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その時、この方々は一体どんなことを考えているのでしょうか?
意外に素敵な孟徳さんのおネエ言葉です。
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敗戦になったが、謹慎だけという少々緩い、従兄であり主君が言い渡した処分に納得がいかない元譲は、主君の元に押し掛け問い詰めたのだが……。
「い~じゃな~い。元譲、いっつも瓊樹ちゃんほったらかして、仕事、訓練、戦場でっしょ~? 可哀想だと思わないの? 可愛い可愛い自慢の奥さんでしょ~? もっと一緒にいてあげなさいよ~。やぁねぇ、愛されてるからって増長しちゃうと、雲長ちゃんと同じになっちゃうわよ~ん♪」
普段は何とかなっているのだが、親しい存在、特に元譲にはこんな言葉で話す。
「孟徳。その姿でその喋り方は気色悪い。いつもの話し方にしてくれ」
「や~あ~よ♪ 気に入ってるのよ~♪ それに、気楽だもの~いいじゃない。あたしたちの仲じゃな~い」
「本気でやめろ! 何が仲だ? ただの従兄弟と言うだけだろうが!」
寒気を覚え、鳥肌のたった腕を擦る元譲に、
「もう、堅物なんだから、元譲は。仕方ないわねぇ」
つまらなそうな顔になったオカマ言葉を話していた男は、首を竦める。
「で、さっき言った通り、雲長が貂蝉を棄てた……と言うより、貂蝉が雲長を見限ったと言った方が早いな。一人娘がいたがその娘も捨てて、襄陽の豪商、黄承彦の後妻となったらしい」
「は? 黄承彦と言うと……あの?」
「そう。知ってるか? 黄承彦には息子と娘がいて、息子は龐徳公の姪を嫁に、娘は諸葛孔明と言う男に嫁いだ。その男の別名が『臥龍』で、お前の敗戦の策を考えた。情報によると4才の時に作った稚拙なものだと」
「稚拙……」
自分を馬鹿にされた気がして、唇を噛む。
「あぁ、違う違う。元譲を馬鹿にしたんじゃない。俺が馬鹿にしたのは雲長とその娘だ。『臥龍』の策を無視し、もう少しで元譲が勝つ所まで行ってたらしい。それを引き戻したのは『臥龍』と趙子竜と言う将軍。お前は覚えているか? あの劉玄徳の軍でガリガリに痩せた、貧相な金髪で青い目の……その将軍と一騎討ちしたんだろう? 女の子だった筈だが……?」
「違う。私が戦ったのは、私よりも背の高い……八尺はある、白髪と黒い瞳の男だ。年は髪は白いが20代。名は趙子竜を名乗ったが、15年前に徐州にいて、あの最中逃げ回っていたと話した」
「は?」
目を見開く孟徳に、元譲は続ける。
「芸術だ何だとほざく前に戦いを終わらせろ! 『孫子』の注釈をいれた? それがどうした。どうせそれは殺しあいの手段を書いただけだと。芸術が見たいなら、戦争の中のそれを見せてやると火を放ったな……」
「誰だ? そいつは……8尺……? しかも、元譲と迫る程の近距離戦も得意? 8尺……8尺……聞いたような……あっ!」
ポンっと手を叩く。
「『臥龍』だ。背が異様に高い上に、『春秋』『墨子』『荀子』『孫子』に『六韜』などの造詣が深いらしい。だが趣味が笑えてな、炊事に洗濯、掃除に畑仕事、裁縫に刺繍も得意らしい。で、襄陽の水鏡老師に師事し数年で出たが、老師の代わりに教壇に立ったり、老師の屋敷にある書簡を写したり、それで生計をたてていたらしい。本人は20の時……7、8年前に12才年下の嫁を娶って、一生田畑を耕して暮らしたいと言っていたらしいのに、どういう事だ?」
首を傾げる孟徳に、元譲は、
「嫁と言うのは……どんな姿だ? 確か黄月英と言うのだろう?」
「違う。月英は息子。孔明より4才上。娘は琉璃。息子は赤茶けた髪と瞳の不細工って言われているけれど、実際は金髪に青い瞳の女装姿が似合う相当な美人。で、娘がはっきりした金髪に青い目の可愛い系美少女だって」
「では、私が戦ったのは『臥龍』だ。趙子竜じゃない! 私と戦い、兵をおびき寄せる為に私の馬に飛び乗り、速度を計算に入れつつ戦い、そして火を放った! 7、8年前の娘は……本当の趙子竜は、しばらく軍にいなかったのだろう?」
元譲の問いかけに頷く。
「あぁ、戦場でしんがりを任され、その後行方不明。死んだと思われていたようだ。急に出てきたので、こっちも驚いた位だ」
「その黄琉璃というのが趙子竜の、平穏な時代の名前なんだろう」
黙り込む元譲に、
「どうした? 元譲」
「可哀想にと……思ってな……。諸葛孔明は徐州の戦乱を逃れ、趙子竜もあの劉玄徳の魔の手から、戦場から逃れ……ただ、平凡に平穏に暮らしたいだけだろうに……かたや4才であの戦術をこしらえる程の頭脳を持ち、かたや物心ついた頃には戦場に立っていた……哀しいものだな」
ぽつり……呟く。
その様子を静かに見つめていた孟徳は、急に表情を変えニヤリと笑う。
「あ~ら、元譲? 他人の心配より自分の心配をなさいな? このままここに残るぅ? いいわよぉ? か・わ・り・に! あたしが瓊樹ちゃんに、敵軍の可愛い武将の女の子に一目惚れしてしまったってばらしちゃおっと。そして、一晩中慰めてあげちゃうわよぉ?」
「するなー! それと、私の瓊樹に近づくな! このオカマ言葉使う癖に女好きが! もういい! 私は帰る! お前は一晩中ここでいろ!」
怒りながらも、最愛の妻の元に帰る元譲に、
「じゃあね~ん。今日の夜の事教えるのよ~ん?」
「誰が教えるか! 馬鹿が!」
足音が遠ざかる……と真顔に戻り、呟く。
「玄徳の影響か……雲長は、まともだと思っていたが、貂蝉を裏切るとはな……あの時、斬ってやれば良かったかな? 玄徳を。あいつは俺より狂ってる……」
呟きは、すぐに吐息と共に消えた……。
「い~じゃな~い。元譲、いっつも瓊樹ちゃんほったらかして、仕事、訓練、戦場でっしょ~? 可哀想だと思わないの? 可愛い可愛い自慢の奥さんでしょ~? もっと一緒にいてあげなさいよ~。やぁねぇ、愛されてるからって増長しちゃうと、雲長ちゃんと同じになっちゃうわよ~ん♪」
普段は何とかなっているのだが、親しい存在、特に元譲にはこんな言葉で話す。
「孟徳。その姿でその喋り方は気色悪い。いつもの話し方にしてくれ」
「や~あ~よ♪ 気に入ってるのよ~♪ それに、気楽だもの~いいじゃない。あたしたちの仲じゃな~い」
「本気でやめろ! 何が仲だ? ただの従兄弟と言うだけだろうが!」
寒気を覚え、鳥肌のたった腕を擦る元譲に、
「もう、堅物なんだから、元譲は。仕方ないわねぇ」
つまらなそうな顔になったオカマ言葉を話していた男は、首を竦める。
「で、さっき言った通り、雲長が貂蝉を棄てた……と言うより、貂蝉が雲長を見限ったと言った方が早いな。一人娘がいたがその娘も捨てて、襄陽の豪商、黄承彦の後妻となったらしい」
「は? 黄承彦と言うと……あの?」
「そう。知ってるか? 黄承彦には息子と娘がいて、息子は龐徳公の姪を嫁に、娘は諸葛孔明と言う男に嫁いだ。その男の別名が『臥龍』で、お前の敗戦の策を考えた。情報によると4才の時に作った稚拙なものだと」
「稚拙……」
自分を馬鹿にされた気がして、唇を噛む。
「あぁ、違う違う。元譲を馬鹿にしたんじゃない。俺が馬鹿にしたのは雲長とその娘だ。『臥龍』の策を無視し、もう少しで元譲が勝つ所まで行ってたらしい。それを引き戻したのは『臥龍』と趙子竜と言う将軍。お前は覚えているか? あの劉玄徳の軍でガリガリに痩せた、貧相な金髪で青い目の……その将軍と一騎討ちしたんだろう? 女の子だった筈だが……?」
「違う。私が戦ったのは、私よりも背の高い……八尺はある、白髪と黒い瞳の男だ。年は髪は白いが20代。名は趙子竜を名乗ったが、15年前に徐州にいて、あの最中逃げ回っていたと話した」
「は?」
目を見開く孟徳に、元譲は続ける。
「芸術だ何だとほざく前に戦いを終わらせろ! 『孫子』の注釈をいれた? それがどうした。どうせそれは殺しあいの手段を書いただけだと。芸術が見たいなら、戦争の中のそれを見せてやると火を放ったな……」
「誰だ? そいつは……8尺……? しかも、元譲と迫る程の近距離戦も得意? 8尺……8尺……聞いたような……あっ!」
ポンっと手を叩く。
「『臥龍』だ。背が異様に高い上に、『春秋』『墨子』『荀子』『孫子』に『六韜』などの造詣が深いらしい。だが趣味が笑えてな、炊事に洗濯、掃除に畑仕事、裁縫に刺繍も得意らしい。で、襄陽の水鏡老師に師事し数年で出たが、老師の代わりに教壇に立ったり、老師の屋敷にある書簡を写したり、それで生計をたてていたらしい。本人は20の時……7、8年前に12才年下の嫁を娶って、一生田畑を耕して暮らしたいと言っていたらしいのに、どういう事だ?」
首を傾げる孟徳に、元譲は、
「嫁と言うのは……どんな姿だ? 確か黄月英と言うのだろう?」
「違う。月英は息子。孔明より4才上。娘は琉璃。息子は赤茶けた髪と瞳の不細工って言われているけれど、実際は金髪に青い瞳の女装姿が似合う相当な美人。で、娘がはっきりした金髪に青い目の可愛い系美少女だって」
「では、私が戦ったのは『臥龍』だ。趙子竜じゃない! 私と戦い、兵をおびき寄せる為に私の馬に飛び乗り、速度を計算に入れつつ戦い、そして火を放った! 7、8年前の娘は……本当の趙子竜は、しばらく軍にいなかったのだろう?」
元譲の問いかけに頷く。
「あぁ、戦場でしんがりを任され、その後行方不明。死んだと思われていたようだ。急に出てきたので、こっちも驚いた位だ」
「その黄琉璃というのが趙子竜の、平穏な時代の名前なんだろう」
黙り込む元譲に、
「どうした? 元譲」
「可哀想にと……思ってな……。諸葛孔明は徐州の戦乱を逃れ、趙子竜もあの劉玄徳の魔の手から、戦場から逃れ……ただ、平凡に平穏に暮らしたいだけだろうに……かたや4才であの戦術をこしらえる程の頭脳を持ち、かたや物心ついた頃には戦場に立っていた……哀しいものだな」
ぽつり……呟く。
その様子を静かに見つめていた孟徳は、急に表情を変えニヤリと笑う。
「あ~ら、元譲? 他人の心配より自分の心配をなさいな? このままここに残るぅ? いいわよぉ? か・わ・り・に! あたしが瓊樹ちゃんに、敵軍の可愛い武将の女の子に一目惚れしてしまったってばらしちゃおっと。そして、一晩中慰めてあげちゃうわよぉ?」
「するなー! それと、私の瓊樹に近づくな! このオカマ言葉使う癖に女好きが! もういい! 私は帰る! お前は一晩中ここでいろ!」
怒りながらも、最愛の妻の元に帰る元譲に、
「じゃあね~ん。今日の夜の事教えるのよ~ん?」
「誰が教えるか! 馬鹿が!」
足音が遠ざかる……と真顔に戻り、呟く。
「玄徳の影響か……雲長は、まともだと思っていたが、貂蝉を裏切るとはな……あの時、斬ってやれば良かったかな? 玄徳を。あいつは俺より狂ってる……」
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