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第1章〜起

幼稚園の時に誤って異物を食べた。

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 お正月は、実家がお店をしているところではかき入れ時である。
 その為、食事などは交代で食べる。
 当時はおせちを作らず、お餅を焼いたり、年越しそばにお刺身が並ぶ。
 そこで手を合わせて食べていた。

 私は忙しくなくても、気がきくので手伝えと言われていた。
 兄弟達は忙しい時間帯にだけ呼ばれた。
 その不公平さも胸には鉛のように重くのしかかったが、文句を言っても怒鳴られるか、拳が来ると我慢した。

 その日、仕事の合間にきなこもちを食べていた。
 甘いきな粉が大好きで、たっぷりまぶして食べるのが大好きである。

 すると、その横で兄が何かをしていた。
 ゲームとか、クリスマスで貰ったり、お年玉で購入したりして遊んでいるのかと思っていた。
 後で思うと、兄の手には小さい袋があった。
 自分はお腹が空いているので黙々と食べていたが、兄が触っていたのは、お菓子などに入っている粒状の乾燥剤が入った袋だった。
 普通開けてはいけないと怒られるはずだが、兄は他のものはラップをされていて大丈夫と思ったのか、中身をぶちまけた。

 私は、どこまで飛んだか気付かず、そのままお皿のものを食べていたが、きな粉に紛れていた異物を口にして、気分が悪くなった。

 そのあと倒れ、気がつくと、胃の洗浄と点滴をしている自分がいた。

「意地汚いことをするけんや!忙しいのに!」

と怒られた記憶がある。
 意地汚いと言われても、きなこもちを食べていただけで、何が悪いのだろう……。



 ストレスから、私は異食症になった。

 教科書の端をちぎって食べたら、なんとなく美味しかった。
 その為、イライラした時には教科書とノートをちぎって食べた。

 そして、生の大豆を台所の隅にあったのを食べた。
 生臭いけれど、歯ごたえがあり止まらなくなった。

 氷をガリガリとかじった……口の中がひんやりとして気持ちが良かった。

 プラスチック……兄がプラモデルを作っていて、出る、細い部分である。
 ガムのように噛んで伸びるのが面白く、ごくんっと飲み込んだ。
 それに、爪も噛んで食べたし、鉛筆の木の部分も食べた。
 シャープペンシルの芯も、消しゴムも口にした。
 毛糸は水を吸うので、糸を口にした。

 そして、中学校の時から今もそうだが、髪の毛を抜くことがやめられなくなった。
 抜くのは痛いし、そこがハゲるので困るのだが、無意識に手が伸びる。
 そして、ストレスの円形脱毛症と重なり、頭頂部がハゲた。
 カッパと呼ばれた。

 もうすでにおかしくなっていたのだろう……それでも、私は普通のつもりだった。
 家のストレスを学校では見せなかったし、学校でいじめられていても、父は忙しく、母は弟のいじめだけには大騒ぎするが私と妹のいじめには関心を向けなかった。

 悲しいとも思わなくなっていた。

 母というのは……生んでくれる存在だと割り切っていた。
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