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惰眠をむさぼっていた竜さんがお目覚めのお時間のようです。
この頃は江と呼ばれていたんです。イルカもいたのかな?
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月英の言葉に、均と玉音も大喜びで支度をする。
家の主である孔明は、姉夫婦達に家を頼み、光華や鶏などの家畜のことも頼む。
ちなみに光華はここ5年もの間に、馬家の紅瑩に贈られた牡馬白龍白竜との間に3頭の子馬を産んでいた。
今も妊娠中の為、大事をとって荊州に残ることになっている。
そして、その光華と白竜の世話の為、二人の姉夫婦が子供達を連れ、孔明達が帰るまで臥竜崗の屋敷に滞在することになっている。
月英と均は姉二人に研究室には、絶対に侵入しないよう念を押し、二人の夫の馬仲常と龐山民には、孔明の大事にしている書簡……珍しい書簡の山を自由に読んで貰うようにしておいた。
そうして、支度を終え、船に乗ったのである。
「お魚さん、一杯です! 凄いです!」
船に乗り込んだ3組の夫婦のうち、一番元気なのは儚げな印象の琉璃と孔明である。
一番元気だろうと思われていた玉音が、船に酔い横になり寝込んでいる。
月英も乗り慣れないのか、ふらふらしている。
「おい、どーして、お前達は平気なんだよ」
「馬に乗り慣れているのもありますね。琉璃も平衡感覚がすぐれていますし。均と碧樹殿も乗っているので、楽なんでしょう」
「んじゃ、玉音は?」
孔明が差し出した薬湯を渋い顔で飲み干した月英に、琉璃が首を傾げ、
「多分、玉音お姉様は、船に身を任せるというよりぐらついたり、倒れかかったら元の姿勢に戻そうとするの、です。なので、途中でぐらぐらして倒れてしまったのです」
「は? どういうことだ? 琉璃」
月英の言葉に、琉璃はたどたどしく答える。
「えっと、む、昔兄様にぐらぐらのお人形貰ったのです。揺すったら首がぐらぐらで……」
「あぁ、あれな? 琉璃は泣くし、孔明に蹴られた……」
月英はものを作るのは好きだが、工具は美しいが、作り出すものは芸術性より機能性を重んじる。
その為、からくりの入った人形の作りかけ失敗作を琉璃に与え、余り可愛いげのない人形に大泣きしたのである。
「あ、あのお人形みたいに馬の上では揺れるのです。ぐらぐら。でも、馬は玉音お姉様は平気でも、船は勝手が違うので多分、酔っちゃうのです」
「そんなものか?」
「そうなのです。琉璃も最初は気分悪かったです」
「今日か?」
月英の言葉に、琉璃は首を振る。
「北の黄色い河です。河を戦から逃げる時にぼろぼろの船で、逃げ延びたことがあって……その時は人が次々に乗ってきて、沈みそうでした」
「それは……気分悪くなるな」
月英も頷く。
「まぁ、オレはそこまで酷くないが、少し休んでくる。琉璃。孔明と二人で江を見ていろ。何か面白い生き物も見れるそうだ」
「はい、兄様。兄様も、無理しないで下さいね?」
「おうよ! それじゃ、行ってくるな~。孔明、琉璃を頼むぞ」
ヒラヒラと手を振り船の中に入っていく。
孔明は琉璃を見る。
「黄河渡ったことがあるんだね。あの河は肥沃な土を西から運んでくるんだ。私は詳しくないけれどね」
「大きな河です。でも……それ位しか覚えてないです」
淋しそうに笑う琉璃に、孔明は川面に指を指す。
「あ、何か、魚みたいなの見えた! 大きかったよ、跳ねたし!」
「えっ!」
キョロキョロと江の流れを見つめる琉璃を、後ろからそっと抱き締め耳元に囁く。
「この江は、沢山船が行き来するし支流も多いから、景色が全く違うと思うよ。綺麗だよね……」
「……はい、水面が光を跳ね返して、キラキラしてます」
「そうだね……あ、ほら!」
孔明が示した所で魚が、跳び跳ねる。
「あっ! お魚ぴょーんです。鱗がキラキラしてます!」
「見えたね。水面のキラキラしてる色は、琉璃の髪の色だね、綺麗だねぇ?」
「本当に水面が綺麗です」
ニコニコと笑う琉璃に、孔明は、
「何言ってるの? キラキラ綺麗なのは琉璃でしょ? うん、琉璃の笑顔は凄く綺麗だよね」
真顔の夫の殺し文句に、かぁぁぁっと顔を赤くする。
「き、ききき……綺麗なのは旦那様の髪とひ、瞳と、優しいお声です」
「じゃぁ、柔らかい髪に潤んだ空の青の瞳に、可愛いことを言う声は琉璃でしょ? 琉璃の方が綺麗」
二人のイチャイチャに、溜め息を吐きながら均が近づく。
「兄様、琉璃。人目も憚らずそんな所でべたべたしないの。日も落ちてくるんだし、中に入って! もう、どうしてぼくが、5年たってもイチャイチャ夫婦を引き離す役をしなきゃいけないんだろう……」
「解った解った。琉璃。中に行こう。道中長いんだから、また明日見ようね」
3人は中に入っていった。
家の主である孔明は、姉夫婦達に家を頼み、光華や鶏などの家畜のことも頼む。
ちなみに光華はここ5年もの間に、馬家の紅瑩に贈られた牡馬白龍白竜との間に3頭の子馬を産んでいた。
今も妊娠中の為、大事をとって荊州に残ることになっている。
そして、その光華と白竜の世話の為、二人の姉夫婦が子供達を連れ、孔明達が帰るまで臥竜崗の屋敷に滞在することになっている。
月英と均は姉二人に研究室には、絶対に侵入しないよう念を押し、二人の夫の馬仲常と龐山民には、孔明の大事にしている書簡……珍しい書簡の山を自由に読んで貰うようにしておいた。
そうして、支度を終え、船に乗ったのである。
「お魚さん、一杯です! 凄いです!」
船に乗り込んだ3組の夫婦のうち、一番元気なのは儚げな印象の琉璃と孔明である。
一番元気だろうと思われていた玉音が、船に酔い横になり寝込んでいる。
月英も乗り慣れないのか、ふらふらしている。
「おい、どーして、お前達は平気なんだよ」
「馬に乗り慣れているのもありますね。琉璃も平衡感覚がすぐれていますし。均と碧樹殿も乗っているので、楽なんでしょう」
「んじゃ、玉音は?」
孔明が差し出した薬湯を渋い顔で飲み干した月英に、琉璃が首を傾げ、
「多分、玉音お姉様は、船に身を任せるというよりぐらついたり、倒れかかったら元の姿勢に戻そうとするの、です。なので、途中でぐらぐらして倒れてしまったのです」
「は? どういうことだ? 琉璃」
月英の言葉に、琉璃はたどたどしく答える。
「えっと、む、昔兄様にぐらぐらのお人形貰ったのです。揺すったら首がぐらぐらで……」
「あぁ、あれな? 琉璃は泣くし、孔明に蹴られた……」
月英はものを作るのは好きだが、工具は美しいが、作り出すものは芸術性より機能性を重んじる。
その為、からくりの入った人形の作りかけ失敗作を琉璃に与え、余り可愛いげのない人形に大泣きしたのである。
「あ、あのお人形みたいに馬の上では揺れるのです。ぐらぐら。でも、馬は玉音お姉様は平気でも、船は勝手が違うので多分、酔っちゃうのです」
「そんなものか?」
「そうなのです。琉璃も最初は気分悪かったです」
「今日か?」
月英の言葉に、琉璃は首を振る。
「北の黄色い河です。河を戦から逃げる時にぼろぼろの船で、逃げ延びたことがあって……その時は人が次々に乗ってきて、沈みそうでした」
「それは……気分悪くなるな」
月英も頷く。
「まぁ、オレはそこまで酷くないが、少し休んでくる。琉璃。孔明と二人で江を見ていろ。何か面白い生き物も見れるそうだ」
「はい、兄様。兄様も、無理しないで下さいね?」
「おうよ! それじゃ、行ってくるな~。孔明、琉璃を頼むぞ」
ヒラヒラと手を振り船の中に入っていく。
孔明は琉璃を見る。
「黄河渡ったことがあるんだね。あの河は肥沃な土を西から運んでくるんだ。私は詳しくないけれどね」
「大きな河です。でも……それ位しか覚えてないです」
淋しそうに笑う琉璃に、孔明は川面に指を指す。
「あ、何か、魚みたいなの見えた! 大きかったよ、跳ねたし!」
「えっ!」
キョロキョロと江の流れを見つめる琉璃を、後ろからそっと抱き締め耳元に囁く。
「この江は、沢山船が行き来するし支流も多いから、景色が全く違うと思うよ。綺麗だよね……」
「……はい、水面が光を跳ね返して、キラキラしてます」
「そうだね……あ、ほら!」
孔明が示した所で魚が、跳び跳ねる。
「あっ! お魚ぴょーんです。鱗がキラキラしてます!」
「見えたね。水面のキラキラしてる色は、琉璃の髪の色だね、綺麗だねぇ?」
「本当に水面が綺麗です」
ニコニコと笑う琉璃に、孔明は、
「何言ってるの? キラキラ綺麗なのは琉璃でしょ? うん、琉璃の笑顔は凄く綺麗だよね」
真顔の夫の殺し文句に、かぁぁぁっと顔を赤くする。
「き、ききき……綺麗なのは旦那様の髪とひ、瞳と、優しいお声です」
「じゃぁ、柔らかい髪に潤んだ空の青の瞳に、可愛いことを言う声は琉璃でしょ? 琉璃の方が綺麗」
二人のイチャイチャに、溜め息を吐きながら均が近づく。
「兄様、琉璃。人目も憚らずそんな所でべたべたしないの。日も落ちてくるんだし、中に入って! もう、どうしてぼくが、5年たってもイチャイチャ夫婦を引き離す役をしなきゃいけないんだろう……」
「解った解った。琉璃。中に行こう。道中長いんだから、また明日見ようね」
3人は中に入っていった。
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