姉妹の愚痴〜心身障害者への理解を〜

刹那玻璃

文字の大きさ
上 下
2 / 130
第1章〜起

予兆〜刹那玻璃の場合

しおりを挟む
 私は物心ついた頃から周囲に敏感でした。
 悪意や特に怒鳴り声に敏感で、いつも泣きじゃくっていました。

「普通は男の方が育てにくい言うのに、ビービーよう泣くわ」
「うるさいなぁ」

と言われて育ちました。

 年子の妹やその二つ下の弟が出産の時には、父方の祖母が、

「一歳やのに『まんま』しか言わん。離乳食をあげたら、食べて食べて、又『まんま~!』そんなに食べさせてもろてないんか」

と呆れる程。
 そして妹は妹で、言葉をほとんど喋らず、

「お前のせいや!」

と罵られました。

 親族は兄と弟をちやほやし、女だからと私と妹を放置した癖に、何かあると私を呼び、家の手伝いや、弟妹のお守りをさせる。
 うんざりでした。

 それに、幼稚園に通うようになると、幼稚園から帰るのが嫌で、帰る時間には体調を崩すようになりました。
 熱は出ないものの咳をしたり、頭が痛くなったりして教室の端でじっとしていることが多いのです。
 家に帰ると元気になります。
 本当に元気になった訳じゃなく、頭痛は酷いし喉に鼻がつまる感じです。
 でも、我慢していました。
 親族に、仮病と毎回罵られるからです。

 でも、幼稚園の先生が連絡帳に詳しく記載してあり、翌日小児科に通うと、元気な……もしくは大好きな幼稚園を休まされ、車酔いをして真っ青な顔の私が簡易ベッドに休まされ、

「……自家中毒やなぁ」

と言われました。
 最初は注射が必ず付いていましたが、毎回嫌がり大泣きして熱が上がる私に、

「注射はせんけん、飲み薬はちゃんとおのみや。ちゃんと寝ないかんで?」

とおじいちゃん先生が頭を撫でてくれました。

 自家中毒は今でも原因がはっきりとわからない病気ですが、精神的に疲れた幼い子供がなりやすいと言われています。
 でも、自家中毒はある程度数回で、成長していくと減っていくのが普通と言われていますが、私は、高校生になっても主治医に自家中毒の診断を受けていました。
 年に3回以上は病院に行き、自家中毒の診断を受け、母子手帳には自家中毒の文字がびっしりと書き込まれ……自分でも、何故この病気になるのか分かりませんでした。

 高校生になっても通っていました。
 時々、何回か付き添う母を外に出して、先生が、

「しゃこちゃん(当然仮名)。何か辛いこと……お父さんやお母さんに言えないことないかの?」
「……?」

 首を傾げました。
 本当に分かりませんでした。
 家族と言うのは命令するもの、罵られるもの、手伝いをしないといけない、兄弟の面倒を見ること……。

 先生はため息をつき、

「しゃこちゃんよ。先生はもう年や。もう、この病院を閉めようと思っとる。でも、他の子は大きゅうなって元気で時々『じいちゃん先生!』言うて、外を歩いて行きよる。やけど、しゃこちゃんは家が遠いんもあるけど、毎回青い顔して今日はここが痛い、そこが痛い言うて……それは、しゃこちゃんが心に何か負担を抱えとるんやないか、心配なんや。お母さんはおらんけん、辛いもんをじいちゃんに話せんかな?」
「辛いこと……英語の点数が悪い……」
「ウンウン」
「先生は好きやけど、男の子って嫌い……」
「何かあったんか?」

 俯き、小学校の時と中学校の話もする。
 眉を寄せて書き込む先生。

「そがいなことがあったんか……辛かったの……」
「……それに、勉強したいのに、受験させて貰えんのです。兄ちゃんは就職やけん。妹が大学行ってどうするんでって……」
「……男も女も変わりないのにの……それに、勉強したい、えぇやないか……」

 ベソベソとする私の頭を撫で、

「今度行くんは、家の近くのあの病院やったなぁ。先生もよう知っとる。しゃこちゃんのことはちゃんと伝えておくけんの。やけん、辛い時には向こうの先生に言うんやで?」
「はい……」

薬を貰い、病院から帰ったのでした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

処理中です...