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惰眠をむさぼっていた竜さんがお目覚めのお時間のようです。
人は、自分と違う存在を認めるのは苦労します。
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「あれじゃ……傷がどうの、衣がとか言う筈だよ。あれ、長年の虐待もあるよね?」
子敬は淡々と告げる。
「家族が見てないところで、父親にも受けてたんじゃない?」
「……多分」
子瑜は項垂れる。
「私が12才から遊学してから、7年。実母はその1年前に逝ったし……多分、父は亮の星見が気味悪かったみたい。イナゴの害のことや、城を襲う黄巾の賊、母の死……。父はごく普通の人間だったからね。今の母が庇っていたのは知ってる。母はお転婆な妹達やまだ小さい均より、亮を可愛がってたから」
「そうなの?」
「亮のこと、ずっと心配してる。他の兄弟は自分で生きていける……でも、亮は駄目なんだ。きっと自分よりも人を守る、助ける……人に依存されてでしか生きていけない。今は琉璃がいる。琉璃を嫁にしたから……あの子は亮に依存されても、亮の言うことが正しいと信じてるからこそ、束縛されてるとは思っていない。でも、もし琉璃が亮の元から離れたら……そう思うと心配なんだ。琉璃を『滄海之珠』となっていても、探し回るに違いない。亮が壊れたら……本当にそれだけが心配してる……」
子瑜は呟く。
「亮は、もう琉璃を手放せない。妹達や均を手放した。もう、亮をまともに動かし、生きられるように出来るのは、琉璃だけだ。それと……もしかしたら、喬も……」
「じゃぁ兄上。喬を孔明の養子にすればどうです? 孔明は子供好きだし、さっきの様子も嫌がってるようではありませんでしたよ?」
月英は提案する。
「琉璃はまだ小さいので、子供は生めません。ですから、喬を養子にして家族を孔明に作らせるんです。孔明は本当に大事にしますよ。それに家の父も子供好きなので、初孫は喜びますね」
「でも、家の次男で……」
「弟の養子にすれば?どうせそのチビが弟を苛めるんだから、そんな環境で育てるより、義理の両親とのんびりおおらかに育てるべきじゃない?」
子敬は口を開く。
「それにさぁ……同じ星を見るんだから、星の見えない実父に育てられるより、教え導ける義父の方がましだし、怯えてる兄と一緒に育ててたら、萎縮するよ? 方向性は違うけど、主もほぼ似てるじゃない?」
「……それはそうだけど……」
「それに、子瑜や奥方はしないと解っているけどね、もしそのチビが大きくなってご覧よ。自分と違うものを見る弟を、どう扱うと思う? 子瑜の父親と同じようなことしないなんて、断言できる?」
「……そ、それは……」
子瑜は口ごもる。
「断言するけど、天才には二つの性質がある。子瑜のように柔軟で、弟の才能を認めそれを応援したり伸ばす手助けをする者。もう1つは逆に視野が狭く、自分に解らないことがあると認めず、そういう才能を持つものを徹底的に潰す者。あぁ、子瑜が毛嫌いしている『白眉』は視野は狭いし、理解しようとはしない。けれど利用できるなら徹底的に利用する性質だね。子瑜が嫌うだけあって私も好かない。子瑜。悪いけれど、自分の子供はどういう性格? 賢いかも知れないけど、どう?」
「……子敬どのとは違う」
項垂れる。
「じゃぁ、どうすれば良いか解るよね? 子供が可愛い、傍で成長を見ていたい。それは理解できる。でも、幸せになれるかどうか……解るよね?」
「……嫁と……相談する事にするよ」
子瑜は、俯き囁いた。
「数日中に、決める」
子敬は淡々と告げる。
「家族が見てないところで、父親にも受けてたんじゃない?」
「……多分」
子瑜は項垂れる。
「私が12才から遊学してから、7年。実母はその1年前に逝ったし……多分、父は亮の星見が気味悪かったみたい。イナゴの害のことや、城を襲う黄巾の賊、母の死……。父はごく普通の人間だったからね。今の母が庇っていたのは知ってる。母はお転婆な妹達やまだ小さい均より、亮を可愛がってたから」
「そうなの?」
「亮のこと、ずっと心配してる。他の兄弟は自分で生きていける……でも、亮は駄目なんだ。きっと自分よりも人を守る、助ける……人に依存されてでしか生きていけない。今は琉璃がいる。琉璃を嫁にしたから……あの子は亮に依存されても、亮の言うことが正しいと信じてるからこそ、束縛されてるとは思っていない。でも、もし琉璃が亮の元から離れたら……そう思うと心配なんだ。琉璃を『滄海之珠』となっていても、探し回るに違いない。亮が壊れたら……本当にそれだけが心配してる……」
子瑜は呟く。
「亮は、もう琉璃を手放せない。妹達や均を手放した。もう、亮をまともに動かし、生きられるように出来るのは、琉璃だけだ。それと……もしかしたら、喬も……」
「じゃぁ兄上。喬を孔明の養子にすればどうです? 孔明は子供好きだし、さっきの様子も嫌がってるようではありませんでしたよ?」
月英は提案する。
「琉璃はまだ小さいので、子供は生めません。ですから、喬を養子にして家族を孔明に作らせるんです。孔明は本当に大事にしますよ。それに家の父も子供好きなので、初孫は喜びますね」
「でも、家の次男で……」
「弟の養子にすれば?どうせそのチビが弟を苛めるんだから、そんな環境で育てるより、義理の両親とのんびりおおらかに育てるべきじゃない?」
子敬は口を開く。
「それにさぁ……同じ星を見るんだから、星の見えない実父に育てられるより、教え導ける義父の方がましだし、怯えてる兄と一緒に育ててたら、萎縮するよ? 方向性は違うけど、主もほぼ似てるじゃない?」
「……それはそうだけど……」
「それに、子瑜や奥方はしないと解っているけどね、もしそのチビが大きくなってご覧よ。自分と違うものを見る弟を、どう扱うと思う? 子瑜の父親と同じようなことしないなんて、断言できる?」
「……そ、それは……」
子瑜は口ごもる。
「断言するけど、天才には二つの性質がある。子瑜のように柔軟で、弟の才能を認めそれを応援したり伸ばす手助けをする者。もう1つは逆に視野が狭く、自分に解らないことがあると認めず、そういう才能を持つものを徹底的に潰す者。あぁ、子瑜が毛嫌いしている『白眉』は視野は狭いし、理解しようとはしない。けれど利用できるなら徹底的に利用する性質だね。子瑜が嫌うだけあって私も好かない。子瑜。悪いけれど、自分の子供はどういう性格? 賢いかも知れないけど、どう?」
「……子敬どのとは違う」
項垂れる。
「じゃぁ、どうすれば良いか解るよね? 子供が可愛い、傍で成長を見ていたい。それは理解できる。でも、幸せになれるかどうか……解るよね?」
「……嫁と……相談する事にするよ」
子瑜は、俯き囁いた。
「数日中に、決める」
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