど……で、追突してきた軽自動車は廃車になったらしい。

 今回は大丈夫か?

「それがね?スリップした時に、シートベルトしとったけどね、胸を強く打ってね?胸がおかしいって、すぐに病院に行ってレントゲン撮って、骨折とかは無かったみたいやけど、会社が、『いかん!何かあったら困る。しばらく休んでくれ!』って、様子見で二、三日休むんやって」
「心臓は?大丈夫なん?」
「うん……と言うか、左胸打ったから、病院は外科やし、いつもの病院に行ってくるって送って行ったよ。まぁ、普通にあるいとったけん大丈夫やろ」
「……ととさん……もう3度目事故被害……大雪……運がいいんか分からん……」

 遠い目と現実逃避をしたくなった。
 一緒の車に乗っていた事故では助手席に座っていて、たとえ40キロでも本当に突然目の前に現れた車に、衝撃だったのに、今回は車がスリップ……テレビでは、怪我人なしと言っていたのだが、負傷者、ととさんいたじゃん……。

「……うん、ととさん。命があってよかった」
「そうやねぇ……。まぁ、姉ちゃんに心配するなやって」

と言いながら電話を切った。

 ホッとしたのと、でも、ととさんもいい年である。
 こんな病気になり働けない自分が言える立場ではないが、ととさんは今年74。
 心筋梗塞の可能性が高く、ニトログリセリンを携帯し、頭痛とめまいを我慢して、季節関係なく体力仕事である。
 年齢が高くなるの連れて仕事は減り、あったとしても給料は安い。
 それでも、年金だけでは生活できないと、必死に働いている。



 妹弟以外の家族を恨んでいる……憎んでいるといってもいい。

 でも、父だけは憎めない……恨めない……。
 心臓に爆弾を抱え、仕事を掛け持ちし、必死に育ててくれた。
 忙しい人だったが、歴史や時代劇の話は楽しげに話していたし、趣味の盆栽とガーデニングは、何時間でも時間を忘れて庭を回っていた。
 忙しい父が休みの時は追いかけ回し、父が盆栽のことを言うと、必死に覚えていた。

 懐かしい思い出で……父を本当はそう言う生き方をさせてあげたい自分がいる。
 叶えることができない、父への謝罪と休息を……思って、父の打ち身が楽であるようにと祈って涙をこぼした。
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