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さぁ、臥竜が空を駆けていきます。手には竜珠を握りしめて……
戦いは圧勝したようですが、後味は悪いようです。
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途中、益徳と落ち合った孔明は手渡された武器で敵を凪ぎ払い、蹴りつけ、柄で殴り付ける。
そんな孔明と背を合わせるようにした益徳は、
「随分、戻ってくるのに時間がかかったな。琉璃が泣いてたぞ」
「な、何ですって! すぐに行かなければ!」
戦場を飛び出そうとした孔明の襟首を掴む。
「阿呆! 土竜がいないから、指揮するのがいない。自分が出るって言い張ってるってこっちに伝令が来たんだよ! で、元直に後は任せた。で、どうした? 簡単に事情は聞いたが……」
掴んだ手を離し、戦いながら問いかける。
「関平どのが、敵に向かって伏兵がいると走りました。季常は馬に乗れず、幼常の馬では無理で、私が捕まえ元の場所に。で、夏侯元譲将軍と一騎討ちしましたよ」
「はぁ? 土竜が、あの? あいつ、曹孟徳軍でも知られた武将だぞ? 勇猛果敢な奴、例えばあいつの従弟の夏侯妙才とかもいるが、元譲と言えば、わざわざ嫁であり学問の師匠である荀瓊樹を連れて戦場に向かう、曹操軍屈指の名将だ。曹孟徳の従弟で、特に信頼しているらしい」
「あぁ、聞いています。で、こちらは武器が劣るので、向こうが勝ったと気が緩む……矛の柄を折らせて、その隙に相手の馬を走らせて例の場所まで走らせたんですよ。で、ついてきた兵士を確認して、こっちは逃走。ついでに火計成功です」
「も、土竜……死ぬ気じゃ……て、敵の馬に飛び乗るなんて、この俺でもやらんぞ!」
「刀持ってましたし、近距離の戦い方は姉に教わってましたから、大丈夫ですよ。まぁ、何ヵ所か傷できましたけどね」
自慢すると言うよりも淡々と報告する。
「それよりもここに戻る途中、雲長将軍が、関平殿を蹴りつけてましたよ。で、出ていけとか、娼婦の娘とか……彩霞様を貶める発言バンバン吐いてて、その周囲の兵士の士気が落ちるし、軍議に出て貰う為にも、丁度来た殿に頼んで、縄打って貰いました。ついでにそこでボーッとしてた敬弟とその弟も。で、時間がかかりまして、すみません」
「……又しても、あのバカ親子か! 迷惑しかかけやがらねぇ……しかも、姉貴の事を娼婦だと? 許せねぇな!」
「そうなんですよ。それに、関平殿は変な方向に恨みを抱いて……琉璃を」
「はぁ? そっちの方がおかしくねぇか? あんなに自分の父親が、母親貶めて殺そうとまでしたんだぞ? 普通、父親恨むだろう? どこまで頭の悪い、甘やかされた馬鹿娘なんだ? 俺も馬鹿だが、間違った方向に恨む程狂ってねぇぞ?」
孔明は、向かってきた兵士の顔を蹴ると、
「琉璃が幸せになった時期と、自分が不幸になった時期が一緒だと思い込んでいて、何か……私に媚びてるんですよね……獲物のような目で人を見てますし、気持ち悪い」
心底嫌そうな顔をする孔明に、益徳は、刺した蛇矛を引き抜きながら、
「土竜、姉貴は大丈夫なんだろう? 何で関平は駄目なんだ?」
「基本的、琉璃以外の女性は触りたくありません! 義母達、姉達、義理の姉妹に、怪我を負った奥方殿までは大丈夫です。でも、白粉を塗りたくって濃い化粧、付け過ぎまでつけた装飾品に、大きく胸を開いた衣裳とかって駄目なんですよ」
首を振りながら敵を凪ぎ払う孔明に、益徳は、
「もしかして、土竜……」
「……性的不能とか、男色とか、幼女趣味とか言ったら半殺しですよ……益徳殿でも」
凍りつくような声に、益徳は慌てて首を振りながら、
「違う違う!! 土竜、琉璃以外の女、女として認識しないと言うか、思えないんだろ? 土竜、8才の琉璃拾って、自分好みに育てて……」
「それがどうしましたか? 良いでしょう? 可愛い嫁ですもん。自分の嫁を自分好みに育てて何が悪いんです? ついでに、自分以外には余り近付かないように、慣れさせないようにもしましたが、何か?」
「……こえぇ……」
「何がです、か! 退け、邪魔だ!」
払い蹴り飛ばす孔明の姿に、益徳は目を逸らす。
「土竜だけは……敵に回すのよそう……」
「何か言いましたか?」
「いいや、何でも……」
遠くで、終了を知らせる銅鑼の音が響いた……。
そんな孔明と背を合わせるようにした益徳は、
「随分、戻ってくるのに時間がかかったな。琉璃が泣いてたぞ」
「な、何ですって! すぐに行かなければ!」
戦場を飛び出そうとした孔明の襟首を掴む。
「阿呆! 土竜がいないから、指揮するのがいない。自分が出るって言い張ってるってこっちに伝令が来たんだよ! で、元直に後は任せた。で、どうした? 簡単に事情は聞いたが……」
掴んだ手を離し、戦いながら問いかける。
「関平どのが、敵に向かって伏兵がいると走りました。季常は馬に乗れず、幼常の馬では無理で、私が捕まえ元の場所に。で、夏侯元譲将軍と一騎討ちしましたよ」
「はぁ? 土竜が、あの? あいつ、曹孟徳軍でも知られた武将だぞ? 勇猛果敢な奴、例えばあいつの従弟の夏侯妙才とかもいるが、元譲と言えば、わざわざ嫁であり学問の師匠である荀瓊樹を連れて戦場に向かう、曹操軍屈指の名将だ。曹孟徳の従弟で、特に信頼しているらしい」
「あぁ、聞いています。で、こちらは武器が劣るので、向こうが勝ったと気が緩む……矛の柄を折らせて、その隙に相手の馬を走らせて例の場所まで走らせたんですよ。で、ついてきた兵士を確認して、こっちは逃走。ついでに火計成功です」
「も、土竜……死ぬ気じゃ……て、敵の馬に飛び乗るなんて、この俺でもやらんぞ!」
「刀持ってましたし、近距離の戦い方は姉に教わってましたから、大丈夫ですよ。まぁ、何ヵ所か傷できましたけどね」
自慢すると言うよりも淡々と報告する。
「それよりもここに戻る途中、雲長将軍が、関平殿を蹴りつけてましたよ。で、出ていけとか、娼婦の娘とか……彩霞様を貶める発言バンバン吐いてて、その周囲の兵士の士気が落ちるし、軍議に出て貰う為にも、丁度来た殿に頼んで、縄打って貰いました。ついでにそこでボーッとしてた敬弟とその弟も。で、時間がかかりまして、すみません」
「……又しても、あのバカ親子か! 迷惑しかかけやがらねぇ……しかも、姉貴の事を娼婦だと? 許せねぇな!」
「そうなんですよ。それに、関平殿は変な方向に恨みを抱いて……琉璃を」
「はぁ? そっちの方がおかしくねぇか? あんなに自分の父親が、母親貶めて殺そうとまでしたんだぞ? 普通、父親恨むだろう? どこまで頭の悪い、甘やかされた馬鹿娘なんだ? 俺も馬鹿だが、間違った方向に恨む程狂ってねぇぞ?」
孔明は、向かってきた兵士の顔を蹴ると、
「琉璃が幸せになった時期と、自分が不幸になった時期が一緒だと思い込んでいて、何か……私に媚びてるんですよね……獲物のような目で人を見てますし、気持ち悪い」
心底嫌そうな顔をする孔明に、益徳は、刺した蛇矛を引き抜きながら、
「土竜、姉貴は大丈夫なんだろう? 何で関平は駄目なんだ?」
「基本的、琉璃以外の女性は触りたくありません! 義母達、姉達、義理の姉妹に、怪我を負った奥方殿までは大丈夫です。でも、白粉を塗りたくって濃い化粧、付け過ぎまでつけた装飾品に、大きく胸を開いた衣裳とかって駄目なんですよ」
首を振りながら敵を凪ぎ払う孔明に、益徳は、
「もしかして、土竜……」
「……性的不能とか、男色とか、幼女趣味とか言ったら半殺しですよ……益徳殿でも」
凍りつくような声に、益徳は慌てて首を振りながら、
「違う違う!! 土竜、琉璃以外の女、女として認識しないと言うか、思えないんだろ? 土竜、8才の琉璃拾って、自分好みに育てて……」
「それがどうしましたか? 良いでしょう? 可愛い嫁ですもん。自分の嫁を自分好みに育てて何が悪いんです? ついでに、自分以外には余り近付かないように、慣れさせないようにもしましたが、何か?」
「……こえぇ……」
「何がです、か! 退け、邪魔だ!」
払い蹴り飛ばす孔明の姿に、益徳は目を逸らす。
「土竜だけは……敵に回すのよそう……」
「何か言いましたか?」
「いいや、何でも……」
遠くで、終了を知らせる銅鑼の音が響いた……。
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