最近、私は振り回されてる。

最近『貯金』頑張ったので、20年来欲しかったものを買った。

　余りここで大きく言うのも何だが、元気な頃半年で『差額貯金』をして約９万貯めた。



　『差額貯金』と言うのは『使ったつもり貯金』とも言い、まぁ、昔は家計簿に日記を書いていたものの、病気になってから出来なくなり、代わりに始めた私なりの貯金方法である。



　例えば、良く行くスーパーで２割引のシールが貼ってあるパンを買えば、その割引分を貯金箱に入れ、スーパーのカードでポイントが貯まれば、それを使ったらその分を入れる。

　特にLAWSONは恐ろしく貯金率が上がる。
　貯めたポイント30ポイントで、170円の商品と交換したとすると、200円を自動的に使ったことになるので、この間30ポイント10枚出し、1500円分の野菜ジュース飲料や無糖ヨーグルトなどを交換したので1800円を入れたのだった。

　それに、現在割引対象になるペイの割引分も貯金に入れ、貯まったポイント分を入れるだけで、一月で結構貯まった。

　でも、その貯金が嫌なのでは無く、基本、一年後に何かを買うと言う目標で続けており、途中欲しいものが見つかると銀行にお金を預け、それを支払用のペイにチャージし、買うようにしているので、またポイントが貯まるのでお得感が増す。

　年度末まで基本貯金箱では無く、私は、可愛いクッキーなどを入れてあったキャラクター缶にマスキングテープに何年度と簡単に書き、銀行の封筒にピン札、そして去年だったら天皇陛下即位記念硬貨とオリンピック記念硬貨に交換したものを、プチプチ袋に納め、それ以外は、令和元年硬貨などを入れておく。
　そして、年度が終わると、それを全て封印する。
　高校卒業後から始めたが、封印は十年前まで全部開けられている。



　十年前から数年は一人暮らしに四苦八苦し、その中のお金を出して、メモに、

『○年○月○日5000円借』

　と言うものが残る。
　この分を返して封印をしたいが余剰がない。
　今度、給付金があれば、それを入れて封印しようと思っている。



　昨年度は、すでに15000円借りている。
　でも、使ってしまえと言う心のささやきに負け、マスクゴムを15mと、年中冷え性の私の為に、ポケモンのイーブイのひざ掛けをフリマで購入した。
　ポケモンは、ピカチュウの声は大好きだが、イーブイが一番可愛いと思う。



　そして！
　父に言うと、絶対又こいつはと言われるので隠すのだが、ずっとずっと探していたものの一つを発見！
　箱は凹んでいるものの、カードや中に入っていたものは全てあり、値段は自分の一月使うストレス発散費……ことお小遣いの２倍はするものの、先月の差額貯金額がとてつもなく、その分で購入できてしまうことが判明し、一応その日が土曜日だったのでネットフリマ上でこんなやりとりをした。



「申し訳ありません。購入希望なのですが、実は今お支払いできる額が〇〇円しかありません。明後日なら残りがお支払いできるので、明後日まで取り置いて頂けませんか？本来、取り置きはダメだと分かっております。それに、私の今お支払いできる額では、購入できないのも分かっておりますので、どうか取り置きお願い致しますm(_ _)m」



　すると、



「〇〇円で構いませんよ。専用にしますね」



と返事が返った。

　へっ？
　この子、同じサイトで最低金額三万～なのに、大丈夫なん？
　ほ、ほぼ、は、半額～！
　食い入るように値段を確認し、購入した。



「本当に本当に、ありがとうございます。どうしても欲しくて探していたものです。ご縁があって嬉しいです」



とメッセージを送り、購入して一昨日受け取った。



　手に入れたのは、『テディガール』のレプリカ。
　でも、サンアロー社のものである。



　元々『テディガール』は、ドイツの老舗テディベアメーカーのシュタイフ社が作ったテディベアの一体で、世界一高額なテディベア。
　優雅で穏やかな風貌で、別名『テディベア界の女王』と呼ばれる彼女が打ち立てたギネス記録は未だ破られていない。

　他に有名なのは『アルフォンゾ』。
　別名『皇女のテディベア』
　真紅のモヘアに、オレンジの民族衣装を身に纏った彼も、シュタイフ社製のテディベアである。



　で、そのシュタイフ社の『テディガール』がサンアロー社から発売と言うのは、オークションでテディガールを落札したのがサンアロー社だからである。

　そして、『テディガール』はとても状態が良いベアとは言え、現在110歳を超えるアンティーク中のアンティークベア。
　イギリスの亡きボブ・ヘンダーソン大佐の愛した彼女を大切の保管、保存、そして展示する為にサンアロー社が二千体のレプリカを作って発売した。
　今『テディガール』は、日本の伊豆テディベアミュージアムにいる。
　今はいけないが、絶対この差額貯金で貯めたお金で、本物の『テディガール』に会いに行くのが夢だ。



　私は約20年前に、テディベアを知った。

　百貨店のイベントで、4000円のテディベアの半縫製キットキットを買い、後日テディベア作家さんにを教わり、自分で仕上げる。
　目や耳の位置、鼻と口の刺繍、わたを詰め、ジョイントという部品で繋ぐと手足と首が動くベアが生まれる。
　自分の精神状態や気分が乗るか乗らないか、イライラしていたりするとベアは悲しそうな顔になる。
　テディベアと向き合い、話しかけると表情が出て可愛くなる。

　知り合いに数人のテディベア作家さんがいたので、教えを乞い、そしてコツを教わり、それでますますハマり、ボアやモヘアの布を買い、コツコツ作り続けた。



　その日から、日常は地獄でも精神を保てたのは、テディベアがいたからだった。
　自分で作るのも、見るのも幸せで、多分テディベアがいなかったら生きていなかったという自信がある。
　それほど現実が辛かったのだ。



　付き合っていた男の人も、

「テディベア？　ぬいぐるみは趣味だろう？　テディベア作家？　お前は馬鹿か？　あぁ、クズだったな」

　と言われて傷ついたし、家族の理解もなかった。



　今は病気で仕事ができなくなり、テディベアも年に一体が精一杯だ。

　病気とはっきり診断されて、丁度十年経つ。
　でも、テディベア愛は健在だ。
　それのどこが悪い、と開き直りすらできるようになった。
　私が作ったし、私が友人の結婚式にウェルカムベアを贈るんだし、良いじゃないか。

　探していた『テディガール』は、私が頑張ってきた人生の節目のプレゼントだ。
　大事に可愛がってあげようと思う。

　そしていつか、シュタイフ社でも出ている、『テディガール』のレプリカも見つけたい。
　『テディガール』が私の人生の支えの一つだから。



　その為にも、『差額貯金』はやめられない。
　止めるつもりもない。

　……それも面白いと思えるようになってきたから。

　昔は本一冊買いたいから差額貯金していたが、今は夢が欲しいから。



　前を向けるようになった私を褒めたい。