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デレデレ新婚夫婦のあまあまな日々……これでいいんだ!多分。
実際のところ、孔明さんはデレデレ体質でした。
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琉璃は2、3日牀に横たえられ、孔明はその間ほぼ傍に付き添った。
孔明が傍を離れたのは、黄承彦と月英の見舞いに行く程度でである。
孔明は、傍に付いている間は書簡を読んでいるか、目を覚まし琉璃が手持ち無沙汰を持て余していると、様々な話をする。
月英の作る道具の話、そして、晶瑩と紅瑩、均の昔の話、他にも子瑜の事や、他の家族の事も話してくれる。
「おかーしゃまと、いみょーとしゃまが、いゆのれしゅか?」
初めて聞く孔明の家族である。
この話になったのは、いつも紅瑩の嫁ぎ先の龐家の屋敷に孔明や均宛の便りがくる。
今日、江東の兄、子瑜の元から便りが届いた。
しかも、孔明と均だけでなく琉璃宛に。
そんなことは生まれて初めてで、驚いた琉璃は、まだ余り字も読めないこともあり孔明に代読を頼んだのだ。
その時に聞かされた話である。
「あ、あにょ、おにーしゃまは結婚しゃれてて、おねーしゃま、いゆと、きいたのれしゅが……」
「言うの忘れててごめんね。実は母と妹もいるんだ。でも、兄上や姉上達、私や均を生んでくれた実母はもう亡くなっているから、父の再婚で、新しく家に入ってくれた方なんだ。でも、私達を実の子供のように分け隔てなく育ててくれた、優しい人だよ。妹の珠樹も……ウーン、6才下だから14,5才だね。義母に似ていて優しい子だよ。琉璃と仲良くなれるよ」
「な、仲良く……?」
目を見開く。
孔明が消したはずの苦しみが現れる前に、続ける。
「そう。均とお花の話をしたり、衣の話をしたりしてるよね? そう言うお話が出来るお友達。近くにはいないけれど、ほら、今私が読んでいるのは、兄上が義母や珠樹の代筆をして下さった便りだよ。琉璃が諸葛家の嫁になってくれて嬉しいって、義母は言っているそうだよ。珠樹は、琉璃の好きなものは何ですか? 自分は果物を干したものが大好きです。江東は、沢山珍しい果物が有ります。送りますねって。送ってきてるよ」
横に置かれた籠の中には、山盛りの干した果物。
「へぇ……珠樹が、これが美味しいって」
孔明は籠の果物を、琉璃の口にぽんっといれる。
噛むと、少し硬い果肉から、甘い甘い味が溶けていく。
「……っ!……」
頬を押さえ、ふにゃっと幸せそうな顔になる琉璃に、クスクスと孔明は笑う。
一瞬にして、不安げに表情を翳らせ見上げた琉璃に、孔明は慌てて首を振り、
「あのね? 琉璃は何気ない事でも一つ一つを大切にして、何か出来る度に、口にする度に、とっても嬉しそうに笑うんだよ。だから本当に嬉しいんだ、美味しいんだなって思ってたんだよ。今日も顔を綻ばせて、満面の笑顔を見せてくれたから、私も嬉しくなったんだよ。良かったなぁ、珠樹のお陰だなぁって。琉璃の笑顔が見れて良かったなぁって」
書簡を示す。
「それにね、珠樹が書いてたんだよ。きっと琉璃は笑顔の可愛いお姉様ですねって。兄上が琉璃のことを沢山、義母や珠樹にお話してくれたみたいでね? この果物を琉璃に食べさせて、琉璃の笑顔を沢山見て兄上……私のことだね……も、その眉間のシワを薄くして下さい……だって! ちょっと失礼だよね? 琉璃。しかも、子瑜兄上に巨大化していると聞きました。琉璃義姉上の前では、怖い顔だけはやめて下さいね! 目付きが悪いのに、その上巨大化したなんて、悪い要素だらけですよ。兄上、琉璃義姉上を、泣かせたりして離婚だけはやめて下さいね……だって?」
書簡を見つめ愕然とする孔明に、琉璃はプッと吹き出し、コロコロと笑い出す。
「……っ! りゅ、琉璃まで、酷い……」
ガックリ……大袈裟に肩を落とす孔明に、慌てて口を押さえブンブンと首を振る。
「ち、ちあうにょ。あにしゃまわやったじゃにゃくて……りゅ、りゅーり……」
おろおろとする琉璃を振り返り、よしよしと頭をなで笑顔を向ける。
「解ってます。琉璃は、嬉しくて笑ったんだよね。からかってごめん。でも、琉璃はやっぱり笑顔が似合うね。珠樹の言った通りだ」
「しゅじゅしゃまの?」
「琉璃が笑顔でいると、私も嬉しい。だから、笑って。その為なら、何でも出来るから……」
「りゅ、りゅーりは、にいしゃまにもわやってほしーにょ……」
首を傾げ見上げる琉璃。
「……んと、りゅーりさっきわやったの、にいしゃまわやった。……らから、りゅーりわやうの、にいしゃまわやってね? やくしょく」
琉璃の言葉に、孔明はハッとしたように口に手を当てる。
「……そうだね……琉璃が笑って私も笑う……約束しようね」
「はいにゃの」
孔明の新婚生活は、甘い甘い干し果物を食べているよう……。
孔明が傍を離れたのは、黄承彦と月英の見舞いに行く程度でである。
孔明は、傍に付いている間は書簡を読んでいるか、目を覚まし琉璃が手持ち無沙汰を持て余していると、様々な話をする。
月英の作る道具の話、そして、晶瑩と紅瑩、均の昔の話、他にも子瑜の事や、他の家族の事も話してくれる。
「おかーしゃまと、いみょーとしゃまが、いゆのれしゅか?」
初めて聞く孔明の家族である。
この話になったのは、いつも紅瑩の嫁ぎ先の龐家の屋敷に孔明や均宛の便りがくる。
今日、江東の兄、子瑜の元から便りが届いた。
しかも、孔明と均だけでなく琉璃宛に。
そんなことは生まれて初めてで、驚いた琉璃は、まだ余り字も読めないこともあり孔明に代読を頼んだのだ。
その時に聞かされた話である。
「あ、あにょ、おにーしゃまは結婚しゃれてて、おねーしゃま、いゆと、きいたのれしゅが……」
「言うの忘れててごめんね。実は母と妹もいるんだ。でも、兄上や姉上達、私や均を生んでくれた実母はもう亡くなっているから、父の再婚で、新しく家に入ってくれた方なんだ。でも、私達を実の子供のように分け隔てなく育ててくれた、優しい人だよ。妹の珠樹も……ウーン、6才下だから14,5才だね。義母に似ていて優しい子だよ。琉璃と仲良くなれるよ」
「な、仲良く……?」
目を見開く。
孔明が消したはずの苦しみが現れる前に、続ける。
「そう。均とお花の話をしたり、衣の話をしたりしてるよね? そう言うお話が出来るお友達。近くにはいないけれど、ほら、今私が読んでいるのは、兄上が義母や珠樹の代筆をして下さった便りだよ。琉璃が諸葛家の嫁になってくれて嬉しいって、義母は言っているそうだよ。珠樹は、琉璃の好きなものは何ですか? 自分は果物を干したものが大好きです。江東は、沢山珍しい果物が有ります。送りますねって。送ってきてるよ」
横に置かれた籠の中には、山盛りの干した果物。
「へぇ……珠樹が、これが美味しいって」
孔明は籠の果物を、琉璃の口にぽんっといれる。
噛むと、少し硬い果肉から、甘い甘い味が溶けていく。
「……っ!……」
頬を押さえ、ふにゃっと幸せそうな顔になる琉璃に、クスクスと孔明は笑う。
一瞬にして、不安げに表情を翳らせ見上げた琉璃に、孔明は慌てて首を振り、
「あのね? 琉璃は何気ない事でも一つ一つを大切にして、何か出来る度に、口にする度に、とっても嬉しそうに笑うんだよ。だから本当に嬉しいんだ、美味しいんだなって思ってたんだよ。今日も顔を綻ばせて、満面の笑顔を見せてくれたから、私も嬉しくなったんだよ。良かったなぁ、珠樹のお陰だなぁって。琉璃の笑顔が見れて良かったなぁって」
書簡を示す。
「それにね、珠樹が書いてたんだよ。きっと琉璃は笑顔の可愛いお姉様ですねって。兄上が琉璃のことを沢山、義母や珠樹にお話してくれたみたいでね? この果物を琉璃に食べさせて、琉璃の笑顔を沢山見て兄上……私のことだね……も、その眉間のシワを薄くして下さい……だって! ちょっと失礼だよね? 琉璃。しかも、子瑜兄上に巨大化していると聞きました。琉璃義姉上の前では、怖い顔だけはやめて下さいね! 目付きが悪いのに、その上巨大化したなんて、悪い要素だらけですよ。兄上、琉璃義姉上を、泣かせたりして離婚だけはやめて下さいね……だって?」
書簡を見つめ愕然とする孔明に、琉璃はプッと吹き出し、コロコロと笑い出す。
「……っ! りゅ、琉璃まで、酷い……」
ガックリ……大袈裟に肩を落とす孔明に、慌てて口を押さえブンブンと首を振る。
「ち、ちあうにょ。あにしゃまわやったじゃにゃくて……りゅ、りゅーり……」
おろおろとする琉璃を振り返り、よしよしと頭をなで笑顔を向ける。
「解ってます。琉璃は、嬉しくて笑ったんだよね。からかってごめん。でも、琉璃はやっぱり笑顔が似合うね。珠樹の言った通りだ」
「しゅじゅしゃまの?」
「琉璃が笑顔でいると、私も嬉しい。だから、笑って。その為なら、何でも出来るから……」
「りゅ、りゅーりは、にいしゃまにもわやってほしーにょ……」
首を傾げ見上げる琉璃。
「……んと、りゅーりさっきわやったの、にいしゃまわやった。……らから、りゅーりわやうの、にいしゃまわやってね? やくしょく」
琉璃の言葉に、孔明はハッとしたように口に手を当てる。
「……そうだね……琉璃が笑って私も笑う……約束しようね」
「はいにゃの」
孔明の新婚生活は、甘い甘い干し果物を食べているよう……。
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